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転生
インテリジェンサー
巨人の討伐を終えたサシュマは魔力の回復を待つ間、門の内部にある待機場で休憩させて貰っていた。
あまりにも早朝だった事、強力な魔法を行使した事で、体力の限界であったので少し仮眠が必要だった。
若い頃であればこの程度何の問題も無かったのだが、特に近頃は歳のせいなのか疲労感が酷い。
歳は取りたく無いものだ、サシュマはそう思った。
うとうとと意識の狭間から眠りに落ちる直前、突然サシュマの頭の中に声が響く。
サシュマ、サシュマよ。聞こえますか。
丘の上の教会へ向かいなさい。
サシュマ、サシュマよ。私はいつも貴方たちを見守っておりますよ。
バッと起き上がり周りを見渡すが、そこには誰も居なかった。
それに…あの神聖な気配、声。
無条件に涙が出て止まらない。
間違いない、おぉ…神の啓示を受けたのだ、今。
丘の上の教会。
普段は時間を知らせる鐘を鳴らす鐘塔のみ利用されている、街外れの教会だ。
昼と夕の1日2回、鐘つきが鳴らしているが朝は鳴らさない。
この時間、大体の場合無人なのだが…。
神が仰られるのだ。
何を措いても向かわねば。
サシュマが外へ出ると、そこへ偶然門兵隊長のカルが通りがかった。
彼はサシュマを見つけると、身体はもう大丈夫なのかと労った。
「あぁ、もう大丈夫だ。
魔力回復薬も飲んだしな。」
身体は重いが、それは気を遣って声を掛けてくれたカルにわざわざ伝える事でもあるまい。
「そうですか。
それにしても今回は本当に助けられました。
門番としては情けない限りですけど。
あれ?屋敷には帰らないんですか?」
情けなくは無いぞ、カル。
指示は的確だったし、勇敢だった。
経験の差でしかないさ。
カルは出て行く方向が逆な事が気になるのか、質問を続ける。
疲れた身体で都の外へ出るのが心配なのだろう。
「あの教会が気になってな。
様子を見てから帰ろうと思う。」
それを聞いたカルが真剣な顔を見せる。
なにやら神の御告げと関連する物事に思い当たる事があるのだろうか。
「…あの、今回実は…巨人が現れる前から、サシュマ様を呼び出していたんですよ。
その訳がですね、教会の辺りで光の柱が出て雲を貫いたんです。
ほら、今も雲が変に開いているでしょう?
それで嫌な予感がしたんで、サンドラに呼びに行ってもらったんです。」
ほう、それが無ければ、巨人の襲来に間に合わなかった可能性もあるな。
それも神の啓示か、それともカルの機転が功を奏したのか。
それがどちらかは分からないが、運が良かったな。
…彼になら言い残して行った方がいいかもしれない。
「あのな、カル。
私は今、神の啓示を受けてあの教会へ向かうのだ。
頭がおかしくなったと思うのかもしれないが、神に請われた以上行ってみようと思う。」
巨人、光の柱。
不可解な現象が続いた今、それを聞いたカルロスが無闇にサシュマの言を疑う事は無い。
「私も随行いたしましょうか。」
カルの提案にサシュマは少し考え、固辞した。
神は自分を呼び出した。
ならば他の人を連れて行くべきでは無いのかもしれないと考えた。
「…そうですか。
サシュマ様、気をつけて下さい。
あ、そうだ、これ、子供向けの教育本なんですけど、一応聖書なんですよ。
ほら、メインは教義を子供に伝えられるようになっていて、ちゃっかり教会のお墨付き。
邪魔じゃなければお持ち下さい。
危ない時は、これが守ってくれるかも。」
サシュマは快くそれを受け取り、それを持って教会への道を行く。
丘へ登る坂道の途中に不自然な焦げ跡を見つけ、辺りを注意深く窺うと、周囲の木に謎の肉片がこびりついているのを見つけた。
「不気味な…。」
そう呟き、カルから預かった聖書を握り直す。
更に教会へ向かい歩みを進めると、整然と描かれた魔法陣が残されており、推測するに恐らくあの巨人を召喚するのに使われたものだろう。
「うっ……!」
魔法陣の傍らには陥没した凹みがあり、そこには血が溜まっていた。
血の持ち主の正体は不明だが、この量を取られては生きているとは考え難い。
もう一度魔法陣を見ると、何か生物が弾けた様な跡にも気がつく。
…嫌な予感がする。
サシュマは悪魔の存在を疑い始めていた。
神はそれを討伐せよと、サシュマを遣わせたのでは無いかと。
それ程にこの辺りは凄惨な状態だった。
死の香りがした。
そして、何より。
神聖な教会の扉が内側から破られている。
長くこの都に住んでいるがこんな事は初めてだ。
もしかすると、この外れの教会は、知られていないのか忘れ去られてしまったのか、悪魔を封印する役割があったのかもしれないと考えた。
慎重に入り口に近づくと、男が一人立っていた。
神は…この男をどうにかせよと遣わせたと確信がある。
しかし、保護すべきなのか、滅ぼすべき悪魔なのかの判断がつかない。
その男は明らかに知的な眼差しをたたえ、邪悪な気配が無いのに困惑する。
しかし、悪魔とは人を騙す者らしい。
サシュマは警戒を解かず、しかし保護対象だった場合の事も考え、初めに声を掛ける事にした。
「何をしておるのかな。」
しかし彼は怪訝な顔をしたままだ。
彼の目線はサシュマではなく傍に抱える本へと向けられている。
カルは聖書だと言っていたので、それに興味を持つなら悪魔ではないのかもしれない。
もしくは、これを警戒しているのか。
試す意味を込めて本を差し出すと、意外にもすんなりと男は受け取った。
近くでよく見ると、彼は青年と少年の間ぐらいの年齢に見える。
彼はパラパラと本をめくり、サシュマへ向けて一つの図を差し出した。
「***。」
そうか、言語!
言葉が通じていなかったのだ。
もう何百年も世界中で共通語が使われていて、人族の殆ど全ては、神事などで古語を操る部族がいたとしても、日常会話は共通語を話すだろう。
なのでその可能性を排除してしまっていた。
サシュマは彼が開いているページに描かれている図を指差し、林檎と答えた。
そうすると、彼はたどたどしいながら、リンゴ、と発音したのだった。
このやり取りは何度も続けられ、それを繰り返した。
ある時彼は本を閉じ、自分の事を指差した。
「わた、し、は、ラルフ、ラルフィード、で、す。
わ、たし、は、スタルビニアラルフィード・サシュマシャルルペペペぺ・チャチュムラッチャヌボンボです。
よろしく、しなさい。」
驚く事にこの短期間である程度言語を理解したらしい。
しかしながらサシュマが更に驚いたのは、彼が騙るその名前だ。
「神を…名乗ると言うのか…。」
サシュマの問いに、男はニヤニヤとしているだけで、何も返答は無かった。
その態度にサシュマは確信した。
神を騙る者にへりくだった結果、それは悪魔が化けた姿であった。
そんな逸話は世界中に転がっている。
「貴様、神を愚弄するのかと聞いておるのだ。」
念の為、人間に見える彼を最後に信じる為、最後に問う。
それでも彼は態度を改めなかった。
それどころか神と名乗る自分を敬おうとしないサシュマを愚かな者を見る様な目で見始めた。
確定だ。
人では無く、コレは悪魔。
「…この…悪魔め!
貴様!先程現れた巨人を召喚した者だな!
外の惨状も貴様の仕業だろう…。
私が神に遣わされてここへやってきた理由を測りかねていたが…今、理解した!
貴様を滅ぼすべしと、神が私を遣わしたのだとな!」
サシュマが魔力を集め始めると、悪魔は逃走を始める。
逃すか!
教会の出口ギリギリの所でサシュマの雷の様な魔法が炸裂し、悪魔は教会の外へと弾き飛ばされていった。
「はぁ、はぁ、はぁ。
日に何度も撃つものではないな。」
流石に疲労の限界で、サシュマは立ち上がる事が出来ず、膝をつく。
すぐに追いかけ、トドメを刺したか確認したいところであるがその体力は残っていなかった。
あまりにも早朝だった事、強力な魔法を行使した事で、体力の限界であったので少し仮眠が必要だった。
若い頃であればこの程度何の問題も無かったのだが、特に近頃は歳のせいなのか疲労感が酷い。
歳は取りたく無いものだ、サシュマはそう思った。
うとうとと意識の狭間から眠りに落ちる直前、突然サシュマの頭の中に声が響く。
サシュマ、サシュマよ。聞こえますか。
丘の上の教会へ向かいなさい。
サシュマ、サシュマよ。私はいつも貴方たちを見守っておりますよ。
バッと起き上がり周りを見渡すが、そこには誰も居なかった。
それに…あの神聖な気配、声。
無条件に涙が出て止まらない。
間違いない、おぉ…神の啓示を受けたのだ、今。
丘の上の教会。
普段は時間を知らせる鐘を鳴らす鐘塔のみ利用されている、街外れの教会だ。
昼と夕の1日2回、鐘つきが鳴らしているが朝は鳴らさない。
この時間、大体の場合無人なのだが…。
神が仰られるのだ。
何を措いても向かわねば。
サシュマが外へ出ると、そこへ偶然門兵隊長のカルが通りがかった。
彼はサシュマを見つけると、身体はもう大丈夫なのかと労った。
「あぁ、もう大丈夫だ。
魔力回復薬も飲んだしな。」
身体は重いが、それは気を遣って声を掛けてくれたカルにわざわざ伝える事でもあるまい。
「そうですか。
それにしても今回は本当に助けられました。
門番としては情けない限りですけど。
あれ?屋敷には帰らないんですか?」
情けなくは無いぞ、カル。
指示は的確だったし、勇敢だった。
経験の差でしかないさ。
カルは出て行く方向が逆な事が気になるのか、質問を続ける。
疲れた身体で都の外へ出るのが心配なのだろう。
「あの教会が気になってな。
様子を見てから帰ろうと思う。」
それを聞いたカルが真剣な顔を見せる。
なにやら神の御告げと関連する物事に思い当たる事があるのだろうか。
「…あの、今回実は…巨人が現れる前から、サシュマ様を呼び出していたんですよ。
その訳がですね、教会の辺りで光の柱が出て雲を貫いたんです。
ほら、今も雲が変に開いているでしょう?
それで嫌な予感がしたんで、サンドラに呼びに行ってもらったんです。」
ほう、それが無ければ、巨人の襲来に間に合わなかった可能性もあるな。
それも神の啓示か、それともカルの機転が功を奏したのか。
それがどちらかは分からないが、運が良かったな。
…彼になら言い残して行った方がいいかもしれない。
「あのな、カル。
私は今、神の啓示を受けてあの教会へ向かうのだ。
頭がおかしくなったと思うのかもしれないが、神に請われた以上行ってみようと思う。」
巨人、光の柱。
不可解な現象が続いた今、それを聞いたカルロスが無闇にサシュマの言を疑う事は無い。
「私も随行いたしましょうか。」
カルの提案にサシュマは少し考え、固辞した。
神は自分を呼び出した。
ならば他の人を連れて行くべきでは無いのかもしれないと考えた。
「…そうですか。
サシュマ様、気をつけて下さい。
あ、そうだ、これ、子供向けの教育本なんですけど、一応聖書なんですよ。
ほら、メインは教義を子供に伝えられるようになっていて、ちゃっかり教会のお墨付き。
邪魔じゃなければお持ち下さい。
危ない時は、これが守ってくれるかも。」
サシュマは快くそれを受け取り、それを持って教会への道を行く。
丘へ登る坂道の途中に不自然な焦げ跡を見つけ、辺りを注意深く窺うと、周囲の木に謎の肉片がこびりついているのを見つけた。
「不気味な…。」
そう呟き、カルから預かった聖書を握り直す。
更に教会へ向かい歩みを進めると、整然と描かれた魔法陣が残されており、推測するに恐らくあの巨人を召喚するのに使われたものだろう。
「うっ……!」
魔法陣の傍らには陥没した凹みがあり、そこには血が溜まっていた。
血の持ち主の正体は不明だが、この量を取られては生きているとは考え難い。
もう一度魔法陣を見ると、何か生物が弾けた様な跡にも気がつく。
…嫌な予感がする。
サシュマは悪魔の存在を疑い始めていた。
神はそれを討伐せよと、サシュマを遣わせたのでは無いかと。
それ程にこの辺りは凄惨な状態だった。
死の香りがした。
そして、何より。
神聖な教会の扉が内側から破られている。
長くこの都に住んでいるがこんな事は初めてだ。
もしかすると、この外れの教会は、知られていないのか忘れ去られてしまったのか、悪魔を封印する役割があったのかもしれないと考えた。
慎重に入り口に近づくと、男が一人立っていた。
神は…この男をどうにかせよと遣わせたと確信がある。
しかし、保護すべきなのか、滅ぼすべき悪魔なのかの判断がつかない。
その男は明らかに知的な眼差しをたたえ、邪悪な気配が無いのに困惑する。
しかし、悪魔とは人を騙す者らしい。
サシュマは警戒を解かず、しかし保護対象だった場合の事も考え、初めに声を掛ける事にした。
「何をしておるのかな。」
しかし彼は怪訝な顔をしたままだ。
彼の目線はサシュマではなく傍に抱える本へと向けられている。
カルは聖書だと言っていたので、それに興味を持つなら悪魔ではないのかもしれない。
もしくは、これを警戒しているのか。
試す意味を込めて本を差し出すと、意外にもすんなりと男は受け取った。
近くでよく見ると、彼は青年と少年の間ぐらいの年齢に見える。
彼はパラパラと本をめくり、サシュマへ向けて一つの図を差し出した。
「***。」
そうか、言語!
言葉が通じていなかったのだ。
もう何百年も世界中で共通語が使われていて、人族の殆ど全ては、神事などで古語を操る部族がいたとしても、日常会話は共通語を話すだろう。
なのでその可能性を排除してしまっていた。
サシュマは彼が開いているページに描かれている図を指差し、林檎と答えた。
そうすると、彼はたどたどしいながら、リンゴ、と発音したのだった。
このやり取りは何度も続けられ、それを繰り返した。
ある時彼は本を閉じ、自分の事を指差した。
「わた、し、は、ラルフ、ラルフィード、で、す。
わ、たし、は、スタルビニアラルフィード・サシュマシャルルペペペぺ・チャチュムラッチャヌボンボです。
よろしく、しなさい。」
驚く事にこの短期間である程度言語を理解したらしい。
しかしながらサシュマが更に驚いたのは、彼が騙るその名前だ。
「神を…名乗ると言うのか…。」
サシュマの問いに、男はニヤニヤとしているだけで、何も返答は無かった。
その態度にサシュマは確信した。
神を騙る者にへりくだった結果、それは悪魔が化けた姿であった。
そんな逸話は世界中に転がっている。
「貴様、神を愚弄するのかと聞いておるのだ。」
念の為、人間に見える彼を最後に信じる為、最後に問う。
それでも彼は態度を改めなかった。
それどころか神と名乗る自分を敬おうとしないサシュマを愚かな者を見る様な目で見始めた。
確定だ。
人では無く、コレは悪魔。
「…この…悪魔め!
貴様!先程現れた巨人を召喚した者だな!
外の惨状も貴様の仕業だろう…。
私が神に遣わされてここへやってきた理由を測りかねていたが…今、理解した!
貴様を滅ぼすべしと、神が私を遣わしたのだとな!」
サシュマが魔力を集め始めると、悪魔は逃走を始める。
逃すか!
教会の出口ギリギリの所でサシュマの雷の様な魔法が炸裂し、悪魔は教会の外へと弾き飛ばされていった。
「はぁ、はぁ、はぁ。
日に何度も撃つものではないな。」
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