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本編
続編6
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「ふぃ……フィリップ様……? なぜこちらに?」
私はフィリップ様に問うが、彼は問いかけに応えようとはしない。
「エスメラルダ……君はまたその男と……。なぜなんだっ……君はそいつと会うために実家へ戻ったのか?」
フィリップ様の体から青白い炎が滲み出すのはこれが二度目である。
一度目は、例のルシファー様が私に思いを告げようとした時だ。
そして今回もルシファー様絡みである。
「何をおっしゃっているのですか、ルシファー様はご結婚されたばかり。奥方様も後程こちらへいらっしゃるのですよ?」
「しかしっ……夫である私のことは追い返しておきながら、なぜそいつとは楽しそうに話すんだ……君の夫は私だ!」
私の中でむかむかとした気持ちがせり上がってきた。
自分は隣国の王女と浮気しておきながら、一体どの口が言っているのだろうか。
実際私とルシファー様は何のやましいこともないというのに。
大体、自分の実家で堂々と浮気する王太子妃がどこにいるというのか。
「ご自分のことを棚に上げて、私のことばかり責めるのはおやめになったらどうですか?」
「私は君に咎められるようなやましいことは何もしていない!」
「はあ!? お膝の上に王女殿下をお乗せして過ごすなど、やましいこと以外の何者でもありませんわ!」
「だから、この前から君は一体何を言っているんだ!?」
そう仰るフィリップ様のお顔は真剣そのもので、嘘偽りがあるようには見えない。
「隣国の王女をお膝にお乗せしたとおっしゃっていたではありませんか……それも半刻も。王女の香りを身に纏ったフィリップ様など、嫌なのです……」
思い出すだけで再びボロボロと涙が溢れる私は、かなりの情緒不安定だ。
フィリップ様が他の人のものになることが何より辛い。
もはや私の方が、フィリップ様への気持ちは重いのかもしれない。
勝手に王城を飛び出したのは自分だというのに、悲しくてたまらなかった。
「あ、あの、エスメラルダ……」
「何ですの!?」
ジロリとフィリップ様を睨み付けると、フィリップ様は焦った様に身を固くする。
「そ、その……」
「はっきり仰ってくださいませ。離縁でも何でも、受け入れますわ」
「り、離縁だって!?」
あまりに驚いたためか、いつの間にかフィリップ様の体から滲み出る炎は消え去っている。
「エスメラルダ、今度は私の何が嫌になったんだ……外出を禁止にしていたことなら謝るよ、さすがに全て自由にとは行かないが、最大限に譲歩するから」
「ですから! 王女殿下と浮気なさるようなフィリップ様とは離縁致します!」
フィリップ様は目を見開いてキョトンとした表情を浮かべた後、こう尋ねた。
「……僕が、浮気? 王女殿下って、誰のことを言ってるんだ……?」
「この期に及んでまだ誤魔化すおつもりですのね。先程お膝に乗せたとおっしゃられたお方ですわ」
するとフィリップ様は恐る恐るこう告げたのだ。
「あの、エスメラルダ……王女はまだ七歳だ」
フィリップ様が話したことの意味がよくわからず、私は怪訝な表情を浮かべる。
「七歳ですって……? そんなはずはありませんわ、隣国の王女殿下といえば大層な美姫で有名ですもの」
「それは一番上の王女だろう。国王と亡くなった寵妃の間にもう一人王女がいるのを知らなかったのかい? まあ確かに王妃の手前、あまり表には出てきていなかったからね」
「ま、まさか……」
「ずっと城の中に篭りがちな王女を国王が不憫に思ったらしく、気晴らしになればと今回共にユーカリ国を訪れることになったらしい」
完全に私の勘違いではないか。
フィリップ様のお話もよく聞かぬうちに、勝手に浮気だと思い込んでしまった。
それどころか一人で勝手に怒り、一国の王太子を王城へと送り飛ばしてしまったのだ。
「本を読んで欲しいとせがまれたんだ。君のこともあったし早く帰りたかったから断ったんだけれど、どうしてもと聞かなくてね……。隣国の国王の手前、結局半刻ほど膝の上に乗せて本を読んでやったというわけだ」
「で、ですが七歳の王女をお膝に乗せるというのは……」
「以前私が隣国を訪問した際にも、遊んでやったことがあってね。それ以来親戚の兄のように慕ってくれているらしい。寂しさもあって、年齢の割に幼いところも多いんだ。次からはよく言い聞かせるから」
「……わ、私……てっきり新しいフィリップ様のご側室になられるお方なのではと……」
するとフィリップ様は私の顎に手をやり、クイと持ち上げる。
「そんなわけがないだろう? 私は生涯側室は持たないと、あの時約束したじゃないか。エスメラルダは私のことが信じられない? 次に隣国を訪問する時は、一緒に行こう」
真っ直ぐこちらを見つめるフィリップ様の瞳に痛いところを突かれたようで、私は胸が苦しくなる。
私はフィリップ様に問うが、彼は問いかけに応えようとはしない。
「エスメラルダ……君はまたその男と……。なぜなんだっ……君はそいつと会うために実家へ戻ったのか?」
フィリップ様の体から青白い炎が滲み出すのはこれが二度目である。
一度目は、例のルシファー様が私に思いを告げようとした時だ。
そして今回もルシファー様絡みである。
「何をおっしゃっているのですか、ルシファー様はご結婚されたばかり。奥方様も後程こちらへいらっしゃるのですよ?」
「しかしっ……夫である私のことは追い返しておきながら、なぜそいつとは楽しそうに話すんだ……君の夫は私だ!」
私の中でむかむかとした気持ちがせり上がってきた。
自分は隣国の王女と浮気しておきながら、一体どの口が言っているのだろうか。
実際私とルシファー様は何のやましいこともないというのに。
大体、自分の実家で堂々と浮気する王太子妃がどこにいるというのか。
「ご自分のことを棚に上げて、私のことばかり責めるのはおやめになったらどうですか?」
「私は君に咎められるようなやましいことは何もしていない!」
「はあ!? お膝の上に王女殿下をお乗せして過ごすなど、やましいこと以外の何者でもありませんわ!」
「だから、この前から君は一体何を言っているんだ!?」
そう仰るフィリップ様のお顔は真剣そのもので、嘘偽りがあるようには見えない。
「隣国の王女をお膝にお乗せしたとおっしゃっていたではありませんか……それも半刻も。王女の香りを身に纏ったフィリップ様など、嫌なのです……」
思い出すだけで再びボロボロと涙が溢れる私は、かなりの情緒不安定だ。
フィリップ様が他の人のものになることが何より辛い。
もはや私の方が、フィリップ様への気持ちは重いのかもしれない。
勝手に王城を飛び出したのは自分だというのに、悲しくてたまらなかった。
「あ、あの、エスメラルダ……」
「何ですの!?」
ジロリとフィリップ様を睨み付けると、フィリップ様は焦った様に身を固くする。
「そ、その……」
「はっきり仰ってくださいませ。離縁でも何でも、受け入れますわ」
「り、離縁だって!?」
あまりに驚いたためか、いつの間にかフィリップ様の体から滲み出る炎は消え去っている。
「エスメラルダ、今度は私の何が嫌になったんだ……外出を禁止にしていたことなら謝るよ、さすがに全て自由にとは行かないが、最大限に譲歩するから」
「ですから! 王女殿下と浮気なさるようなフィリップ様とは離縁致します!」
フィリップ様は目を見開いてキョトンとした表情を浮かべた後、こう尋ねた。
「……僕が、浮気? 王女殿下って、誰のことを言ってるんだ……?」
「この期に及んでまだ誤魔化すおつもりですのね。先程お膝に乗せたとおっしゃられたお方ですわ」
するとフィリップ様は恐る恐るこう告げたのだ。
「あの、エスメラルダ……王女はまだ七歳だ」
フィリップ様が話したことの意味がよくわからず、私は怪訝な表情を浮かべる。
「七歳ですって……? そんなはずはありませんわ、隣国の王女殿下といえば大層な美姫で有名ですもの」
「それは一番上の王女だろう。国王と亡くなった寵妃の間にもう一人王女がいるのを知らなかったのかい? まあ確かに王妃の手前、あまり表には出てきていなかったからね」
「ま、まさか……」
「ずっと城の中に篭りがちな王女を国王が不憫に思ったらしく、気晴らしになればと今回共にユーカリ国を訪れることになったらしい」
完全に私の勘違いではないか。
フィリップ様のお話もよく聞かぬうちに、勝手に浮気だと思い込んでしまった。
それどころか一人で勝手に怒り、一国の王太子を王城へと送り飛ばしてしまったのだ。
「本を読んで欲しいとせがまれたんだ。君のこともあったし早く帰りたかったから断ったんだけれど、どうしてもと聞かなくてね……。隣国の国王の手前、結局半刻ほど膝の上に乗せて本を読んでやったというわけだ」
「で、ですが七歳の王女をお膝に乗せるというのは……」
「以前私が隣国を訪問した際にも、遊んでやったことがあってね。それ以来親戚の兄のように慕ってくれているらしい。寂しさもあって、年齢の割に幼いところも多いんだ。次からはよく言い聞かせるから」
「……わ、私……てっきり新しいフィリップ様のご側室になられるお方なのではと……」
するとフィリップ様は私の顎に手をやり、クイと持ち上げる。
「そんなわけがないだろう? 私は生涯側室は持たないと、あの時約束したじゃないか。エスメラルダは私のことが信じられない? 次に隣国を訪問する時は、一緒に行こう」
真っ直ぐこちらを見つめるフィリップ様の瞳に痛いところを突かれたようで、私は胸が苦しくなる。
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