3 / 83
03 同じ釜の飯 1 〔食うだけ〕
しおりを挟む
「また、君達か。ベルフィール君は、新戦力で頑張ってくれると思ったんだけどね~……破損報告書と始末書、よろしくね! 修理代は、本部に請求しておくよ、いいねベルフィール君……あ、それから、……書類ができたら、今日はもう帰っていいから……ただし、年休でね!」
「えーーー、ひっでーよー校長……せっかく悪い奴をやっつけたのに……また、評判が下がってしまう~」
ベルフィールが、ふてくされて校長に悪態をついたが、どうにもならなかった。
「ダメだよ、ベル。校長が一度決めたことは、変えられないんだ。諦めて、さっさと片付けて家に帰ろう」
岸川教頭は、ベルフィールの始末書を代筆し、校舎の破損報告書を作った。
その間も、彼女はせっかく敵をやっつけたのに報われないと、駄々をこねていた。
「あ~あ~教~頭~、も~は~や~く~、帰ろ~よ~」
「わかったから……さっきはあんなに勇敢に戦っていたのになあ~~」
「そ~だ~よ~……Zuu……Zuu…………」
「まずい、もうそろそろ限界かも……」
岸川教頭は、眠りかけたベルフィールを正面から肩に担いだ。まるで米俵を担ぐように、両手で彼女の両足を抑え、バランスを保ったのだ。
家に着き、玄関の戸を開けるとすぐに、彼女をソファに放り投げた。
「ふにゃ~」
彼女は、いつものように声とも言えないような声を発したが、寝たままだった。
岸川教頭は独身だ。ベルフィールと同棲しているわけではない。彼女の家は隣なのだ。アパートの隣室同士なのである。
では、なぜそうなったか。それは彼女の企みによって、そうせざるを得なかったのだ。
ところで、岸川教頭は、とにかく料理がうまい。料理だけでなく、家事全般が得意である。今だって、あっという間に美味しそうな大盛カツ丼を作っていた。
「ほら、できたぞ!」
ベルフィールは、匂いに釣られてむっくり起きた。まだ、半分目は閉じてはいるが、食卓に向かい、かつ丼をマッハの速さで口にかっ込んだ。
「ふぁあーー、ふぁあー……うぐぐぐ……ごっくん……美味いなあ……」
一心不乱に平らげ、また満足そうなトロンとした目になってしまった。
「おいおい、また寝るんじゃないだろうな? 早く自分の家に帰った方がいいぞ」
「……ああ……んん……お休みなさい……」
「え?……何やってんだよ……ここは、俺の家だぞ!」
「大丈夫……直属の上司だから……お休みなさい……」
「直属の上司だから……むしろダメなんじゃないのか?……おい……おい」
「……うち……帰って掃除するの……面倒くさいから……お休み」
「え?……え?……掃除が面倒くさい?……お前、掃除もできないのか?」
彼女は、そのまま岸川教頭のアパートのソファで、毛布に包まって寝てしまった。
「おい! その毛布……いつの間に持って来たんだ?」
ベルフィールは、ちゃっかり自分のお気に入りの毛布を岸川教頭の家のソファに常駐させていたのだった。
(つづく)
「えーーー、ひっでーよー校長……せっかく悪い奴をやっつけたのに……また、評判が下がってしまう~」
ベルフィールが、ふてくされて校長に悪態をついたが、どうにもならなかった。
「ダメだよ、ベル。校長が一度決めたことは、変えられないんだ。諦めて、さっさと片付けて家に帰ろう」
岸川教頭は、ベルフィールの始末書を代筆し、校舎の破損報告書を作った。
その間も、彼女はせっかく敵をやっつけたのに報われないと、駄々をこねていた。
「あ~あ~教~頭~、も~は~や~く~、帰ろ~よ~」
「わかったから……さっきはあんなに勇敢に戦っていたのになあ~~」
「そ~だ~よ~……Zuu……Zuu…………」
「まずい、もうそろそろ限界かも……」
岸川教頭は、眠りかけたベルフィールを正面から肩に担いだ。まるで米俵を担ぐように、両手で彼女の両足を抑え、バランスを保ったのだ。
家に着き、玄関の戸を開けるとすぐに、彼女をソファに放り投げた。
「ふにゃ~」
彼女は、いつものように声とも言えないような声を発したが、寝たままだった。
岸川教頭は独身だ。ベルフィールと同棲しているわけではない。彼女の家は隣なのだ。アパートの隣室同士なのである。
では、なぜそうなったか。それは彼女の企みによって、そうせざるを得なかったのだ。
ところで、岸川教頭は、とにかく料理がうまい。料理だけでなく、家事全般が得意である。今だって、あっという間に美味しそうな大盛カツ丼を作っていた。
「ほら、できたぞ!」
ベルフィールは、匂いに釣られてむっくり起きた。まだ、半分目は閉じてはいるが、食卓に向かい、かつ丼をマッハの速さで口にかっ込んだ。
「ふぁあーー、ふぁあー……うぐぐぐ……ごっくん……美味いなあ……」
一心不乱に平らげ、また満足そうなトロンとした目になってしまった。
「おいおい、また寝るんじゃないだろうな? 早く自分の家に帰った方がいいぞ」
「……ああ……んん……お休みなさい……」
「え?……何やってんだよ……ここは、俺の家だぞ!」
「大丈夫……直属の上司だから……お休みなさい……」
「直属の上司だから……むしろダメなんじゃないのか?……おい……おい」
「……うち……帰って掃除するの……面倒くさいから……お休み」
「え?……え?……掃除が面倒くさい?……お前、掃除もできないのか?」
彼女は、そのまま岸川教頭のアパートのソファで、毛布に包まって寝てしまった。
「おい! その毛布……いつの間に持って来たんだ?」
ベルフィールは、ちゃっかり自分のお気に入りの毛布を岸川教頭の家のソファに常駐させていたのだった。
(つづく)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった
ぐうのすけ
ファンタジー
無才・貧乏・底辺高校生の稲生アキラ(イナセアキラ)にゲームの悪役貴族が憑依した。
悪役貴族がアキラに話しかける。
「そうか、お前、魂の片割れだな? はははははは!喜べ!魂が1つになれば強さも、女も、名声も思うがままだ!」
アキラは悪役貴族を警戒するがあらゆる事件を通してお互いの境遇を知り、魂が融合し力を手に入れていく。
ある時はモンスターを無双し、ある時は配信で人気を得て、ヒロインとパーティーを組み、アキラの人生は好転し、自分の人生を切り開いていく。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる