第一王子『剣聖』第二王子『賢者』第三王子『泳ぐ』 〜使えないスキルだと追放された第三王子は世界を自由に泳ぎたい〜

もう書かないって言ったよね?

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第九章

第九章最終話『悪魔祓い』

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 町の牢屋に閉じ込められてしまったシャノンは、自分の考えの浅はかさを悔やんでいました。
 まさか、町ぐるみの犯罪だとは思っていませんでした。そりゃ逃げられないという自信があるはずです。

「悪魔の家ではなく、悪魔の町だったとは……」

 完全な勘違いですが、今は完全な敵地に変わってしまったのは事実です。
 シャノンの罪状は事実無根の罪を捏造して、ウォルターをどこかに連れ去ろうとした誘拐です。

「どうする? 海の底に沈めるか?」
「やめとけ。一人減らしても、次の奴が来るだけだぞ」
「じゃあ、どうすんだよ? このまま牢屋に一生暮らさせるのか?」

 牢屋の見張りに雇われた冒険者三人組は、シャノンに会話が丸聞こえですが、罰は町の住民達の気分次第で決まります。

「まだ若いんだから、このまま逃してやろうぜ。可哀想だろう?」
「まあ、そうだな。内緒で逃すか。見張っているのも面倒くさいからな」
「よし、じゃあ釈放だな。おい、姉ちゃん! 釈放だ」
「えっ⁉︎」

 三人の冒険者は椅子から立ち上がると、勝手に牢屋の鍵を開けました。
 ついでに国に帰る為の路銀ろぎんとして、銀貨十枚まで渡しています。
 一人三枚ずつ渡しましたが、一人だけ見栄を張って、追加でもう一枚渡しました。
 かなり親切な冒険者達ですが、シャノンは信じられないという顔をしています。

「姉ちゃん、もう二度と悪い奴に利用されるんじゃねぇぞ」
「えっ⁉︎」

 シャノンはただただ驚いています。
 三人が酒に酔っているとしても、勝手に逃すなんて正気じゃないです。
 何かの罠だと疑いました。そして、今の状況を素早く理解しました。

(これって? 牢屋から脱走して、見張りの男からお金を奪ったようにしか見えない! なんて、恐ろしい町なの。私を殺す為の罪を捏ち上げようとしている)

 シャノンは男達の狙いを理解すると、路銀を返して、さらに牢屋の中に戻りました。
 今なら、罪はウォルターを二回攻撃しただけです。
 しかも、攻撃した証拠もないのに、牢屋に閉じ込められている状況です。
 キチンと取り調べを受ければ、数日で無罪放免で釈放されます。
 こんな見え透いた罠には引っ掛かりません。

 けれども、シャノンのおかしな行動に、三人の小父さん冒険者は首を捻っています。

「おいおい、姉ちゃん? なんで、牢屋に戻るんだ?」
「もしかして、帰る家が無いのか? だから、こんな事をしたのか?」
「くっ、若いのに可哀想に!」

 小父さん達は考えが足りなかったと悔やんでいます。
 路銀を渡しても帰る家が無いなら、意味がありません。

 三人は三十代前半ですが、自分の子供が成長して同じ境遇で捕まっていたら、一体どうするべきかと話し合っています。ちなみに全員独身で子供はいません。

「帰れる家が無いなら、誰かの家にしばらく泊めてやろうぜ。仕事しながら、金を貯めれば、一人暮らしも出来るだろうし」
「こんなオッサン達の家に誰も住みたくねぇよ。多少の金があれば、すぐにでも一人暮らしは出来る。必要なのは、仕事だって」
「だったら、冒険者ギルドでいいだろう。キアラちゃんが居ないし、ついでに若い方が良いだろうし」
「いやいやいや! あの張りがある身体が良いんだよ。女は柔らかさよりも、弾力が大事なんだよ」

 三人は酒を飲みながら、就職先の話から、結婚相手は誰にしようかと話を進めています。
 町の若い男達の名前を次々に言いながら、欠点だけを言い合って、大笑いしています。
 そして、最終的には、「お前が嫁に貰ってやれよ」と押し付けあっています。

(まさか、あの三人の中から結婚する相手を選ばないといけないなんて……私の人生最悪)

 そんな三人組の馬鹿笑いを、シャノンは青ざめた顔で見ていました。
 三人にとっては笑い話ですが、シャノンにとっては、誰の奴隷にするかと話し合っているようにしか聞こえません。そこに病院から退院して来たウォルターがやって来ました。

「すみません、シャノンさんを引き取りに来ました。まだ居ますよね?」
「おぉ、ウォルター! もういいのか?」
「ええ、もう大丈夫です。透明人間に二発殴られたようなものですから」
「ハッハッ。二発で気絶させられるなんて、ウォルターも弱いままだな。それとも、たった二発で気絶させられる相手が強過ぎたのかな?」

 保護者として、シャノンを引き取りに来たウォルターでしたが、飲んだくれ冒険者三人に捕まりました。
 皆んなで、女性にたった二発で気絶させられてしまった、だらしないウォルターを揶揄っています。

「違いますよ。突風に驚いて転んだ拍子に頭を打っただけです。シャノンさんは何もやってませんよ。僕が自分で転んだだけです」

 病院での事情聴取もウォルターはこのように答えています。
 でも、実際には何が起こったのか、自分でも分からないだけです。
 そして、実際にシャノンに二発で気絶させられたのならば、それは男の名誉の為にも隠さなければなりません。

「本当かよ? 無理矢理、キスしようとして殴られたんじゃないのか? 無理矢理は駄目だぞ。無理矢理は!」
「そんな事しませんよ。それよりも家に連れて帰りますよ。被害者も加害者もいないなら、問題ないですよね?」
「何だ? 家に帰って、二人でチュッチュッするのか? 昼間からは駄目だぞ」
「だから、しませんよ。そういう関係じゃないですから」

 飲んだくれの小父さん達は若い男女をくっ付けようと頑張っています。
 そんな時間があるのならば、自分の嫁を頑張って探してほしいですが、頑張った結果が今の状況です。

「まあいいや。姉ちゃん、迎えが来たから帰りなよ。ウォルターは結構金を持っているから、家賃どころか、一戸建ても買ってくれるぜ。なんなら、一緒に暮らしてもいい。ウォルターは年上好きだから、チャンスは大だぜ!」
「やめてください。勝手に年上好きにしないでください。さあ、シャノンさん、行きましょう」

 ウォルターはシャノンを強引に引き取ると、そんな悲しい三人組に、見張りの代金を渡して帰って行きました。

 ♦︎

「何か勘違いがあるようですが、この家は僕の家です。ベンジャミンなんて人は住んでいません」

 ベッドの上に座っているシャノンにウォルターは言います。
 隠し部屋も地下室も、別宅も無いと言いました。町ぐるみの犯罪集団でもありません。

 けれども、部屋の中に置かれている怪しい品々が、ヤバイ宗教をやっている雰囲気を作り出しています。
 海水で文字が滲んだ日記や本の山、錆だらけの武器の数々、割れた花瓶や皿が部屋の棚に保管されています。

「もういいわ。好きにして」

 シャノンは逃げるのを諦めて、ベッドの上に横になりました。
 目からスゥーッと一滴の涙が横に流れ落ちて行きました。
 死ぬまで凌辱されるか、変な儀式の生贄にされると想像しています。

「そうですか……それじゃあ、しばらくこの家をお願いします。まだ何人か連れて来ないといけないので」

 残念ながら、ウォルターは次のスキル保持者を探しに行かないといけません。
 シャノンが想像するような事をする時間はないので、部屋から出て行こうとしました。

「なっ⁉︎ これ以上、まだ罪を重ねるつもりですか! 行かせません! 絶対に行かせませんよ!」
「うわっ⁉︎ ちょっと離してください! 行かせてください! 遊んでいる時間は無いんです!」

 けれども、次の獲物を捕まえに行くと聞かされて、止めない訳にはいきません。
 シャノンはウォルターを捕まえるとベッドに押し倒して、馬乗りになりました。
 このまま次の犠牲者が出るぐらいならば、この悪魔に囚われた少年を、生という牢獄から解放しなければなりません。
 シャノンは覚悟を決めると、右手を上げて、ジタバタと暴れるウォルターの頬をビンタしました。

「この人でなし! 罪を悔い改めなさい!」
「あふっ‼︎ あふっ‼︎」

 パチン、パチンと良い音を鳴らして、ウォルターは頬を何度もビンタされていきます。
 ウォルターの中の悪魔を追い払う為の、悪魔祓いが始まりました。

「おぉ、神よ! この悪魔に取り憑かれてしまった少年に救いの手を差し伸べてください。この少年の穢れた魂に光を再びお与えください!」
「ぐすっ、悪魔とか、何言って、あふっ‼︎」

 馬乗りになって、ヤバイお祈りを捧げているシャノンに、半泣きのウォルターは話をしようとしますが、パチンとビンタされて止められてしまいます。儀式の邪魔をするのは、厳禁のようです。

「さあ、本当の名前を言いなさい! その醜い正体を現すのです!」
「あうっ! はうっ!」

 ウォルターはビンタされ、罵られ、服脱がされて台所にあった油を身体に塗られます。
 さらに手足をロープでベッドに縛られると、身体の上に歳の数だけロウソクを立てられました。
 そして、熱さに我慢できずに、ロウソクを倒すとビンタされます。

「このロウソクはあなたの穢れた魂です。このロウソクが燃えて無くなった時、あなたの穢れた魂も煙となって、消えていきます。熱さはあなたが犯した罪への罰です。我慢しなさい」
「あつつ、うぅっ……」

 ウォルターは必死に熱さに耐えます。ヤバイ女を連れて来てしまったと、自覚はしています。
 でも、スキルLVが順調にアップしているので、身を任せるしかありませんでした。

【スキル『水氷術』がLV5→LV6にアップしました。
 水と氷の魔法をかなり使える→水と氷の魔法をとても使えるに成長しました。】
 
 ♦︎

 第九章・完
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