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第四章:商人編
第166話 冒険者手帳
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宿屋にいた冒険者達に話を聞いて、町の情報を集めてみた。
宿屋は大部屋の中に複数の個室があるタイプで、風呂や食堂はないそうだ。
食事がしたい場合は、外の食堂で料理を持ち帰るのが一般的らしい。
メルのように魔石と素材を用意して、調理鍋で作る冒険者もいるそうだ。
「ほら、やっぱり調理鍋が必要なんですよ」
「必要ない。祭壇があれば十分だ」
個室に入ると、一つしかないベッドにメルが飛び込んだ。
焼いた黒キノコを食べていただけなのに、俺よりも疲れていると主張している。
「祭壇は持ち運べないです。万が一の為に必要なんです」
「要らないと言ったら要らない。どうしても欲しいなら、冒険者から盗んで来い」
「駄目です。泥棒は犯罪です」
盗賊に正論を言われてしまった。
今の俺達はカカシンだから、泥棒も殺人も合法になるのを知らないようだ。
ある程度盗んだら、黒炎で宿屋ごと証拠隠滅すればいいと教えてやろうか?
もちろん考えるだけで、善良な冒険者達に危害を加えるつもりはない。
ポイントに踊らされる冒険者達は、メルと同じでお馬鹿なだけだ。
人魚を自力で倒した冒険者ならば、精霊の書を手に入れている。
祭壇で簡単に作れる物を大量のポイントを貯めて、手に入れようとはしない。
「犯罪なのは、このポイント交換だ。完全な詐欺だぞ」
「詐欺じゃないですよ。四日もあれば、調理鍋は手に入ります」
「祭壇の門番を倒せば、一日で手に入る。それも全員分だ。絶対に裏がある」
確かにポイントを貯めれば、安全に次の階層まで行ける片道チケットが手に入る。
門番に比べれば、生息するモンスターは弱い。勝てなくても逃げられる。
頑張れば頑張る程に、高性能な武器と魔導具が手に入れられる。
良い事尽くめのポイント交換だ。
だが、俺の直感が言っている。これは間違いなく詐欺だ。
偽金を作る町の住民が親切な事をするはずない。
祭壇を素通りしてもらいたい理由が必ずある。
「じゃあ、ポイント貯めずに何するんですか?」
「ククッ、決まっているだろう。こっちもポイントを配らせてもらう」
「注射器でも配るんですか?」
「もっと過激な物だ」
メルがお馬鹿な事を聞いてきたが、相手がされたくない事をするのが基本だ。
精霊の書を集めて、冒険者達に配って、町が悪どい詐欺をやっている事実を教えてやる。
何百年も続いた町の信頼と実績をブチ壊してやる。
♢
「チッ。ここもか……」
町の看板付きの建物を回っているが、どこも料金がギルではなく、ポイントだった。
武器屋に売っている指輪が欲しくても、一万ポイントも必要になる。
どうしても、クエスト依頼書をやってもらいたいようだ。
「すみません。ギルで買えないんですか? 一階の町では使えましたよ」
「悪いけど、ギルは使えないよ。二階からはポイントしか使えないんだ」
よせばいいのに、店員のオヤジに商品を持っていって、メルが聞いている。
どうせ適当に誤魔化されるだけか、力尽くで黙らされるだけだ。
「ギルをポイントに交換できないんですか?」
「あっはは、無理だよ。ポイントは冒険者カードでしか貯められないから、冒険者同士でも交換は無理なんだ。ポイントを貯める実力がない冒険者を、先には進ませられないからね。我慢してもらうよ」
「そうなんですね」
今の話で分かるように、不正防止も完璧なようだ。
その前に俺達の冒険者カードはAランクじゃない。ポイントを貰う事は出来ない。
カードを見せただけで、攻撃されるに決まっている。
「まあ、他の方法もないわけじゃない……」
「どんな方法ですか?」
「町の誰かと結婚すればいい。識別阻害しているけど、何歳なんだい?」
「七歳です」
「あっははは、これは悪かった。まだ結婚するつもりはないようだ」
ポイントで払えないなら、身体で払えというわけか。
ローブ越しにメルの身体を見たオヤジが年齢を聞いた。メルは指を七本立てて見せた。
これで七歳でもいいよ、と応えたら、この町は焼き滅ぼした方がいい。
「ポイント貯めてから、また来るしかないな。帰るぞ」
「はい。じゃあ、また来ます」
「ああ、十二歳になったら、またおいで」
永遠の七歳と0ポイントだと何も買える物がない。
変態武器屋から出ると、町の商店観光を終わらせた。
「隊長、どこに行くんですか?」
「名案があるから実行する」
町を脱出すると、小船で扉がある方角を目指した。
冒険者カードならば、魔人村に倒された冒険者の物が二人分あるはずだ。
フードで顔を隠せば、カードの性別なんてどうでもいいだろう。
「いないな……」
祭壇の扉に到着したが、グレッグがいなかった。扉には水が流れ落ちている。
三兄妹とまだ花竜を探しているのか、二階の魔人村で遊んでいるんだろう。
「二人いれば十分だな。お前は炎を出し続ければいい。あとは俺が倒してやる」
火種があれば、魔剣を好き放題に使える。
森を燃やす必要もなく、黒炎を直に紫氷に変えればいいだけだ。
「本当にそれだけでいいんですか?」
「一回倒したんだから、余裕で倒せるに決まっている。ほら、行くぞ」
臆病者には口で説明しても分からない。
メルを岩板に乗せて、扉の中に侵入した。
前と同じように丸い泉の中にやって来た。
これで違う門番だとヤバイが、半裸の人魚が現れた。
「ラララ~!」
「うわぁ! 凄い美人です!」
「金髪は悪魔の色だ。騙されるな。さっさと炎を出せ」
「あぅっ! あとで炎代請求します!」
人魚に見惚れているメルを叩いて、魔剣を抜いた。
エルマと同じ金髪人魚ならば、何百回だって殺せそうな気がする。
三十分後……
「ごほぉ、ごほぉ……今日はここまでだな」
「隊長、まだ死なないでくださいね」
「まだ駄目なら、いつならいいんだ?」
「鍋を手に入れて、人間に戻った後です」
小船の後ろに乗っているメルが、背中をさするが優しさは感じない。
人魚を二連続で倒すと、身体が限界だと言い出した。
二人分の精霊の本を手に入れたから、あとは銀魔石と人魚の鱗の使い方を考えたい。
「その本があれば鍋は要らない。それにお前は人でなしだから、人間に戻るのは不可能だ」
「そんな事言うなら、もう背中さすりませんよ」
一度も頼んだ事はない。
俺はおじいちゃんじゃないから、小遣い目当ての孫娘には癒されない。
それに癒しは別の方法を考えている。
まずは人魚の銀魔石で強力な水の指輪が作れるか試す。
可能ならば、毒の国の木の精霊を倒して、木の魔石を手に入れる。
水の魔石と木の魔石を合わせれば、強い回復の指輪が完成するはずだ。
魔人村の自宅に魔術の指輪があるから、死人の冒険者カードを探すついでに試してみる。
「おい、コン。殺した冒険者の持ち物はどこにあるんだ?」
「んっ? 三兄妹はどうした?」
魔人村に到着すると、大木に張り手をしている赤毛大猿に聞いた。
他にやる事がないようだ。俺とメルしかいないのに疑問に思っている。
「花竜を食べたいから別行動だ。それよりも荷物はあるのか?」
「荷物? 殺した後は焼いているから分からねぇよ。倉庫にでもあるんじゃねぇのか」
「倉庫? そんなのがあるのか?」
「あるよ。あそこだ」
村を開拓する時に隅々まで見たけど、倉庫なんて立派な建物は見ていない。
コンに場所を聞くと、村長の丸太小屋を指差した。
村長の扱いが酷すぎる。倉庫を守る番犬代わりだ。
扉を叩いて勝手に入ると、全身鎧の村長が椅子に座っていた。
椅子の奥には武器や荷物が、ピカピカの新品みたいに放置されている。
ゴールデンスライムの村長が綺麗に洗濯しているようだ。
「村長様、冒険者の荷物を調べたいんですけどいいですか?」
「……」
「ありがとうございます」
奥の荷物を指差して聞くと、村長は両手で丸を作って頷いた。
鎧の中身を見たいとか、血塗れの服の洗濯して欲しいと頼んだら、バツで断るのだろうか?
村長を代わって欲しいとか頼んでみたら、すんなりと丸を作ってくれそうだ。
まあ、今は村長をやっている程暇じゃない。
三十個程の山積みにされた収納鞄を開けていく。
回復薬に解毒薬などの医薬品、明かりやテントなどの魔導具が数種類見つかった。
服が入ってないのは、デーモン二人が着ているからだろう。
「カードがないですね」
「死体と一緒に燃やされたのかもしれない。町の宿屋で盗んだ方が早いかもな」
「……」
「んっ? どうしましたか、村長?」
メルと一緒に探していくが、収納鞄に冒険者カードが見つからない。
諦めて帰ろうかと思ったが、椅子から立ち上がった村長が肩を叩いてきた。
振り返って聞くと、戸付きの棚を指差している。
あの戸棚にカードが入っていると言っているんだろう。
「開けますね?」
戸棚を開ける前に村長に確認した。ただ頷いただけだが、開けていいみたいだ。
戸棚を開けると、冒険者手帳が大量に入っていた。
「うわぁ……千冊近くはあるぞ」
棚には複数色の冒険者手帳がビッシリと詰め込まれている。
一冊の冒険者手帳を手に取って開くと、冒険者カードが入っていた。
目的の物は手に入ったけど、パラパラと手帳をめくっていく。
最後の日に何をしていたのか気になるものだ。
だけど、最後のページは明らかに筆跡が違っていた。
達筆な血文字で殺した方法が、嬉々とした感情を込めて書かれている。
他の手帳も調べてみたが、全部に血文字で書かれていた。
「これ、村長が書いたんですか?」
「……」
誰が書いたか知らないが、書いた奴は間違いなく猟奇殺人鬼だ。
椅子に座り直した村長に聞くと、口元に左右の人差し指を交差して、小さなバツを作った。
村長ではないみたいだ。
宿屋は大部屋の中に複数の個室があるタイプで、風呂や食堂はないそうだ。
食事がしたい場合は、外の食堂で料理を持ち帰るのが一般的らしい。
メルのように魔石と素材を用意して、調理鍋で作る冒険者もいるそうだ。
「ほら、やっぱり調理鍋が必要なんですよ」
「必要ない。祭壇があれば十分だ」
個室に入ると、一つしかないベッドにメルが飛び込んだ。
焼いた黒キノコを食べていただけなのに、俺よりも疲れていると主張している。
「祭壇は持ち運べないです。万が一の為に必要なんです」
「要らないと言ったら要らない。どうしても欲しいなら、冒険者から盗んで来い」
「駄目です。泥棒は犯罪です」
盗賊に正論を言われてしまった。
今の俺達はカカシンだから、泥棒も殺人も合法になるのを知らないようだ。
ある程度盗んだら、黒炎で宿屋ごと証拠隠滅すればいいと教えてやろうか?
もちろん考えるだけで、善良な冒険者達に危害を加えるつもりはない。
ポイントに踊らされる冒険者達は、メルと同じでお馬鹿なだけだ。
人魚を自力で倒した冒険者ならば、精霊の書を手に入れている。
祭壇で簡単に作れる物を大量のポイントを貯めて、手に入れようとはしない。
「犯罪なのは、このポイント交換だ。完全な詐欺だぞ」
「詐欺じゃないですよ。四日もあれば、調理鍋は手に入ります」
「祭壇の門番を倒せば、一日で手に入る。それも全員分だ。絶対に裏がある」
確かにポイントを貯めれば、安全に次の階層まで行ける片道チケットが手に入る。
門番に比べれば、生息するモンスターは弱い。勝てなくても逃げられる。
頑張れば頑張る程に、高性能な武器と魔導具が手に入れられる。
良い事尽くめのポイント交換だ。
だが、俺の直感が言っている。これは間違いなく詐欺だ。
偽金を作る町の住民が親切な事をするはずない。
祭壇を素通りしてもらいたい理由が必ずある。
「じゃあ、ポイント貯めずに何するんですか?」
「ククッ、決まっているだろう。こっちもポイントを配らせてもらう」
「注射器でも配るんですか?」
「もっと過激な物だ」
メルがお馬鹿な事を聞いてきたが、相手がされたくない事をするのが基本だ。
精霊の書を集めて、冒険者達に配って、町が悪どい詐欺をやっている事実を教えてやる。
何百年も続いた町の信頼と実績をブチ壊してやる。
♢
「チッ。ここもか……」
町の看板付きの建物を回っているが、どこも料金がギルではなく、ポイントだった。
武器屋に売っている指輪が欲しくても、一万ポイントも必要になる。
どうしても、クエスト依頼書をやってもらいたいようだ。
「すみません。ギルで買えないんですか? 一階の町では使えましたよ」
「悪いけど、ギルは使えないよ。二階からはポイントしか使えないんだ」
よせばいいのに、店員のオヤジに商品を持っていって、メルが聞いている。
どうせ適当に誤魔化されるだけか、力尽くで黙らされるだけだ。
「ギルをポイントに交換できないんですか?」
「あっはは、無理だよ。ポイントは冒険者カードでしか貯められないから、冒険者同士でも交換は無理なんだ。ポイントを貯める実力がない冒険者を、先には進ませられないからね。我慢してもらうよ」
「そうなんですね」
今の話で分かるように、不正防止も完璧なようだ。
その前に俺達の冒険者カードはAランクじゃない。ポイントを貰う事は出来ない。
カードを見せただけで、攻撃されるに決まっている。
「まあ、他の方法もないわけじゃない……」
「どんな方法ですか?」
「町の誰かと結婚すればいい。識別阻害しているけど、何歳なんだい?」
「七歳です」
「あっははは、これは悪かった。まだ結婚するつもりはないようだ」
ポイントで払えないなら、身体で払えというわけか。
ローブ越しにメルの身体を見たオヤジが年齢を聞いた。メルは指を七本立てて見せた。
これで七歳でもいいよ、と応えたら、この町は焼き滅ぼした方がいい。
「ポイント貯めてから、また来るしかないな。帰るぞ」
「はい。じゃあ、また来ます」
「ああ、十二歳になったら、またおいで」
永遠の七歳と0ポイントだと何も買える物がない。
変態武器屋から出ると、町の商店観光を終わらせた。
「隊長、どこに行くんですか?」
「名案があるから実行する」
町を脱出すると、小船で扉がある方角を目指した。
冒険者カードならば、魔人村に倒された冒険者の物が二人分あるはずだ。
フードで顔を隠せば、カードの性別なんてどうでもいいだろう。
「いないな……」
祭壇の扉に到着したが、グレッグがいなかった。扉には水が流れ落ちている。
三兄妹とまだ花竜を探しているのか、二階の魔人村で遊んでいるんだろう。
「二人いれば十分だな。お前は炎を出し続ければいい。あとは俺が倒してやる」
火種があれば、魔剣を好き放題に使える。
森を燃やす必要もなく、黒炎を直に紫氷に変えればいいだけだ。
「本当にそれだけでいいんですか?」
「一回倒したんだから、余裕で倒せるに決まっている。ほら、行くぞ」
臆病者には口で説明しても分からない。
メルを岩板に乗せて、扉の中に侵入した。
前と同じように丸い泉の中にやって来た。
これで違う門番だとヤバイが、半裸の人魚が現れた。
「ラララ~!」
「うわぁ! 凄い美人です!」
「金髪は悪魔の色だ。騙されるな。さっさと炎を出せ」
「あぅっ! あとで炎代請求します!」
人魚に見惚れているメルを叩いて、魔剣を抜いた。
エルマと同じ金髪人魚ならば、何百回だって殺せそうな気がする。
三十分後……
「ごほぉ、ごほぉ……今日はここまでだな」
「隊長、まだ死なないでくださいね」
「まだ駄目なら、いつならいいんだ?」
「鍋を手に入れて、人間に戻った後です」
小船の後ろに乗っているメルが、背中をさするが優しさは感じない。
人魚を二連続で倒すと、身体が限界だと言い出した。
二人分の精霊の本を手に入れたから、あとは銀魔石と人魚の鱗の使い方を考えたい。
「その本があれば鍋は要らない。それにお前は人でなしだから、人間に戻るのは不可能だ」
「そんな事言うなら、もう背中さすりませんよ」
一度も頼んだ事はない。
俺はおじいちゃんじゃないから、小遣い目当ての孫娘には癒されない。
それに癒しは別の方法を考えている。
まずは人魚の銀魔石で強力な水の指輪が作れるか試す。
可能ならば、毒の国の木の精霊を倒して、木の魔石を手に入れる。
水の魔石と木の魔石を合わせれば、強い回復の指輪が完成するはずだ。
魔人村の自宅に魔術の指輪があるから、死人の冒険者カードを探すついでに試してみる。
「おい、コン。殺した冒険者の持ち物はどこにあるんだ?」
「んっ? 三兄妹はどうした?」
魔人村に到着すると、大木に張り手をしている赤毛大猿に聞いた。
他にやる事がないようだ。俺とメルしかいないのに疑問に思っている。
「花竜を食べたいから別行動だ。それよりも荷物はあるのか?」
「荷物? 殺した後は焼いているから分からねぇよ。倉庫にでもあるんじゃねぇのか」
「倉庫? そんなのがあるのか?」
「あるよ。あそこだ」
村を開拓する時に隅々まで見たけど、倉庫なんて立派な建物は見ていない。
コンに場所を聞くと、村長の丸太小屋を指差した。
村長の扱いが酷すぎる。倉庫を守る番犬代わりだ。
扉を叩いて勝手に入ると、全身鎧の村長が椅子に座っていた。
椅子の奥には武器や荷物が、ピカピカの新品みたいに放置されている。
ゴールデンスライムの村長が綺麗に洗濯しているようだ。
「村長様、冒険者の荷物を調べたいんですけどいいですか?」
「……」
「ありがとうございます」
奥の荷物を指差して聞くと、村長は両手で丸を作って頷いた。
鎧の中身を見たいとか、血塗れの服の洗濯して欲しいと頼んだら、バツで断るのだろうか?
村長を代わって欲しいとか頼んでみたら、すんなりと丸を作ってくれそうだ。
まあ、今は村長をやっている程暇じゃない。
三十個程の山積みにされた収納鞄を開けていく。
回復薬に解毒薬などの医薬品、明かりやテントなどの魔導具が数種類見つかった。
服が入ってないのは、デーモン二人が着ているからだろう。
「カードがないですね」
「死体と一緒に燃やされたのかもしれない。町の宿屋で盗んだ方が早いかもな」
「……」
「んっ? どうしましたか、村長?」
メルと一緒に探していくが、収納鞄に冒険者カードが見つからない。
諦めて帰ろうかと思ったが、椅子から立ち上がった村長が肩を叩いてきた。
振り返って聞くと、戸付きの棚を指差している。
あの戸棚にカードが入っていると言っているんだろう。
「開けますね?」
戸棚を開ける前に村長に確認した。ただ頷いただけだが、開けていいみたいだ。
戸棚を開けると、冒険者手帳が大量に入っていた。
「うわぁ……千冊近くはあるぞ」
棚には複数色の冒険者手帳がビッシリと詰め込まれている。
一冊の冒険者手帳を手に取って開くと、冒険者カードが入っていた。
目的の物は手に入ったけど、パラパラと手帳をめくっていく。
最後の日に何をしていたのか気になるものだ。
だけど、最後のページは明らかに筆跡が違っていた。
達筆な血文字で殺した方法が、嬉々とした感情を込めて書かれている。
他の手帳も調べてみたが、全部に血文字で書かれていた。
「これ、村長が書いたんですか?」
「……」
誰が書いたか知らないが、書いた奴は間違いなく猟奇殺人鬼だ。
椅子に座り直した村長に聞くと、口元に左右の人差し指を交差して、小さなバツを作った。
村長ではないみたいだ。
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