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しい
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「よーしいいぞ!追い払ったのか!我らが桜子ちゃんを嫁にもらおうなんて10年早いあの坊主!」
あれからすっかり、通常通り再開された治療院にはまた患者さんが普通に戻ってきた。
あの日、無責任だと中傷されていたのは、一日中外に立っていた堂ヶ島右京だった。
自分が幸せにするから、桜子さんにアプローチさせて欲しい、と何と患者達にも宣言していたらしい。
それなのに、ボロボロに泣きながら馬で駆け抜ける私を見て、叱りに来てくれていたそうだ。
つまり、知らなかったのは私だけだったのだ。
そして、足腰の痛むお年寄り達は3日も治療院がやっていない事で痛みが出てしまい、悲鳴をあげていたそうだ。他の治療院に行くくらいだったら我慢する。と話してくれた。
そんな、日常は突然壊れる。
目元を真っ赤に腫らした十六原蘭が父親である十蔵将軍を連れてやってきた。
その紳士はあの、顔合わせの時の上官であった。
「ごめん、なさい。わたくしのせいで、ふたりが、仲違いしてしまったと聞いて。右京様の焦がれる様な恋の話を聞いて、つい余計なお世話を…」
「すまない、蒼海氏。私の娘が…取り返しのつかないことを。」
赤く腫らした目元の腫れも治まらないうちにまた、ボロボロと泣き始めているのだろう。肌が荒れて皮がカサカサになっている。
「堂ヶ島はあれから魂の抜けた戦闘機の様になってしまった。聞けば、君と二度と会わないと…約束したと」
「えぇ。その通りです」
「お願い!!もう一度チャンスをあげて!貴女にどれほど焦がれていたか!」
「やめなさい!蘭!」
私は彼女のお願いを聞いてはぁ。とため息をついてしまう。
「お気をつけになった方がよろしいかと。」
「え?」
「十六原さんは悪気は無いかもしれないけど、男性と距離が近い様ですわ。私達が顔合わせをしていると言うのに、その男性をお茶に誘う、観劇の席に座る。周りが勘違いしても仕方がないです。」
「お茶は、貴女も一緒に誘ったつもりだったの!」
「余計なお世話ですわ。なぜ他人の貴女が入ってくるの?お邪魔虫と言うのよ。貴女のせいで仲違いする恋人達が続出する前に行動を改めた方がよろしいかと。不快でした。」
「ごめんなさい。反省してるわ!でも、右京様は本当に貴女のことが…」
「貴女は堂ヶ島右京の何ですか?なぜそんなに語るのですか?好きなのですか?」
「違うわ!!応援したいだけよ!」
「そうはみえないの。周りからは。私が貴女の婚約者であられる隆徳様と一緒に現れて、この人、いい人でしょ?これからも仲良くしてね。と言ったらどう思われますか?デートに突然現れて私も一緒に食事を、と言ったらどう感じますか?貴女のプレゼントを選んだのが本当は私だと言ったら?貴女がしたのはそう言うことです。貴女こそが堂ヶ島右京の邪魔をしたのです。」
そこまで言われて、蘭様はハッと顔を青くした。
父親である十蔵氏も真剣な顔をしてただ、頭を下げた。
「桜子、言い過ぎかな?もう十分だよ」
「お父様に免じて、許しましょう。でも二度とお会いしたくないわ。お元気なのでしたらお帰りください。」
「ごめん、なさい。ごめ…なさい…」
謝っても戻らないのよ。時間は。と言いたかったけどそれは流石に言い過ぎかと思って心の中に留めておいた。
「本当に申し訳なかった。最後に一つ…明日、堂ヶ島隊長はここから少し離れた基地へ移動となる。きっと、貴女の前には現れなくなる。今まですまなかった。これは、お詫びの品だ。いらなかったら捨ててくれて構わない。」
よろよろと自分一人では歩けない彼女の手を引いて、十蔵氏はゆっくりと診察室を後にした。残されたエメラルドグリーンの綺麗な箱からは白い鍔の広間の可憐な帽子が出てきた。
「あー…明日…治療院はお休みだなぁー…最後に一目会いにいってきなさい。そんなに寂しそうな顔をしているんだから、後悔する前に許してあげたら?」
「…お…お父様がいうなら…許してあげます。」
「まったく、素直じゃないんだから。僕のファーストレディーは。」
久しぶりにぎゅっと抱きしめられた。記憶にあるお父様より小さくて、胸がぎゅっとせつなくなった。
あれからすっかり、通常通り再開された治療院にはまた患者さんが普通に戻ってきた。
あの日、無責任だと中傷されていたのは、一日中外に立っていた堂ヶ島右京だった。
自分が幸せにするから、桜子さんにアプローチさせて欲しい、と何と患者達にも宣言していたらしい。
それなのに、ボロボロに泣きながら馬で駆け抜ける私を見て、叱りに来てくれていたそうだ。
つまり、知らなかったのは私だけだったのだ。
そして、足腰の痛むお年寄り達は3日も治療院がやっていない事で痛みが出てしまい、悲鳴をあげていたそうだ。他の治療院に行くくらいだったら我慢する。と話してくれた。
そんな、日常は突然壊れる。
目元を真っ赤に腫らした十六原蘭が父親である十蔵将軍を連れてやってきた。
その紳士はあの、顔合わせの時の上官であった。
「ごめん、なさい。わたくしのせいで、ふたりが、仲違いしてしまったと聞いて。右京様の焦がれる様な恋の話を聞いて、つい余計なお世話を…」
「すまない、蒼海氏。私の娘が…取り返しのつかないことを。」
赤く腫らした目元の腫れも治まらないうちにまた、ボロボロと泣き始めているのだろう。肌が荒れて皮がカサカサになっている。
「堂ヶ島はあれから魂の抜けた戦闘機の様になってしまった。聞けば、君と二度と会わないと…約束したと」
「えぇ。その通りです」
「お願い!!もう一度チャンスをあげて!貴女にどれほど焦がれていたか!」
「やめなさい!蘭!」
私は彼女のお願いを聞いてはぁ。とため息をついてしまう。
「お気をつけになった方がよろしいかと。」
「え?」
「十六原さんは悪気は無いかもしれないけど、男性と距離が近い様ですわ。私達が顔合わせをしていると言うのに、その男性をお茶に誘う、観劇の席に座る。周りが勘違いしても仕方がないです。」
「お茶は、貴女も一緒に誘ったつもりだったの!」
「余計なお世話ですわ。なぜ他人の貴女が入ってくるの?お邪魔虫と言うのよ。貴女のせいで仲違いする恋人達が続出する前に行動を改めた方がよろしいかと。不快でした。」
「ごめんなさい。反省してるわ!でも、右京様は本当に貴女のことが…」
「貴女は堂ヶ島右京の何ですか?なぜそんなに語るのですか?好きなのですか?」
「違うわ!!応援したいだけよ!」
「そうはみえないの。周りからは。私が貴女の婚約者であられる隆徳様と一緒に現れて、この人、いい人でしょ?これからも仲良くしてね。と言ったらどう思われますか?デートに突然現れて私も一緒に食事を、と言ったらどう感じますか?貴女のプレゼントを選んだのが本当は私だと言ったら?貴女がしたのはそう言うことです。貴女こそが堂ヶ島右京の邪魔をしたのです。」
そこまで言われて、蘭様はハッと顔を青くした。
父親である十蔵氏も真剣な顔をしてただ、頭を下げた。
「桜子、言い過ぎかな?もう十分だよ」
「お父様に免じて、許しましょう。でも二度とお会いしたくないわ。お元気なのでしたらお帰りください。」
「ごめん、なさい。ごめ…なさい…」
謝っても戻らないのよ。時間は。と言いたかったけどそれは流石に言い過ぎかと思って心の中に留めておいた。
「本当に申し訳なかった。最後に一つ…明日、堂ヶ島隊長はここから少し離れた基地へ移動となる。きっと、貴女の前には現れなくなる。今まですまなかった。これは、お詫びの品だ。いらなかったら捨ててくれて構わない。」
よろよろと自分一人では歩けない彼女の手を引いて、十蔵氏はゆっくりと診察室を後にした。残されたエメラルドグリーンの綺麗な箱からは白い鍔の広間の可憐な帽子が出てきた。
「あー…明日…治療院はお休みだなぁー…最後に一目会いにいってきなさい。そんなに寂しそうな顔をしているんだから、後悔する前に許してあげたら?」
「…お…お父様がいうなら…許してあげます。」
「まったく、素直じゃないんだから。僕のファーストレディーは。」
久しぶりにぎゅっと抱きしめられた。記憶にあるお父様より小さくて、胸がぎゅっとせつなくなった。
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