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レティが呪いに侵されたと判明した時、真っ先にレティに口付けると言い出したのは他でもない婚約者のノアであった。
もちろん周囲から見てもその判断は妥当であったし、当たり前のことだろう。
だが問題は、ノアの口付けではレティの呪いが解けなかったということだろうか。
もっともレティには、ノアに呪いを解くことはできないということがわかっていた。
レティが愛し愛される男性からの口付けでないと、呪いは解けない。
レティが愛しているのはノアではなく、ステアだった。
レティに一方的な恋心を抱くノアの口付けでは、彼女の呪いが解ける訳がないのだ。
だかステアも同じように、レティのことを好いてくれているとは限らない。
彼にとってレティはいつまでも妹のような存在であり、女性として見てくれているとは思えなかったからだ。
やがてレティは、呪いが広がって命を落としても構わないと思うようになっていく。
身分違いもあって、ステアへの想いが実ることはないだろう。
彼と想いが通じ合わない限り、この呪いが解けることはなく、命の灯火はもはや消えかかっている。
そんな時、ステアがこう切り出したのだ。
「あなた様には、どなたか思う男性がおられるのでしょうか? もしいらっしゃるのならば、私が命を賭してその方をここへ連れて参ります」
ステアの目は真剣で、心からレティを心配してくれている様子だった。
レティは長年の片思いを白日の下に晒すことを決めた。
「私はあなたが好きなの、ステア」
当初ステアは、信じられないと言った様子で言葉を失っていた。
だがやがて彼女の言葉に嘘偽りがないとわかると、覚悟を決めたのかこう告げたのだ。
「私もあなたが好きです。ずっとお慕いしておりました、レティ様」
「本当に……? 」
レティは夢の中のいるようだった。
ステアも自分と同じ気持ちでいてくれたのだ。
「私の、呪いを解いてくれる? 」
ステアを見上げるようにそうねだる彼女に、彼の顔は赤らんだ。
それはレティが初めて目にする、彼の男の一面であった。
ステアは戸惑いながらも頷き、レティにそっと口付けを落とす。
すると先ほど感じた時と同じように、レティの全身を血が駆け巡り、呪いが解かれた。
二人は正真正銘心から愛し合っていたのだ。
だがその結果呪いの代償として、レティはこのステアとの記憶を失った。
もちろん周囲から見てもその判断は妥当であったし、当たり前のことだろう。
だが問題は、ノアの口付けではレティの呪いが解けなかったということだろうか。
もっともレティには、ノアに呪いを解くことはできないということがわかっていた。
レティが愛し愛される男性からの口付けでないと、呪いは解けない。
レティが愛しているのはノアではなく、ステアだった。
レティに一方的な恋心を抱くノアの口付けでは、彼女の呪いが解ける訳がないのだ。
だかステアも同じように、レティのことを好いてくれているとは限らない。
彼にとってレティはいつまでも妹のような存在であり、女性として見てくれているとは思えなかったからだ。
やがてレティは、呪いが広がって命を落としても構わないと思うようになっていく。
身分違いもあって、ステアへの想いが実ることはないだろう。
彼と想いが通じ合わない限り、この呪いが解けることはなく、命の灯火はもはや消えかかっている。
そんな時、ステアがこう切り出したのだ。
「あなた様には、どなたか思う男性がおられるのでしょうか? もしいらっしゃるのならば、私が命を賭してその方をここへ連れて参ります」
ステアの目は真剣で、心からレティを心配してくれている様子だった。
レティは長年の片思いを白日の下に晒すことを決めた。
「私はあなたが好きなの、ステア」
当初ステアは、信じられないと言った様子で言葉を失っていた。
だがやがて彼女の言葉に嘘偽りがないとわかると、覚悟を決めたのかこう告げたのだ。
「私もあなたが好きです。ずっとお慕いしておりました、レティ様」
「本当に……? 」
レティは夢の中のいるようだった。
ステアも自分と同じ気持ちでいてくれたのだ。
「私の、呪いを解いてくれる? 」
ステアを見上げるようにそうねだる彼女に、彼の顔は赤らんだ。
それはレティが初めて目にする、彼の男の一面であった。
ステアは戸惑いながらも頷き、レティにそっと口付けを落とす。
すると先ほど感じた時と同じように、レティの全身を血が駆け巡り、呪いが解かれた。
二人は正真正銘心から愛し合っていたのだ。
だがその結果呪いの代償として、レティはこのステアとの記憶を失った。
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