91 / 152
夏の宴 告白 編
宴17
しおりを挟む
親睦会が大盛況で終了し、校庭では生徒会と混凝土研究部員他、少数の男子が後処理をしていた。
近隣に住む通学生以外は、宿泊準備を整えた体育館と多目的会館に、男女別で宿泊する事になっている。寮生達は、宿泊する通学生達に禁止事項や注意点の説明を行なう為、それぞれの施設へ付き添って行った。
寮長とナナラだけが校庭に残り、親衛隊隊長へ土下座をしている。親睦会開催を実現してくれた、生徒会の不利益になる報告は控えて欲しいとお願いしているようだが・・。
ジェイサムがナナラを起こし、微笑んで話しかけたので大丈夫だろう。
「ファウスト、櫓の残り火は完全に消えたようだ。時間をおいて、また確認するが。」
櫓の火を管理していたジェネラスの報告を受け、ファウストが俺達へ振り向いた。
「イコリス、サイナス。後は私達に任せて、帰宅してくれ。今日はお疲れ様。」
「そうか、悪いな。じゃあ帰るか。・・イコリス?」
イコリスの横顔は、思いつめた表情をしていた。
「・・私、皆に言わなければならない事がある・・。」
「今日のお礼を言うのか?」
イコリスは俺へ返事をせず、アッシュに歩み寄った。
「・・アッシュ、シャンス先輩とストライト先輩を呼んで欲しいの・・。」
「分かったアルよ。」
アッシュは炭焼台の方へ走った。
「フラリス、カインとガルディは帰った?あと、エルードも、まだいるかしら・・。」
「彼らは体育館に泊まるから、そこで片付け手伝ってくれてるよー。じゃあ、声かけてくる。」
イコリスの前には、ファウストと五大貴族嫡子全員も集まった。エルードが何事かと不思議そうにしている。
全員の顔を見渡しながら、イコリスが話し始めた。
「ファウスト、アッシュ、・・皆も本当にありがとう。フラーグ学院の校庭で、同級生と一緒に『炎の舞』が見られるなんて・・とても、嬉しかった・・。シャンス先輩とナナラさんの歌も素晴らしくて、凄く感動しました。」
いつの間にかこの集まりに加わって、寮長とイコリスの話を聞いていたナナラが、瞳を潤ませている。シャンスはボロボロと涙を流していた。
「これまで生きてきた中で、今日という日が一番楽しかった。だから・・だからこそ、私は言わなければならない。」
(随分、勿体ぶったお礼だな・・。)
俺は、お礼にしては重々しい言い方を、奇妙に感じた。
「・・本当の私・・真実の姿を・・。」
(・・は?・・)
「私は・・イコリス・プラントリーは・・偽乳なのっっ。」
(ふぁっっ??)
「アイさんやナナラさんみたいに、本当の巨乳じゃないのっ。パッドが左右二枚づつ入っている、偽乳なの・・黙っていて、ごめんなさい・・。」
言い終わるとイコリスは、顔の前に丸い扇子をあてがった状態で深く頭を下げた。意外すぎる告白に、俺は顎が外れそうになっていた。
「・・どうしてパッドを・・?」
豊満な体つきが強制力で平らになったナナラが、困惑しながら訊ねた。
「・・公になっていないけど・・プラントリー一族の女子は、強制力で巨乳を課されているの・・。」
「強制力で巨乳を・・。」
「配られた強制力の一覧表には、プラントリーの巨乳については書かれてなくて・・けど、言い出せなかった。ごめんなさい・・。ナナラさんの歌で、真実を伝える勇気を貰ったわ。ナナラさん、ありがとう。」
「・・私の歌が・・イコリス様に勇気を・・。」
唖然としている男達だったが、ファウストが口火を切った。
「アイのように、混乱を招く強制力じゃないだろう。今迄、公表されてないのに、敢えて一覧表に書いたりはしない。」
「・・でも、皆、私に親切で・・いつも気遣ってくれて・・。偽りの姿の私に・・。だからいつか本当の事を言わなきゃって、ずっと思ってたの。」
「・・・俺は、事前登校から分かっていたよ。イコリスが校門を通った時に、二枚のパッドが光って弾け飛んだのを見たからな・・。それで焦ってるイコリスにドキドキして、あやうく桜を散らすところだったよ。」
「ジェネラスっ。」
真っ直ぐ飾らず、その時の気持ちを打ち明けるジェネラスに、イコリスは感激していた。
「私とチェリンも、最初からパッドが入っていた事は、理解していたよ。」
ラビネがとても言いにくそうに、イコリスへ告げた。
「交流会で会ってから3ケ月しか経っていないのに、急に大きくなるわけが無い事ぐらい、承知していた。・・女性の事情に踏み入ってまで、その場で指摘したりしないものだよ。」
「・・ありがとう、チェリン・・。」
「当然のことだから、お礼なんて言わないで。」
チェリンは参っている様子だが、イコリスの為に笑顔を作っていた。
「ちょっと待って。イコリス様は自分が巨乳だから、皆が親切にしてくれていたと思ってるアルか?」
「そうよ。」
アッシュへ、わかりきっている事を聞かれたかのように即答した。
「はぁ・・イコリス・・そんなわけないだろう・・。」
トゥランが悲しげに溜息をついた。
「えっ?・・・でもサイナスが、巨乳の女性は、男性から優遇されるのが世の常で、絶対的真理だって・・。」
「・・・サイナス?」
ファウストが、今まで見たことのない顔で、俺を睨んだ。
「ふぁっ?偽乳を識別しても、そんな事は言ってないっ。」
「!!。言ったわっ。私が好きだった絵本の物語を、解説したじゃないっ。」
「・・絵本?・・。」
「塔に閉じ込められた女の子を、王子が助けに来た理由は・・乳がでかいからだっ・・て、言ってたわっ。」
「・・・・・あっ。」
近隣に住む通学生以外は、宿泊準備を整えた体育館と多目的会館に、男女別で宿泊する事になっている。寮生達は、宿泊する通学生達に禁止事項や注意点の説明を行なう為、それぞれの施設へ付き添って行った。
寮長とナナラだけが校庭に残り、親衛隊隊長へ土下座をしている。親睦会開催を実現してくれた、生徒会の不利益になる報告は控えて欲しいとお願いしているようだが・・。
ジェイサムがナナラを起こし、微笑んで話しかけたので大丈夫だろう。
「ファウスト、櫓の残り火は完全に消えたようだ。時間をおいて、また確認するが。」
櫓の火を管理していたジェネラスの報告を受け、ファウストが俺達へ振り向いた。
「イコリス、サイナス。後は私達に任せて、帰宅してくれ。今日はお疲れ様。」
「そうか、悪いな。じゃあ帰るか。・・イコリス?」
イコリスの横顔は、思いつめた表情をしていた。
「・・私、皆に言わなければならない事がある・・。」
「今日のお礼を言うのか?」
イコリスは俺へ返事をせず、アッシュに歩み寄った。
「・・アッシュ、シャンス先輩とストライト先輩を呼んで欲しいの・・。」
「分かったアルよ。」
アッシュは炭焼台の方へ走った。
「フラリス、カインとガルディは帰った?あと、エルードも、まだいるかしら・・。」
「彼らは体育館に泊まるから、そこで片付け手伝ってくれてるよー。じゃあ、声かけてくる。」
イコリスの前には、ファウストと五大貴族嫡子全員も集まった。エルードが何事かと不思議そうにしている。
全員の顔を見渡しながら、イコリスが話し始めた。
「ファウスト、アッシュ、・・皆も本当にありがとう。フラーグ学院の校庭で、同級生と一緒に『炎の舞』が見られるなんて・・とても、嬉しかった・・。シャンス先輩とナナラさんの歌も素晴らしくて、凄く感動しました。」
いつの間にかこの集まりに加わって、寮長とイコリスの話を聞いていたナナラが、瞳を潤ませている。シャンスはボロボロと涙を流していた。
「これまで生きてきた中で、今日という日が一番楽しかった。だから・・だからこそ、私は言わなければならない。」
(随分、勿体ぶったお礼だな・・。)
俺は、お礼にしては重々しい言い方を、奇妙に感じた。
「・・本当の私・・真実の姿を・・。」
(・・は?・・)
「私は・・イコリス・プラントリーは・・偽乳なのっっ。」
(ふぁっっ??)
「アイさんやナナラさんみたいに、本当の巨乳じゃないのっ。パッドが左右二枚づつ入っている、偽乳なの・・黙っていて、ごめんなさい・・。」
言い終わるとイコリスは、顔の前に丸い扇子をあてがった状態で深く頭を下げた。意外すぎる告白に、俺は顎が外れそうになっていた。
「・・どうしてパッドを・・?」
豊満な体つきが強制力で平らになったナナラが、困惑しながら訊ねた。
「・・公になっていないけど・・プラントリー一族の女子は、強制力で巨乳を課されているの・・。」
「強制力で巨乳を・・。」
「配られた強制力の一覧表には、プラントリーの巨乳については書かれてなくて・・けど、言い出せなかった。ごめんなさい・・。ナナラさんの歌で、真実を伝える勇気を貰ったわ。ナナラさん、ありがとう。」
「・・私の歌が・・イコリス様に勇気を・・。」
唖然としている男達だったが、ファウストが口火を切った。
「アイのように、混乱を招く強制力じゃないだろう。今迄、公表されてないのに、敢えて一覧表に書いたりはしない。」
「・・でも、皆、私に親切で・・いつも気遣ってくれて・・。偽りの姿の私に・・。だからいつか本当の事を言わなきゃって、ずっと思ってたの。」
「・・・俺は、事前登校から分かっていたよ。イコリスが校門を通った時に、二枚のパッドが光って弾け飛んだのを見たからな・・。それで焦ってるイコリスにドキドキして、あやうく桜を散らすところだったよ。」
「ジェネラスっ。」
真っ直ぐ飾らず、その時の気持ちを打ち明けるジェネラスに、イコリスは感激していた。
「私とチェリンも、最初からパッドが入っていた事は、理解していたよ。」
ラビネがとても言いにくそうに、イコリスへ告げた。
「交流会で会ってから3ケ月しか経っていないのに、急に大きくなるわけが無い事ぐらい、承知していた。・・女性の事情に踏み入ってまで、その場で指摘したりしないものだよ。」
「・・ありがとう、チェリン・・。」
「当然のことだから、お礼なんて言わないで。」
チェリンは参っている様子だが、イコリスの為に笑顔を作っていた。
「ちょっと待って。イコリス様は自分が巨乳だから、皆が親切にしてくれていたと思ってるアルか?」
「そうよ。」
アッシュへ、わかりきっている事を聞かれたかのように即答した。
「はぁ・・イコリス・・そんなわけないだろう・・。」
トゥランが悲しげに溜息をついた。
「えっ?・・・でもサイナスが、巨乳の女性は、男性から優遇されるのが世の常で、絶対的真理だって・・。」
「・・・サイナス?」
ファウストが、今まで見たことのない顔で、俺を睨んだ。
「ふぁっ?偽乳を識別しても、そんな事は言ってないっ。」
「!!。言ったわっ。私が好きだった絵本の物語を、解説したじゃないっ。」
「・・絵本?・・。」
「塔に閉じ込められた女の子を、王子が助けに来た理由は・・乳がでかいからだっ・・て、言ってたわっ。」
「・・・・・あっ。」
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる