第一王子『剣聖』第二王子『賢者』第三王子『泳ぐ』 〜使えないスキルだと追放された第三王子は世界を自由に泳ぎたい〜

もう書かないって言ったよね?

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第五章

第6話『ドラゴン退治ツアー』

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「結局はガラクタばかりなんですね」
「そんな事はないけど……」

 馬車の小窓からミファリスがウォルターに文句を言っています。
 帰る事には同意しましたが、それは村の近くのお宝をディアナに見させた後です。
 土偶ばかりも何百体もいりません。

「きっとウォルターさんの探査の仕方が悪いんです。貴重品ではなくて、条件を金貨千枚で探してみてください。そしたら、一発です」
「そんなの出来ないよ。例えば武器を探すから、剣を探すぐらいには条件は変えられるけど、凄い剣とか指定して探す事は出来ないよ。指定できるのは、僕が見たり、知っている物だけだよ」
「つまりはある程度しか出来ないんですか……じゃあ、貴重な武器で探査してください! それなら出来るでしょう!」
「まあ、出来るけど……」

 多分、古い石斧とか、古い黒曜石のナイフとか、そんな物しか見つからない気がします。
 貴重=高い、はなかなか成立しません。

「ふっふふ。ウォルター君は女性の尻に敷かれるタイプじゃな。そんなんじゃ将来苦労するぞ」
「そういうつもりはないんですけど、そう見えますか?」

 ミファリスの使い走りにされているウォルターに、王様は同情します。
 良い女を駄目にするのは悪い男ですが、良い男を駄目にするのは悪い女です。
 宝石を買ってと強請らないだけ、まだマシですが、このままだと、いずれ言い出しそうです。

「うむ、見える。でも、今のところは悪くはない状態だと思うぞ。三人の役割分担はしっかりとしている。あとは三人の関係性じゃな。冒険者パーティーのいざこざのほとんどが恋愛じゃ」
「王様、その事はさっきも言ったように、二人とはそういう関係じゃないです」
「ふっふふ。分かっておるよ、ウォルター君。でも、今はそういう気持ちはなくとも、一緒にいる時間が長くなると、友達や仲間だと思っていた相手に、特別な気持ちを持つ事はよくある事なんじゃよ」
「はぁ……それはそうですけど……」

 ウォルターはチラッと馬車の中を見ますが、何度見ても、黒髪の十六歳の少女と栗色髪の九歳の少女しかいません。ミファリスは普通、ディアナは可愛いです。そこには文句はありません。
 でも、二人とも胸の栄養が足りてない所為か、ちんまりとしています。文句はないですが、やっぱり無いよりは、人並みに有る方が良いです。

「どうしました、兄様? 私達を見比べて」
「いや、何でもないよ」

 ディアナに気づかれて、ウォルターは慌てて、視線を後ろから前に戻しました。
 ミファリスは絶望的ですが、ディアナはまだまだ成長に期待ありです。

「ふっふふ。ウォルター君、父親の目から見ても娘は優秀だと思うぞ。ウォルター君さえ良ければ、ワシの事を王様ではなく、正式にお義父さんと呼んでくれてもいいん」
「——あっ、それは結構です」

 ウォルターは即答しました。最大級の譲歩でも小父さんです。

「ぬっ⁉︎ そうか、まだ気持ちの整理は出来ないか……そういえば、ウォルター君? 狼はどんな魔物との縄張り争いに負けたんじゃ? 一応は報告しないといけないからの」

 未来の娘婿の冷たい反応に、王様は軽くショックを受けましたが、素早く話題を何気ない話題に変えて、態勢の立て直しを始めました。
 まずは事務的な会話のキャッチボールで、少し冷えてしまった関係を温め直したいようです。
 
「翼の生えた緑色のドラゴンです。一匹だけのようですけど、無理して倒す必要がないと思います。下手に倒そうとしても、怒らせて被害者が出るだけですからね」
「なぬっ? ドラゴンじゃと……ドゥドゥ‼︎」

 ドラゴンと聞いた瞬間に、王様が二頭の馬の手綱を引いて、馬車を緊急停車させました。

「うわぁ⁉︎」「にゃあ⁉︎」「ひゃあ⁉︎」

 ウォルターは落ちそうになって声を上げ、馬車の中からも女性二人の声が上がりました。

「王様、どうしたんですか⁉︎」
「ウォルター君、お宝探しツアーは中止にして、ドラゴン退治ツアーにしてくれないか? ワシの一生の頼みじゃ。子供の頃の夢を叶えさせてくれないか? 叶えてくれたら、娘を好きにしてくれても構わないから」

 コラコラコラと王様に利益しかない要求です。
 真剣な顔で頼まれても、正直断わりたい気持ちしかないです。
 それは馬車の中のディアナも同じようです。
 勝手に報酬にされて、好きにされたら困ります。

「兄様、父様の事は無視していいです。どうせ倒すのは父様じゃなくて、私達になります。苦労するのは私達ですよ」
「そうだね。目的地に着くまで時間がかかるし、王様にドラゴン退治なんて危険な事はさせられないよね」

 王様のお願いはウォルターとディアナによって、却下されました。反対2に賛成1です。
 それでも、王様は諦めませんでした。少し頑張れば、生ドラゴンが見られるかもしれないからです。

「ディアナ、そんな事を言わないでお父さんの夢を叶えるのを手伝ってよ! お父さんにとっては、娘の結婚式と同じぐらいに、ドラゴンを倒すのは夢なんだよ! お父さんから夢を奪わないでよ!」
「知りません。だいたい父様は倒したいとか言っているのに、スキルが全然成長してないじゃないですか。やる気があるなら、ちょっとは痩せてから言ってください」
「がぁ~~ん‼︎」

 父親としては娘に嫌われるのが一番のショックです。王様はガッカリしています。
 そして、馬車を操縦できるのが王様だけだという嫌な展開です。
 緊急停車中の馬車は止まったまま動き出そうとしません。

「あのぉ、王様。ドラゴンって売ればどのぐらいの値段になるんですか?」

 そんな気まずい状態の中、一人の女が動き出しました。
 ミファリスが王様にドラゴンの値段を聞きました。

「んっ? ああっ、そうじゃの……大きさと種類のよるが、グリーンドラゴンなら金貨八枚がいいところだの」
「金貨八枚ですか……それじゃあ、お城に帰りましょうか」
「えっ、それだけ……」

 四人で分けたら金貨二枚です。ミファリスは王様の仲間になるのを素早くやめました。
 反対3になりました。もう手段は選んでいられません。王様は伝家の宝刀を使う事に決めました。

「ま、待ってくれ! 王命を出す。北の草原に現れた凶悪なグリーンドラゴンを、ウォルター、ディアナ、ミファリスの三人は直ちに倒しに行くように。王命に逆らえば、極刑は免れぬぞ」
「父様、恥ずかしくないんですか? 人として、大人として」
「いいや、王としての当然の義務じゃ。北の草原から食糧が無くなれば、ドラゴンは移動する。そうなれば国民に被害が出てしまう。居場所が分かっているのなら、国王として、誰よりも先に国民の盾にならねばならない」

 王様の言っている事には少しは説得力がありますが、言う順番が遅過ぎました。
 王様を仲間外れにして、子供三人は集まると、どうしようかと話し合いを始めました。

「父様の言う事には一理あります。この三人の攻撃力があれば、ドラゴンを倒す事は出来ると思います」

 空中戦、幻覚、破砕とドラゴンと戦う力は持っています。絶対に勝てない相手ではありません。
 
「そっか。出来るならやった方がいいけど、ほとんどタダ働きで王様の接待なんだよね。ちょっとそこが気になるんだよね」
「兄様は嫌なんですか? ドラゴン退治は別として、私は外の世界を見て回るのは楽しいので、出来ればこのまま旅を続けたいんですけど……」

 お城で軟禁生活を送っていたディアナにとって、外の世界は刺激的でとっても新鮮なものです。
 この旅が終われば、またしばらくはお城の中で暮らす事になります。

「ディアナが行きたいなら、僕は全然いいよ。それじゃあ、行けるところまで行こうか」
「はい」

 ウォルターは王様の接待ではなく、妹の接待なら喜んで協力します。
 ドラゴン退治ツアーに参加する事を決めました。
 ディアナはもうしばらくだけ、外の世界を自由に見て回れる事がとっても嬉しいかったようです。
 急いで馬車に乗り込むと、進路をお城から北の草原に向かうように、小太りの御者に命じました。
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