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7 あの日のこと
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「……なあ、なんであの時俺のこと無視したの?」
「……」
あの時とは紛れもなく高校の卒業式の日のことだ。
篤が他の女子とキスしているところを目撃した、最悪な思い出のあの日。
「キス、見たんだよな?」
「……」
なんと返せば良いのかわからなくて、私は押し黙る。
二人きりの車内に走る沈黙が、とてつもなく気まずい空気を作り上げた。
「あの後ちゃんと会って説明したかったんだ。なのにお前、俺の連絡先ブロックしただろ……」
「何を説明するの? 内緒にしてたけど実は彼女がいました、とか?」
「違う、あいつは彼女じゃない!」
「じゃあもっと最悪じゃん。彼女でもないのにあんなキスして」
なんだか自分がひどく惨めに感じてしまった。
ぐっ……と腕に力をこめて篤の胸板を強く押す。
しかし相変わらず反抗するかのようにピッタリと押し付けられる体。
「ちゃんと俺の話を聞けよ!」
篤の声が大きくなった。
二人だけの狭い車内の中に、響き渡る。
思わずビクッと震えた私の様子を目にした篤は、慌てたように体を離してこちらを覗き込む。
「ごめん、怖がらせるつもりはなかった。ただ澪が全然俺の話聞かないまま勝手に勘違いしてるから……」
そして彼は居住まいを正すと、膝の上に両拳を乗せるようにして俯いた。
「あの時のキスは、事故なんだ」
それからぽつりぽつりと絞り出すように語られたあの日の真実。
「俺あの日、澪に告白しようと思ってた。お前が引っ越す前にちゃんと気持ち伝えようって……。でもあいつに呼び出されてさ」
「あいつって……」
「成原梨乃。同じクラスの。覚えてない?」
篤がキスをしていたという事実に動転した私は、相手の顔をよく見ていなかったことに今気が付いた。
言われて思い返してみれば、成原梨乃という名前は聞き覚えがある。
恐らくクラスの中でも派手なグループに属していた女子だろう。
「で、好きだから付き合ってほしいって言われた。でも断ったんだよね俺」
「そう……なんだ」
「何? 意外って顔してるけど」
「確かすごくかわいい子だったよなって思って……」
当時彼女がいないのならば、告白を受け入れても何も問題はない。
むしろ爽やかで整った顔立ちの篤と彼女ならば、並んでいてもさぞ似合いの二人であっただろう。
篤は私の反応を見ると、僅かに眉を顰めた。
「俺好きなやつ以外とは、付き合わない主義だから」
「へえ……そっか」
彼の言葉に対して的確な答えが何なのか、わからなくなってしまった私は、無難な言葉で相槌を打つ。
彼はまたもや私のそんな反応に不満げな様子を見せるが、気持ちを切り替えたのか再びこう切り出す。
「だから、断って帰ろうとした。そしたら急にシャツを掴まれて……」
つまり彼の言うことをまとめると、こういうことらしい。
成原梨乃に告白されたが、篤は断った。
すると彼女が制服のシャツの胸元を強く掴み、背伸びをしてキスをしてきたと。
突然のことで頭が真っ白になり、咄嗟の対応ができなかったらしい。
「……」
あの時とは紛れもなく高校の卒業式の日のことだ。
篤が他の女子とキスしているところを目撃した、最悪な思い出のあの日。
「キス、見たんだよな?」
「……」
なんと返せば良いのかわからなくて、私は押し黙る。
二人きりの車内に走る沈黙が、とてつもなく気まずい空気を作り上げた。
「あの後ちゃんと会って説明したかったんだ。なのにお前、俺の連絡先ブロックしただろ……」
「何を説明するの? 内緒にしてたけど実は彼女がいました、とか?」
「違う、あいつは彼女じゃない!」
「じゃあもっと最悪じゃん。彼女でもないのにあんなキスして」
なんだか自分がひどく惨めに感じてしまった。
ぐっ……と腕に力をこめて篤の胸板を強く押す。
しかし相変わらず反抗するかのようにピッタリと押し付けられる体。
「ちゃんと俺の話を聞けよ!」
篤の声が大きくなった。
二人だけの狭い車内の中に、響き渡る。
思わずビクッと震えた私の様子を目にした篤は、慌てたように体を離してこちらを覗き込む。
「ごめん、怖がらせるつもりはなかった。ただ澪が全然俺の話聞かないまま勝手に勘違いしてるから……」
そして彼は居住まいを正すと、膝の上に両拳を乗せるようにして俯いた。
「あの時のキスは、事故なんだ」
それからぽつりぽつりと絞り出すように語られたあの日の真実。
「俺あの日、澪に告白しようと思ってた。お前が引っ越す前にちゃんと気持ち伝えようって……。でもあいつに呼び出されてさ」
「あいつって……」
「成原梨乃。同じクラスの。覚えてない?」
篤がキスをしていたという事実に動転した私は、相手の顔をよく見ていなかったことに今気が付いた。
言われて思い返してみれば、成原梨乃という名前は聞き覚えがある。
恐らくクラスの中でも派手なグループに属していた女子だろう。
「で、好きだから付き合ってほしいって言われた。でも断ったんだよね俺」
「そう……なんだ」
「何? 意外って顔してるけど」
「確かすごくかわいい子だったよなって思って……」
当時彼女がいないのならば、告白を受け入れても何も問題はない。
むしろ爽やかで整った顔立ちの篤と彼女ならば、並んでいてもさぞ似合いの二人であっただろう。
篤は私の反応を見ると、僅かに眉を顰めた。
「俺好きなやつ以外とは、付き合わない主義だから」
「へえ……そっか」
彼の言葉に対して的確な答えが何なのか、わからなくなってしまった私は、無難な言葉で相槌を打つ。
彼はまたもや私のそんな反応に不満げな様子を見せるが、気持ちを切り替えたのか再びこう切り出す。
「だから、断って帰ろうとした。そしたら急にシャツを掴まれて……」
つまり彼の言うことをまとめると、こういうことらしい。
成原梨乃に告白されたが、篤は断った。
すると彼女が制服のシャツの胸元を強く掴み、背伸びをしてキスをしてきたと。
突然のことで頭が真っ白になり、咄嗟の対応ができなかったらしい。
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