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王侯貴族 事前登校 編
笑13
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トゥランの言葉に気が緩んだのか、イコリスが誤魔化すように咳き込んだ。
俺は既にマスクの下で奥歯を噛みしめていた。
黒いスケスケレースパン・・・眼帯という反則的な脅威は、校門をくぐると解消されるのだ。
「フラリス・ブリストン、書き換え率6%」
杏子色だった髪は瑞々しい橙色に変わっていた。
髪の長さは、右前髪を除いてほぼ以前と同じで首元まである。つまり右目にかかっていた鬱陶しい前髪は、眼帯をした左側に寄せられ集まっているのだ。この寄せられた左前髪がレースパンツの上に被さる事により、イコリスと俺を守る防壁となった。
トゥランはブリストン一族が強制される、左目の眼帯を隠してしまう髪型を見越して、俺達を労っていたのだ。
それにしてもこの期に及んで、懸念事項が増えるとは計算外だった。
フラーグ学院の不思議な現象は『強制力』以外に、好意が視覚化されるという『演出効果』がある。
校門から先の学院内で、生徒が誰かに恋愛へ発展する好意を抱くと、季節に応じた花びらや葉っぱが空中から降ってきて、風が無く身体も動かしていないのに髪が揺れなびくという現象が起こってしまう。
ブリストン一族に関しては、その演出効果で長い前髪が揺れ隠れていた眼帯が見えると、格好良さが増す希少な貴族だった。だが、フラリスはそうではなくなってしまった。
平民の学生の登校が始まると、多くの女子生徒との出会いがフラリスに訪れるだろう。いつ何時、彼の好意が視覚化されるか分からない。
俺達の学生生活は更に険しいものとなった。
「そんな不安そうにするな。私達は負けない。そうだろ?」
呪われた運命を背負った仲間として、暗くなる俺をトゥランが励ます。
「そうよ。3人であんなに頑張ってきたんだから、絶対、大丈夫。」
不幸の前触れに繋がりそうだが、俺はトゥランとイコリスに、乗る事にした。
「その通りだな。この逆境に打ち勝って、卒業しよう。」
すると、イコリスが片手を俺達に差し出し、その手の甲にトゥランが上から手を重ねた。
俺は躊躇ったが、二人の手の上へ同様に手を置いた。
「両親が王に土下座して頼み込み、私の入学の許可を得てから・・・我々は汗と涙を流し、厳しい訓練に耐え備えてきた。トゥラン、サイナス、運命に抗う者として共に戦おう。」
俺は手を重ねた事を後悔したが、もう遅い。
貴族令嬢と思えない中腰で、イコリスが叫ぶ。
「絶対、卒業するぞっ。勝つんだっ勝つんだっ勝つんだー!!」
「「だーーーっ!!」」
イコリスの掛け声に俺とトゥランは大きな声で応えた。
「行ってくるよっ。」
その流れを保ったまま、威勢よくトゥランは校門へ進んだ。
「トゥランなら勝てるっ。」
「がんばれーっ。」
俺はイコリスとトゥランへの声援を送りながら、校門の向こうの人々に目の焦点を合わせる事が出来なかった。
俺は既にマスクの下で奥歯を噛みしめていた。
黒いスケスケレースパン・・・眼帯という反則的な脅威は、校門をくぐると解消されるのだ。
「フラリス・ブリストン、書き換え率6%」
杏子色だった髪は瑞々しい橙色に変わっていた。
髪の長さは、右前髪を除いてほぼ以前と同じで首元まである。つまり右目にかかっていた鬱陶しい前髪は、眼帯をした左側に寄せられ集まっているのだ。この寄せられた左前髪がレースパンツの上に被さる事により、イコリスと俺を守る防壁となった。
トゥランはブリストン一族が強制される、左目の眼帯を隠してしまう髪型を見越して、俺達を労っていたのだ。
それにしてもこの期に及んで、懸念事項が増えるとは計算外だった。
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校門から先の学院内で、生徒が誰かに恋愛へ発展する好意を抱くと、季節に応じた花びらや葉っぱが空中から降ってきて、風が無く身体も動かしていないのに髪が揺れなびくという現象が起こってしまう。
ブリストン一族に関しては、その演出効果で長い前髪が揺れ隠れていた眼帯が見えると、格好良さが増す希少な貴族だった。だが、フラリスはそうではなくなってしまった。
平民の学生の登校が始まると、多くの女子生徒との出会いがフラリスに訪れるだろう。いつ何時、彼の好意が視覚化されるか分からない。
俺達の学生生活は更に険しいものとなった。
「そんな不安そうにするな。私達は負けない。そうだろ?」
呪われた運命を背負った仲間として、暗くなる俺をトゥランが励ます。
「そうよ。3人であんなに頑張ってきたんだから、絶対、大丈夫。」
不幸の前触れに繋がりそうだが、俺はトゥランとイコリスに、乗る事にした。
「その通りだな。この逆境に打ち勝って、卒業しよう。」
すると、イコリスが片手を俺達に差し出し、その手の甲にトゥランが上から手を重ねた。
俺は躊躇ったが、二人の手の上へ同様に手を置いた。
「両親が王に土下座して頼み込み、私の入学の許可を得てから・・・我々は汗と涙を流し、厳しい訓練に耐え備えてきた。トゥラン、サイナス、運命に抗う者として共に戦おう。」
俺は手を重ねた事を後悔したが、もう遅い。
貴族令嬢と思えない中腰で、イコリスが叫ぶ。
「絶対、卒業するぞっ。勝つんだっ勝つんだっ勝つんだー!!」
「「だーーーっ!!」」
イコリスの掛け声に俺とトゥランは大きな声で応えた。
「行ってくるよっ。」
その流れを保ったまま、威勢よくトゥランは校門へ進んだ。
「トゥランなら勝てるっ。」
「がんばれーっ。」
俺はイコリスとトゥランへの声援を送りながら、校門の向こうの人々に目の焦点を合わせる事が出来なかった。
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