第一王子『剣聖』第二王子『賢者』第三王子『泳ぐ』 〜使えないスキルだと追放された第三王子は世界を自由に泳ぎたい〜

もう書かないって言ったよね?

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第十二章

第1話『森の中の隠れ屋敷』

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「聖剣を持ち出して、子供を助けて、ついでに家に送り届けてきた。つまりはそういう事か?」
「はい……」

 ウォルター、ドロシー、マローネはテミスの前で正座しています。
 聖剣を持ち出して、ニコルを助けて、ニコルの家で一泊して、朝帰りした事を叱られています。
 ウォルターはどんな罰も受ける覚悟がありますが、その必要はないようです。

「……そうか、まあいい。では、予定通りに兄上を倒しに行く。これから出発するぞ」
「えっ? これから行くんですか? 今すぐに、これからですか?」

 テミスはこれから剣聖エウロスを倒しに行くと言っています。
 そんな予定は誰も聞いていませんが、極秘に計画を進めていたので仕方ないです。
 心の準備がまったく出来ていないウォルターは、テミスに何度も確認しますが、冗談ではないようです。

「そうだ。ニコルのスキルを抜き取ったら、準備は終わりだった。発見されている聖剣は全部で五本だ。そのうち四本は既に呪われたスキルを付加して、指輪状に加工している。時間をかければ、剣の声が聞こえる兄上に計画がバレてしまう。倒したいなら、時間をかけるべきではない」

 テミスとしては、最大五本の聖剣を使って、エウロスを弱体化させたかったようですが、四本でも十分な効果があるようです。
 それに計画がバレてしまったら、奇襲攻撃する前に、逆に奇襲攻撃されてしまいます。
 これ以上は時間がないので、短期間で準備して、決着をつけなくてはいけないようです。
 
「そうですね。でも、居場所はまだ分かってないですよね? それに指輪なら填めるのも簡単じゃないですよね? その方法はあるんですか?」

 予想外の急展開にウォルターは焦っていますが、それでも、冷静に頭を働かせます。
 まだ肝心のエウロスの居場所は分かっていません。
 倒すに行くとしても、居場所が分からなければ倒せません。
 でも、それも問題ないようです。

「居場所ならば分かっている。指輪を填めるのも問題ない。問題があるとしたら、指定した日の時間内に到着できなかった場合だ。到着が遅れた場合は、三人の命は保証できなくなる」

 どうやら、居場所も指輪を填めるのも、エウロスの元にいるスパイが、やってくれるようです。
 いつの間にスパイを送り込んだのか知りませんが、最初から動きはずっと監視していたそうです。

「問題ないんですか。だったら行くしかないですね」

 心の準備がまだ全然できていないウォルターには、問題ありありです。
 でも、今すぐに行かなければ、セレナ達の命の保証がないなら行くしかありません。

 それに主にエウロスと戦うのは、テミスです。
 ウォルターは付き添いなので、遠くから観戦していればいいだけです。
 だったら、確かに問題なさそうです。
 
 ♦︎

 ——エウロスの隠れ家。

 エウロスが隠れているのは、森の中に建てられた小さな屋敷です。
 元々は商人の別荘だった建物なので、普通に四人で暮らすには十分な広さがあります。
 二階建ての屋敷は、十部屋の個室があり、一階に浴室とキッチンまで作られています。
 周辺には小さな町があるので、生活用品や食糧の調達にも問題ありません。

(そろそろ、買い物に行かないと)

 大きなベッドに寝ていたプリシラが起きました。服は下着を含めて、何も着ていません。
 それは左隣に寝ているセレナも、さらに奥に寝ているトリシャも同じです。
 三人は毎晩、一つのベッドに寝るようにエウロスに言われています。
 身体を触れ合わせる事で、スキルの覚醒を促せようとしていますが、今のところ覚醒した人はいません。

 プリシラは二人を起こさないに静かに服を着ると、部屋を出ていきました。
 本当は使用人の一人ぐらいは雇ってほしいです。買い物から家の家事全般やってほしいです。
 でも、エウロスは徹底した秘密主義です。使用人を雇うつもりはありません。

 それでも、二人のように屋敷に閉じ込められずに、町に買い物に行けるプリシラは恵まれています。

(こんな生活もうウンザリ。どこで剣が聞いているか分からないから、独り言も言えない。息が詰まって死にそうになる)

 エウロスは屋敷の周辺に剣を突き刺して、屋敷に接近して来る者を監視、警戒しています。
 買い物に出掛けるプリシラにも、短剣を常に持たせるという徹底ぶりです。
 馬鹿な考えを起こして、逃げ出そうとしても、すぐに追いかけて捕まえられるだけです。

(テミス様は居場所を教えれば、必ず助けに来るとは言ってたけど、手紙を送っても返事だけで、全然助けに来ない。やっぱり見捨てられたのかも)

 清々しい爽やかな森の中を、プリシラは落ち込んだ気分で歩いています。
 船に乗せられて、さらに馬車に乗せられて、こんな場所まで連れて来られました。
 屋敷に暮らし始めて、まだ二週間目ですが、我慢の限界です。
 これが、あと一年近くも続くとしたら、やってられません。

「やあ、シーラちゃん! 今日も可愛いね!」
「そんな事ないですよぉ~。手頃な野菜をいくつかお願いします」
「はいよ! 今日は良いカボチャがあるから、サービスしておくよ」
「ありがとうございます」

 町に着いたプリシラは、顔馴染みの八百屋に行きました。
 黒髪を短い角刈りにした小父さんは、元気に声をかけています。
 いくら秘密にしようとしても、見慣れない美少女がいれば、町の中でも目立った存在になります。
 プリシラは偽名として、シーラと名乗っていますが、美しさまでは偽れないと嘆きました。

 ♦︎

 屋敷に戻ったプリシラはキッチンに行くと、買ってきた野菜達を入念に調べています。
 短剣は部屋に置いて、キッチンの包丁さえも棚の中に隠しています。
 テミスとの手紙のやり取りは、八百屋の小父さんに頼んでしてもらっています。
 テミスからの連絡は野菜の中に隠されています。

(あった! 今日はカボチャに仕込んでいた)

 プリシラは黄色いカボチャの底に、小さな切れ込みを見つけました。
 四角い切れ込みにフォークを突き刺すと、カポッと硬い皮の蓋が外れました。
 カボチャの中身は多少減っていましたが、別の物が中に詰め込まれていました。

(指輪に? 手紙?)

 プリシラはカボチャの中から、銀色の四つの指輪と折り畳まれた手紙を取り出します。
 手紙にはテミスの綺麗な字で日付けと時間。そして、プリシラがやる事が書かれていました。
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