34 / 40
あなたと結婚したい
しおりを挟む
「吉良君、私と結婚してください」
構内がざわついた。生徒たちは信じられないという目で、彼女――佐藤雪子を見ている。
「え? え?」
告白を受けた吉良はあんぐりと口を開け、佐藤の顔を見つめている。周囲からの視線を気にする様子もなく、佐藤は吉良の手をぎゅっと握った。
「吉良君じゃないとダメなの」
大学一の美女に手を握られ、吉良の顔は真っ赤に染まった。
「あんたがあの地味男に告白とはね。二次元の男にしか興味ないと思ってたよ」
佐藤の親友、田中もまた信じられないという口調で呟いた。
「告白なんてしてないよ」
「は?」
田中は何言ってんの? という目で佐藤を見る。
「私は結婚してって言っただけ」
「それが告白でしょ」
「違うよ」
かたくなに告白だと認めない佐藤に、田中は訳が分かんないとばかりに首を傾げる。そんな田中をよそに、佐藤はスマホの画面を見て笑みを浮かべた。
「雪子大丈夫?」
喪服を着た田中が雪子に話しかける。雪子はうんと頷いた。
「あんたと結婚したばかりだったのにね」
吉良は死んだ。雪子と結婚した翌日に。死因は溺死だった。初夜を前に緊張した彼は酒をがぶ飲みし、酔っぱらった状態で風呂に入ったのだ。
「何かあったら私に言って。すぐにあんたんちに駆けつけるから」
田中は友達思いの優しい娘だった。
「大丈夫だよ。私には旦那様がいるから」
佐藤はうっとりとしている。それは愛しくてたまらないという表情だった。
「あんた、そこまで地味男のことを」
田中は何とも言えない顔を見せる。それに対し、雪子は「ううん。私は別に彼のことなんか愛してないよ」と返す。
「え?」
田中は耳を疑った。愛してないとはどういうことか、結婚してくれと言い出したのは雪子じゃなかったかと田中は混乱の面持ちを隠せない。
「私の旦那様はこの人よ」
雪子はスマホの画面を見せる。そこには彼女が好きなアニメのキャラクターが写っていた。
「これって」
「そう吉良タケル君」
その言葉を聞いた田中の脳裏にある疑念が過ぎる。
「ま、まさかあんた地味男を……」
「お酒を飲ませたのは私。お風呂に入るように勧めたのもね」
「なんでそんなこと」
「私が欲しかったのは苗字だけだもの」
そう言って吉良由紀子はふふふと微笑んだ。
構内がざわついた。生徒たちは信じられないという目で、彼女――佐藤雪子を見ている。
「え? え?」
告白を受けた吉良はあんぐりと口を開け、佐藤の顔を見つめている。周囲からの視線を気にする様子もなく、佐藤は吉良の手をぎゅっと握った。
「吉良君じゃないとダメなの」
大学一の美女に手を握られ、吉良の顔は真っ赤に染まった。
「あんたがあの地味男に告白とはね。二次元の男にしか興味ないと思ってたよ」
佐藤の親友、田中もまた信じられないという口調で呟いた。
「告白なんてしてないよ」
「は?」
田中は何言ってんの? という目で佐藤を見る。
「私は結婚してって言っただけ」
「それが告白でしょ」
「違うよ」
かたくなに告白だと認めない佐藤に、田中は訳が分かんないとばかりに首を傾げる。そんな田中をよそに、佐藤はスマホの画面を見て笑みを浮かべた。
「雪子大丈夫?」
喪服を着た田中が雪子に話しかける。雪子はうんと頷いた。
「あんたと結婚したばかりだったのにね」
吉良は死んだ。雪子と結婚した翌日に。死因は溺死だった。初夜を前に緊張した彼は酒をがぶ飲みし、酔っぱらった状態で風呂に入ったのだ。
「何かあったら私に言って。すぐにあんたんちに駆けつけるから」
田中は友達思いの優しい娘だった。
「大丈夫だよ。私には旦那様がいるから」
佐藤はうっとりとしている。それは愛しくてたまらないという表情だった。
「あんた、そこまで地味男のことを」
田中は何とも言えない顔を見せる。それに対し、雪子は「ううん。私は別に彼のことなんか愛してないよ」と返す。
「え?」
田中は耳を疑った。愛してないとはどういうことか、結婚してくれと言い出したのは雪子じゃなかったかと田中は混乱の面持ちを隠せない。
「私の旦那様はこの人よ」
雪子はスマホの画面を見せる。そこには彼女が好きなアニメのキャラクターが写っていた。
「これって」
「そう吉良タケル君」
その言葉を聞いた田中の脳裏にある疑念が過ぎる。
「ま、まさかあんた地味男を……」
「お酒を飲ませたのは私。お風呂に入るように勧めたのもね」
「なんでそんなこと」
「私が欲しかったのは苗字だけだもの」
そう言って吉良由紀子はふふふと微笑んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる