51 / 57
梨の王
迷子 ②
しおりを挟む
ともあれ酒は話の種になるし、無難な高級酒よりは謎のヴィンテージ酒の方がギルバート好みだと思うので、これがいい気がする。
シェリルの好みはわからないので、アプリード経由で親父さんに聞いてみたが、知っているけど教えねぇ、と言われてしまった。
「おめぇで必死に考えて選ぶのが土産ってもんだろ、だってさ。」
一理ある。
という訳で買い物だ。
最近部屋の家具を整えたので、この辺の店の立地がわかって来た。
事務所の下はキャバレーだと思っていたが、ギンギラギンのネオン輝く装飾と客層が悪いだけで、ただのバーらしい。
つまり、ここは別にそういう変な立地じゃないのだ。
冷静な時に散歩していたら普通の商店もあるし、一本奥まっているだけで表に出れば賑わっている普通の繁華街といったところだ。
そこからギルバートの屋敷の方に歩くと上り坂になっていて、上に行けば行くほど高級店が増えていくらしい。
下の方は老舗のレストランが多く並んでおり、上に見える木は太く大きい。
最近資材にされ尽くされかけている為に見かけることが少なくなったので、あんなに太い木は木を信仰しているファーデンですらあまりみない。
つまりあの辺りは手を入れられていないという事だ。
やはり貴族は成るというよりは、在るという感じで、目的のためには地位的に近づかなくてはならないが、取り繕って成れるものではないのだろう。
歴史を感じる街並みを歩くとよりそう思う。
さて、シェリルへの贈り物だが案が一つもない。
お菓子、つまり消え物が無難だという事だったが、明らかにシェフがいる家に何を持って行ったものか。
ピアニストという事でハンドクリームなんかも浮かんだが、女性に化粧品の類のものを贈るのは怖い。
合わなくて荒れたりしたら申し訳ないしね。
昼間はカフェとして開いているレストランに入り、飲み物を飲みながらウェイトレスの女性にそれとなく流行り物を聞いてみると、やはり土地柄か有名店らしいところをいくつか教えてもらえた。
女性に人気のお店という事で、大きく外しはしないだろうシンプルな箱入りを選んだ。
意外と迷わず買えたので、早目に帰れると思いきや、帰り道で親父さんに出会い呼び止められた。
「リッヒよぉ、上手い事買い物出来たかい?
…なんだぁ、可愛らしい箱じゃねぇか。
ん?
まだこっち来て日が浅いだろう?
足で探したのかい?」
「いえね、そこを登った所にあるレストランのウェイトレスのお姉さんに聞いたんですよ。
仰る通り土地勘もないのでね。」
「あぁ、なるほどなぁ。
…ふぅん、それを渡すのかい?
…あぁ、いや、ダメだって言ってる訳じゃねぇよ。
オイラには面白くなりそうだから是非そのまま渡して欲しいくらいだね。
アプの奴に報告させるさ。
いや、ギルバートが愚痴りに来るのが先かな?
まぁいい、楽しみにしとくよ。」
そう言って店の中に消えて行った親父さんだったが、これは待ち伏せされていたのだろうか。
…何故わざわざ。
まぁ、いい。
含みはあったが問題は無さそうだ。
アポイントメント用の手紙は、ピアードが送付してくれているはずだ。
そんなに遠くない日に渡せるだろう。
しかし、親父さんは何を楽しみにしてるのだ。
ピアードは知っているだろうか。
ピアードに聞くと、
「あー、親父はお節介なんだよ。
んで、どんなの買ってきたんだ?
…ふぅん。
面白くはねぇけど、面白い事にはなると思うわ。
でもまぁ、別に失礼じゃないし、それでいいと思うぜ。
はぁ、しかし親父はなぁ、どんなんになっても報告しねぇから安心してくれよ。」
人の土産の後ろに何を見ているのだろうか、腑に落ちない。
シェリルの好みはわからないので、アプリード経由で親父さんに聞いてみたが、知っているけど教えねぇ、と言われてしまった。
「おめぇで必死に考えて選ぶのが土産ってもんだろ、だってさ。」
一理ある。
という訳で買い物だ。
最近部屋の家具を整えたので、この辺の店の立地がわかって来た。
事務所の下はキャバレーだと思っていたが、ギンギラギンのネオン輝く装飾と客層が悪いだけで、ただのバーらしい。
つまり、ここは別にそういう変な立地じゃないのだ。
冷静な時に散歩していたら普通の商店もあるし、一本奥まっているだけで表に出れば賑わっている普通の繁華街といったところだ。
そこからギルバートの屋敷の方に歩くと上り坂になっていて、上に行けば行くほど高級店が増えていくらしい。
下の方は老舗のレストランが多く並んでおり、上に見える木は太く大きい。
最近資材にされ尽くされかけている為に見かけることが少なくなったので、あんなに太い木は木を信仰しているファーデンですらあまりみない。
つまりあの辺りは手を入れられていないという事だ。
やはり貴族は成るというよりは、在るという感じで、目的のためには地位的に近づかなくてはならないが、取り繕って成れるものではないのだろう。
歴史を感じる街並みを歩くとよりそう思う。
さて、シェリルへの贈り物だが案が一つもない。
お菓子、つまり消え物が無難だという事だったが、明らかにシェフがいる家に何を持って行ったものか。
ピアニストという事でハンドクリームなんかも浮かんだが、女性に化粧品の類のものを贈るのは怖い。
合わなくて荒れたりしたら申し訳ないしね。
昼間はカフェとして開いているレストランに入り、飲み物を飲みながらウェイトレスの女性にそれとなく流行り物を聞いてみると、やはり土地柄か有名店らしいところをいくつか教えてもらえた。
女性に人気のお店という事で、大きく外しはしないだろうシンプルな箱入りを選んだ。
意外と迷わず買えたので、早目に帰れると思いきや、帰り道で親父さんに出会い呼び止められた。
「リッヒよぉ、上手い事買い物出来たかい?
…なんだぁ、可愛らしい箱じゃねぇか。
ん?
まだこっち来て日が浅いだろう?
足で探したのかい?」
「いえね、そこを登った所にあるレストランのウェイトレスのお姉さんに聞いたんですよ。
仰る通り土地勘もないのでね。」
「あぁ、なるほどなぁ。
…ふぅん、それを渡すのかい?
…あぁ、いや、ダメだって言ってる訳じゃねぇよ。
オイラには面白くなりそうだから是非そのまま渡して欲しいくらいだね。
アプの奴に報告させるさ。
いや、ギルバートが愚痴りに来るのが先かな?
まぁいい、楽しみにしとくよ。」
そう言って店の中に消えて行った親父さんだったが、これは待ち伏せされていたのだろうか。
…何故わざわざ。
まぁ、いい。
含みはあったが問題は無さそうだ。
アポイントメント用の手紙は、ピアードが送付してくれているはずだ。
そんなに遠くない日に渡せるだろう。
しかし、親父さんは何を楽しみにしてるのだ。
ピアードは知っているだろうか。
ピアードに聞くと、
「あー、親父はお節介なんだよ。
んで、どんなの買ってきたんだ?
…ふぅん。
面白くはねぇけど、面白い事にはなると思うわ。
でもまぁ、別に失礼じゃないし、それでいいと思うぜ。
はぁ、しかし親父はなぁ、どんなんになっても報告しねぇから安心してくれよ。」
人の土産の後ろに何を見ているのだろうか、腑に落ちない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる