その初恋、やり直してもいいですか?

桜百合

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6 突然に

「……別に。信用ないとか、そういうわけじゃない」

「じゃあ家まで送りたい」

「家まで送ってどうすんの? 何がしたいの?」

「それはっ……」

「今回はこうやって車乗ったけどもう次はないし、彼氏でもないんだからああやって病院の前で待つようなこともやめて」

 突然現れて、私の生活をかき乱す篤。
 四年の月日のおかげであの日の失恋の痛みは薄れているものの、これまでと同じように友人として接していくのは難しい気がしていた。
 
 それは長年積み上げてきた恋心の重さゆえなのかもしれない。
 地元に帰った時に偶然顔を合わせるくらいの関係がちょうどいい。

「見られて困るような関係のやつがいるのかよ」

「え……」

「彼氏、いるの……? まさか結婚とかしてないよな?」

「してるわけないじゃん!」

「彼氏は?」

 私の言葉は、彼が欲しい答えではなかったのだろう。
 篤は運転席から助手席の方に身を乗り出すと、私の顔を覗き込むようにして再度尋ねてきた。

「……いない」

 その剣幕に驚き、つい本当のことを話してしまう。

 実を言えば、少し前まで大学時代から一年以上付き合っていた彼氏がいたのだ。
 だが互いに環境が変わり次第に会う回数も減っていき、半年ほど前に別れたばかりなのである。
 それなりに平和な付き合いであったことは確かだが、元彼のことを愛していたのかと聞かれると答えに困ってしまう。

 ──でも別にそこまでは篤に話す必要はないよね。

 そう思った私は、彼氏はいないという事実だけを告げたのだ。

「ほんと? いい感じのやつも?」

 私に彼氏がいないとわかると、明らかにほっとしたような表情を浮かべた篤。
 だからなんだというのか。
 もしかしたら、今篤には彼女がいないのかもしれない。
 それでちょうどいいタイミングで目の前に現れた腐れ縁の私に、声をかけてきたのだろう。

 だが私は篤と今になって付き合いたいという気持ちはなかった。
 すでに私たちの関係はあの頃と変わってしまった。
 長年の恋心は、あの日を境に封印したのだ。
 今さらあの日のことを忘れて何事もなかったかのように接することなど……。

「いないけど、何?」

「いや、久しぶりに会ったら澪めっちゃ綺麗になってるしさ。彼氏でもいるのかなって」

「いてもいなくても、篤には関係ないでしょ」

「関係あるよ」

「……っ……!?」

 ぐっと身を乗り出した篤に、ふいに抱き締められる。
 高校の頃に記憶していたものとは違う香りに包まれて、くらくらしそうだ。
 ふわりと抱き締められたかと思いきや、その腕にぎゅうっと力が込められる。

「ちょ、離して……だめだよこんなところで」

「じゃあ場所移動すればいい?」

「そういう問題じゃないっ……いいから離れて!」

 必死にもがいて抵抗するが、男である篤の力には敵わない。
 逃れようとすればするほど、彼の腕に込められる力もどんどん強くなっていった。
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