第一王子『剣聖』第二王子『賢者』第三王子『泳ぐ』 〜使えないスキルだと追放された第三王子は世界を自由に泳ぎたい〜

もう書かないって言ったよね?

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第十三章

第7話『望まれない王』

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「この辺でいいかな?」

 ウォルターはテミスへの聖水の直飲みをやめました。
 今度は三リットル程で止めましたが、聖水は飲まなくても、傷口にかければ効果があります。
 テミスのお腹は聖水で、タプンタプンに膨らんでいます。

(あとはディアナを連れて行けば問題解決だと思う)

 ウォルターはテミスを放置して、ディアナの元に急ぎます。
 テミスが回復した後の事は分かりませんが、エウロスが回復していれば、追いかけて来る余裕はないはずです。
 兄弟喧嘩が始まる前に、この国を脱出します。

 ウォルターは城の破壊された壁から城内に侵入すると、テミスの部屋を目指します。
 ディアナはまだテミスの部屋にいます。ウォルターとテミスのどちらを待っているのか分かりません。
 テミスの場合は、婚約者を倒したウォルターは、ペンで刺されるぐらいは覚悟した方がいいです。

「ディアナ、お待たせ。城から出るよ」

 部屋の中にいたディアナは扉の方を向いて長椅子に座っていました。
 当然、歩いて脱出すればテミスに追いつかれます。
 なので、ウォルターは抱き抱えて連れて行こうとしましたが、伸ばした手は叩かれました。

「えっ⁉︎」
「……その必要はない。まさか、兄様が母様に手を出すような鬼畜だったなんて……」
「えっ⁉︎ 鬼畜‼︎」

 ウォルターは帰るのを拒絶された事より、鬼畜と言われた事にショックを受けています。
 でも、逃げるのには鬼畜かどうかは関係ないです。
 汚らしい手に触れられたくないなら、長椅子を抱えて連れて行くしかないです。
 
「と、とりあえず、城から出るからね! あと鬼畜なんていう汚い言葉は使ったら駄目だよ!」

 ショックから立ち直すと、ウォルターはまたディアナを抱えようとしました。
 でも、やっぱり伸ばした手をパシンと叩かれました。
 我儘過ぎるので、そろそろ手刀で気絶させないといけません。

「ちょ、ちょっと……」
「その必要はないって言ったよ。逃げても追いかけられるだけなのは分かっているでしょう? どこにいても危険な可能性は消えないんだから、一番近くで監視した方がいいでしょう」
「んっ?」

 手刀を準備していたウォルターですが、ディアナは我儘を言っている訳ではないようです。
 ウォルターは少し考えていますが、近いと危険度は高く、遠いと低くなるはずです。
 わざわざ危険な城の中で、生きているエウロスとテミスと暮らすなんて正気じゃないです。
 万が一にもウォルターが鬼畜だとしても、正常な判断能力ぐらいは持っています。

「兄様の言う通りに逃げたら、別の人が危険な目に遭うだけだよ。兄様もそれは分かっているでしょう? 父様にコンラッド、キアラに港町に住む人達、兄様は逃げずに戦わないと駄目」
「んっー、それはそうかもしれないけど……」

 ディアナの言っている事の意味は分かります。でも、暗殺される危険を考えると抵抗があります。
 セレナとディアナは殺される心配はないですが、ウォルターは殺される心配しかないです。

「別に悩む必要はない。兄様の命を狙っているのはテミスだけ。殺されない理由を作れば問題ない。まずは万能の指輪を母様に付けてもらう。指輪は一個しかないから、母様を殺さないと取れなくなる」

 ディアナは悩んでいるウォルターを無視して、殺されない方法を話します。
 城に残って、テミスに協力していたので、情報収集はバッチリです。

「でも、母様を殺せば取れるならマズイんじゃないの? そもそもその万能の指輪は、そんなに重要な物なの? よく知らないんだけど……」

 ちょくちょく指輪という言葉が出て来るので、ウォルターは気になっていました。
 テミスの言葉から、指輪の実験をしているのは間違いないです。

「んっ? そういえば兄様は知らなかった。簡単に説明すると、テミスは沢山のスキルを使えるようになれる指輪を作っている。しかも、破壊不能で所有者が死ねば、別の人に再利用できる優れもの」
「へぇー、それは凄い物を作っているんだね」

 流石は賢者の研究だと、ウォルターは素直に感心しています。
 つまりはスキルが使えない人にも、スキルが使えるようになれる指輪です。

「うん。だから、母様が指輪を付ければ、指輪のスキルが覚醒するかもしれないから殺されない。ついでに、お腹の赤ちゃんにも指輪のスキルが影響するか調べられる。テミスなら絶対に結果が分かるまで殺さない」
「へぇー……」

 まるで実験動物として、生かされる理由を聞かされている気分になります。
 そして、やっぱり妊娠しているのは間違いないようです。
 早く城に残ると言わないと、男の子か、女の子か言われそうです。
 でも、子供の性別ではなく、もっととんでもない事をディアナは言ってきました。

「それに母様は元々、この国の王妃だったから、王妃として戻ってもらうには問題ない。そして、兄様には王妃の夫として、国王になってもらう」
「んっ?」
「兄様には国王になってもらう」
「んっ?」

 大事な事なので、ディアナは二度言いましたが、ウォルターは二度とも理解できません。
 首を傾げて、意味を考えていますが、どんな風に考えても意味は一つしかないです。

「兄様は死んだはずの第三王子として戻るのは無理。だったら、母様の夫として戻るのが自然。それにこの国を治めているのは剣聖と賢者で、母様は二人の母親。文句がある国民は誰もいない。いるとしたら、現王妃のトリシャ達だけ。何も問題ない」
「いや、でも……」

 ディアナが冗談を言っていないのは分かります。
 しっかりと考えてから、この答えを導き出したようです。
 でも、本気だとしても正気じゃないのは確かです。
 王国新聞に『三十六歳元王妃、若い十五歳の男とお腹の赤ちゃんと凱旋』とか書かれそうです。
 しかも、若返り、美魔女になっているので、偽者だと疑われてしまいそうです。

「兄様が言いたい事は分かっている。成長した赤ちゃんの将来的な不安や、母様の印象が悪くなるのは分かっている。でも、それは兄様と母様の頑張り次第で、どうとでもなる些細な問題。残る問題は兄様と母様の気持ち次第」
「そんなぁ……僕の気持ち次第って……」

 ディアナの言う方法は強引な方法ですが、絶対に出来ないような方法ではないです。
 むしろ、容易に出来るから問題があります。ウォルターの気持ち次第で出来るからです。

(隠れて暮らすか、堂々と暮らすか……)

 ウォルターは自分の決断した未来に起こる事を真剣に考えています。
 セレナに相談して、二人で決めるべきですが、今は自分一人しかいません。
 産まれて来る子供の事も考えて、最良の選択をしないといけません。

(全員が幸せになれる選択はないと思う。でも、それはディアナが言うように、僕の頑張り次第で、どうとでもなる問題だ。問題は僕が誰を一番幸せにしたいかだ。だとしたら、答えは一つしかない)

 ウォルターは自分の気持ちをしっかりと確認しました。
 そして、覚悟を決めました。必要な覚悟は、誰を幸せにするかです。
 ウォルターはセレナと子供の為に、国王になる事を決めました。
 例え、国民全員を敵に回しても、王妃の隣にある玉座に居座り続けます。
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