校内人事の人手不足で召喚したのは、最強エルフ! 悪には強いが家事には弱く、生活支える隣人教頭!!

根 九里尾

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第7章 移り行く、こころのパッチワーク

88 実家でナイト 2 〔期待の……〕

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「ソージ、もう行くの? まだ、お正月じゃないよ……」
「今日は、大晦日って言って、今年の最後の日になるんだ。夜が明けて明日になれば、新年でお正月って言うんだよ」

「へー、じゃ今晩は、ソージの家に泊まってお正月を迎えるんだね!」

 んーまあ、僕の家なのかなあ~。まあ、行けばわかるかな?

「今日は、汽車の乗り換えもして、5時間ぐらいかかるから頑張ってくれよ」
「いいけど……オジロン号で行けばもっと早く着くのに……」

「ダメだよ、オジロン号は目立ち過ぎるの! 僕の実家は、大きな街の中にあって、ここより人も多いんだ。あんなので乗りつけたら、みんな驚いてパニックになってしまうよ」

 ベルは、『うん』と、言っていたが、あまり都会のイメージはつかめていないと思う。ベルの世界もそうだが、ここ古里山の町では、想像もつかないだろう。


 僕達は、朝早く家を出て古里山町の駅に向かった。ここから汽車で2時間行ってから違う汽車に乗り換えるんだ。
 僕らの住んでいる地域は、冬に雪も多く降る場所があるので、電車ではなく『汽車』が普通だ。
 僕らが『汽車』って呼んでいるのは、正式には『ディーゼルエンジン列車』で、軽油を燃やすエンジンで動いている。


 途中列車を乗り換えて、急行になる。それまで普通列車だったので、速さはそれほどでもなかったが、さすがに急行列車になると、車窓の景色も飛ぶようになる。

「わー速いねソージ、なんか空を飛んでるみたい!」

「うん、今は陸橋っていって、道路の上に橋を架けたみたいなもんだ。普通の道路より高いよなー」

「ほんと、汽車の旅って楽しいよ。それに、さっき買った駅弁も美味しいね! これ、カニの味がするよ」

「なんだ、ベルはカニの味もわかるんだ。これは、毛ガニ弁当だ、美味しいって評判なんだ」

「甘くて、ふかふかしたカニの身が、たくさんご飯にかかっているよ。それに、黄色い甘じょっぱいお月様みたいのや、酸っぱくて太陽のように赤くて丸いのが、とっても美味しいよ。カニのご飯と一緒に食べると、口の中がいろんな味になって、すっごく楽しい」

「やるなベル! その黄色いのは沢庵だし、赤いのは紅生姜って言うんだよ。それが美味しとは、きっとうちの父ちゃんも大喜びだぞ」

 ベルは、うなずきながらも夢中でカニ飯を食べていたが、さっきの駅で買った駅弁は、あと5つも残っている。

 まあ、他にもたくさんのオヤツも買ったので、あと3時間の列車の旅もベルにとっては、退屈しないで済むんじゃないかと思う。







 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さあ、旭ヶ山あさひがやま市の駅に着いたぞ。ここからは、タクシーですぐだ」

 駅の階段を下りて外に出ると、そこは今まで見たことのないくらいの大きな建物やたくさんの人で溢れていた。

 そろそろ夕方になろうという時間帯でも、街はにぎわっているように感じた。ベルにとっては、どれも新鮮で驚きの連続だった。
 古里山の町だと日が沈んだら、町もひっそりと眠る準備をはじめるものだが、ここはネオンや光り輝く看板が、夜でも昼間以上の明るさを放っている。
 だから多くの人達は、夜だというのに活発に動き回り、見たこともないような笑みを振りまいていた。

「大きな街だね。駅に並んで、高い建物がいっぱいあるよ。古里山のデパートの10倍ぐらいの高さだね……。人もたくさん歩いてるよ。なんか人間の川みたいだ」

「あそこは、歩行者天国って言って、自動車が通れない道なんだ。道の両側が大きなデパートになっていて買い物できるんだぞ」


 ベルは、光り輝くネオンより、道路脇のものに驚いていた。

「ソージ、ソージ……あの白い山はなあに?」

「山?…………あ、あれは、道路の雪を除けたものだよ。ここはね雪がたくさん降るんだ。その降った雪を道路の脇に寄せるんだけど、高さが3メートル以上になることもあるんだ」

「へーー、すごいね! まるで、敵の攻撃を防ぐ防御壁みたいだね」

「防御壁か。……物騒なことを言うね。大丈夫だよ、ここはそんな魔獣みたいな敵は出ないから」

「へー……」

「さあ、タクシーに乗って、もうすぐだよ」






 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 僕の実家は、駅からタクシーで10分ぐらいのところにある。街の中心よりは、幾分静かな場所だが、人通りが多い賑やかな場所であることは間違いない。

 だって、そういう場所でなければ、うちの商売はやっていけないんだ。

「ベル、ここだよ!」

「へー、ソージの家も大きいんだね!」




 ベルが見上げた建物の玄関先に、ズラーっと着物を着た女の人達が並んで、一斉にお辞儀をしながら大きな声で歓迎の挨拶をした。

『『『『『『『『『お帰りなさいませ! お坊ちゃん!』』』』』』』』』

「みんな、そのお坊ちゃんって言うのは、止めてくれないかな~」
「え? ソージって、お坊ちゃんっていう名前なの?」


「まさか? これはね、ここの中居さん達が、僕をからかっているのさ」

 うちの中居さん達は、冗談が大好きなんだ。時々しか帰らない僕なんかは、いつもおもちゃにされている。
 今日は、他のお客さん達と同じように、みんなが勢揃いして出迎えてくれたんだ。
 僕は、恥ずかしいから『ヤメテ』ってお願いしてあったのに、『悪ふざけ』だもんな~。20人以上も両側に並ばれたら、誰だって恥ずかしいんだってば~。

「いいじゃないですか、お坊ちゃん! 今日は、一人じゃないんだし!! それでなくてもお坊ちゃんは、恥ずかしがりやで、なかなか彼女もできなかったのに。良かったですね~」

「もー、いい加減にしてくれよ……」






「お! お帰り総司~」

 あれ? 父ちゃんもやってきた。

「ただいま帰りました」

「よく来たわね~総ちゃん疲れたでしょう? あ! やっと総ちゃんもお嫁さんを連れてきたのね!」

 母ちゃんもとぼけたことを言ってるし……。

 白い調理服を着た父ちゃんと、和服を着た母ちゃんは、いつものように笑顔で出迎えてくれた。ただ、きっとおかしなことを考えていることは、よくわかる。

「ち、違うよ! 彼女は、ベルフィールっていって、学校の同僚なの。お正月にこっちの動物園を見せてあげようと思って一緒に来ただけだから」

「へー、美人さんだね。ゆっくりしていってくださいよ!」

「ありがとうございます。ソージのお父さん? お母さん? あたしは、ベルフィール、ベルって呼んでください。あたし、いっつもソージのご飯を食べてるの。とっても美味しいのよ。……でもね、ソージは、お父さんの方がもっと美味しいっていうから、楽しみにして来ました。よろしくお願いしま~す」


「おや、ベルちゃんかい。いいこと言うね~。今晩は、たっくさん美味しいもの出すから、期待してなよ!」



「それじゃ総ちゃん、この部屋をお使いなさい。……うふっ! 楽しんでね」

「だ、から……違うって! 父ちゃんも母ちゃんも、調子がいいんだから、なーもー」



 そう、僕の実家は、大きなホテルの経営をしている。父ちゃんはオーナー兼総料理長で、母ちゃんは女将をしている。

 ホテルと言いながら、和洋室両方を備え、結婚式ができる大広間もあったりする。
 もちろん、最上階の20階には大浴場を完備しているんだ。
 
 父ちゃんと母ちゃんは、帰るたびに家を継げって言うんだけど、今は好きな仕事を許してくれている。
 まあ、学校を定年でもしたら、継いでもいいかなとは思っているんだけど……。


「ああ総ちゃん、夕食は7時になったら、最上階の『孔雀の間』に用意しておくから食べに行ってね。私達は、忙しいから2人でゆっくりおやりなさい」

 何だか母ちゃんが、薄笑みを浮かべているような気がするが……。



(つづく)
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