布川柊子は死んでいる

藻屑

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生者と死者の違いが活動するか否かである時代は遠い昔のことである。今となっては、死者のほうがより活発な程である。

布川柊子は、既に一度、死んでいる。
幼い頃に巻き込まれた、居眠り運転のトラックによって引き起こされた大規模な交通事故は、彼女とその両親の命を奪った。

が、彼女は相も変わらず動いている。もともと彼女の住む地域は死者に寛容で、学業面のいくつかの資格を揃えれば義務教育後の学習施設に入学することが許されている。

そして、布川柊子は条件を満たし今春、高校生となった。

「布川柊子です。よろしくお願いします。」

スラリとした手足に、多少なりとも整った容姿にクラスの半数は羨望の眼差しを送った。

これでいい、と布川は心の中で大きく頷いた。彼女には、自分が周りのなんの変哲もない高校生であるかのように思えた。

1年間よろしく。と、よく通る大きな声でハキハキと話す麻田という担任は何の躊躇いもなく、布川以外の生徒に春季課題の提出を求めた。

課題の内容は特段珍しくもない読書感想文で、全員分市のコンクールに送られることとなっていた。

「せんせーい、どうして布川さんは提出しなくてもいいんですかー。」

と、最前列の茶髪気味の男子が口を尖らせて言うと、麻田は一瞬気まずそうな顔をしたものの、答えようとはせず、生徒たちに提出を求めた。

「ねえ、ちょっと。」

隣の席の女子生徒が布川に話しかける。
なに?と聞き返すことで無視をしているわけでないことを示したが、布川にとって今不思議に思われていることはおそらく一つであって、隣の席の彼女がそのことを聞こうとしているのは明白であった。けれども

「あたし、十川って言うの。あなた、18歳くらいかしら。」

と言ったっきり、机に突っ伏してぐっすりと眠ってしまった。

虚を疲れた布川は、うんともすんとも発さぬうちに寝てしまった十川の顔を穴が開くほど見つめた。
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