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第十章
第8話『脱出』
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——牢屋に囚われて、三日後。
「キチンと残さずに食べているようね」
ウォルターの前にイシスがやって来ました。空になった食器を見て喜んでいます。
昼食に出したお薬入りの料理を、今日もウォルターが残さずに食べたと思っています。
本当は緑キメラを買収して、料理も薬も代わりに食べてもらっています。
ウォルターは緑キメラが持って来る野菜を細々と食べては、イシスに信用される日を待っています。
「もういいだろう? 協力するから、ここから出してくれ」
ウォルターはベッドの上に疲れた感じに座っています。
水と野菜のみの食生活は大して苦ではありませんが、いつ寝込みを襲われて、薬を無理矢理に飲まされるか分かりません。定期的に起きては、探査で動きを警戒していました。
「まだ駄目よ。まだ反抗的な目をしている。あと二週間はここで暮らしてもらおうかしら?」
イシスはウォルターの瞳に生気を感じたようです。
他の材料達の反応は無気力になるか、薬を激しく要求するかの二択です。
自力で牢屋から脱出できる力があるのに、大人しくしているのは、非常に不自然です。
「二週間? 巫山戯るなよ! もういい。この地獄が続くなら、自分で終わらせてやる! 心臓と脳味噌を破壊すれば、スキルの移植は出来ないんだろう!」
イシスの言葉にウォルターは激情すると、両手に氷の短剣を作り出しました。
そして、氷の短剣を逆手に持つと、自分の右目と心臓に切っ先を向けました。
外に出してくれないなら、自殺すると言っています。
そんなウォルターの決死の主張もイシスには届かなかったようです。
鉄格子の向こうから、冷めた表情で見ています。
「本気なの? 自殺するぐらいなら、私を道連れに死んだ方がいいんじゃないの? 死にたいなら、死ねばいい。本気ならね」
イシスはウォルターのくだらない演技に呆れています。
ウォルターがその気になれば、イシスを殺す事も、牢屋から脱出する事も出来ます。
どちらも実行すれば、キメラ三人によって殺されますが、無意味な自殺を選ぶよりは賢い選択です。
けれども、演技は演技でも、ウォルターは本気の本気です。
これから二週間も放置されるなら、命を懸けて逃げ出した方がマシです。
「本気? あなたこそ、本気で言っているんですか? その賢い頭で、僕がこの牢屋から逃げ出さずに、薬を我慢して飲んでいるのが分からないですか? あなたを殺さないんじゃない……殺せないんだ。薬なんて要らない。一番欲しいのは、あなたの愛だ」
「はぁっ? くだらない冗談は嫌いよ。フッフッ。ドロシーの次は私でも誘惑するつもり? 残念だけど、私はキスされた程度で好きになるような軽い女じゃないの。死にたいなら、好きにしなさい」
歳の差十三歳の、ウォルターの愛の告白は失敗したようです。
イシスは鼻で笑って、全然相手にしていません。
それどころか、これ以上は付き合っていられないと、立ち去って行きます。
(やっぱり無理か。こうなったら、人質にするしかない!)
作戦失敗したので、ウォルターは急いで牢屋の鍵を氷で作ると、ガチャンと鍵を開けました。
牢屋の外に素早く出ると、牢屋の廊下を歩いているイシスの背中が見えました。
「あなた、やっぱり!」
鉄格子の開いた音に気づいたイシスは、牢屋の外に出ているウォルターを見つけました。
急いで、首にぶら下げているキメラを呼ぶ笛を取り出そうとしていますが、ちょっと遅かったです。
最大速度で泳いで来たウォルターに両肩を掴まれると、強引に口を口で塞がれました。
「んひゃ⁉︎ んにゃ、あふぅん、んんっ」
イシスは強引に壁に背中を押しつけられると、ウォルターの熱烈な口封じを受け続けています。
抵抗しようと多少は両腕が上がりますが、途中で止まって、プルプル震えるだけになりました。
「オマエ、ダメ! ニゲル、ダメ!」
けれども、抵抗できないイシスの代わりに、緑キメラがやって来ました。
牢屋から材料が逃げた場合は、捕まえて、牢屋に戻すのが看守の仕事です。
抵抗する場合は手足をへし折るぐらいは許されています。
でも、緑キメラがウォルターを捕まえる前に、イシスは慌てて動きました。
ウォルターの頭を両手で掴むと唇から離しました。
「ひゃん、はぁはぁ……よろぴぃ。問題にゃいから、グリーンは持ち場に戻りなひゃい」
「……ワカッタ」
「はぁはぁ、んんっ、はぁはぁ……」
酔っ払ったらようにロレツが回っていないので、問題がないようには見えませんが、イシスは左手を振って、緑キメラを追い払いました。
そして、緑キメラの姿が見えなくなると、熱っぽい息遣いをしているイシスが話し始めました。
「はぁはぁ、あなたの気持ちは分かったけど、私は年下の坊やに興味はないの。薬だけで我慢、んひゃ⁉︎ んんっ、はあぅ」
イシスが話している途中でしたが、ウォルターは構わずに、口を口でまた強引に塞ぎました。
人質にしなくても、このまま行けそうな気がします。
ドロシーと同じように研究ばかりで、イシスも恋愛経験がほとんどないです。
しかも、相手は妹の婚約者という複雑な関係です。
イシスのスキル『高める』が自動発動して、嫌でも気持ちが高ぶってしまいます。
「ひゃん、はぁはぁ……はぁはぁ……ご……合格でぇすぅ」
緑キメラがいなくなって数分後、イシスはウォルターから離れると、そう言いました。
何が合格なのか分かりませんが、ウォルターはイシスに連れられて、緑キメラの前を通って行きます。
信用されたと思っていいみたいですが、腕を繋ぐ必要はないはずです。
(ここって、もしかして……)
しばらく廊下を進んで行くと、生活感が溢れる部屋にウォルターは到着しました。
ベッドに、脱ぎ捨てられた服、鉢植えに入った観葉植物、テーブルの上には金貨や食べ残された食事が見えます。イシスが暮らしている部屋なのは、間違いないようです。
「はぁはぁ、ごくり。次は口だけじゃない事を教えてちょうだい」
イシスの頬はほんのりと赤く染まっています。黒い作業着の上着のボタンを外していきます。
ウォルターは、『なるほど』と心の中で思うと、イシスに近づいていきます。
これから、やる事は分かっています。優しくイシスを抱き締めると、硬く硬くしていきます。
「ヤァッ‼︎」
「あうっ‼︎」
バシィと左手の氷で強化した手刀がイシスの後ろ首を襲いました。
ガクッとイシスは抱き締められたまま気絶しました。通常の手刀の気持ち三倍威力強めです。
長女ならば、次女よりも強いはずです。ちょっとやり過ぎなぐらいがちょうどいい威力です。
「よし、もう逃げよう。他の二人もキメラを操れないなら逃げるはずだ」
ウォルターはイシスを肩に担ぐと、遺跡の出口を目指します。
キメラを操る為に必要な薬を作れるのは、イシスだけです。
作り置きの薬が無くなれば、キメラが暴走するのは目に見えています。
研究を中止させる事は出来ませんが、十分なダメージを与えられるはずです。
(あとは近くの町から、テミス兄さんに手紙を送って、後片付けをしてもらえばいい。僕に出来る事はそれだけだ)
ウォルターは無事に遺跡の研究施設から脱出すると、腰から伸ばした氷の触手で、イシスを胸元に抱き締めました。あとはこのまま最大速度で逃げるだけです。
「今度は男のスキル保持者を探そう」
ウォルターはそう言うと、両手と両足にクジラのような氷のヒレを作り出して、一番近くの町を目指しました。
女性のスキル保持者はヤバイ人が多過ぎです。
「キチンと残さずに食べているようね」
ウォルターの前にイシスがやって来ました。空になった食器を見て喜んでいます。
昼食に出したお薬入りの料理を、今日もウォルターが残さずに食べたと思っています。
本当は緑キメラを買収して、料理も薬も代わりに食べてもらっています。
ウォルターは緑キメラが持って来る野菜を細々と食べては、イシスに信用される日を待っています。
「もういいだろう? 協力するから、ここから出してくれ」
ウォルターはベッドの上に疲れた感じに座っています。
水と野菜のみの食生活は大して苦ではありませんが、いつ寝込みを襲われて、薬を無理矢理に飲まされるか分かりません。定期的に起きては、探査で動きを警戒していました。
「まだ駄目よ。まだ反抗的な目をしている。あと二週間はここで暮らしてもらおうかしら?」
イシスはウォルターの瞳に生気を感じたようです。
他の材料達の反応は無気力になるか、薬を激しく要求するかの二択です。
自力で牢屋から脱出できる力があるのに、大人しくしているのは、非常に不自然です。
「二週間? 巫山戯るなよ! もういい。この地獄が続くなら、自分で終わらせてやる! 心臓と脳味噌を破壊すれば、スキルの移植は出来ないんだろう!」
イシスの言葉にウォルターは激情すると、両手に氷の短剣を作り出しました。
そして、氷の短剣を逆手に持つと、自分の右目と心臓に切っ先を向けました。
外に出してくれないなら、自殺すると言っています。
そんなウォルターの決死の主張もイシスには届かなかったようです。
鉄格子の向こうから、冷めた表情で見ています。
「本気なの? 自殺するぐらいなら、私を道連れに死んだ方がいいんじゃないの? 死にたいなら、死ねばいい。本気ならね」
イシスはウォルターのくだらない演技に呆れています。
ウォルターがその気になれば、イシスを殺す事も、牢屋から脱出する事も出来ます。
どちらも実行すれば、キメラ三人によって殺されますが、無意味な自殺を選ぶよりは賢い選択です。
けれども、演技は演技でも、ウォルターは本気の本気です。
これから二週間も放置されるなら、命を懸けて逃げ出した方がマシです。
「本気? あなたこそ、本気で言っているんですか? その賢い頭で、僕がこの牢屋から逃げ出さずに、薬を我慢して飲んでいるのが分からないですか? あなたを殺さないんじゃない……殺せないんだ。薬なんて要らない。一番欲しいのは、あなたの愛だ」
「はぁっ? くだらない冗談は嫌いよ。フッフッ。ドロシーの次は私でも誘惑するつもり? 残念だけど、私はキスされた程度で好きになるような軽い女じゃないの。死にたいなら、好きにしなさい」
歳の差十三歳の、ウォルターの愛の告白は失敗したようです。
イシスは鼻で笑って、全然相手にしていません。
それどころか、これ以上は付き合っていられないと、立ち去って行きます。
(やっぱり無理か。こうなったら、人質にするしかない!)
作戦失敗したので、ウォルターは急いで牢屋の鍵を氷で作ると、ガチャンと鍵を開けました。
牢屋の外に素早く出ると、牢屋の廊下を歩いているイシスの背中が見えました。
「あなた、やっぱり!」
鉄格子の開いた音に気づいたイシスは、牢屋の外に出ているウォルターを見つけました。
急いで、首にぶら下げているキメラを呼ぶ笛を取り出そうとしていますが、ちょっと遅かったです。
最大速度で泳いで来たウォルターに両肩を掴まれると、強引に口を口で塞がれました。
「んひゃ⁉︎ んにゃ、あふぅん、んんっ」
イシスは強引に壁に背中を押しつけられると、ウォルターの熱烈な口封じを受け続けています。
抵抗しようと多少は両腕が上がりますが、途中で止まって、プルプル震えるだけになりました。
「オマエ、ダメ! ニゲル、ダメ!」
けれども、抵抗できないイシスの代わりに、緑キメラがやって来ました。
牢屋から材料が逃げた場合は、捕まえて、牢屋に戻すのが看守の仕事です。
抵抗する場合は手足をへし折るぐらいは許されています。
でも、緑キメラがウォルターを捕まえる前に、イシスは慌てて動きました。
ウォルターの頭を両手で掴むと唇から離しました。
「ひゃん、はぁはぁ……よろぴぃ。問題にゃいから、グリーンは持ち場に戻りなひゃい」
「……ワカッタ」
「はぁはぁ、んんっ、はぁはぁ……」
酔っ払ったらようにロレツが回っていないので、問題がないようには見えませんが、イシスは左手を振って、緑キメラを追い払いました。
そして、緑キメラの姿が見えなくなると、熱っぽい息遣いをしているイシスが話し始めました。
「はぁはぁ、あなたの気持ちは分かったけど、私は年下の坊やに興味はないの。薬だけで我慢、んひゃ⁉︎ んんっ、はあぅ」
イシスが話している途中でしたが、ウォルターは構わずに、口を口でまた強引に塞ぎました。
人質にしなくても、このまま行けそうな気がします。
ドロシーと同じように研究ばかりで、イシスも恋愛経験がほとんどないです。
しかも、相手は妹の婚約者という複雑な関係です。
イシスのスキル『高める』が自動発動して、嫌でも気持ちが高ぶってしまいます。
「ひゃん、はぁはぁ……はぁはぁ……ご……合格でぇすぅ」
緑キメラがいなくなって数分後、イシスはウォルターから離れると、そう言いました。
何が合格なのか分かりませんが、ウォルターはイシスに連れられて、緑キメラの前を通って行きます。
信用されたと思っていいみたいですが、腕を繋ぐ必要はないはずです。
(ここって、もしかして……)
しばらく廊下を進んで行くと、生活感が溢れる部屋にウォルターは到着しました。
ベッドに、脱ぎ捨てられた服、鉢植えに入った観葉植物、テーブルの上には金貨や食べ残された食事が見えます。イシスが暮らしている部屋なのは、間違いないようです。
「はぁはぁ、ごくり。次は口だけじゃない事を教えてちょうだい」
イシスの頬はほんのりと赤く染まっています。黒い作業着の上着のボタンを外していきます。
ウォルターは、『なるほど』と心の中で思うと、イシスに近づいていきます。
これから、やる事は分かっています。優しくイシスを抱き締めると、硬く硬くしていきます。
「ヤァッ‼︎」
「あうっ‼︎」
バシィと左手の氷で強化した手刀がイシスの後ろ首を襲いました。
ガクッとイシスは抱き締められたまま気絶しました。通常の手刀の気持ち三倍威力強めです。
長女ならば、次女よりも強いはずです。ちょっとやり過ぎなぐらいがちょうどいい威力です。
「よし、もう逃げよう。他の二人もキメラを操れないなら逃げるはずだ」
ウォルターはイシスを肩に担ぐと、遺跡の出口を目指します。
キメラを操る為に必要な薬を作れるのは、イシスだけです。
作り置きの薬が無くなれば、キメラが暴走するのは目に見えています。
研究を中止させる事は出来ませんが、十分なダメージを与えられるはずです。
(あとは近くの町から、テミス兄さんに手紙を送って、後片付けをしてもらえばいい。僕に出来る事はそれだけだ)
ウォルターは無事に遺跡の研究施設から脱出すると、腰から伸ばした氷の触手で、イシスを胸元に抱き締めました。あとはこのまま最大速度で逃げるだけです。
「今度は男のスキル保持者を探そう」
ウォルターはそう言うと、両手と両足にクジラのような氷のヒレを作り出して、一番近くの町を目指しました。
女性のスキル保持者はヤバイ人が多過ぎです。
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注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。
(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
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