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第七章
第8話『剣の巨人』
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——街の宿屋。
一日中、情報収集という観光をしていたウォルター達は、いつものように三人部屋を借りて、部屋の中でのんびりしていました。そこに、コンコンと部屋の扉をノックする人が現れました。
「はい」
「俺だ。話がある」
ウォルターが扉の向こうの人に返事をしました。返って来たのはエウロスの声でした。
ウォルターはベッドに寝転がる女性二人を振り返りました。首を横に振っています。
時刻は夜です。ここは三人部屋です。話は誰もしたくないようです。
「今日はもう遅いので、話なら明日の朝にお願いします。おやすみなさい」
ロクデモない話を聞いて、朝まで部屋に居座られたら面倒くさいです。
エウロスと一緒の部屋で安心して眠れるほど、そこまで信用していません。
「いいのか? 記憶喪失を治す薬の手掛かりを見つけて来たぞ。明日の朝だと使われた後かもしれないな」
「えっ……分かりました。入ってください」
「クッフフ。安心しろ。すぐに部屋からは出て行ってやる。三人で楽しむんだろう?」
「はい?」
けれども、手掛かりの情報ならば、ロクデモない話ではないです。部屋の中に入れる事にしました。
ニヤニヤと下品に笑いながら、エウロスは部屋に入って来ましたが、ウォルターには伝わっていないようです。
「……それで、その薬はどんな物なんですか?」
ベッドに座るウォルターが、椅子に座っているエウロスに聞きました。
エウロスはベッドに座ろうとしましたが、ウォルター達は全員拒絶しました。
「単刀直入だな。まあ、使われたくないなら急ぐしかないか。薬は『疾走』というスキルを持っている、大隊長と呼ばれる兵士が持っているそうだ。自然回復のスキルを持っていた者の、力を凝縮して作ったとか言っていた。切られた手足さえ再生すると言っていたが、一点物で実際には分からないらしい」
エウロスが話す詳しい情報に、ウォルター達はちょっと驚いています。
別行動で夜まで遊んで帰って来ただけだと思っていましたが、遊んでいたのは自分達の方だったみたいです。
でも、まだ問題は残っています。エウロスのお陰で薬の場所は分かりましたが、手に入るかは別問題です。
「その大隊長は戦場にいるんですよね? その人に会って、薬を買い取る事は出来るんでしょうか? 危険ですし、お金もどのぐらい要求されるのか分かりませんよ」
「お金なら、何とか用意できると思うけど、売れないと言われるのが一番困るよ。その場合はどうする事も出来ないし……」
「そんな面倒な事をしないで、兵士の格好をして戦場に紛れ込めばいいんじゃないですか? 盗む事が出来れば、誰がやったか分かりませんよ」
キアラ、ウォルター、ミファリスとそれぞれが自分の思っている事を言っています。
多分、ミファリスの盗むが一番手っ取り早い方法です。
明らかな犯罪行為ですが、気絶させた大隊長の側に、お金が入った袋を置いておけば問題ないはずです。
「では、決まりだな。俺とウォルターが、兵士に紛れ込んで薬を手に入れる。女二人は街に残って待機だ」
「えっー、私も戦いたいのに……」
「それは駄目だよ。危ないし、いざという時は僕一人の方が逃げやすいから」
「それは分かってます。言ってみただけです」
ウォルターは冗談なのか、本気なのか、いまいち分かりませんが、一応はミファリスを信じる事にしました。
戦場に連れて行ったりしたら、軽く殺人数が三桁になってしまいます。
偽兵士が戦場に現れて、手当たり次第に人を殺しまくるのは、ただの殺人事件です。
♦︎
翌日の早朝、ウォルターとエウロスの二人は馬に乗って戦場に向かいました。
馬を走らせて、目指す場所は、両国の国境線で行われている領土争いです。
数日後、二人は戦場に到着しました。プルトス王国とラドン王国の激しい戦いは、まだ続いています。
どうやら、間に合ったようです。
「さて、ここからが本番だ。お前は薬を手に入れて、俺は戦争を終わらせる」
「そうは言っても、薬の反応は戦場のド真ん中です。辿り着く前に何十人も相手にしないと……」
エウロスは戦場が見渡せる場所から、眼下の十万人を超える人間同士の争いを見ています。
戦いに正義があるとしたら、土地を安値で奪われ、僅かな対価で大国に搾取され続けられるラドン王国です。
けれども、勝つのはプルトス王国です。
戦力差は明らかです。周辺の国は小国ではなく、大国側につきました。
でも、勝敗を握るのは結局は強さです。
国の大きさ、兵士の数、資金力、そんなものは剣聖には関係ないです。
「ここで、少し待ていろ。正しい方が勝つ瞬間を見せてやる」
「ちょっと……」
エウロスはそう言うと、ウォルターを残して戦場に馬を走らせました。
ウォルターは危ないから引き止めようと思いましたが、まあいいかと、やめました。
エウロスは傭兵としての仕事をするだけです。止める理由はありません。
「さて……普通に殺すだけだと面白くないな。クッフフフ。よし、あれを作ろう。材料は大量にある」
エウロスは馬を走らせながら、戦場に向かって、スキル『剣制』を発動させました。
兵士達の手から離れた剣が、一ヶ所に向かって次々に飛んで行きます。
集まった数万本の剣は意思を持つように、ある形を目指して組み合わさっていきました。
「おい、何なんだよ? 夢でも見ているのか?」
武器を失った兵士達は、静まり返った戦場のド真ん中に現れた、ギラギラと輝く刀身の鱗を持つ、剣の巨人を見上げています。
12メートルを超える剣の巨人は、左右の手に巨大な剣を握っています。8メートルを超える剣の刀身は、数千本の剣が規則正しく真っ直ぐに並んで作られています。
「さあ、好きなだけ殺せ。その為にお前達は作られた」
エウロスの言葉とともに、剣の巨人は人間のように、二本の巨大な剣を素早く振り上げました。
そして、逃げ惑うプルトス王国の兵士達に向かって容赦なく、剣を振り払いました。
「やめろ! やめてくれ!」
「助けて! 誰か! 助けて!」
「いやぁ~~~‼︎」
ザァパーンと剣の刀身は海岸に打つかる荒々しい波のように、兵士達の身体を跳ね飛ばして行きます。
剣のたったの一振りで、戦場に固まっている兵士達が、500人規模で虐殺されていきます。
その圧倒的な強さの前に、プルトス王国の兵士達は戦場の後方に向かって逃げ出して行きます。
「無駄だ。誰一人として、逃がさない。逃げられない」
けれども、そんな兵士達に向かって、剣の巨人は、巨大な剣の切っ先を向けました。
そして、次の瞬間、切っ先から剣の矢が、兵士達の背中に向かって次々に発射されました。
「がすっ‼︎」「あぎゃ‼︎」
ドス、ドスと次々に鎧を剣の矢に貫かれて、兵士達は殺されていきます。
戦闘開始から五分も経たずに、プルトス王国の兵士は一万人以上も殺されました。
「……酷い。何なんだよ、あれは? あんなのただの虐殺じゃないか!」
エウロスに言われた通りに、ウォルターは安全な場所で待っていました。
ウォルターが見つめる戦場は、今も分刻みで千人規模の人間が殺され続けています。
人間がゴミのように殺されていきます。そこには慈悲は、まったく感じられません。
「エウロス!」
ウォルターは戦場の中に隠れている剣の巨人を操る人間を見つけると、馬を戦場に向かって走らせました。
これを本当にエウロスがやっているのか、確信はありません。ただの勘です。
それでも、犯人がエウロスで、自分が止められるのならば、やるしかありません。
一日中、情報収集という観光をしていたウォルター達は、いつものように三人部屋を借りて、部屋の中でのんびりしていました。そこに、コンコンと部屋の扉をノックする人が現れました。
「はい」
「俺だ。話がある」
ウォルターが扉の向こうの人に返事をしました。返って来たのはエウロスの声でした。
ウォルターはベッドに寝転がる女性二人を振り返りました。首を横に振っています。
時刻は夜です。ここは三人部屋です。話は誰もしたくないようです。
「今日はもう遅いので、話なら明日の朝にお願いします。おやすみなさい」
ロクデモない話を聞いて、朝まで部屋に居座られたら面倒くさいです。
エウロスと一緒の部屋で安心して眠れるほど、そこまで信用していません。
「いいのか? 記憶喪失を治す薬の手掛かりを見つけて来たぞ。明日の朝だと使われた後かもしれないな」
「えっ……分かりました。入ってください」
「クッフフ。安心しろ。すぐに部屋からは出て行ってやる。三人で楽しむんだろう?」
「はい?」
けれども、手掛かりの情報ならば、ロクデモない話ではないです。部屋の中に入れる事にしました。
ニヤニヤと下品に笑いながら、エウロスは部屋に入って来ましたが、ウォルターには伝わっていないようです。
「……それで、その薬はどんな物なんですか?」
ベッドに座るウォルターが、椅子に座っているエウロスに聞きました。
エウロスはベッドに座ろうとしましたが、ウォルター達は全員拒絶しました。
「単刀直入だな。まあ、使われたくないなら急ぐしかないか。薬は『疾走』というスキルを持っている、大隊長と呼ばれる兵士が持っているそうだ。自然回復のスキルを持っていた者の、力を凝縮して作ったとか言っていた。切られた手足さえ再生すると言っていたが、一点物で実際には分からないらしい」
エウロスが話す詳しい情報に、ウォルター達はちょっと驚いています。
別行動で夜まで遊んで帰って来ただけだと思っていましたが、遊んでいたのは自分達の方だったみたいです。
でも、まだ問題は残っています。エウロスのお陰で薬の場所は分かりましたが、手に入るかは別問題です。
「その大隊長は戦場にいるんですよね? その人に会って、薬を買い取る事は出来るんでしょうか? 危険ですし、お金もどのぐらい要求されるのか分かりませんよ」
「お金なら、何とか用意できると思うけど、売れないと言われるのが一番困るよ。その場合はどうする事も出来ないし……」
「そんな面倒な事をしないで、兵士の格好をして戦場に紛れ込めばいいんじゃないですか? 盗む事が出来れば、誰がやったか分かりませんよ」
キアラ、ウォルター、ミファリスとそれぞれが自分の思っている事を言っています。
多分、ミファリスの盗むが一番手っ取り早い方法です。
明らかな犯罪行為ですが、気絶させた大隊長の側に、お金が入った袋を置いておけば問題ないはずです。
「では、決まりだな。俺とウォルターが、兵士に紛れ込んで薬を手に入れる。女二人は街に残って待機だ」
「えっー、私も戦いたいのに……」
「それは駄目だよ。危ないし、いざという時は僕一人の方が逃げやすいから」
「それは分かってます。言ってみただけです」
ウォルターは冗談なのか、本気なのか、いまいち分かりませんが、一応はミファリスを信じる事にしました。
戦場に連れて行ったりしたら、軽く殺人数が三桁になってしまいます。
偽兵士が戦場に現れて、手当たり次第に人を殺しまくるのは、ただの殺人事件です。
♦︎
翌日の早朝、ウォルターとエウロスの二人は馬に乗って戦場に向かいました。
馬を走らせて、目指す場所は、両国の国境線で行われている領土争いです。
数日後、二人は戦場に到着しました。プルトス王国とラドン王国の激しい戦いは、まだ続いています。
どうやら、間に合ったようです。
「さて、ここからが本番だ。お前は薬を手に入れて、俺は戦争を終わらせる」
「そうは言っても、薬の反応は戦場のド真ん中です。辿り着く前に何十人も相手にしないと……」
エウロスは戦場が見渡せる場所から、眼下の十万人を超える人間同士の争いを見ています。
戦いに正義があるとしたら、土地を安値で奪われ、僅かな対価で大国に搾取され続けられるラドン王国です。
けれども、勝つのはプルトス王国です。
戦力差は明らかです。周辺の国は小国ではなく、大国側につきました。
でも、勝敗を握るのは結局は強さです。
国の大きさ、兵士の数、資金力、そんなものは剣聖には関係ないです。
「ここで、少し待ていろ。正しい方が勝つ瞬間を見せてやる」
「ちょっと……」
エウロスはそう言うと、ウォルターを残して戦場に馬を走らせました。
ウォルターは危ないから引き止めようと思いましたが、まあいいかと、やめました。
エウロスは傭兵としての仕事をするだけです。止める理由はありません。
「さて……普通に殺すだけだと面白くないな。クッフフフ。よし、あれを作ろう。材料は大量にある」
エウロスは馬を走らせながら、戦場に向かって、スキル『剣制』を発動させました。
兵士達の手から離れた剣が、一ヶ所に向かって次々に飛んで行きます。
集まった数万本の剣は意思を持つように、ある形を目指して組み合わさっていきました。
「おい、何なんだよ? 夢でも見ているのか?」
武器を失った兵士達は、静まり返った戦場のド真ん中に現れた、ギラギラと輝く刀身の鱗を持つ、剣の巨人を見上げています。
12メートルを超える剣の巨人は、左右の手に巨大な剣を握っています。8メートルを超える剣の刀身は、数千本の剣が規則正しく真っ直ぐに並んで作られています。
「さあ、好きなだけ殺せ。その為にお前達は作られた」
エウロスの言葉とともに、剣の巨人は人間のように、二本の巨大な剣を素早く振り上げました。
そして、逃げ惑うプルトス王国の兵士達に向かって容赦なく、剣を振り払いました。
「やめろ! やめてくれ!」
「助けて! 誰か! 助けて!」
「いやぁ~~~‼︎」
ザァパーンと剣の刀身は海岸に打つかる荒々しい波のように、兵士達の身体を跳ね飛ばして行きます。
剣のたったの一振りで、戦場に固まっている兵士達が、500人規模で虐殺されていきます。
その圧倒的な強さの前に、プルトス王国の兵士達は戦場の後方に向かって逃げ出して行きます。
「無駄だ。誰一人として、逃がさない。逃げられない」
けれども、そんな兵士達に向かって、剣の巨人は、巨大な剣の切っ先を向けました。
そして、次の瞬間、切っ先から剣の矢が、兵士達の背中に向かって次々に発射されました。
「がすっ‼︎」「あぎゃ‼︎」
ドス、ドスと次々に鎧を剣の矢に貫かれて、兵士達は殺されていきます。
戦闘開始から五分も経たずに、プルトス王国の兵士は一万人以上も殺されました。
「……酷い。何なんだよ、あれは? あんなのただの虐殺じゃないか!」
エウロスに言われた通りに、ウォルターは安全な場所で待っていました。
ウォルターが見つめる戦場は、今も分刻みで千人規模の人間が殺され続けています。
人間がゴミのように殺されていきます。そこには慈悲は、まったく感じられません。
「エウロス!」
ウォルターは戦場の中に隠れている剣の巨人を操る人間を見つけると、馬を戦場に向かって走らせました。
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(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
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