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九匹目

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「まったく、どうしてこんなにウンチが入っている袋を持ち歩いていたんだ? 変な事でもしようとしていたのか?」

 小父さんに公園のベンチに座らされて職務質問です。
 職業は無職です。名前はケンちゃんです。

「違います。野良猫さん達のウンチを拾っていたんです。だって、ウンチを片付ければ野良猫さん達にエサをあげてもいいはずだから……」
「よく分からんが、だったら付いて来い。猫のウンチで迷惑している場所がある。好きなだけ持っていけ」

 小父さんはゴミ袋に入っていたウンチを、公園のトイレに流すと僕を連れていく。
 ウンチ狩りをさせたいみたいだけど、僕は野良猫さんを探しただけだ。
 でも、怖い小父さんには逆らえません。

「ここだ。近所の子供が学校の行きと帰りにエサをやるから、勝手に増えていく」
「うわぁー、凄い……」

 小父さんに連れて行かれた場所は雑草で荒れ果てた空き家だった。
 その空き家に野良猫が何匹も住み着いているみたいだ。

「住居不法侵入とか訳の分からない事を言いおって、市役所の奴らは何もしない。未成年なら入っても問題ないから、好きなだけ片付けろ」
「う、うん……」

 多分、未成年でも他人の敷地内に入るのは駄目だと思う。
 ちょっとお化け屋敷みたいで怖いけど、小父さんも怖い。勇気を出して、空き家に侵入した。

「ニャーニャー!」
「ニャーニャー!」
「ごめんねぇ。今日は猫缶を持ってないんだ」

 二匹の子猫が近寄ってきた。黒猫と茶黒猫だから、探しているヒョウ柄猫じゃない。
 子猫を見れば、お父さん猫もお母さん猫もヒョウ柄猫じゃないと思う。

 ウンチを踏まないように注意しながら、スコップでウンチを回収していく。
 もうウンチは回収したくないから、野良猫さんだけ探したい。

「泥棒みたいでドキドキする。早く終わらせないと……」

 違う意味でとても怖い。
 誰かに通報されて、本物のお巡りさんに捕まるとお母さんに迷惑をかけてしまう。
 また別の新しい家の新しいお母さんの所に、行かないといけないかもしれない。
 
「終わりました」
「そうか。ほら、小遣いだ」
「あ、ありがとうございます……」

 ウンチの回収を終わらせると、家の外で待っていた小父さんに報告した。
 小父さんはお小遣いを渡してくれたけど、たったの十円だった。
 働くってとっても大変だと思う。
 
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