星に願っても叶わなかったので自分で叶えることにしました

空橋彩

文字の大きさ
11 / 22
ビクトール・ツーデンとの再会の章

11

「幸せになるんだよ」と言って家族が着せてくれた赤いエンパイアドレスを脱ぐ。
日頃の訓練で体が引き締まっているため、コルセットをしていなかったことが幸いして一人でも脱ぐことができた。部屋に用意されていた、白いナイトワンピースをみにつけ、バルコニーにでる。少し肌寒いが、シンと静まり返った夜の空気で胸がキュウと締め付けられる。

昨日は愛する人達と見た星が、今日も同じ様に綺麗に輝いている。

「はぁ。私の事をヴィクトール卿が受け入れてくださいます様に。」

ため息混じりに星空に願ってみる。きらりと星が一際強く光り返事をしてくれた気がした。
きっと、明日にはヴィクトール卿も少しは落ち着いて話してくださるだろうと、ほんの少しだけ未来に希望を抱いてみた。

望まれた結婚でもなければ、必要に駆られた結婚でもない。私はここに蔑まれにきた様なものだ。
歓迎などされず、いきなり罵られた。
私に一言も喋らせず、放置した。
思わずぎゅっと手すりを握りしめる。

『ねぇ、オリヴィア?貴方がいらないって言ったものは私いつでも炭にしてあげるわよ』

怒りが収まらないのはルビィも一緒のようだ。

「うん。ありがとう。でも、ヴィクトール卿がいなくなるとこの帝国にたくさんの国が攻めてくるかもしれないの。彼は他国から恐れられるほどの力を持っているんですって。他国からの進軍の抑止力になっているのよ」

『それなら、私のほうが強いわよぉ』

「それはそう、絶対そうよ。でも、他国が攻めてくるって事は、いろんな場所で不毛な争いが起こるの。人間同士の争いが起こると言うことは、傷つき、死んでしまう人がたくさん出てくるってことよ。私はそれは嫌なの。」

『じゃあ、脱走しましょ。逃げ出す?』

「そうしたら代わりに家族が罰せられるかもしれない。まずはヴィクトール卿ともう一度話してみる。それから皇室の方にも話を通してもらって婚姻をなかった事にして貰えばいいのよ。」

『うまくいかなかったら、攫ってでもこの屋敷から連れ出すわよ。もし、その事でオリヴィアの“大切”に手を出すものがいれば片っ端から炭にしてやる。』

「そうならない事を祈るわ」

ルビィは話してるうちに少し寒くなってブルっと震えた私に温かい毛布を持ってきてくれた。ふわっと肩にかけられたそれは、すごく暖かかった。
暗い空と反対に微かに赤く光るルビィの瞳からは怒りと、悲しみの感情が溢れている。

私の部屋はどうやら最上階の3階、その一番端に位置するらしい。角部屋のため空が広く見える。

ふと、目線を下げると斜め下あたりにあるバルコニーにヴィクトール卿が姿を現した。
隣にはオレンジ色の髪色の女性がいる。あの女性は、あの時森で飛び出してきた……
慌てて姿を見られない様に物陰に隠れる。
耳をすませば、微かに二人の声が聞こえてきた。

「ヴィクトール様。本当に明日結婚しちゃうの?」

「仕方がないんだ。皇帝があの女を治癒師だと信じきっている。どうも、俺の力とこの傷を癒した治癒の力を残したいが為の政略結婚の意味合いもあるらしい。」

「そんな!その傷を癒したのはあたしなのに!」

「わかってる。あの、貴族の女が嘘をついて皇帝に取り合ったんだ。だから、あの女となんか子供は作らないさ。」

「あたし……あたしが皇帝さんにお話しします!治したのはあたしですって!!ヴィクトール様が可哀想!」

「大丈夫さ。あんな奴と顔も合わせたくないから。せいぜい俺に愛されようともがき苦しめばいいんだ。俺が愛するのはアリーナ、君だけだ。君が俺の子を産めば問題ないだろ?」

「そうね。でも怖いわ!明日からいじめられるんじゃないかって…あたし、平民だから…」

「使用人たちにはあいつを見張る様言い付けてある。安心しろ。みな、アリーナの味方だ」

「はい。せっかくヴィクトール様が治癒の乙女を褒賞として願ってくださったのに、とんだ邪魔者が入っちゃったわね」

アリーナと呼ばれた女性が甘える様な声でヴィクトール卿に話しかける。
心なしか隣からパチパチと火花が散る音がすると思いルビィに目をやると瞳からパチパチと火花が散っていた。
怒っているらしい。とてつもなく。

『死にかけてまで治してやったのにあの恩知らずが』

と呟いて私の耳を塞ぐ。一瞬キィンと高い音が聞こえたがすぐになんの音もしなくなった。
十秒程で耳が開放されると、バルコニーにいた二人が「なんの音?!」と騒いでいた。

『夜風にあたりすぎは良くないわ。部屋に入りましょ』

とルビィが私の肩を優しく抱く。ルビィは女性の姿をしているがスラッと背が高く顔つきもシャープで整っている。吊り上がった目に、通った鼻筋、薄い唇。
声も中性的な声で心地よい。

子供の頃助けた時は手のひらサイズのドラゴンの姿をしていたが、あれは仮の姿だったらしい。

部屋に入るとベットまでエスコートしてくれ、優しく掛け布団をかけてくれる。そのまま、ベットのふちに腰掛けたと思ったら、トントンと心臓のあたりを心地よいリズムで優しく叩かれる。

『私が死にかけてた時、オリヴィアは毎晩こうして寝かせてくれたわ。あの時の暖かさと貴女の魔力に魅せられて、ずっと貴女を遠くから見守っていたの。』

「そうだったの?会いにきてくれれば良かったのに」

『あら、無理よ。貴女ガチガチに守られてるんだもの。近づけなかったのよ』

「?そうなの?あの屋敷はそんなに警備は厳しくないと思うけど、それぞれが強いからね」

『クス。可哀想な男だわあいつも。』

ルビィがボソッと呟くが何を言ったのか聞き取れなかった。月明かりが窓から差し込むと、普段は隠している額の核がきらりと煌めく。
思わず人差し指で、核をなぞりながら、ほんの少し魔力を流し込む。

『うふふ、相変わらず優しい魔力ね。この魔力を一度味わったら、忘れられないはずよ。』

「わすれ…られない?」

『おやすみ、オリヴィア。いい夢を』

ルビィの一言を最後に意識はプッツリと途切れてしまった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

巻き戻った妻、愛する夫と子どもを今度こそ守ります

ミカン♬
恋愛
公爵令嬢フィリスの愛する婚約者、第一王子ジルナードが事故で体が不自由となった。 それで王太子候補は側妃の子、第二王子のサイラスに決まった。 父親の計略でフィリスはサイラスとの婚姻を余儀なくされる。悲しむフィリスとジルナード。 「必ずジルナード様を王にします。貴方の元に戻ってきます」 ジルナードに誓い、王妃から渡された毒薬を胸に、フィリスはサイラスに嫁いだ。 挙式前に魔女に魅了を掛けられて。愛する人はサイラスだと思い込んだまま、幸福な時間を過ごす。 やがて魅了は解けて…… サクッとハッピーエンドまで進みます。

旦那さまは私のために嘘をつく

小蔦あおい
恋愛
声と記憶をなくしたシェリルには魔法使いの旦那さまがいる。霧が深い渓谷の間に浮かぶ小さな島でシェリルは旦那さまに愛されて幸せに暮らしていた。しかし、とある新聞記事をきっかけに旦那さまの様子がおかしくなっていっていく。彼の書斎から怪しい手紙を見つけたシェリルは、旦那さまが自分を利用していることを知ってしまって……。 記憶も声もなくした少女と、彼女を幸せにするために嘘で包み込もうとする魔法使いのお話。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

【完結】「まずい」と騒ぐだけの毒見役は不要だと追い出されましたが、隣国王子の食卓を守ったら手放してもらえなくなりました

にたまご
恋愛
「穢れた血の孤児が王族の食に触れるな」 七年間、王宮の毒見役として「まずい」と言い続けた少女は、ある日追い出された。 誰も知らなかった。彼女が「まずい」と言うたびに足していた調味料が、食事に混ぜられた毒を中和していたことを。 辿り着いた国境の村の宿屋で、フィーアは初めて自分の料理を作った。 毎日通い詰める無口な旅の商人は、体調が悪そうなのに、フィーアの料理だけは「美味い」と言ってくれて—— 彼の銀杯のワインを一口もらった時、フィーアの舌が反応した。 「……にがい」 ※短編完結/追放/ざまぁ/溺愛

王子に求婚されましたが、貴方の番は私ではありません ~なりすまし少女の逃亡と葛藤~

浅海 景
恋愛
別の世界の記憶を持つヴィオラは村の外れに一人で暮らしていた。ある日、森に見目麗しい男性がやってきてヴィオラが自分の番だと告げる。竜の国の王太子であるカイルから熱を孕んだ瞳と甘い言葉を囁かれるが、ヴィオラには彼を簡単に受け入れられない理由があった。 ヴィオラの身体の本来の持ち主はヴィオラではないのだ。 傷ついた少女、ヴィーに手を差し伸べたはずが、何故かその身体に入り込んでしまったヴィオラは少女を護り幸せにするために生きてきた。だが王子から番だと告げられたことで、思いもよらないトラブルに巻き込まれ、逃亡生活を余儀なくされる。 ヴィーとヴィオラが幸せになるための物語です。

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。