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第1章・廃棄ダンジョン編

第20話・次の新大陸へ

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 ウェインに指示された通りに廃墟ダンジョンのモンスターを全て殺しました。約束通りならば、これで島の人達がこの古城に移される事になります。たとえ石化状態のままだとしても確実に前に進んで歩いているはずです。

(でも、その前に火の海から脱出しないといけないだろう。問題はそこだな)

 古城からは出られるものの、周りは火の海です。鎮火するまでどのぐらいかかるか分かりません。そんな困っているルインの前にウェインが現れた。

「いいぞ。やれば出来るじゃないか。死んだ回数も少ない方だ。意外と死なない才能はあるのかもしれないな」

(ウェイン……やっぱり火をつけたのはコイツで間違いない。それに扉を押さえて、ゴブリンが逃げられないようにしていたのもコイツだろうな)

 ゴブリン女王を倒すとすぐに城主の部屋にウェインは現れました。テレポート能力でもあるのかと思ってしまいます。相変わらずレベル54の赤文字が不気味に宙に浮いています。

(まだ、《アンミリテッド・キル》の効果は続いている。レベルだけなら、ウェインの2倍…奴に戦闘の才能があったとしても負けるとは正直思えない……)

 ウェインを捕まえる事が出来れば、クローリカの居場所が分かるかもしれません。もしかすると、ただ伝言を伝えるだけの替えのきく駒の1つの可能性もあります。そうなると、捕まえる事に成功しても、大した情報は聞き出せないでしょう。もうしばらくは様子を見るしかありません。

「どうした難しい顔をして?まさか、私と戦うつもりか。やめておけ、意味がない。それに私を殺すと、しばらくはこの城から出る事が出来なくなるぞ。もちろん、死ねば出られるだろうがな。さて、まずはコレを飲んでもらう。解毒薬だ。味の苦情は胸にしまっておけよ」

 ウェインはルインに向かって近づいて行きます。右手に青色の液体が入った透明な瓶を持っています。それをルインに渡しました。

「装備のお金に、解毒薬、ついでに脱出の手助けか?あと、火を付けてくれた事にもお礼が必要なのか?お前はクローリカの何なんだ?仲間か、それとも、脅されているのか?」

「まずは早く飲め。そしたら、答えてやる」

(毒を飲ませる意味はないとは思うが…)

 ポン♪ ゴクゴク!

 ルインは瓶の穴に嵌っている木製のコルクせんを引き抜くと、一気に青色の液体を飲み干しました。味は得体の知れない野菜というよりも、得体の知れない果物のような味でした。苦味よりは酸味の方が強いように感じられました。不味いレモン味でしょうか?

「ウッウッ!不味い。さあ、飲んだぞ。まずはクローリカとお前の関係を教えろ」

「ふっふ、教えてくださいだろう?これでも年上だぞ。言葉遣いには気をつけるんだな。冒険者連中はそういうのに意外と厳しい所があるからな。まあ、私はどうでもいい。さて、私とクローリカの関係か……そうだな、主従関係のようなものだな。ただ主人の言う通りに動く駒だよ」

(つまりは奴隷という事か?ウェインの言葉を信じるのならそうなるな。おそらくはクローリカに従う事で何かしらの利点があるのだろう。つまりはクローリカを裏切る事はしないだろうな)

 全身を蝕んでいた空気毒の影響は少しずつ消えていっている。解毒薬の効果なのは間違いない。かなり即効性の高い薬なのだろうが、それでもまだまだ身体は怠く、重く感じるな。薬の効果が完全に全身に効くのは1時間ぐらいは必要かもしれないな。

 ヴゥーン!

「ヴッエェッッ‼︎」

 ボトボト!

 《アンミリテッド・キル》の効果が切れると、城主の部屋に1人の若者が現れました。早速床に、石化された日の夜に食べた晩ご飯を盛大に吐いています。今まで現れた人達はよく我慢できたと感心してしまいます。きっと、船酔いとかで慣れていたのでしょう。だとしたら、この若者は漁師ではないという事です。

「えっーと、フランだよな。大丈夫か?」

「大丈夫じゃねぇよ。モンスターの死体とか間近で見てるんだぞ!それにお前も近づいて来るんじゃねぇよ。服についてるの内臓とか脳味噌だろ?ヴッ⁈ヴッエェッ‼︎」

 ボトボト!

 この吐いているのは、フラン・ボルワーズ。19歳のセルカ島の農家の次男だ。主にジャガイモとサツマイモを栽培している芋野郎だ。妹のルルカに2番目にちょっかいを出した芋野郎だ。

「……さてと、話を戻そうか。これから、お前には別の大陸の別の街に行ってもらう。前に渡した金貨はその大陸用の路銀だ。まだ残っているだろうな?」

「ああ、大丈夫。まだ、かなり残っている。話を続けてくれ」

 本当は残りの金貨は6枚です。たったの6万ゴールドでは、見知らぬ土地では20日も生活出来ません。でも、今のルインにとってお金はどうでもいい事です。妹に近寄る害虫が1人減ってくれました。

(芋野郎が死ぬのは少し嬉しい。次はリップスが選ばれると嬉しいな)

 フランは自分の吐いた物の上で死んでいます。何だか少し可哀想な気がしますが、ルインは微塵もそう思っていないようです。意外と冷酷な部分が潜んでいるようです。

「ふっふ、嬉しそうだな。では、もっと嬉しくなる知らせを聞かせてやろう。次の指示をクリア出来たら、石化した島民を5人だけ元に戻してやる。ただし、指定した期日を1日でもオーバーしたら話は白紙だ。どうだ、嬉しい知らせだろう?」

 確かに嬉しい知らせです。母親と妹を助け出しても、まだ3人も助けられます。

(5人だけ。確かに嬉しい知らせだけど、おそらくはそれだけ難しいという事か、島の人間を餌に俺にやる気を出させたいだけ。どちらにしても拒否権はないだろうな)

 ルインは子供のようにピョンピョン飛び跳ねて喜ぶつもりはありません。おそらくは5人ぐらいは解放しないと、割りに合わない危険な事をやらせるつもりです。5人を救う為に50人を犠牲にしたのでは何の為に戦っているか分からなくなります。

「1つだけ質問がある。何回、代償魔法を使えば、その指示はクリア出来る。予想でいいから聞かせてくれ。正直に…」

(…本当に可愛くない子供だな。まあ、そこがクローリカに選ばれたのだろうな…)

「………くっくくく、そうだな。15回。そのぐらいだろうな。だが、これは私の予想だ。お前の頑張り次第で10回ぐらいにする事は出来るかもな。さあ、出発だ。まずは街に行ってレベルを上げて来い。続きはその後だ!《アリーズ》力を示せ‼︎」

 ヴゥーン!

 ウェインが右腕を突き出して、呪文のような言葉を唱えます。すぐにルインの足元に金色に輝く魔法陣が1つ出現しました。チラッとウェインの右腕に黄色の宝石が嵌め込まれた腕輪が見えました。おそらくは魔法具の一種でしょう。

 グッグッ! グッグッ!

「何だ!これは⁈動けない!」

 ルインは両足に力を入れて動こうとしますが、魔法陣に足の裏がくっ付いたように離れません。クローリカに使われた転送魔法と同じような感覚が襲って来ます。急激に意識が遠くの何処かに持っていかれました。転送魔法が終わったのか、気がつくとそこは懐かしい海の匂いがしていました。

 ❇︎

 





 

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