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「はぁ~~、違いなんて分からないよ」

 学校から帰り、自分の部屋に閉じ籠る。制服を脱いでベッドの上に寝転ぶとやっとひと息つける。男同士だろうと、女同士だろうと、おっぱいはおっぱい、キスはキス、好きは好きだ。そこに違いはない。けれども、世の中に同性愛はあまりにも認められていない。それが現実だ。

 最近では涼介だけでなく、中島のことも意識するようになってきた。これだと男なら誰でもいいと言っているモテない女と一緒だ。この不安定な気持ちはきっと満たされない思春期の欲求が引き起こすと僕は思う。彼女さえ出来れば、このモヤモヤした感情や馬鹿げた妄想から解放される。きっとそうだ。

 でも、それが簡単に手に入らないから代用品を求めてしまう。それがもっとも身近な男友達なんだ。

 嫌がる野田のおっぱいを木戸達三人が揉んでも、それが許される行為だとクラスにいた同級生のほとんどが認識していたのは、それが男同士だったからだ。もしも野田が女子ならば、誰もが見て見ぬ振りも、笑って見ることも出来なかったはずだ。

「男同士、女同士ならば許される行為もあるのに、何故、愛し合うことは駄目なんだ」

 誰もが駄目だと言うだけで、キチンと納得できる説明はしてくれない。人を殺すのは駄目だ。でも、駄目だと言いながら、死刑という方法で合法的に人を殺している。

 誰もが納得するキチンとした理由があれば、死刑も許されるなのなら、男同士でも女同士でもキチンとした理由があれば愛し合えるということになる。

 けれども、世界は理不尽だ。男と女ならば大した理由もないのに愛し合うことを認めようとする。それが肉体だけの偽りの愛だとしてもだ。男同士、女同士の愛が肉体だけの偽りの愛だとでも言いたいのだろうか。何故、そんなに真実の愛を僕達に強制したいのか僕には分からない。偽りだらけの大人達の愛を見習えと言いたいのなら僕には無理だ。そんなのは出来ない。

 頭の中で感情と常識がごちゃごちゃに絡まっていく。次第にどちらが正しくて、どちらが間違っているのか分からなくていく。

「あっ~あ、本当にくだらない」

 頭を押さえて自分に向かって毒突く。世界とか、常識とか、そんなのは出来ないことへの言い訳でしかない。「好きだ」と言って、「ごめん」と言われるのが怖いだけなんだ。その相手が異性でも、同性でも怖いだけなんだ。それでも同性同士、友達同士ならば許されるのならば、僕はこのモヤモヤを少しは解消したい。

(明日、涼介に告白しよう)

 涼介に、「ごめん」と断られても、「冗談に決まっているだろう」と笑って言えれば、ずっと友達のままでいられる。そうずっと友達以上BL未満の関係でいられるんだ。



 
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