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第3章 悪の組織が本格始動
28 運動会危機一髪 5 〔怠惰の集束〕
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「ベル、午後からまた買い物に行くから手伝ってくれよ!」
「今日も、何か買ってくれるのか?」
アパートに帰って来てから、岸川教頭はベルフィールに午後からの計画を話した。もう、最近では自然に2人で岸川教頭の部屋に帰っているが、決して一緒に暮らしているのではないと言い張っている。
「何って、明日は順延になった運動会だ。幸い天気予報を見ると、晴れることになっているから、弁当が必要になるんだ。その材料を買いに行くんだよ」
岸川教頭は、あれだけ茶化されたので、ジャージを脱ぎ、外出着に着替えることにした。
外は、天気も良く太陽も出てきた。雨上がりで湿度も少し高いが、気持ちのいいそよ風も吹いている。
「これだと、グラウンドも適度に乾くだろう。明日は、今日よりも早出で、ライン引きかな?」
「なあ、総司? 今晩も弁当作りをするのか?」
「まあなあ……」
「………それで、明日の朝は、早く学校へ行って………グラウンドにラインを引いたり、また花火を上げたりするんだろう?」
ベルフィールは、岸川教頭を心配そうに見つめ、「大丈夫か? そんなことをしてたら、お前、倒れるぞ」と、楽観的な彼女にしては、気を使ったような様子を見せた。
「なんだ? また僕が倒れたら、お弁当が食べられないとか、思ってんだろう? ベルは……あははは……心配するな、今日は大丈夫だ! さっき、新聞のチラシで、いいものを見つけたんだ!……さあ、行くぞ、スーパーマーケットだ!!」
「な、何だよ!……総司ってば、待てよ……私も着替えるから」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【町のスーパーマーケット食品売り場】
「あら、ベルちゃんと教頭先生!……デートですか?」
買い物をしている植野めぐみが、いつものように冗談交じりの声を掛けてきた。
「おい……なぜ、そうなる?」
少し、怒って教頭は返したが、横にいたベルフィールは、「かわいいでしょ! このスカート、総司が選んだのよ!」と、にっこり笑顔で答えていた。
「あのな~、明日の弁当の買い出しだよ」と、教頭は、ダメ押しの言い訳をした。
「そうそう、今日のお弁当、なんで呼んでくれなかったのよ! 私も食べたかったのに!!」
今度は、めぐみが頬っぺたを膨らませた。
「いやー、だって今日は、早朝に集まった人だけだったから……、明日は、みんなで食べられるからさ……」と、今度は教頭が謝っていた。
「おいしかったんだよ、総司のお弁当! えへっ」と、ベルフィールが、めぐみに小声で耳打ちした。
「ずるいな~」と、めぐみは、本気で悔しがった。
「ところで、メグちゃんは、どうしたの? 今頃スーパーなんて。明日も給食は、お休みよね」と、ベルフィールが尋ねた。
「そうなのよ、運動会が延期になったら、給食が作れないのよ! そうなると、私のお昼ご飯が一大事なのよね! 私も、明日のお弁当を作らないとダメかなと思ったけど……教頭先生?……いいわよね?……私の分もお願いして、いい?」
めぐみは、両手を合わせて、甘えるような目をして教頭を拝んだ。
「はいはい、わかりましたよ……お任せください。ただし、今、買い物は、付き合ってくださいよ! いいね!」
「はい、わかりました。……デートは邪魔しませんから」
「余計なことは、言わなくてよろしい!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
≪はい、いらっしゃい、明日の運動会、お弁当の準備は、いいですか?……???まだ? ?? そんなあなたにピッタリ!! うちのスーパーで売り出した、 “おかず即席詰め合わせセット” です。いろんなお弁当のおかずが、詰め合わせで完成してます。 これを、重箱に入れるだけ。後は、重箱の上と下に、この魔法の 〔弁当ぴったんこ〕 を張っておくだけです。ちょうどお昼ごろには食べごろになっています。さあ、いらっしゃい、いらっしゃい……………………≫
スーパーマーケットの店員が、ハンドスピーカーで大々的に宣伝していた。
「へえー、総司はこの宣伝チラシを見たんだね。便利だね……これは、魔法なのかい? 私でも、こんな魔法は知らないぞ!」
ベルフィールは、びっくりしたように目を丸くして興味津々だった。
「いやベル、これは魔法じゃないよ。これは、単なる冷凍技術だな、凍らせてあるんだ。あの〔弁当ぴったんこ〕とやらは、冷凍を溶かす解凍パックなんだろう」
岸川教頭は、料理に詳しい分、このような技術も知っているようだった。
「じゃあ、総司もあれを買うと、みんなと同じ弁当になってしまうんじゃないか?」
ベルフィールが、力なくうなだれてしまった。
「いや、大丈夫だよ。下ごしらえの時間が省けただけで、仕上げは自分でするから、出来は違う弁当にしてみせるよ! ベルに食べさせる弁当だ、そんなにがっかりさせるものなんか作るものか! 心配するなって!!」
「よ!! 岸川教頭先生! ごちそう様です」
めぐみは、教頭の背中を思いっきり平手でたたき、笑顔で茶化した。
「おい、おい……」
よろけながら、教頭も笑顔だったし、ベルフィールにも笑顔が戻っていた。
それでも、ここのスーパーでの売り場には、たくさんのお客さんが群がっていた。しかも、他のお店でも、似たような品物の販売が行われていたことを岸川教頭達は、まだ知らなかった。
=============================
【その日の夜中、悪のアジトでは】
「今日の収支決算がまとまりました」
ジョセフィーヌは、ブロンドの髪をツインテールに戻し、真夜中ということもありシックな黒のパンツスーツに身を包んでいる。
「さすが、有能な会計担当、早速入金もあったのか?」
唯一この組織で時間に縛られない経営者的存在、指令のダークキングは、眠い目をこすりながらジョセフィーヌの報告書を確認して驚いた。
「こ、こんなに収益がでたことは、未だかつてなかったぞ!」
「何をおっしゃいますキング司令。あの第1古里山小学校の運動会は、地域の伝統を重んじる伝統の運動会。雨天の場合は、順延になりますが、その時は保護者の勤め先も合わせて臨時休業になったりするのです。そのくらい地域密着の行事なのです。ただ、問題は順延の時のお弁当です。どうしても、1日ぐらいだと、みんな張り切って作るのですが、これが順延だと疲れてしまいます。弁当作りを楽に済ませる方法はないかと、考えてしまうのが、人間の性です」
「確かに、そうだな……誰だって、そう思うだろう」
「そこで、私は、商工会の副専務と契約を結びました。運動会が順延になったら、私が開発した、食品の冷凍と解凍技術を渡すから、売り上げの1%を欲しいと」
ジョセフィーヌは、淡々と説明した。
「え! たった、1%だけなのか?」
司令は、大それた計画で、天気までも左右したのにと思ってしまった。
「ただし、運動会の順延が、続いた場合は、〈当日の売り上げの1%+前日の利益の2倍〉という契約にしました」
「何だって! それだと、順延が続けば続くほど、我々の利益が増えていくじゃないか」
「その通りです。これは、調理技術の提供という名目の報酬ですから、問題ありません。ただ、運動会を順延にしているのは、私達の意図的な技術ですが……」
「あははははは……お主も悪よのう……あはははあは」
ジョセフィーヌの契約の仕方を聞いて、さすがの司令も感心し笑い出すしかなかった。
「とにかく、1日目で、こんなに利益が出たということは、……明日の朝もだな」
「はい、もちろんです……ふふふっふふふふ」
(つづく)
「今日も、何か買ってくれるのか?」
アパートに帰って来てから、岸川教頭はベルフィールに午後からの計画を話した。もう、最近では自然に2人で岸川教頭の部屋に帰っているが、決して一緒に暮らしているのではないと言い張っている。
「何って、明日は順延になった運動会だ。幸い天気予報を見ると、晴れることになっているから、弁当が必要になるんだ。その材料を買いに行くんだよ」
岸川教頭は、あれだけ茶化されたので、ジャージを脱ぎ、外出着に着替えることにした。
外は、天気も良く太陽も出てきた。雨上がりで湿度も少し高いが、気持ちのいいそよ風も吹いている。
「これだと、グラウンドも適度に乾くだろう。明日は、今日よりも早出で、ライン引きかな?」
「なあ、総司? 今晩も弁当作りをするのか?」
「まあなあ……」
「………それで、明日の朝は、早く学校へ行って………グラウンドにラインを引いたり、また花火を上げたりするんだろう?」
ベルフィールは、岸川教頭を心配そうに見つめ、「大丈夫か? そんなことをしてたら、お前、倒れるぞ」と、楽観的な彼女にしては、気を使ったような様子を見せた。
「なんだ? また僕が倒れたら、お弁当が食べられないとか、思ってんだろう? ベルは……あははは……心配するな、今日は大丈夫だ! さっき、新聞のチラシで、いいものを見つけたんだ!……さあ、行くぞ、スーパーマーケットだ!!」
「な、何だよ!……総司ってば、待てよ……私も着替えるから」
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【町のスーパーマーケット食品売り場】
「あら、ベルちゃんと教頭先生!……デートですか?」
買い物をしている植野めぐみが、いつものように冗談交じりの声を掛けてきた。
「おい……なぜ、そうなる?」
少し、怒って教頭は返したが、横にいたベルフィールは、「かわいいでしょ! このスカート、総司が選んだのよ!」と、にっこり笑顔で答えていた。
「あのな~、明日の弁当の買い出しだよ」と、教頭は、ダメ押しの言い訳をした。
「そうそう、今日のお弁当、なんで呼んでくれなかったのよ! 私も食べたかったのに!!」
今度は、めぐみが頬っぺたを膨らませた。
「いやー、だって今日は、早朝に集まった人だけだったから……、明日は、みんなで食べられるからさ……」と、今度は教頭が謝っていた。
「おいしかったんだよ、総司のお弁当! えへっ」と、ベルフィールが、めぐみに小声で耳打ちした。
「ずるいな~」と、めぐみは、本気で悔しがった。
「ところで、メグちゃんは、どうしたの? 今頃スーパーなんて。明日も給食は、お休みよね」と、ベルフィールが尋ねた。
「そうなのよ、運動会が延期になったら、給食が作れないのよ! そうなると、私のお昼ご飯が一大事なのよね! 私も、明日のお弁当を作らないとダメかなと思ったけど……教頭先生?……いいわよね?……私の分もお願いして、いい?」
めぐみは、両手を合わせて、甘えるような目をして教頭を拝んだ。
「はいはい、わかりましたよ……お任せください。ただし、今、買い物は、付き合ってくださいよ! いいね!」
「はい、わかりました。……デートは邪魔しませんから」
「余計なことは、言わなくてよろしい!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
≪はい、いらっしゃい、明日の運動会、お弁当の準備は、いいですか?……???まだ? ?? そんなあなたにピッタリ!! うちのスーパーで売り出した、 “おかず即席詰め合わせセット” です。いろんなお弁当のおかずが、詰め合わせで完成してます。 これを、重箱に入れるだけ。後は、重箱の上と下に、この魔法の 〔弁当ぴったんこ〕 を張っておくだけです。ちょうどお昼ごろには食べごろになっています。さあ、いらっしゃい、いらっしゃい……………………≫
スーパーマーケットの店員が、ハンドスピーカーで大々的に宣伝していた。
「へえー、総司はこの宣伝チラシを見たんだね。便利だね……これは、魔法なのかい? 私でも、こんな魔法は知らないぞ!」
ベルフィールは、びっくりしたように目を丸くして興味津々だった。
「いやベル、これは魔法じゃないよ。これは、単なる冷凍技術だな、凍らせてあるんだ。あの〔弁当ぴったんこ〕とやらは、冷凍を溶かす解凍パックなんだろう」
岸川教頭は、料理に詳しい分、このような技術も知っているようだった。
「じゃあ、総司もあれを買うと、みんなと同じ弁当になってしまうんじゃないか?」
ベルフィールが、力なくうなだれてしまった。
「いや、大丈夫だよ。下ごしらえの時間が省けただけで、仕上げは自分でするから、出来は違う弁当にしてみせるよ! ベルに食べさせる弁当だ、そんなにがっかりさせるものなんか作るものか! 心配するなって!!」
「よ!! 岸川教頭先生! ごちそう様です」
めぐみは、教頭の背中を思いっきり平手でたたき、笑顔で茶化した。
「おい、おい……」
よろけながら、教頭も笑顔だったし、ベルフィールにも笑顔が戻っていた。
それでも、ここのスーパーでの売り場には、たくさんのお客さんが群がっていた。しかも、他のお店でも、似たような品物の販売が行われていたことを岸川教頭達は、まだ知らなかった。
=============================
【その日の夜中、悪のアジトでは】
「今日の収支決算がまとまりました」
ジョセフィーヌは、ブロンドの髪をツインテールに戻し、真夜中ということもありシックな黒のパンツスーツに身を包んでいる。
「さすが、有能な会計担当、早速入金もあったのか?」
唯一この組織で時間に縛られない経営者的存在、指令のダークキングは、眠い目をこすりながらジョセフィーヌの報告書を確認して驚いた。
「こ、こんなに収益がでたことは、未だかつてなかったぞ!」
「何をおっしゃいますキング司令。あの第1古里山小学校の運動会は、地域の伝統を重んじる伝統の運動会。雨天の場合は、順延になりますが、その時は保護者の勤め先も合わせて臨時休業になったりするのです。そのくらい地域密着の行事なのです。ただ、問題は順延の時のお弁当です。どうしても、1日ぐらいだと、みんな張り切って作るのですが、これが順延だと疲れてしまいます。弁当作りを楽に済ませる方法はないかと、考えてしまうのが、人間の性です」
「確かに、そうだな……誰だって、そう思うだろう」
「そこで、私は、商工会の副専務と契約を結びました。運動会が順延になったら、私が開発した、食品の冷凍と解凍技術を渡すから、売り上げの1%を欲しいと」
ジョセフィーヌは、淡々と説明した。
「え! たった、1%だけなのか?」
司令は、大それた計画で、天気までも左右したのにと思ってしまった。
「ただし、運動会の順延が、続いた場合は、〈当日の売り上げの1%+前日の利益の2倍〉という契約にしました」
「何だって! それだと、順延が続けば続くほど、我々の利益が増えていくじゃないか」
「その通りです。これは、調理技術の提供という名目の報酬ですから、問題ありません。ただ、運動会を順延にしているのは、私達の意図的な技術ですが……」
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