【R-18】世継ぎのできない王太子妃は、離縁を希望します

桜百合

文字の大きさ
33 / 40
本編

続編6

しおりを挟む
「ふぃ……フィリップ様……? なぜこちらに?」

 私はフィリップ様に問うが、彼は問いかけに応えようとはしない。

「エスメラルダ……君はまたその男と……。なぜなんだっ……君はそいつと会うために実家へ戻ったのか?」

 フィリップ様の体から青白い炎が滲み出すのはこれが二度目である。
 一度目は、例のルシファー様が私に思いを告げようとした時だ。
 そして今回もルシファー様絡みである。

「何をおっしゃっているのですか、ルシファー様はご結婚されたばかり。奥方様も後程こちらへいらっしゃるのですよ?」

「しかしっ……夫である私のことは追い返しておきながら、なぜそいつとは楽しそうに話すんだ……君の夫は私だ!」

 私の中でむかむかとした気持ちがせり上がってきた。
 自分は隣国の王女と浮気しておきながら、一体どの口が言っているのだろうか。
 実際私とルシファー様は何のやましいこともないというのに。
 大体、自分の実家で堂々と浮気する王太子妃がどこにいるというのか。

「ご自分のことを棚に上げて、私のことばかり責めるのはおやめになったらどうですか?」

「私は君に咎められるようなやましいことは何もしていない!」

「はあ!? お膝の上に王女殿下をお乗せして過ごすなど、やましいこと以外の何者でもありませんわ!」

「だから、この前から君は一体何を言っているんだ!?」

 そう仰るフィリップ様のお顔は真剣そのもので、嘘偽りがあるようには見えない。

「隣国の王女をお膝にお乗せしたとおっしゃっていたではありませんか……それも半刻も。王女の香りを身に纏ったフィリップ様など、嫌なのです……」

 思い出すだけで再びボロボロと涙が溢れる私は、かなりの情緒不安定だ。
 フィリップ様が他の人のものになることが何より辛い。
 もはや私の方が、フィリップ様への気持ちは重いのかもしれない。
 勝手に王城を飛び出したのは自分だというのに、悲しくてたまらなかった。

「あ、あの、エスメラルダ……」

「何ですの!?」

 ジロリとフィリップ様を睨み付けると、フィリップ様は焦った様に身を固くする。

「そ、その……」

「はっきり仰ってくださいませ。離縁でも何でも、受け入れますわ」

「り、離縁だって!?」

 あまりに驚いたためか、いつの間にかフィリップ様の体から滲み出る炎は消え去っている。

「エスメラルダ、今度は私の何が嫌になったんだ……外出を禁止にしていたことなら謝るよ、さすがに全て自由にとは行かないが、最大限に譲歩するから」

「ですから! 王女殿下と浮気なさるようなフィリップ様とは離縁致します!」

 フィリップ様は目を見開いてキョトンとした表情を浮かべた後、こう尋ねた。

「……僕が、浮気? 王女殿下って、誰のことを言ってるんだ……?」

「この期に及んでまだ誤魔化すおつもりですのね。先程お膝に乗せたとおっしゃられたお方ですわ」

 するとフィリップ様は恐る恐るこう告げたのだ。

「あの、エスメラルダ……王女はまだ七歳だ」


 フィリップ様が話したことの意味がよくわからず、私は怪訝な表情を浮かべる。

「七歳ですって……? そんなはずはありませんわ、隣国の王女殿下といえば大層な美姫で有名ですもの」

「それは一番上の王女だろう。国王と亡くなった寵妃の間にもう一人王女がいるのを知らなかったのかい? まあ確かに王妃の手前、あまり表には出てきていなかったからね」

「ま、まさか……」

「ずっと城の中に篭りがちな王女を国王が不憫に思ったらしく、気晴らしになればと今回共にユーカリ国を訪れることになったらしい」

 完全に私の勘違いではないか。
 フィリップ様のお話もよく聞かぬうちに、勝手に浮気だと思い込んでしまった。
 それどころか一人で勝手に怒り、一国の王太子を王城へと送り飛ばしてしまったのだ。

「本を読んで欲しいとせがまれたんだ。君のこともあったし早く帰りたかったから断ったんだけれど、どうしてもと聞かなくてね……。隣国の国王の手前、結局半刻ほど膝の上に乗せて本を読んでやったというわけだ」

「で、ですが七歳の王女をお膝に乗せるというのは……」

「以前私が隣国を訪問した際にも、遊んでやったことがあってね。それ以来親戚の兄のように慕ってくれているらしい。寂しさもあって、年齢の割に幼いところも多いんだ。次からはよく言い聞かせるから」

「……わ、私……てっきり新しいフィリップ様のご側室になられるお方なのではと……」

 するとフィリップ様は私の顎に手をやり、クイと持ち上げる。

「そんなわけがないだろう? 私は生涯側室は持たないと、あの時約束したじゃないか。エスメラルダは私のことが信じられない? 次に隣国を訪問する時は、一緒に行こう」

 真っ直ぐこちらを見つめるフィリップ様の瞳に痛いところを突かれたようで、私は胸が苦しくなる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...