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第一章:人間編
第9話 ウルフ
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襲ってくる巨大蚊は俺が全部倒していく。メルにはまだ早かった。
20ギルの魔石と素材『ビッグモスキートの羽』の回収を任せた。
「これで五個目だな。強化してみるといい」
「はい、やってみます!」
四個目の赤い宝箱を開けて、メルが神銅を取り出した。
目標の五個集まったから、ブロンズダガーを強化できる。
鞄からブロンズダガーを取り出して、神銅五個を刀身に与えていく。
刀身に神銅が溶けて吸収されていく。白鞘に当てても吸収されない。
五個全部吸収すると、銅色の刀身が輝いて強化が完了した。
「……えっ、これだけですか?」
「ちょっと貸してみろ」
ブロンズダガーの見た目は変化していない。
呆気ない強化完了に、メルが気になるのも仕方ない。
短剣を受け取て調べるを使った。
名前が『ブロンズダガー改』に変わっていた。
調べるを使えば変化したのは分かるが、調べるのLVを上げるには勉強するしかない。
色々な図鑑を見て、知識を上げる事でLVは上がる。天才じゃないと子供には無理だ。
「キチンと強化されている。次の素材は五階で取れる。まずは自力で行ける実力を身につけないとな」
メルにブロンズダガーを返すと教えてやった。
俺が単独で取りに行ってもいいが、それだと意味がない。
目標を与えたから、それに向かって頑張ってもらう。
「はい、頑張ります」
「まだ二日目だ。三ヶ月後には一人で十階ぐらいは行ける。それまでの我慢だ」
「うーん、結構長いですね」
俺の予想では三階がいいところだが、七歳の子供に過剰に期待する方がおかしい。
まずはどの程度使える戦力になるか調べてから、駄目ならババアに引き返す。
それに三ヶ月もあれば、別の町に引っ越すだけの資金は貯められる。
俺はあらゆる結果を予想して、たくさんの選択肢を用意している。絶対に失敗しない。
「よし、一階に戻ってスライムを倒すぞ。お前も見学だけだと退屈だろうからな」
「そうですね。頑張ります」
短剣は簡単に強化できたが、人間が強くなるには地味な鍛錬を続けるしかない。
一階に戻って、俺が押さえるスライムを、メルにブロンズダガー改で倒させた。
しばらくは焦らずにやるしかない。
♢
「はぁ……やっと週末か」
今日は予定通りに一人でダンジョンにやって来た。
月曜日にメルが家にやって来て、たったの五日間しか経ってないのに長く感じた。
毎日のようにスライムを倒す手伝いを続けていた。流石に敵が弱すぎる。
強すぎても疲れるが、弱すぎても疲れる。
ダンジョンの扉を引いて開けると、二階を目指して炭鉱迷路を進んでいく。
目標は五階で、ブロンズダガー改の強化素材を集めようと思っている。
メルに素材を渡すつもりはないが、いざという時に集められないと、俺が恥をかく事になる。
単独で十七階まで行った事があるから、五階ぐらいまでなら余裕で行ける。
「おい、カナンだぞ。今日は女の子はいないみたいだな」
「おばさんに話を聞いたヤツの話だと、孤児を引き取って育てているらしい」
「仲間もまともに育てられない奴に、子供が育てられるのかよ?」
地下五階への階段を下りていると、上がってくる三人組の冒険者とすれ違った。
無言で通り過ぎていったが、すぐにムカつく話し声がヒソヒソ聞こえてきた。
口の軽いババアがあっちこっちで話し回っているようだ。
「チッ。聞こえてんだよ。聞かれたくないなら、もっと小声で話せ」
週末に男三人でダンジョンに行く可哀想な奴らには、関わるだけ時間が勿体ない。
階段をさっさと下りると、五階の森に囲まれた『古代遺跡』に到着した。
ここに生息する『ウルフ』という凶暴な狼を今日は倒しまくる。
「宝箱も探してみるか」
右手に剣、左手に岩盾を装備すると、古代遺跡の探索を始めた。
古代遺跡は古い街並みが閉じ込められたような場所で、一日中輝く星空が見える。
建物は灰色の煉瓦で作られていて、遺跡全体が迷路のようになっている。
大木や瓦礫で道が塞がれている場合もあるが、建物の中を通れば問題なく先に進める。
冒険者の中には、壁を壊して進んだり、建物の屋根を歩くヤツもいる。
壊した壁は時間が経てば修復する。屋根は落とし穴のように壊れる所がある。
楽に六階に行きたいなら、大人しく壊れた壁を通った方が疲れない。
「んっ? 来たか……」
微かな足音が複数聞こえた。数匹のウルフがやって来たようだ。
ガンガン‼︎ 広い道の真ん中に立って、剣と岩盾をぶつけて音を鳴らした。
餌がいると教えてやる。建物の中よりも道の真ん中の方が俺は戦いやすい。
「ガァウガァウ!」
しばらく叩き続けていると、唸り声を上げて、通路の曲がり角から黒毛のウルフが二匹現れた。
体長は120センチ程、剣を構えているのに怖いもの知らずなのか、全力で向かってくる。
まあ、命知らずの馬鹿の方が助かる。
足裏から魔力を流して、前方四メートル先の地面に魔力を溜めていく。
そして、タイミングを合わせて、地面から分厚い岩壁を突き出した。
縦横130センチ、厚さ30センチ——全力ダッシュで激突すれば当然痛い。
「ギャン‼︎」
ドガァン‼︎ 目の前に突然現れた茶色の岩壁に二匹は激突した。
壁に頭から激しくぶつかった衝撃で、二匹は地面に倒れた。
意識を回復される前に、剣を突き刺して倒してやろう。
「ハズレだな」
ウルフの死体が消えると、地面には50ギルの魔石二個とウルフの皮が一枚落ちていた。
ブロンズダガー改を強化するには、古代結晶五個、ウルフの尻尾一本、皮三枚、牙三本が必要だ。
ウルフの尻尾はレア素材だから、なかなか手に入らない。
まあ、たくさん倒せば手に入るから、そこまで問題じゃない。
さっさと素材を集めて、明日はもう少し下の階層に行くとしよう。
20ギルの魔石と素材『ビッグモスキートの羽』の回収を任せた。
「これで五個目だな。強化してみるといい」
「はい、やってみます!」
四個目の赤い宝箱を開けて、メルが神銅を取り出した。
目標の五個集まったから、ブロンズダガーを強化できる。
鞄からブロンズダガーを取り出して、神銅五個を刀身に与えていく。
刀身に神銅が溶けて吸収されていく。白鞘に当てても吸収されない。
五個全部吸収すると、銅色の刀身が輝いて強化が完了した。
「……えっ、これだけですか?」
「ちょっと貸してみろ」
ブロンズダガーの見た目は変化していない。
呆気ない強化完了に、メルが気になるのも仕方ない。
短剣を受け取て調べるを使った。
名前が『ブロンズダガー改』に変わっていた。
調べるを使えば変化したのは分かるが、調べるのLVを上げるには勉強するしかない。
色々な図鑑を見て、知識を上げる事でLVは上がる。天才じゃないと子供には無理だ。
「キチンと強化されている。次の素材は五階で取れる。まずは自力で行ける実力を身につけないとな」
メルにブロンズダガーを返すと教えてやった。
俺が単独で取りに行ってもいいが、それだと意味がない。
目標を与えたから、それに向かって頑張ってもらう。
「はい、頑張ります」
「まだ二日目だ。三ヶ月後には一人で十階ぐらいは行ける。それまでの我慢だ」
「うーん、結構長いですね」
俺の予想では三階がいいところだが、七歳の子供に過剰に期待する方がおかしい。
まずはどの程度使える戦力になるか調べてから、駄目ならババアに引き返す。
それに三ヶ月もあれば、別の町に引っ越すだけの資金は貯められる。
俺はあらゆる結果を予想して、たくさんの選択肢を用意している。絶対に失敗しない。
「よし、一階に戻ってスライムを倒すぞ。お前も見学だけだと退屈だろうからな」
「そうですね。頑張ります」
短剣は簡単に強化できたが、人間が強くなるには地味な鍛錬を続けるしかない。
一階に戻って、俺が押さえるスライムを、メルにブロンズダガー改で倒させた。
しばらくは焦らずにやるしかない。
♢
「はぁ……やっと週末か」
今日は予定通りに一人でダンジョンにやって来た。
月曜日にメルが家にやって来て、たったの五日間しか経ってないのに長く感じた。
毎日のようにスライムを倒す手伝いを続けていた。流石に敵が弱すぎる。
強すぎても疲れるが、弱すぎても疲れる。
ダンジョンの扉を引いて開けると、二階を目指して炭鉱迷路を進んでいく。
目標は五階で、ブロンズダガー改の強化素材を集めようと思っている。
メルに素材を渡すつもりはないが、いざという時に集められないと、俺が恥をかく事になる。
単独で十七階まで行った事があるから、五階ぐらいまでなら余裕で行ける。
「おい、カナンだぞ。今日は女の子はいないみたいだな」
「おばさんに話を聞いたヤツの話だと、孤児を引き取って育てているらしい」
「仲間もまともに育てられない奴に、子供が育てられるのかよ?」
地下五階への階段を下りていると、上がってくる三人組の冒険者とすれ違った。
無言で通り過ぎていったが、すぐにムカつく話し声がヒソヒソ聞こえてきた。
口の軽いババアがあっちこっちで話し回っているようだ。
「チッ。聞こえてんだよ。聞かれたくないなら、もっと小声で話せ」
週末に男三人でダンジョンに行く可哀想な奴らには、関わるだけ時間が勿体ない。
階段をさっさと下りると、五階の森に囲まれた『古代遺跡』に到着した。
ここに生息する『ウルフ』という凶暴な狼を今日は倒しまくる。
「宝箱も探してみるか」
右手に剣、左手に岩盾を装備すると、古代遺跡の探索を始めた。
古代遺跡は古い街並みが閉じ込められたような場所で、一日中輝く星空が見える。
建物は灰色の煉瓦で作られていて、遺跡全体が迷路のようになっている。
大木や瓦礫で道が塞がれている場合もあるが、建物の中を通れば問題なく先に進める。
冒険者の中には、壁を壊して進んだり、建物の屋根を歩くヤツもいる。
壊した壁は時間が経てば修復する。屋根は落とし穴のように壊れる所がある。
楽に六階に行きたいなら、大人しく壊れた壁を通った方が疲れない。
「んっ? 来たか……」
微かな足音が複数聞こえた。数匹のウルフがやって来たようだ。
ガンガン‼︎ 広い道の真ん中に立って、剣と岩盾をぶつけて音を鳴らした。
餌がいると教えてやる。建物の中よりも道の真ん中の方が俺は戦いやすい。
「ガァウガァウ!」
しばらく叩き続けていると、唸り声を上げて、通路の曲がり角から黒毛のウルフが二匹現れた。
体長は120センチ程、剣を構えているのに怖いもの知らずなのか、全力で向かってくる。
まあ、命知らずの馬鹿の方が助かる。
足裏から魔力を流して、前方四メートル先の地面に魔力を溜めていく。
そして、タイミングを合わせて、地面から分厚い岩壁を突き出した。
縦横130センチ、厚さ30センチ——全力ダッシュで激突すれば当然痛い。
「ギャン‼︎」
ドガァン‼︎ 目の前に突然現れた茶色の岩壁に二匹は激突した。
壁に頭から激しくぶつかった衝撃で、二匹は地面に倒れた。
意識を回復される前に、剣を突き刺して倒してやろう。
「ハズレだな」
ウルフの死体が消えると、地面には50ギルの魔石二個とウルフの皮が一枚落ちていた。
ブロンズダガー改を強化するには、古代結晶五個、ウルフの尻尾一本、皮三枚、牙三本が必要だ。
ウルフの尻尾はレア素材だから、なかなか手に入らない。
まあ、たくさん倒せば手に入るから、そこまで問題じゃない。
さっさと素材を集めて、明日はもう少し下の階層に行くとしよう。
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