校内人事の人手不足で召喚したのは、最強エルフ! 悪には強いが家事には弱く、生活支える隣人教頭!!

根 九里尾

文字の大きさ
34 / 108
第4章 ベルの恋模様

34 がんばれ!宿泊の攻防戦 2 〔しばしのお別れ〕

しおりを挟む
「さあ、星ヶ空湖ほしがそらこキャンプ場に着きましたよ」
「やった~教頭、早くお昼にしようよ! ね~」

 ベルフィール達7人は、ちょうどお昼ごろ現地に着いた。彼らは、来週行われる5年生の宿泊学習の下見に来たのだった。

「まあ、待てベル。最初にキャンプ場の管理者に挨拶をしておかないと……」

 岸川教頭きしかわきょうとうは、学年代表の小田おだを連れて、管理棟を尋ねた。



 ・・・・・・・・・・・・・・

「……すみません………来週お世話になる、第1古里だいいちふるさと小学校の者ですが……」
「ああ、聞いていますよ。今日は、下見ですか?」

 管理棟にいたのは、体格がいい背の高い男性と、奥の方で事務作業をしている女性だった。

「はい、1泊させてもらえますか? 全部で7名います」
「じゃあ……書類は…………君、頼むよ」

 その男性は、奥の事務員に後を任せた。

「わからないことは、彼女に聞いてください。では、楽しいキャンプを……」

 そう言って、彼は管理棟を出て行ってしまった。

「あの~、この書類に全員のお名前と連絡先をご記入ください……」

 愛想のない事務員は、レンズの厚い眼鏡をかけていて、あまり表情を見ることはできなかった。それでも、岸川教頭は、できるだけの愛想笑いを作って対応したのだった。

「あの~来週、子ども達がお借りするものと同じテントを貸していただきたいのです」
「おいくつですか?」

「どうする? 小田先生」
「寝るのは、男女別に1つずつ借りるとして……もう一つあると何かに使えないでしょうか?」
「そうだな……。修学旅行なんかでは、よく一部屋余分に借りるしな。じゃあ、3張りお願いします」
 
「はい、テント3張りですね。あそこの倉庫に入っていますので、勝手に持っていってください」

 事務員は、外の小屋を指さした。

「あ、ああ。じゃあ、お借りします。あのー料金は?」
「学校行事の利用の場合、事前の下見は、すべて無料です」

 先ほどもらった、パンフレットを指さしながら、彼女は無表情で言った。

 2人がもう一度パンフレットを見ると、児童と同じテントなら無料で何張りでも使えるだけではなく、キャンプ場の使用料やキャンプファイヤーの設備や手持ち花火、肝試しのコース使用料金なども無料となっていた。

「教頭先生、ここのキャンプ場は至れり尽くせりですね~」

 小田先生は、感心してパンフレットを隅々まで熟読していた。

「でもねえ~あの、事務員さんは、もう少し愛想よくした方が、子供達も嬉しいと思うんだけどなあ~」

 岸川教頭は、テントの入った袋を抱えながら、後ろの管理棟をしみじみと見返した。

「そんなもんですか?」

 小田先生は、事務員のことなどあまり気にしてはいなかった。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あ、お帰り! 早く、お昼にしようよ!」
 ベルフィールは、待ちきれないようだった。

「ベルちゃんに聞いたわよ、教頭先生は料理が得意なんですってね」

 すみれ学級の朝子あさこ先生が、嬉しそうに言った。

「うちの旦那なんか、からっきしダメなのよ。料理ができる男の人は、いいわよ。教頭先生は、独身なんだから、みんながんばったら?」

 朝子先生は、ちょっと笑いながらみんなをからかう様に言った。
 今日の参加者で、朝子先生以外の女性は、みんな独身だったので、顔では笑っていたが誰もお互いの心の内は読めなかった。

 ただ、ベルフィールだけは、「あ~、教頭は私のだから、ダメよ~。さっきも言ったけど、教頭のお弁当を食べるのは、私って決まってるの!」と、公言してしまっていたのである。

「おいおい、ベルは何を言っているんだい。僕は、召喚主としてだなあ~責任があって、お弁当を食べさせなければならなくて……」

 例のごとく、岸川教頭は、焦って頓珍漢な説明をしてしまった。

「あーはいはい。まあ、いいからお昼にしませんか、教頭先生」

 小田先生に言われて、みんなはキャンプ場の真ん中にテントを張る場所を確保し、そこでお弁当を食べることにした。

「この区画は空いていますね。大きな木が数本あって、木陰もあり、炊事場もそんなに遠くない。プレハブトイレの数も十分確保されています」

 小田先生が、まわりを見て宿泊学習の予習を行っているようだった。

 それに比べ、ベルフィールは、「ああ、このおいしいお弁当ともしばらく、お別れなのね……」と、大げさに涙を拭く真似をしてみせた。

「何、馬鹿なことやってんだよ!」と、岸川教頭に突っ込まれると、「だって、晩ご飯も明日の朝ご飯も、自分達で作るんだろう? 教頭は、作ってくれないんだろう?」
「だって、宿泊学習の下見だぞ。お前たちが頑張らないとダメだろう。教頭が頑張ってもなあ~」

「ええ? そういうことなの? 下見って、ただ、キャンプ場を見るだけじゃないんだ!」

 びっくりしたように、お調子者の園部先生が奇声を上げた。

「実は、私も……ただ、見てくるだけなのかと思ってたのよね」
 恥ずかしそうに2組の担任の松田まつだ先生も静かに言った。

「あははははは」

 豪快に養護教諭の細谷ほそや先生は、笑って続けた。

「仕方ないさ! 若いやつは、なんも知らないんだ。これから勉強していけばいいさ。今回はキャンプを楽しんでいきな! そして、来週の宿泊学習では、絶対に子供たちに負けるなよ! がんばれよ! いいな!」

「何言ってるんですか? 細谷先生だって、まだまだ若いのに、そんなおっさんみたいなこと言って」

 岸川教頭がそう言うと、「そうかな……あははっはははあははは」と、また豪快に笑い飛ばしてしまった。

 何度も言うが、細谷文乃養護教諭は女性である。



「でも、ベル先生だって、女性なんだからいいじゃないですか。料理ぐらいできるでしょ? 僕なんか、包丁も握ったことないんですよ」

 お調子者の園部勉そのべ つとむ先生は、それでも自分の不利益を強調し、同情を買おうとした。

 ところが、ベルフィールが、「こら! ベン。私が女だから料理ができると思ったら大間違いだぞ! 食べられるものなら、私の料理を食べてみろ! きっと爆発して、月まで飛んで行ってしまうぞ!」と、なんか、偉そうなことを言っているように聞こえるが、「こら! ベル。それだから、ダメなんだ。少なくとも爆発しない料理を作れるようになれよ!」

「……はい……」

 教頭に怒られて、ベルフィールは、しぶしぶ返事をしていた。

「ええええ?……そんな、目標でいいの????」

 さすがの園部先生も、調子が狂ってしまった。



(つづく)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...