32 / 172
第一章:人間編
第32話 十五階ワイルドボア
しおりを挟む
「ふぅー、これでいつでも帰れるな」
ホーンディアを十八匹倒して、目標の皮五枚と角五本を手に入れた。
途中、神器の靴を強化して素早さ上昇LV2になったから、少し楽になった気もする。
【神器の靴:使用者に素早さ上昇LV2を与える】
【LV3強化素材:デスアウルの翼五個、槍魚人の穂五本、獅子王の爪五本】
「デスアウルは十六階だけど、魚人は二十二階、獅子王は二十四にいる……うん、無理だな」
考える必要もないぐらいに答えは明白だった。命を懸けても、二十四階の獅子王には勝てない。
このまま町に帰りたいが、筋力上昇の手袋を強化するには、十五階まで行かないといけない。
「仕方ない。行くしかないか」
今回の目的はメルの戦力強化だ。
キツイのは今回だけで、ここで頑張れば後が楽になる。
そう思えば、この苦労は最後の試練のようなものだ。
やる気を何とか出して、地下十四階への階段がある道を進んでいく。
そして、明るい山道と暗い洞窟の中を交互に進んでいくと、洞窟の中の十四階への階段に到着した。
時刻は日曜日の午前二時を過ぎている。もう休んでもいい時間だ。
「ふぅー、帰りは月曜になりそうだな」
無理は良くないので、階段に座って休む事にした。
一日ぐらい遅くなっても、メルなら金を持っているから大丈夫だろう。
♢
「ガグゥ‼︎ グルル!」
「チッ……」
睡眠時間四時間。寝起きの洞窟グリズリーは流石にキツイ。
星空のようにキラキラ輝く暗い洞窟の中を走って逃げる。
鉄のように硬く黒い体毛に覆われたグリズリーには、岩杭が直撃しても短剣で刺された程度だ。
四足歩行で向かってきたグリズリーの腹に岩杭が直撃したが、僅かに怯んだだけで、また向かってくる。
「食らえ!」
「ガグゥ、ガグゥ‼︎」
勝つには逃げながらの遠距離魔法攻撃しかない。走る速さはグリズリーの方が少し上だ。
顔面を狙って尖らせた岩塊を発射して、怯ませつつ地味にダメージを与えていく。
岩壁や岩杭は地面に足を接触させないと使う事が出来ないので、逃げながらは使えない。
「グガァ……グガァ……」
「そろそろいいな!」
グリズリーの左目に尖った岩塊が突き刺さっている。それでも戦意を失わずに追いかけてくる。
俺も右目に岩塊が命中するまで逃げるつもりはないので、急反転して剣で襲い掛かった。
「行くぞ、死にかけ! オラッ!」
「グガァー‼︎」
ザァン! 四足歩行で向かってくるグリズリーと交差する瞬間、右目を狙って剣を斜めに振り抜いた。
グリズリーの苦痛の叫び声が上がるが、俺が聞きたいのは断末魔の絶叫だけだ。
素早く剣を横に振り抜いて、右脇腹を横に切り裂いた。
ザァン——
「ガウッ‼︎」
「悪いが楽に死ねると思うなよ」
俺の剣の腕はまだまだ未熟だ。
普通はこの剣で一撃で倒せる相手も、倍の手数が必要になる。
最初の一撃で頭を真っ二つにする事も、次の二撃目で胴体を真っ二つにする事も出来ない。
もうグリズリーはほとんど死にかけだが、本当に死ぬにはまだまだ時間がかかりそうだ。
♢
「あぁ、疲れた……」
洞窟グリズリーの皮を五枚入手すると、地下十五階に向かった。
今度はワイルドボアの皮を五枚入手する。
地下十五階は森林地帯だ。
蒸し暑いジャングルと違って、こっちは快適な気温に保たれている。
高低差のある丘のような濃茶色の大地には、三角形の針葉樹がたくさん生えている。
だが、生息するモンスターはこっちの方が遥かに凶悪だ。
ワイルドボアは鋼色の硬い体毛を持つ大猪で、岩壁でも岩杭でも構わずに破壊して向かってくる。
逃げながらの目潰し攻撃をする余裕もない。倒す方法があるとしたら、逃げずに立ち向かうしかない。
「あぁー、早く上位職業になりたい」
ワイルドボアを探しながら、森の中を歩いていく。
これだけ苦労しているから、そろそろ魔法剣士か魔術師になってもいいぐらいだ。
魔術師になれれば、もっと硬い岩杭を作って大猪も一撃で倒せると思う。
「フゴォーッ!」
「んっ? ちょっ、早過ぎだ‼︎」
何かの気配を感じて振り返ると、鋼色のワイルドボアが真っ直ぐに突進して来るのが見えた。
急いで太めの大木に移動して、背中をくっ付けて、足元の地面に魔力を集めていく。
鞘から剣を抜くと、あとはタイミングを間違わなければ死にはしない。
ダッダッダッ——
「一、二、三!」
目の前にワイルドボアが迫ってくる。
俺に激突するタイミングに合わせて数を数えて、打つかる前に足元に岩壁を迫り上げた。
岩壁の上に両足を乗せて、身体を無理矢理に上に押し上げていく。
「くっ……」
「フゴォ!」
ドゴォン‼︎ ワイルドボアの突進で岩壁が破壊され、後ろの大木が激突の衝撃で激しく揺れている。
俺は岩壁が壊される前に上に大きくジャンプして、剣の切っ先を真下に見えるワイルドボアの背中に向けた。
あとは両手で握った剣を全力で突き刺すだけだ。
「ハァッ‼︎」
「フゴォーッ‼︎」
ドスッ‼︎ 背骨を狙った一撃がワイルドボアを貫いた。だが、刀身の半分しか突き刺さっていない。
筋力トレーニングで筋力上昇LV4になったのに、効果はいまいち薄い。
「チッ……またか」
半年前と同じように地魔法で両手を岩の小手で覆うと、背中に座り込んだ。
あとは剣の柄頭を手でガンガン叩いていく。足りない分は追加で与えるだけだ。
だが当然、痛みでワイルドボアが暴れ回る。
「フゴォ! フゴォ!」
「くっ! ぐっ!」
振り落とされないように柄をしっかり握り締める。
そっちも命懸けかもしれないが、こっちも命懸けだ。絶対に振り落とされない。
「フゴォ……」
「ハァ、ハァ、ハァ……手間取らせやがって」
そして、暴れ猪との一分か二分かの長い格闘がやっと終わった。ワイルドボアが地面に力尽きた。
これならギルドに金を払って、筋力上昇の手袋をLV5にした方が良さそうだ。
どうやら俺に必要なのは頭脳や技術ではなく、筋力だったようだ。
ホーンディアを十八匹倒して、目標の皮五枚と角五本を手に入れた。
途中、神器の靴を強化して素早さ上昇LV2になったから、少し楽になった気もする。
【神器の靴:使用者に素早さ上昇LV2を与える】
【LV3強化素材:デスアウルの翼五個、槍魚人の穂五本、獅子王の爪五本】
「デスアウルは十六階だけど、魚人は二十二階、獅子王は二十四にいる……うん、無理だな」
考える必要もないぐらいに答えは明白だった。命を懸けても、二十四階の獅子王には勝てない。
このまま町に帰りたいが、筋力上昇の手袋を強化するには、十五階まで行かないといけない。
「仕方ない。行くしかないか」
今回の目的はメルの戦力強化だ。
キツイのは今回だけで、ここで頑張れば後が楽になる。
そう思えば、この苦労は最後の試練のようなものだ。
やる気を何とか出して、地下十四階への階段がある道を進んでいく。
そして、明るい山道と暗い洞窟の中を交互に進んでいくと、洞窟の中の十四階への階段に到着した。
時刻は日曜日の午前二時を過ぎている。もう休んでもいい時間だ。
「ふぅー、帰りは月曜になりそうだな」
無理は良くないので、階段に座って休む事にした。
一日ぐらい遅くなっても、メルなら金を持っているから大丈夫だろう。
♢
「ガグゥ‼︎ グルル!」
「チッ……」
睡眠時間四時間。寝起きの洞窟グリズリーは流石にキツイ。
星空のようにキラキラ輝く暗い洞窟の中を走って逃げる。
鉄のように硬く黒い体毛に覆われたグリズリーには、岩杭が直撃しても短剣で刺された程度だ。
四足歩行で向かってきたグリズリーの腹に岩杭が直撃したが、僅かに怯んだだけで、また向かってくる。
「食らえ!」
「ガグゥ、ガグゥ‼︎」
勝つには逃げながらの遠距離魔法攻撃しかない。走る速さはグリズリーの方が少し上だ。
顔面を狙って尖らせた岩塊を発射して、怯ませつつ地味にダメージを与えていく。
岩壁や岩杭は地面に足を接触させないと使う事が出来ないので、逃げながらは使えない。
「グガァ……グガァ……」
「そろそろいいな!」
グリズリーの左目に尖った岩塊が突き刺さっている。それでも戦意を失わずに追いかけてくる。
俺も右目に岩塊が命中するまで逃げるつもりはないので、急反転して剣で襲い掛かった。
「行くぞ、死にかけ! オラッ!」
「グガァー‼︎」
ザァン! 四足歩行で向かってくるグリズリーと交差する瞬間、右目を狙って剣を斜めに振り抜いた。
グリズリーの苦痛の叫び声が上がるが、俺が聞きたいのは断末魔の絶叫だけだ。
素早く剣を横に振り抜いて、右脇腹を横に切り裂いた。
ザァン——
「ガウッ‼︎」
「悪いが楽に死ねると思うなよ」
俺の剣の腕はまだまだ未熟だ。
普通はこの剣で一撃で倒せる相手も、倍の手数が必要になる。
最初の一撃で頭を真っ二つにする事も、次の二撃目で胴体を真っ二つにする事も出来ない。
もうグリズリーはほとんど死にかけだが、本当に死ぬにはまだまだ時間がかかりそうだ。
♢
「あぁ、疲れた……」
洞窟グリズリーの皮を五枚入手すると、地下十五階に向かった。
今度はワイルドボアの皮を五枚入手する。
地下十五階は森林地帯だ。
蒸し暑いジャングルと違って、こっちは快適な気温に保たれている。
高低差のある丘のような濃茶色の大地には、三角形の針葉樹がたくさん生えている。
だが、生息するモンスターはこっちの方が遥かに凶悪だ。
ワイルドボアは鋼色の硬い体毛を持つ大猪で、岩壁でも岩杭でも構わずに破壊して向かってくる。
逃げながらの目潰し攻撃をする余裕もない。倒す方法があるとしたら、逃げずに立ち向かうしかない。
「あぁー、早く上位職業になりたい」
ワイルドボアを探しながら、森の中を歩いていく。
これだけ苦労しているから、そろそろ魔法剣士か魔術師になってもいいぐらいだ。
魔術師になれれば、もっと硬い岩杭を作って大猪も一撃で倒せると思う。
「フゴォーッ!」
「んっ? ちょっ、早過ぎだ‼︎」
何かの気配を感じて振り返ると、鋼色のワイルドボアが真っ直ぐに突進して来るのが見えた。
急いで太めの大木に移動して、背中をくっ付けて、足元の地面に魔力を集めていく。
鞘から剣を抜くと、あとはタイミングを間違わなければ死にはしない。
ダッダッダッ——
「一、二、三!」
目の前にワイルドボアが迫ってくる。
俺に激突するタイミングに合わせて数を数えて、打つかる前に足元に岩壁を迫り上げた。
岩壁の上に両足を乗せて、身体を無理矢理に上に押し上げていく。
「くっ……」
「フゴォ!」
ドゴォン‼︎ ワイルドボアの突進で岩壁が破壊され、後ろの大木が激突の衝撃で激しく揺れている。
俺は岩壁が壊される前に上に大きくジャンプして、剣の切っ先を真下に見えるワイルドボアの背中に向けた。
あとは両手で握った剣を全力で突き刺すだけだ。
「ハァッ‼︎」
「フゴォーッ‼︎」
ドスッ‼︎ 背骨を狙った一撃がワイルドボアを貫いた。だが、刀身の半分しか突き刺さっていない。
筋力トレーニングで筋力上昇LV4になったのに、効果はいまいち薄い。
「チッ……またか」
半年前と同じように地魔法で両手を岩の小手で覆うと、背中に座り込んだ。
あとは剣の柄頭を手でガンガン叩いていく。足りない分は追加で与えるだけだ。
だが当然、痛みでワイルドボアが暴れ回る。
「フゴォ! フゴォ!」
「くっ! ぐっ!」
振り落とされないように柄をしっかり握り締める。
そっちも命懸けかもしれないが、こっちも命懸けだ。絶対に振り落とされない。
「フゴォ……」
「ハァ、ハァ、ハァ……手間取らせやがって」
そして、暴れ猪との一分か二分かの長い格闘がやっと終わった。ワイルドボアが地面に力尽きた。
これならギルドに金を払って、筋力上昇の手袋をLV5にした方が良さそうだ。
どうやら俺に必要なのは頭脳や技術ではなく、筋力だったようだ。
0
あなたにおすすめの小説
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました
たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。
「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」
どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。
彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。
幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。
記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。
新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。
この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。
主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。
※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る
がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。
その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。
爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。
爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。
『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』
人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。
『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』
諸事情により不定期更新になります。
完結まで頑張る!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる