校内人事の人手不足で召喚したのは、最強エルフ! 悪には強いが家事には弱く、生活支える隣人教頭!!

根 九里尾

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第3章 悪の組織が本格始動

29 運動会危機一髪 6 〔再びの……〕

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「それじゃあ、出かけようか……」
「うん、今日は、このまま学校で仕事ができるように、お弁当も持っていくぞ……」
 
 岸川教頭きしかわきょうとうとベルフィールは、早朝に家を出て、学校へ向かった。歩いて、10分ほどで着く。
 ベルフィールは、両手で段ボール4個分ぐらいのお弁当を軽々と抱えて、岸川教頭の後を追った。

 昨日と同様に空には一片の雲もなく、運動会が行われることに疑う余地はなかった。





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 すべての準備が整い、グラウンドの中央で岸川教頭が花火の打ち上げの準備を完了させた。

総司そうじ! しっかりね!」

 ベルフィールが笑顔で手を振った。

「今日は、私も応援に来たわよ! 頑張れ!」

 栄養教諭のめぐみも手を振っている。

「おやおや、なんだか応援団ができたみたいですね~」

 南部校長なんぶこうちょうが、笑顔で見ている。

「まったく、お前は昔からよくお世話されていたよな。その割に、からっきし女の子にモテなかったけど……今はモテるようになったのかな?」

 校務技師こうむぎし鎌田かまだは、もと教え子の岸川教頭をまるで自分の子供のように見守っていた。

 今日は、月曜日なので、PTA会長は、後ほど来校する予定になっている。グラウンドのライン引きなどの準備などは、学校の職員だけで行わなければならない。
 通常、運動会は日曜日なので、PTAの保護者がお手伝いでいろいろな仕事を分担してくれるが、順延の場合は、それが無くなり少し大変になる。
 それでも、伝統の運動会は、地域行事として盛大に行われるのである。


「よし、時間だ。点火するぞーーー!」

 ピューウウーーンン…………ドーーン、ドドンン………ババアアンン………ズドオンン……ゴンンン………バアアアン

 5発の盛大な音が空気を揺らして、運動会の実施を町内に知らせた。

 今日も、青空には、5つの白い花火の後の白い煙が、ほんわりと漂い、強烈な音には似合わない優しい形を残していた。

「さあ、みんなで、運動会の準備をしよう!」

 岸川教頭の号令で、その場にいる職員は、グラウンドのライン引きを始めた。

「今日は、みんなでお弁当が食べられますように……」

 ベルフィールは、青空に向かって、渾身の願いを口にして祈った。





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【やっぱり同じ頃、悪の組織は……】


「トール、ドローン発進だ!」

 指令のキングが、昨日と同じように命令を下した。

「了解!」

 トールは、操縦桿そうじゅうかんを操作し、上空1000メートルを目指した。

「今日も風は、ありません。大丈夫……モニターをよく見ていれば、高さがわかります」

 ジョセフィーヌも、バニーガール風の戦闘服に身を包み、的確な指示を出していた。





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 すべてが、昨日と同じ。
 順調に進み、雲を作り終えたドローンは、手元に回収できた。4人は、急いでアジトに戻った。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【運動会の準備が整った学校では……】


「総司、グラウンドのライン引きが、終わったぞ!」

 ベルフィールが、職員室に報告に来た。

「教頭先生、校内もあらかた、準備が終わったようよ」

 めぐみが、各教室の様子を見て回り、報告してくれた。


 その時、教務主任の山田先生が、急に大きな声を出して、「大変だ、教頭先生。雨だ! 雨が降ってきた!!」と、職員室へ駆け込んできた。

「何だって!」

 その場にいた人達は、あわてて窓際に走り寄った。

「総司、雨だぞ……また雨が。空も曇っている」

 ベルフィールが、窓を開け、悲しそうな声を出して、空を見上げた。

「(どういうことだ……昨日と同じか)……南部校長先生、とりあえず連絡をしなければ……昨日と同じなんですが、今日は平日ですから……」
 
 岸川教頭は、少し難しそうな顔をして校長を見た。

「そうですね……主幹のベル君と主任の山田先生、それに運動会担当の先生を校長室に集めてください」
 
 校長は、緊急の段取りを確認するために、関係者を集めて、仕事の割り振りをした。

 保護者と地域、PTAには、岸川教頭が連絡。
 児童への説明は、担任を通して説明するように、主任が指示。
 運動会のテントや器具の保全については、担当者と主幹が当たることになった。

 いずれも、今日の運動会は中止で、明日に順延。今日は通常授業になる。給食はないので、お弁当持参である。これは、事前に保護者には知らせてあったことだが、いかんせんさっきまで晴れていたので、混乱は必至だと思われた。
 しかし、逆にどの家庭もお弁当はもう作ってあったので、児童の弁当持参は無理のないことだった。

「イヤッホーーーー!!!!」
 
 1人飛び上がって喜んだのは、ベルフィールだった。

「おいおい、運動会ができなくて、そんなに嬉しいのか?」
 
 岸川教頭が、ベルフィールの傍に来て、たしなめるように静かに言った。

「あ!……違う違う。私が嬉しいのは、運動会がなくなっても、総司のお弁当が学校でちゃんと食べられるから、良かったなあと思って!!」

 ベルフィールは、満面の笑みを浮かべて、嬉しそうに話した。

「まったく、ベルちゃんったら。今日は、私も食べるからね!」

 めぐみも、笑っていた。




 ただ、岸川教頭だけは、何か嫌な感じがして空から目を離せなかった。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【また、その日の夜中、悪の組織では……】



「キング司令、今日の決算書です」

 ジョセフィーヌが、昨日同様に報告書を提出した。

「おおおお! 本当か、間違いじゃないか?」

 司令のキングは、自分の目を疑った。

「いいえ、今日の雨は、また運動会を延期にしました。従って、今日も町内の人々は、明日のお弁当のために買い物に出かけました。ところが、3回目の運動会ともなれば、自分で作るのもだいぶ面倒になるものです。店で売っている“完成したおかず”の売り上げは、右肩上がりです。しかも、契約では、昨日の利益の2倍がうちの利益に加算されますから……」

 ジョセフィーヌは、ニヤリと微笑んだが、すぐに眼鏡の奥の瞳は遠くを見つめた。

「この利益は、すごいなあ。これだけあれば、何でもできるなあ」
「いいえ、まだまだです。……まだ、2回しか雨は降らせてないんですよ……2回しか」

 ジョセフィーヌは、明日も作戦を決行したいと告げてニヤリと笑った。



(つづく)
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