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実戦!!  第三十八話

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「リリー、呪いの事、皆知っていることだし、今日から他の団員たちと討伐に出てもらうよ。」

午後の演習は実戦を兼ねた魔物討伐だ。今まではコッソリ行っていたが、今日からはみんなと一緒にできるらしい。

「はい!お願いします!!」


結界付近の森まで、荷台を変わるがわるひきながら16人ほどの編成で歩く。今日は教会から魔導士であるシルビアも同行しており、ヴォルフ、シルビア、エルダー、新人13人と言う編成になる。

「リリー、だいぶ逞しくなったね。」

「シルビア様が助けてくれるおかげです!それに、いつもシルビア様と街に出かけることを楽しみに訓練を頑張ってるんですよ!」

リリーの正直な物言いにシルビアは顔を赤く染める。
自分はストレート(重め)に愛情を伝えるくせにいざ、自分に向けられる事には慣れていないようで、リリーがシルビアに好意を伝えるとそれはもう赤くなって照れてしまうのだ。

照れてしまうとしばらく目を合わせてくれないが、耳にはリリーがプレゼントした涙型の魔石で作ったピアスが揺れている。細いチェーンの先に石がつけられ、歩くたびにゆらゆらと揺れるそれはとても綺麗だった。


「リリーがそばにいてくれると本当に心が軽いよ」

目は合わせてもらえないが、しっかりと好意は返してくる。

「ふふ、ここに心臓ありますからね」

黒い手袋をした手を軽く振ると、そうだったねと優しい笑顔を返される。

結界付近の門の近くに魔物が出たとの事で、結界を目指して歩く。到着するまで特に魔物も現れずスムーズに辿り着くことができた。
門の周りを確認する事になり、ヴォルフと数名の新人が見回りを、残りで野営の準備をする。


「シルビア様!!リリー様!急いでこちらへ!」

見回りに出たはずの数名の騎士が慌てて野営場に戻ってきた。顔を見ると泥や少しの擦り傷で汚れていた。
リリーは手袋を取り、シルビアと共に走り出す。
エルダーはその場に結界を張り始める。

慌てて呼びにきた騎士についていくと、そこには細長いモヤが…周りの木の背よりも長く見える。

「ひっ!!へび?!」

「大蛇…なのかな?」

「何名か巻き込まれているようで、ヴォルフ隊長が輪切りにしているのですが、すぐにくっついてしまうのです」

良く見ると大剣を振り回すヴォルフが見えるが、切ったそばからくっついてしまっている。
更に目を凝らしてみると一箇所だけ、妙に黒いモヤが強い場所がある。

「シルビア様、あの場所を狙います!!動きを止められますか?!」

指だけ挿して、顔も合わせず作戦を伝えるが、シルビアはピッタリその場所を狙って氷の魔法を放つ。尻尾なのか、頭なのか先っちょの方が暴れて近づくのを拒むが、動きの鈍くなったそれに拳を当てるとギリギリ回避できた。
さらに、氷の壁で援護を受け、無事モヤの強い場所に拳が届くところまでたどり着く。

走ってきた勢いを利用して一度ストレートを叩き込むが、弾力があり弾かれてしまう。
直径でリリーの身長ほどありそうなその魔物は氷切っておらず、リリーのパンチでは砕ききれなかった。しかし、腹部あたりを殴られた事で苦しがり暴れた。

その拍子に体の中に取り込まれていたのか3~4人の人間が吐き出される。

「リリーちゃん!!!そのまま、上に飛ばせるか?!」

いつの間にか木の上に登っていたヴォルフの言葉に力強くうなづく。

「シルビア様!手伝ってください!」


シルビアがうまく頭の方に回り、氷の柱で頭部を勢いよく持ち上げる、その速度も利用してもう一度くらいモヤの強い場所を下から強烈に突き上げる。

「リリーちゃん!アッパーもいけるの?!やるー!」

ちょうどヴォルフのある枝の下あたりまで飛ばされた巨体を今度は飛び降りた勢いで大剣が両断する。
核を切られた魔物は、断末魔の叫び声をあげて蒸発していった。
後には真っ二つに割れた魔石が残された。

「うんうん。実戦もいい感じになってきたね」

無事着地したヴォルフが、頭をポンポンとして褒めてくれる。その手を強烈に払いのけシルビアがすかさず撫で直し、満足そうに微笑んでいた。

「シルも、助かったよありがとう」

ヴォルフは可笑しそうに笑いながら、シルビアの頭もポンポンと撫でる。


「ぐぅっ、!だれか、たすけ…」

その時先程モヤから吐き出された人が意識を取り戻したのか戯言の様に言葉を吐き出した。

慌ててヴォルフがそばに駆け寄ると、その人物は思いもよらぬ人だった。

「お前!!ギルバート!?」
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