「死にたいようだな!スキル『絶体絶命』これを使ったら俺もピンチになるが、お前もピンチになる。使われたくないなら降伏しろ!」

もう書かないって言ったよね?

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序章

第2話

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 スキル『瓦割り』を喰らった彼は、小指の骨がポキィと折れていました。
 スキルを使ったヒョロノッポが『やべぇ~!骨まで割っちゃた!』と笑い出した事で、他のイジメっ子達も硬くなっていた表情が和らいでいきました。

 「あと9本あるからな!手が終わったら足の指、足の指が終わったら帰してやるけど、明日も明後日も明々後日もずっ~と、ずっ~~~~と、スキルを使うまで続けるからな!」
 「ひっぐぅっ!……お願い、スキルの名前だけで許してください!スキルは絶対に使ったら駄目なんです!」

 彼の右手の薬指に、デコピンしようとしていたヒョロノッポがニヤニヤしながら離れていきました。
 眼鏡をかけた小柄な男の子が彼に近づいて、折れた小指を回復させようとしましたが、下手に回復させると指が変形するので、どうしようかと悩んでいました。
 太っちょのガキ大将はそんな事は気にせずに、さっさとスキルの名前を言えと急かし続けます。

 「絶対に誰にも内緒だよ!僕のスキルは『絶体絶命』呪文を唱えるだけで絶体絶命のピンチが起こるんだよ!だから絶対に使ったら駄目なんだ」
 
 彼のスキルを聞いた、太っちょのガキ大将が目を見開いて爛々と輝かせています。
 まるで最高の玩具を見つけて今にも大喜びして走り出しそうです。

 「絶体絶命のピンチになるのかぁ~、それは使ったら駄目だよなぁ~、……でも1回だけならいいだろう?」
 「駄目!本当に使ったら駄目なんだよ!」

 ボォグゥ、彼のお腹を太っちょが思い切り殴りました。
 彼はお腹を押さえて苦しそうに地面に蹲りましたが、ボォグゥ、ガァツゥ、ドォツ、ドォツとそんな彼を太っちょは無言で殴ったり、蹴ったりします。
 そして、地面に倒れた彼を蹴りつけながら命令します。

 「使え!使え!使え!使え!使え!使え!」

 最初は黙って見ていた他のイジメっ子達も太っちょに加わって、倒れた彼を蹴りつけながら命令します。

 「「「「使え!使え!使え!使え~~!」」」」

 彼は必死に膝を丸めて、両腕で頭と顔を守っていましたが、横から上から顔と身体を蹴られたり、踏みつけられます。
 (……もういいかな?……僕は頑張ったよね?……どうせ死なない程度に痛め付けて、また明日も明後日もイジメられるんだよね?……だったら使ってもいいよね?)
 彼は薄れゆく意識の中でスキルを使ってしまいました。

 「……バルス……」
 突然、女の人の声が街中の人間や動物達の頭の中に聞こえ始めました。
 「スキル『絶体絶命』が使用されました。3分後に魔王と1万の軍勢がこの街を襲撃します。勇気と知恵で絶体絶命のピンチを乗り越えてください。スキル『絶体絶命』が使用されました。」
 同じ事を2回言うと、謎の声は消えてしまいました。

 ⚫︎スキル『絶体絶命』:呪文を唱えるだけで発動。使用者が死亡した場合もスキルの効果は継続。

 「……はぁ~~??てめぇ~~何してんだよ!さっさと解除しろよ!解除しないと殺すぞ!」
 太っちょは大慌てで倒れている彼を揺さぶって、スキルを解除させようとしますが、弱々しい声で『一度発動したら解除は出来ないよ』の言葉で事の重要性に初めて気づきました。
 街の住民も新手の悪戯なのか、本当の事なのか分からずに、馬鹿らしいと笑っている人、とりあえず武器を用意する人、夕飯の支度に戻る人、ほとんどの人が悪戯と判断して、普通の生活に戻っていきました。
 ……3分後。街の周囲の地上と上空は魔物の大群に囲まれる事になりました。

 ⚫︎最上級ハーピー:女性の顔を持つ鳥型亜人モンスター。レベル=75、HP=7400、MP=2897、腕力=1289、体力=893、知性=1261、精神=1002、敏捷=1146、器用さ=963。

 ⚫︎最上級リザードマン:筋骨隆々な蜥蜴の亜人モンスター。剣、斧、槍、盾と様々な武器を使いこなす。レベル=73、HP=6900、MP=1907、腕力=1502、体力=974、知性=829、精神=827、敏捷=1085、器用さ=768。

 「……勝てない」

 スキル『ステータス化』:色々なものを数値として見る事が出来る。レベル上昇により、見えるものが増えていく。
 
 街の住民も悪戯ではない事が分かり、武器を持って戦う決意を漲らせていました。
 1人の住民が魔王の軍勢をスキルで調べた結果、最悪の結果が出てしまいました。

 ⚫︎街の自警団:街を守る兵士。13歳から入団可能で日々訓練と鍛錬に励む。レベル=30、HP=4900、MP=1852、腕力=436、体力=433、知性=391、精神=255、敏捷=389、器用さ=224。

 街の人口は4万人を超えていますが、実際に戦える人は2万人以下です。
 戦っても勝ち目がないので、スキル『交渉』やスキル『説得』などを持つ住民に協力してもらって魔王に何とか金品だけで見逃してもらう事に決めました。
 グゥシャ、グゥシャ、頭を掴まれたスキル『交渉』『説得』を持つ2人の住民が卵のように潰されました。スキル『誘惑』を持つ美女を差し出しても、グゥシャと頭を潰されました。
 「我を愚弄するつもりか?我に猿女と交れと申すのか?猿が服を着て、言葉を喋れば人間扱いされると本気で思っているのか?……アッハッハッハッハッハッ……皆殺しにしろ!」

 

 

 
 

 

 
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