アマゾネスの異男児

もう書かないって言ったよね?

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☆武星視点☆

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「すみません、武星様ですか?」
「……」

 作業服を着た、灰色の長い髪の武星様に話しかけてみた。けれども反応がない。
 炉で熱せられて真っ赤になった、短剣ぐらいの刃を黙々と金づちで叩いている。
 仕事の邪魔すると悪いし、しつこく話しかけると怒られそうだ。
 このまま黙って見ておこう。弟子になったらどんな仕事をするのか知りたい。

 カァン、カァン、カァン。

 武星様が振るう金づちからは心地良い音が鳴り続けている。
 まるで音楽を奏でているようだ。気づけば他の炉からも同じ音が鳴っていた。

「ふぅー、それで私に何か用?」
「……あっ、はい!」

 音楽に聴き入っていると短剣を置いた武星様が訊いてきた。
 慌てて返事すると用件を話した。

「僕、武星様の弟子になりたいんです。なれますか?」
「ん~、若そうだね。スキルは発現しているの?」
「いえ、まだですけど、氣は使えます! やる気もあります!」
「ん~、欲しいのは才能なんだけどね」

 必死にアピールするけど、武星様の心に僕の思いは届いていない。
 これは拒否される流れだ。明日には武術道場で先輩面する僕が居そうだ。

「お願いします! 才能じゃなくて、僕を見てください! 見てくれるまで一歩も動きません!」
「ほへぇ~」

 でも、僕はあの腰抜け素人とは違う。
 このまま諦めて道場に通ったりしない。
 素早く床に土下座すると、頭を床に擦り付けてお願いした。

「困ったなぁ~。じゃあ、《4等星》になったらまた来てよ。そしたら、鉱石採取ぐらいは頼めると思うから」
「4等星……5等星じゃ駄目ですか?」
「駄目。最低でも4等星ぐらいの力がないと危なくてお使いも頼めないよ」
「……」

 4等星になれる一番簡単な方法はスキルの発現だ。
 それも強力なスキルじゃないと即4等星にはなれない。
 明らかに諦めさせて追い出そうとしている。
 でも、僕はそう簡単には諦めたりしない。

「分かりました。じゃあ4等星になったら弟子にしてください。約束ですよ」
「ん、いいよ。じゃあ4等星になったらまた来てよ。楽しみに待ってるからさ」
「はい。約束ですよ」

 立ち上がると微笑む武星様にしっかりと約束させた。
 武星様には悪いけど、僕はスキルが発現する5年後まで待つつもりはない。
 どんな手を使っても、4等星になって、必ず近いうちに戻ってきてやる。

 ☆武星視点☆

「アグリル、あんな約束してもいいの? あの子、本気にしちゃってるよ」

 熱心な弟子入り志願者が工房から出ていくのを見届けると、ネペロがやってきた。

「ん~、別にいいんじゃない。見た感じ8、9歳でしょ? 発現したスキルが戦闘向きだろうと生産向きだろうと弟子になりたいなら、《設定》で役立つようにしてくれるだろうし。どっちにしても工房の為に役に立ってくれるはずだよ」
「まあ、そうだろうけど……来ない可能性もあるんじゃない?」
「その時はその時だよ。やる気があるなら来るし、ないなら来ない。少なくとも来たら、やる気はあるって証拠じゃない。少なくとも今、弟子にするよりはその方が無駄な時間は減らせるからね」
「ふぅーん、そこまで考えているなら別にいいけど。あの子、どう見ても戦闘系なのよね。なんか嫌が予感がするわ」
「ハハッ。気の所為、気の所為。さあ、仕事に戻りましょう」

 気にし過ぎない仲間に笑って言うと、新作の短剣製作に戻った。
 左右で切れ味が違う、性能が異なる武器が作れないか試行錯誤の最中だ。

 ☆
 ☆
 ☆

 武器工房を出ると僕は魔星様探しを始めた。
 セラさんが言うには魔星様は動物達に囲まれて、森で一人暮らししているそうだ。

「これ、売れるかな?」

 なんか手土産を持っていった方が良いと思うけど、手持ちは貸された木剣だけだ。
 お金なんてないし、これを売ってお金が手に入らないか考えてしまう。

「仕方ない。薬草でも持っていこう」

 もちろん剣の形の木の棒が高く売れるとは思えない。
 僕が用意できる物で一番価値のあるものを持っていこうと決めた。

「ああ、あの人か……悪いね、知らないよ」
「そうですか。ありがとうございます」

 これで何人目だろうか。
 魔星様が住んでいる森を町の人に訊ねているのに誰も知らない。
 町の周囲は森に囲まれているし、方角だけでも教えてくれたら助かる。
 島の森を全部探すのは一苦労どころか、百苦労はしそうだ。

 そもそも、セラさんの地図が酷かった。
 森に矢印付けて、森の何処か。ヒントはこれだけだ。
 でも待てよ。動物達に囲まれて暮らしているのが本当なら、それがヒントになるのかも。

「すみません。ちょっと聞きたいんですけど……」
「はい、何ですか?」
「魔星様が飼っている動物って何ですか?」

 試しに訊き方を変えてみた。

「魔星様が飼っている動物……?」

 前までは知らないの即答だったのに考えている。
 これはイケるかもしれない。

「もしかして卵のこと?」
「卵ですか?」

 考えていたお姉さんが予想外の答えを言ってきた。

「そう、その卵。ニワトリの卵ぐらいの大きさの黄色い卵で、前に肉屋で売られていたんだよ。それがなかなか美味しくてね。誰が作ったのか聞いたら、魔星様の卵だって言うんだよ。魔法で卵まで作るなんて、本当に不気味な女だね」
「えっ、あっ、はい……」

 何だろう。お姉さんが最後の方に嫌そうな顔をした。
 町で暮らさないで、森で暮らしている変わり者。
 もしかしたら、僕は第三の悪魔に会いに行こうとしているんじゃないだろうか。
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