笑ってはいけない悪役令嬢

小川コタ

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笑23

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 ファウストの指示により、生徒会業務の引継ぎは書面もしくは学院外で各自行うとし、事前登校は終了した。
 キャルクレイ・プラントリーは旧生徒会長ハル・エボニーの運ばれた病院で、大事をとって検査入院することになった。
「キャルクレイを病院へ送るのは、私が適任だろう。」
 確かに魅了の効かない王族であるファウストが適任と思われるのだが、イコリスは不服そうにファウストを見た。
「それって馬車の狭い空間で、二人きりになるんじゃ・・・。」
「・・そうなるけど。」
 イコリスが嫉妬して言ったとでも思ったのだろう、ファウストの表情が緩む。
 だが、そうではない。イコリスはただ、ジェネラス達と同じ年齢の男であるファウストを、信用しきれていないのだ。

「王太子は閨教育受けてるから、裸の女体に慣れてるよ。」
 と、俺はイコリスへ言いそうになったが、これ以上ファウストから睨まれたくないので口を噤んだ。

「私は馬車を貸して下されば、一人で病院へ行けます。顔を覆う袋も有りますので、付き添いいただかなくても大丈夫です。」
「では、私の馬車で病院へ行くといい。イコリス、君の馬車に私を乗せて貰えるかな。」
 ファウストはキャルクレイの申し出に快諾し、イコリスに帰城の馬車をお願いした。
「ええ、もちろん。王城までまかせて。」

 イコリスには断る理由がないのだろうが・・・。俺は抜けるように青い空を仰ぎ見た。
(・・・あの馬車にファウストが乗るのか。)


 煌めく金髪の王太子の対面に、黒い袋を被った二人組が座った屋根のない馬車を、剃髪の大男が操縦している。
 俺は王族を拉致した誘拐犯にしか見えないと、通行人に思われるのではないかと想像し、いたたまれなかった。
 そんな俺を差し置いて、イコリスとファウストはチェリンの飴の棒に生えた四つ葉のクローバーについて話している。
「報告書にも書いて無かったし、サウザンド一族から集めた情報にも葉っぱが生えるなんて無かったから・・・びっくりしたー。」
「あれはフラーグ学院の創設時、入学したサウザンドに一人だけ現れた事例と同じだよ。まさか、三百年ぶりにチェリンの飴の棒に生えるとは・・・今年の入学は、いろいろと特殊かもしれない。」

 俺の考えていた通り、王族しか知り得ない情報があるみたいだが、イコリスを案じているなら事前に教えておいて欲しいものだ。
 あれはフラリスの眼帯程ではないが辛かった。

「そう言えば、今日は来なかったのね。」
「・・・・何が?」
「桃色髪の女の子。」
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