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第三章
第三章最終話『剛腕vs泳ぐ+混ぜる』
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ウォルターは十二人の凄腕護衛とハンマーを担いだミファリスを連れて、リランの屋敷の男門番に直談判しています。駄目だと言われたら、後ろのお兄さん達が実力を見せる事になります。
「お願いします。この屋敷で雇ってください」
「巫山戯んなよ! こんな人数雇えるはずがねぇだろうがぁー! さっさと帰れ!」
流石に人数が多いですが、人望と冒険者ギルドに多額の預金があるという事で、納得してもらうしかありません。
「構わない。全員通せ」
「ロデリックさん⁉︎ いや、流石に多過ぎますよ。もしかすると、リラン様を殺そうとする刺客の可能性も……」
灰色髪の坊主頭に幾何学模様の剃り込み、身長二メートルの赤黒い肌の大男が現れると、門番に中に通すように言ってきました。
門番の驚いている表情から、屋敷の中でも重要な立場の人間のようです。
……というよりもリランの海賊船の元副船長です。
「問題ねぇ。数は減らすつもりだ。使えない奴は放り出して、使える奴はしばらく様子を見てやる。さっさと中に入れろ」
「へい! お前達、さっさと中に入れ! 二度と無いチャンスだと思って感謝するんだぞ!」
二人の門番は鉄柵の門を開けて、十四人を屋敷の中に入れました。
ロデリックの後ろをゾロゾロと十四人は付いて行きます。
案内された場所は大きな稽古場でした。
「好きな武器を使え。うちは完全実力主義だ。強ければ雇う、弱ければ追い出す、それだけだ。準備が出来た奴からかかって来い。俺を倒せれば合格にしてやる」
ロデリックの武器は、両拳にはめている金属製のナックルダスターと呼ばれる打撃武器だけです。
拳に鉄の棒を巻き付けて殴るような武器に、どれだけの攻撃力があるのか不明ですが、あの巨体に殴られれば、ウォルターの背骨ぐらいは一撃でへし折れそうです。
「おい、あれはヤバイ。絶対に勝てない相手だ」
「ああっ、分かっているよ。怪我しないうちに帰ろうぜ」
腕利きだと紹介された冒険者十二人のうち、八人が戦う前に稽古場から出て行こうとしています。
ウォルターは勝手に帰ろうとしている冒険者達に気がつくと、急いで呼び止めました。
「ちょっとどこ行くんですか! 仕事してくださいよ!」
「旦那……悪いけど、相手が悪過ぎる。あれは『剛腕』と『金剛』のスキル持ちのロデリックだ。真剣で攻撃しても、身体に傷一つ付かねぇ化け物に勝てるはずないんだよ。旦那も怪我する前に諦めた方がいい。力になれずにすまねぇな」
「そんなぁ……」
冒険者達は謝りながら稽古場から出て行きました。
ウォルターはそれを止める事が出来ませんでした。
「小僧。別におかしな事じゃねぇよ。何に命を懸けるかは人それぞれだ。金に命を懸ける奴もいれば、戦いに命を懸ける奴もいる。ここに残った奴は、とりあえず俺と同じタイプの人間だ。金の為に命を懸けない奴は良い仕事をする。その点は合格だ。残る問題は実力だけだ。さっさと来い! 腰抜けども!」
ロデリックはウォルターを真っ直ぐに睨んだ状態で、力強い声で自論を話していきます。
剛腕のロデリックは話しているだけですが、ウォルターはそれだけで絶対に勝てない気持ちになっていきます。
目の前の巨大な肉食獣に対して、自分が産まれたての子猫のような気分になっていきます。
それでも、この稽古場に残った凄腕冒険者四人には戦う勇気があるようです。
「くだらねぇ! 勝手にてめぇと一緒にするんじゃねぇよ!」
「ほぉー、そうだな。一緒にされたら、俺の方が迷惑だ。おい、デカブツ。喋る置き物の募集はしてないんだ。仕事がしたいなら市場の隅に立ってろ」
「何だと? その減らず口と一緒にその剛腕! 我の鉄鎚でへし折ってやる! ウオオォォーー‼︎」
直径三十センチはある、先端の尖った鉄のハンマーを持ち上げて、一人の大男がロデリックに向かって突撃して行きました。
「……」
ロデリックは頭の上で腕を交差させてガードしています。
ここに落として来いと言っているようです。
大男はその挑発に乗って、頭目掛けて、ハンマーを力一杯振り下ろしました。
ドガァ‼︎ と大男の渾身の一撃が稽古場の床板を打ち破りました。
「なにぃ⁉︎」
ロデリックはハンマーが振り下ろされる瞬間に躱しました。
まさか躱すとは思っていなかった大男は反応が遅れています。
「勇気があると思ったが、ただの脳筋か!」
ロデリックは躱すと同時に、右剛腕を一振りします。風切り音が聞こえるような凄まじい一撃が、大男の鉄板に守られた腹部を——ドガァン‼︎ と鉄板ごとブチ打ち抜きました。
「ごぼぉ⁉︎ うっ、がはっ……」
「まずは一人失格だ。次に失格したい奴はまだいるか?」
「うっ……俺はいい」
「俺もだ」
ロデリックの問い掛けに、剣を構えていた二人と弓を構えていた一人が武器を下ろしました。
戦う必要がない程に実力差があると分かったようです。
治療費は自己負担なので、銀貨一枚で大怪我するつもりは誰もありません。
♦︎
「フン、準備運動にもならなかったな。お前達は帰らなくていいのか?」
稽古場にはウォルターとミファリスが残っていました。
三人の冒険者は気絶した大男を担いで、屋敷の外に出て行きました。
「命を懸ける理由があるんです。負けてもいないのに帰れるはずがありません」
ウォルターは戦う覚悟を決めると、鞘から青白い刀身を持つ水龍剣リヴァイアサンを抜きました。
魂さえも切ってしまいそうな剣に、ロデリックは僅かな死の恐怖を感じなからも、笑みを浮かべていきます。
「おいおい、そのヤバそうな剣は何だ? 殺し合いでもするつもりか?」
「雇われる条件があなたを倒す事ならば、殺してでも倒させてもらいます」
「フッフフ。イカれたガキだな。もう何人……いや、何十人か殺しているな? いいぜ。殺せるもんなら殺してみろ。そうじゃあ、楽しい殺し合いを始めるか!」
凶悪な笑みを浮かべながら、ロデリックは剣に臆する事なく、ウォルターに向かって行きました。
久し振りの勝ち負けの分からない戦いに、興奮が抑え切れないようです。
「セイッ‼︎ ハァッ‼︎ トリャァ‼︎」
向かって来る赤黒い肌の怪物に対して、ウォルターは素早く剣を三回振りました。
左に剣を振り払い、右に剣を振り払い、上から下に振り下ろしました。
けれども、軽々と躱され、擦りもしません。パワーだけでなく、スピード……そして圧倒的に高い戦闘経験が、ウォルターの攻撃を無意味なものに変えていきます。
「ハッハッハ! 武器だけ超一級品で、使い手は三流以下、五流もいいところだ。武器を雇って欲しいなら置いて行けよ!」
「舐めるな! セイッ‼︎」
ロデリックの挑発的な言葉と当たらない攻撃に、ウォルターは徐々に冷静さを失っていきます。
その所為か、振り上げた剣を振り下ろす瞬間を狙われてしまいました。
「遅えよ!」
ロデリックの右腕が蛇のように素早く動いて、ウォルターの手首をガシィッと掴みました。
「あぐっ⁉︎ うああぁぁぁぁ~~~‼︎」
ギリギリと腕に力を入れて、苦痛の声を上げるウォルターの手首を握力だけで握り潰していきます。
「折れる前にさっさと剣を離せ。それとも折れた腕で剣を振るつもりか? だとしたら無理だ」
「ウォルターさんから手を離してください! 私のハンマーで、その汚い手を粉々にしますよ!」
「ミ、ミファリス……僕は平気だ、離れろ……」
「フッ。おいおい、随分とヤンチャなガールフレンドだな」
ロデリックは突然、視界の左隅に現れたミファリスをチラッと見ると、思わず笑ってしまいました。
持ち上げているハンマーがプルプルと震えていたからです。
でも、次の瞬間、警告通りにその凶悪な破砕ハンマーが、ロデリックの右腕に振り下ろされました。
「エイッ‼︎」
ハンマーが直撃した瞬間、ロデリックの右腕は激しく痺れました。
「ぐぅわっっ⁉︎ ぐっ、何だ⁉︎」
久し振りに感じる痛みでしたが、力の弱い女の一撃に、ここまでの威力があるはずがありません。
ミファリスがスキルを使ったと判断すると、その後のロデリックの動きは冷静なものでした。
「俺の身体に何をしたぁーーー‼︎」
「きゃあああ‼︎」
「お前もいい加減に剣を離せ!」
「うがああぁぁぁぁ‼︎」
大声だけでミファリスを戦意喪失にすると、左腕を使って、ウォルターの手から力尽くで剣を奪い取りました。
そして、ミファリスの手からもハンマーを奪い取ると、軽く自分の身体をハンマーで叩きました。
「ただのハンマーか……だとしたら、やはりスキル持ちか」
ハンマーで叩いても痛みを感じませんでした。
その結果、ミファリスがスキルで攻撃した事がハッキリと分かりました。
疑問が解けて、ロデリックはスッキリした顔をしています。
でも、ウォルターとミファリスの二人にとっては、そんな事はどうでもいい事です。
「くっ、お願いします! もう一度だけチャンスをください!」
「ウォルターさん、無理です。これ以上は怪我するだけじゃ済みません。諦めましょう」
「でも、ここまで来たのに……」
ウォルターはハンマーを持っているロデリックの前に両膝をついて、再挑戦をお願いしています。
今の実力差で勝てない事を理解できない程、子供じゃないはずです。
その証拠にあのミファリスが止めています。戦わなくても結果が分かっているからです。
「……殺傷力の高い剣に、見た目と攻撃力が違い過ぎる女か……いいだろう。給料無しの見習いでいいなら、一ヶ月だけ、飯と寝床の面倒だけは見てやる。それでいいなら付いて来い。屋敷の中を案内してやる」
二人の顔をじっくりと見た後に、ロデリックはそう言いました。
条件としては最悪です。普通の人なら絶対に受けたりしません。
でも、覚悟と自信がある者ならば、喜んでこの最悪の条件で引き受けます。
「お願いします!」
「フッ。いいだろう。ようこそ地獄の入り口へ。お前達を歓迎しよう」
ウォルターはロデリックに向かって、ハッキリと言いました。
この先が地獄だろうと、そんなものはとっくの昔に通り過ぎました。
「よろしくお願いします」
ウォルターは差し出された剛腕を躊躇なく握り返しました。
♦︎
第三章・完
「お願いします。この屋敷で雇ってください」
「巫山戯んなよ! こんな人数雇えるはずがねぇだろうがぁー! さっさと帰れ!」
流石に人数が多いですが、人望と冒険者ギルドに多額の預金があるという事で、納得してもらうしかありません。
「構わない。全員通せ」
「ロデリックさん⁉︎ いや、流石に多過ぎますよ。もしかすると、リラン様を殺そうとする刺客の可能性も……」
灰色髪の坊主頭に幾何学模様の剃り込み、身長二メートルの赤黒い肌の大男が現れると、門番に中に通すように言ってきました。
門番の驚いている表情から、屋敷の中でも重要な立場の人間のようです。
……というよりもリランの海賊船の元副船長です。
「問題ねぇ。数は減らすつもりだ。使えない奴は放り出して、使える奴はしばらく様子を見てやる。さっさと中に入れろ」
「へい! お前達、さっさと中に入れ! 二度と無いチャンスだと思って感謝するんだぞ!」
二人の門番は鉄柵の門を開けて、十四人を屋敷の中に入れました。
ロデリックの後ろをゾロゾロと十四人は付いて行きます。
案内された場所は大きな稽古場でした。
「好きな武器を使え。うちは完全実力主義だ。強ければ雇う、弱ければ追い出す、それだけだ。準備が出来た奴からかかって来い。俺を倒せれば合格にしてやる」
ロデリックの武器は、両拳にはめている金属製のナックルダスターと呼ばれる打撃武器だけです。
拳に鉄の棒を巻き付けて殴るような武器に、どれだけの攻撃力があるのか不明ですが、あの巨体に殴られれば、ウォルターの背骨ぐらいは一撃でへし折れそうです。
「おい、あれはヤバイ。絶対に勝てない相手だ」
「ああっ、分かっているよ。怪我しないうちに帰ろうぜ」
腕利きだと紹介された冒険者十二人のうち、八人が戦う前に稽古場から出て行こうとしています。
ウォルターは勝手に帰ろうとしている冒険者達に気がつくと、急いで呼び止めました。
「ちょっとどこ行くんですか! 仕事してくださいよ!」
「旦那……悪いけど、相手が悪過ぎる。あれは『剛腕』と『金剛』のスキル持ちのロデリックだ。真剣で攻撃しても、身体に傷一つ付かねぇ化け物に勝てるはずないんだよ。旦那も怪我する前に諦めた方がいい。力になれずにすまねぇな」
「そんなぁ……」
冒険者達は謝りながら稽古場から出て行きました。
ウォルターはそれを止める事が出来ませんでした。
「小僧。別におかしな事じゃねぇよ。何に命を懸けるかは人それぞれだ。金に命を懸ける奴もいれば、戦いに命を懸ける奴もいる。ここに残った奴は、とりあえず俺と同じタイプの人間だ。金の為に命を懸けない奴は良い仕事をする。その点は合格だ。残る問題は実力だけだ。さっさと来い! 腰抜けども!」
ロデリックはウォルターを真っ直ぐに睨んだ状態で、力強い声で自論を話していきます。
剛腕のロデリックは話しているだけですが、ウォルターはそれだけで絶対に勝てない気持ちになっていきます。
目の前の巨大な肉食獣に対して、自分が産まれたての子猫のような気分になっていきます。
それでも、この稽古場に残った凄腕冒険者四人には戦う勇気があるようです。
「くだらねぇ! 勝手にてめぇと一緒にするんじゃねぇよ!」
「ほぉー、そうだな。一緒にされたら、俺の方が迷惑だ。おい、デカブツ。喋る置き物の募集はしてないんだ。仕事がしたいなら市場の隅に立ってろ」
「何だと? その減らず口と一緒にその剛腕! 我の鉄鎚でへし折ってやる! ウオオォォーー‼︎」
直径三十センチはある、先端の尖った鉄のハンマーを持ち上げて、一人の大男がロデリックに向かって突撃して行きました。
「……」
ロデリックは頭の上で腕を交差させてガードしています。
ここに落として来いと言っているようです。
大男はその挑発に乗って、頭目掛けて、ハンマーを力一杯振り下ろしました。
ドガァ‼︎ と大男の渾身の一撃が稽古場の床板を打ち破りました。
「なにぃ⁉︎」
ロデリックはハンマーが振り下ろされる瞬間に躱しました。
まさか躱すとは思っていなかった大男は反応が遅れています。
「勇気があると思ったが、ただの脳筋か!」
ロデリックは躱すと同時に、右剛腕を一振りします。風切り音が聞こえるような凄まじい一撃が、大男の鉄板に守られた腹部を——ドガァン‼︎ と鉄板ごとブチ打ち抜きました。
「ごぼぉ⁉︎ うっ、がはっ……」
「まずは一人失格だ。次に失格したい奴はまだいるか?」
「うっ……俺はいい」
「俺もだ」
ロデリックの問い掛けに、剣を構えていた二人と弓を構えていた一人が武器を下ろしました。
戦う必要がない程に実力差があると分かったようです。
治療費は自己負担なので、銀貨一枚で大怪我するつもりは誰もありません。
♦︎
「フン、準備運動にもならなかったな。お前達は帰らなくていいのか?」
稽古場にはウォルターとミファリスが残っていました。
三人の冒険者は気絶した大男を担いで、屋敷の外に出て行きました。
「命を懸ける理由があるんです。負けてもいないのに帰れるはずがありません」
ウォルターは戦う覚悟を決めると、鞘から青白い刀身を持つ水龍剣リヴァイアサンを抜きました。
魂さえも切ってしまいそうな剣に、ロデリックは僅かな死の恐怖を感じなからも、笑みを浮かべていきます。
「おいおい、そのヤバそうな剣は何だ? 殺し合いでもするつもりか?」
「雇われる条件があなたを倒す事ならば、殺してでも倒させてもらいます」
「フッフフ。イカれたガキだな。もう何人……いや、何十人か殺しているな? いいぜ。殺せるもんなら殺してみろ。そうじゃあ、楽しい殺し合いを始めるか!」
凶悪な笑みを浮かべながら、ロデリックは剣に臆する事なく、ウォルターに向かって行きました。
久し振りの勝ち負けの分からない戦いに、興奮が抑え切れないようです。
「セイッ‼︎ ハァッ‼︎ トリャァ‼︎」
向かって来る赤黒い肌の怪物に対して、ウォルターは素早く剣を三回振りました。
左に剣を振り払い、右に剣を振り払い、上から下に振り下ろしました。
けれども、軽々と躱され、擦りもしません。パワーだけでなく、スピード……そして圧倒的に高い戦闘経験が、ウォルターの攻撃を無意味なものに変えていきます。
「ハッハッハ! 武器だけ超一級品で、使い手は三流以下、五流もいいところだ。武器を雇って欲しいなら置いて行けよ!」
「舐めるな! セイッ‼︎」
ロデリックの挑発的な言葉と当たらない攻撃に、ウォルターは徐々に冷静さを失っていきます。
その所為か、振り上げた剣を振り下ろす瞬間を狙われてしまいました。
「遅えよ!」
ロデリックの右腕が蛇のように素早く動いて、ウォルターの手首をガシィッと掴みました。
「あぐっ⁉︎ うああぁぁぁぁ~~~‼︎」
ギリギリと腕に力を入れて、苦痛の声を上げるウォルターの手首を握力だけで握り潰していきます。
「折れる前にさっさと剣を離せ。それとも折れた腕で剣を振るつもりか? だとしたら無理だ」
「ウォルターさんから手を離してください! 私のハンマーで、その汚い手を粉々にしますよ!」
「ミ、ミファリス……僕は平気だ、離れろ……」
「フッ。おいおい、随分とヤンチャなガールフレンドだな」
ロデリックは突然、視界の左隅に現れたミファリスをチラッと見ると、思わず笑ってしまいました。
持ち上げているハンマーがプルプルと震えていたからです。
でも、次の瞬間、警告通りにその凶悪な破砕ハンマーが、ロデリックの右腕に振り下ろされました。
「エイッ‼︎」
ハンマーが直撃した瞬間、ロデリックの右腕は激しく痺れました。
「ぐぅわっっ⁉︎ ぐっ、何だ⁉︎」
久し振りに感じる痛みでしたが、力の弱い女の一撃に、ここまでの威力があるはずがありません。
ミファリスがスキルを使ったと判断すると、その後のロデリックの動きは冷静なものでした。
「俺の身体に何をしたぁーーー‼︎」
「きゃあああ‼︎」
「お前もいい加減に剣を離せ!」
「うがああぁぁぁぁ‼︎」
大声だけでミファリスを戦意喪失にすると、左腕を使って、ウォルターの手から力尽くで剣を奪い取りました。
そして、ミファリスの手からもハンマーを奪い取ると、軽く自分の身体をハンマーで叩きました。
「ただのハンマーか……だとしたら、やはりスキル持ちか」
ハンマーで叩いても痛みを感じませんでした。
その結果、ミファリスがスキルで攻撃した事がハッキリと分かりました。
疑問が解けて、ロデリックはスッキリした顔をしています。
でも、ウォルターとミファリスの二人にとっては、そんな事はどうでもいい事です。
「くっ、お願いします! もう一度だけチャンスをください!」
「ウォルターさん、無理です。これ以上は怪我するだけじゃ済みません。諦めましょう」
「でも、ここまで来たのに……」
ウォルターはハンマーを持っているロデリックの前に両膝をついて、再挑戦をお願いしています。
今の実力差で勝てない事を理解できない程、子供じゃないはずです。
その証拠にあのミファリスが止めています。戦わなくても結果が分かっているからです。
「……殺傷力の高い剣に、見た目と攻撃力が違い過ぎる女か……いいだろう。給料無しの見習いでいいなら、一ヶ月だけ、飯と寝床の面倒だけは見てやる。それでいいなら付いて来い。屋敷の中を案内してやる」
二人の顔をじっくりと見た後に、ロデリックはそう言いました。
条件としては最悪です。普通の人なら絶対に受けたりしません。
でも、覚悟と自信がある者ならば、喜んでこの最悪の条件で引き受けます。
「お願いします!」
「フッ。いいだろう。ようこそ地獄の入り口へ。お前達を歓迎しよう」
ウォルターはロデリックに向かって、ハッキリと言いました。
この先が地獄だろうと、そんなものはとっくの昔に通り過ぎました。
「よろしくお願いします」
ウォルターは差し出された剛腕を躊躇なく握り返しました。
♦︎
第三章・完
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注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。
(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
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