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第1章・冒険者編
第7話
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当初の経営者は街の便利屋を目指して、依頼を受諾していたので危険な仕事は引き受けていませんでした。
依頼の不足と共に冒険者やならず者達がギルドに押し掛けては依頼を寄越せと居座るので、依頼人がやって来たら取り合いの喧嘩になっていました。
元々は暴れたくてウズウズしているような連中です。
魔物退治や魔物の生け捕り、危険な場所からの素材採集と今まで断っていた依頼の山を安全な依頼とは別の掲示板に貼り出しました。
予想通りに冒険者の1人が依頼用紙を持ってやって来ました。
依頼用紙を木製カウンターに叩きつけて、バァンと大きな音が建物の中に響きます。
「この依頼を受ける!」
「この依頼は危険だから、誓約書を書いてもらうよ」
60歳前後の中途半端なお爺さんが、カウンターの下から1枚の紙を取り出して、内容を読んで承諾できるなら、自分の名前を書けば依頼を受けられると言います。
①依頼中に死亡してもギルド(依頼人)に責任はない。
②依頼中に怪我してもギルド(依頼人)に責任はない。
③依頼中に損害が発生してもギルド(依頼人)に責任はない。
冒険者の持って来た依頼は採集依頼でした。
魔物が生息する森から、魔物の卵を2~3個盗み出してくる簡単な依頼でした。
魔物を倒すことで、その魔物が持っているスキルを獲得できるので、産まれたばかりの魔物なら簡単に倒す事が出来るのです。
報酬は5万となかなかの高額でしたが、命の危険がある上に、もしもの場合の補償がありません。普通は受けません。
サラサラサラと意外と綺麗な字で名前を書くと、意気揚々と魔物の卵を取りに行きました。心配するだけ無駄でした。
危険な依頼用紙を持って、カウンターに列を成して人が並んでいます。
元々、イカレた人間の集まりです。血を流しながら帰って来た冒険者やならず者達が子供のように武勇伝を語り合っていました。
いつしか依頼内容の難しさを競うようになり、喧嘩や口論が始めると、経営者のお爺さんは頭を抱え始めました。
しばらくして依頼用紙の右上に大きな文字で『A』『B』『C』『D』『E』『F』と難易度が書かれるようになりました。
当然のように『A』と書かれた依頼用紙だけが、カウンターのお爺さんの元にやって来ます。
「『A』の依頼を受けたいなら、『F』から順番にクリアしないと受けさせないよ!」
意外とルールはしっかりと守るようで今度は『F』の依頼用紙がやって来ました。
いつものように誓約書に名前を書くと、冒険者とならず者達は急いで『F』難易度の依頼を達成する為に出かけていきました。
月日は流れて、ギルドの創設者のお爺さんは亡くなりましたが、各地の街で同じようにギルドが建てられ、今ではほとんどの街に、大小様々なギルドが建てられる事になりました。
今も昔も同じように冒険者とならず者達が依頼の難易度を競い合うのは変わりません。
冒険者はギルドの依頼だけで生計を立てている人達で、ならず者は趣味や暇潰しにやっているだけの人達です。
どちらも腕が立つことを自慢にしている連中なので、とにかく喧嘩が日常的に発生していました。
建物の中に入ると同時に、彼も殴り飛ばされた男の巻き添えになって、床に倒れてしまいました。
「イテテ⁈悪い悪い、坊主大丈夫か?直ぐに退くから」
「うぅぅ~」
30歳ぐらいの汗と酒くさい男の下敷きにされてしまいました。
すぐに退くと言いながら、フラフラと立ち上がる時に彼の足を踏んづけていました。
(……我慢我慢。スキルで怪我は治るんだから……)
彼は壁に貼ってある依頼用紙に近づいて見ていました。
「おい、こっちの依頼は坊主には早過ぎる。あっちの街の草むしりか、ゴミ拾いを受けるんだな」
親切な冒険者が難易度が書かれていない。依頼達成率100%の簡単な依頼用紙が貼られている掲示板を教えてくれました。
「……ここの依頼を受けたいんだけど、年齢制限があるの?」
「そんなものはないけど、子供が出来る依頼がないだけさ。まずは『F』の文字が書かれている依頼を達成しないと、次の『E』には進めないしな!」
この180㎝はありそうな筋肉ガチムチ男は言いますが、この人は『C』までしか達成出来ていないらしいです。
⚫︎蜂の巣(5㎏以上):蜂の魔物の巨大な巣の一部を取ってきてください。ハチミツを取りたいので、出来るだけ巣を汚したり壊したりせずに運んでください。『F』ランク。報酬=3万~。
⚫︎鉱石採集:武器や防具の材料が不足しています。魔王討伐の為にあなたのスキルと協力が必要です。鉱石を『鑑定』『識別』するスキルが必須事項です。『F』ランク。報酬は鉱石の種類と量で決まります。
⚫︎亀の卵:亀の魔物のスキル『頑丈』が必要です。卵が見つからない場合は、亀の魔物の生け捕りでも構いません。『F』ランク。報酬=スキル1個1万。
彼は3枚の依頼用紙を持って、怪我した元冒険者のおじさんがいるカウンターに向かいました。
スラスラと誓約書に自分の名前を書くと、おじさんに説明された目的地を目指し、街を飛び立ちました。
依頼の不足と共に冒険者やならず者達がギルドに押し掛けては依頼を寄越せと居座るので、依頼人がやって来たら取り合いの喧嘩になっていました。
元々は暴れたくてウズウズしているような連中です。
魔物退治や魔物の生け捕り、危険な場所からの素材採集と今まで断っていた依頼の山を安全な依頼とは別の掲示板に貼り出しました。
予想通りに冒険者の1人が依頼用紙を持ってやって来ました。
依頼用紙を木製カウンターに叩きつけて、バァンと大きな音が建物の中に響きます。
「この依頼を受ける!」
「この依頼は危険だから、誓約書を書いてもらうよ」
60歳前後の中途半端なお爺さんが、カウンターの下から1枚の紙を取り出して、内容を読んで承諾できるなら、自分の名前を書けば依頼を受けられると言います。
①依頼中に死亡してもギルド(依頼人)に責任はない。
②依頼中に怪我してもギルド(依頼人)に責任はない。
③依頼中に損害が発生してもギルド(依頼人)に責任はない。
冒険者の持って来た依頼は採集依頼でした。
魔物が生息する森から、魔物の卵を2~3個盗み出してくる簡単な依頼でした。
魔物を倒すことで、その魔物が持っているスキルを獲得できるので、産まれたばかりの魔物なら簡単に倒す事が出来るのです。
報酬は5万となかなかの高額でしたが、命の危険がある上に、もしもの場合の補償がありません。普通は受けません。
サラサラサラと意外と綺麗な字で名前を書くと、意気揚々と魔物の卵を取りに行きました。心配するだけ無駄でした。
危険な依頼用紙を持って、カウンターに列を成して人が並んでいます。
元々、イカレた人間の集まりです。血を流しながら帰って来た冒険者やならず者達が子供のように武勇伝を語り合っていました。
いつしか依頼内容の難しさを競うようになり、喧嘩や口論が始めると、経営者のお爺さんは頭を抱え始めました。
しばらくして依頼用紙の右上に大きな文字で『A』『B』『C』『D』『E』『F』と難易度が書かれるようになりました。
当然のように『A』と書かれた依頼用紙だけが、カウンターのお爺さんの元にやって来ます。
「『A』の依頼を受けたいなら、『F』から順番にクリアしないと受けさせないよ!」
意外とルールはしっかりと守るようで今度は『F』の依頼用紙がやって来ました。
いつものように誓約書に名前を書くと、冒険者とならず者達は急いで『F』難易度の依頼を達成する為に出かけていきました。
月日は流れて、ギルドの創設者のお爺さんは亡くなりましたが、各地の街で同じようにギルドが建てられ、今ではほとんどの街に、大小様々なギルドが建てられる事になりました。
今も昔も同じように冒険者とならず者達が依頼の難易度を競い合うのは変わりません。
冒険者はギルドの依頼だけで生計を立てている人達で、ならず者は趣味や暇潰しにやっているだけの人達です。
どちらも腕が立つことを自慢にしている連中なので、とにかく喧嘩が日常的に発生していました。
建物の中に入ると同時に、彼も殴り飛ばされた男の巻き添えになって、床に倒れてしまいました。
「イテテ⁈悪い悪い、坊主大丈夫か?直ぐに退くから」
「うぅぅ~」
30歳ぐらいの汗と酒くさい男の下敷きにされてしまいました。
すぐに退くと言いながら、フラフラと立ち上がる時に彼の足を踏んづけていました。
(……我慢我慢。スキルで怪我は治るんだから……)
彼は壁に貼ってある依頼用紙に近づいて見ていました。
「おい、こっちの依頼は坊主には早過ぎる。あっちの街の草むしりか、ゴミ拾いを受けるんだな」
親切な冒険者が難易度が書かれていない。依頼達成率100%の簡単な依頼用紙が貼られている掲示板を教えてくれました。
「……ここの依頼を受けたいんだけど、年齢制限があるの?」
「そんなものはないけど、子供が出来る依頼がないだけさ。まずは『F』の文字が書かれている依頼を達成しないと、次の『E』には進めないしな!」
この180㎝はありそうな筋肉ガチムチ男は言いますが、この人は『C』までしか達成出来ていないらしいです。
⚫︎蜂の巣(5㎏以上):蜂の魔物の巨大な巣の一部を取ってきてください。ハチミツを取りたいので、出来るだけ巣を汚したり壊したりせずに運んでください。『F』ランク。報酬=3万~。
⚫︎鉱石採集:武器や防具の材料が不足しています。魔王討伐の為にあなたのスキルと協力が必要です。鉱石を『鑑定』『識別』するスキルが必須事項です。『F』ランク。報酬は鉱石の種類と量で決まります。
⚫︎亀の卵:亀の魔物のスキル『頑丈』が必要です。卵が見つからない場合は、亀の魔物の生け捕りでも構いません。『F』ランク。報酬=スキル1個1万。
彼は3枚の依頼用紙を持って、怪我した元冒険者のおじさんがいるカウンターに向かいました。
スラスラと誓約書に自分の名前を書くと、おじさんに説明された目的地を目指し、街を飛び立ちました。
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