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第9章 虹ヶ丘の未来を見据えて〔美代乃の視点〕
94 第9章第10話 町長のお誘い
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「ねえ、みょんちゃん。今、町は『虹空町』っていう名前の町になったわよね」
「ああ、志津奈ちゃんが生まれた頃は、もうそうじゃったかのう。わしらが住んでいるのは、虹空町の中の『虹ヶ丘地区』っていってるけど、最初はこの虹ヶ丘地区しかなかったんじゃ」
「うん、おじいちゃんから聞いたことがあるわ。最初は、この虹ヶ丘の開拓から始まったって」
「ぼくもおじいちゃんから聞いたよ。最初は、この虹ヶ丘だけしかなくて、まわりは原野だったって」
「そうさね、最初は、本当にこの虹ヶ丘だけだったんだよ」
「でもね、息子の大樹が小学校の高学年になる頃には、虹ヶ丘のまわりも開拓が進み、町も大きくなっていったんだよ。今は、虹ヶ丘の他に6つの地区があるけど、あの頃はそれぞれが小さな町だったんだよね。そして、それらの町は、みんなこの虹ヶ丘の町づくりを真似してたんだよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そう、ちょうど大樹が小学6年ぐらいだったろうかね。家族みんなで虹ヶ丘の夏祭りに行ったんだよ。そしたら、ちょうどそこに芯ちゃんと町長さんがいたんだよ。
「やあ、みょんちゃん、こんばんは。あ、桜山先輩も」
「あら、珍しいわね、芯ちゃんがお祭りにいるなんて」
「そうだよな、お前、お祭りは賑やかすぎるとかいって、なかなか一緒に来なかったもんな」
「あははは、そんな昔のこと。と、いっても僕は未だに賑やかなところは苦手なんですがねえ~」
「いやあ、今日は私がお願いしたんですよ。相談したいことがあってね」
「あれ? 黒岩町長さんじゃないですか。去年はうちのケンちゃんがお世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ。あれから、建造さんには、いろいろ相談にのってもらってるんですよ」
「まあ、そうだったんですか? 仲良くしてくださって嬉しいですわ」
「みょんちゃん、ぼく、友達と露店をまわってきてもいいかな?」
「ええ、気をつけてね。あんまり食べ過ぎないでよ」
「さあ、僕達もこっちのテーブルで一杯やりませんか?」
広場に組まれた櫓のまわりでは少しずつ盆踊りの輪ができつつあったのよ。子供達は楽しそうに露店に行き、わたし達大人は盆踊りを見ながら近くのテーブルに着き、ビールやジュース飲み始めたの。
風もなく夜の星が綺麗に見えた晩だったわ。
テーブルには、わたしと旦那のケンちゃん、それに岡崎医院の芯ちゃん、そして、今回、芯ちゃんを呼び出したと思われる町長の黒岩さんが座ったの。
「今日は、岡崎先生に相談があって、声を掛けたんですよ。まあ、相談っていっても、気楽にご意見をもらえればと思って、こんな賑やかなところにお誘いしたんですが……賑やかなところは苦手だったんですね」
「平気ですよ、町長さん。芯ちゃんはね、誰かが引っ張り出してあげないと、おっくうがってダメなのよ」
「そういえば、みょんちゃんにはよくあちこち連れまわされましたよね~」
「あははは、今じゃ旦那の僕が連れまわされてるよ」
「えー、いいじゃない、ケンちゃんだって楽しんでるんだから。ところで、芯ちゃんのとこも、さっちゃんが来てるんでしょ?」
「ああ、ウチのは子供達と一緒に露店をまわって来るっていってたなあ~」
「始君も3年生だっけ? 早いもんだよね」
「先輩のところのダイちゃんなんか、来年中学生でしょ。もう将来の話とかするんですか?」
「うーん、ウチは好きなようにしなさいっていうだけさ。自分の好きなことをやるのが一番だって、ミーちゃんの口癖がね」
「そうですね、僕も昔から言われてましたよ、あははは」
「いやあ、本当に桜山さんのところの子供達は幸せですね。好きなことに打ち込めるんですから。僕なんか、親父の後を継いで町長に立候補しちゃったんですからね~」
「あれー? 町長さん、まだそんなこと言ってんですか?」
「あ、いえいえ、今じゃ町長が僕の好きな仕事になりましたよ。すべて、あの時の建造さんと美代乃……あ、みょんちゃんでしたね。お2人のおかげですよ。本当にありがとうございます」
「うふっふふ……町長さん、こちらこそ、ありがとうございますね。こんなに町のことを考えてくださって」
「それで、僕に相談って……何かあったんですか?」
「ええ、実は近隣の町長さん達から、教えてくれてってせがまれてるんですよ」
「何をですか?」
「それが、虹ヶ丘はどうしてそんなに病院がたくさんあるのかって……」
その頃、芯ちゃんのおかげもあって、虹ヶ丘には内科や小児科、それに外科や循環器科、整骨に鍼灸院、歯科医院など、いろいろな分野の治療ができる病院等ができていたんだ。
「他の町も病院を開業しようという人はいるらしいんだけど、なかなか難しいことが多くて踏み切れないらしいんだよ」
「分かります。それ、実はこの虹ヶ丘で開業した医者達も困っていることがあるんですよ。だから、僕はそのことを町長さんに相談したくて、今日はお誘いにのったんです」
芯ちゃんは、何か勢いをつけるような雰囲気で紙コップに注がれたビールを一気に飲み干したのよ。
(つづく)
「ああ、志津奈ちゃんが生まれた頃は、もうそうじゃったかのう。わしらが住んでいるのは、虹空町の中の『虹ヶ丘地区』っていってるけど、最初はこの虹ヶ丘地区しかなかったんじゃ」
「うん、おじいちゃんから聞いたことがあるわ。最初は、この虹ヶ丘の開拓から始まったって」
「ぼくもおじいちゃんから聞いたよ。最初は、この虹ヶ丘だけしかなくて、まわりは原野だったって」
「そうさね、最初は、本当にこの虹ヶ丘だけだったんだよ」
「でもね、息子の大樹が小学校の高学年になる頃には、虹ヶ丘のまわりも開拓が進み、町も大きくなっていったんだよ。今は、虹ヶ丘の他に6つの地区があるけど、あの頃はそれぞれが小さな町だったんだよね。そして、それらの町は、みんなこの虹ヶ丘の町づくりを真似してたんだよ」
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そう、ちょうど大樹が小学6年ぐらいだったろうかね。家族みんなで虹ヶ丘の夏祭りに行ったんだよ。そしたら、ちょうどそこに芯ちゃんと町長さんがいたんだよ。
「やあ、みょんちゃん、こんばんは。あ、桜山先輩も」
「あら、珍しいわね、芯ちゃんがお祭りにいるなんて」
「そうだよな、お前、お祭りは賑やかすぎるとかいって、なかなか一緒に来なかったもんな」
「あははは、そんな昔のこと。と、いっても僕は未だに賑やかなところは苦手なんですがねえ~」
「いやあ、今日は私がお願いしたんですよ。相談したいことがあってね」
「あれ? 黒岩町長さんじゃないですか。去年はうちのケンちゃんがお世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ。あれから、建造さんには、いろいろ相談にのってもらってるんですよ」
「まあ、そうだったんですか? 仲良くしてくださって嬉しいですわ」
「みょんちゃん、ぼく、友達と露店をまわってきてもいいかな?」
「ええ、気をつけてね。あんまり食べ過ぎないでよ」
「さあ、僕達もこっちのテーブルで一杯やりませんか?」
広場に組まれた櫓のまわりでは少しずつ盆踊りの輪ができつつあったのよ。子供達は楽しそうに露店に行き、わたし達大人は盆踊りを見ながら近くのテーブルに着き、ビールやジュース飲み始めたの。
風もなく夜の星が綺麗に見えた晩だったわ。
テーブルには、わたしと旦那のケンちゃん、それに岡崎医院の芯ちゃん、そして、今回、芯ちゃんを呼び出したと思われる町長の黒岩さんが座ったの。
「今日は、岡崎先生に相談があって、声を掛けたんですよ。まあ、相談っていっても、気楽にご意見をもらえればと思って、こんな賑やかなところにお誘いしたんですが……賑やかなところは苦手だったんですね」
「平気ですよ、町長さん。芯ちゃんはね、誰かが引っ張り出してあげないと、おっくうがってダメなのよ」
「そういえば、みょんちゃんにはよくあちこち連れまわされましたよね~」
「あははは、今じゃ旦那の僕が連れまわされてるよ」
「えー、いいじゃない、ケンちゃんだって楽しんでるんだから。ところで、芯ちゃんのとこも、さっちゃんが来てるんでしょ?」
「ああ、ウチのは子供達と一緒に露店をまわって来るっていってたなあ~」
「始君も3年生だっけ? 早いもんだよね」
「先輩のところのダイちゃんなんか、来年中学生でしょ。もう将来の話とかするんですか?」
「うーん、ウチは好きなようにしなさいっていうだけさ。自分の好きなことをやるのが一番だって、ミーちゃんの口癖がね」
「そうですね、僕も昔から言われてましたよ、あははは」
「いやあ、本当に桜山さんのところの子供達は幸せですね。好きなことに打ち込めるんですから。僕なんか、親父の後を継いで町長に立候補しちゃったんですからね~」
「あれー? 町長さん、まだそんなこと言ってんですか?」
「あ、いえいえ、今じゃ町長が僕の好きな仕事になりましたよ。すべて、あの時の建造さんと美代乃……あ、みょんちゃんでしたね。お2人のおかげですよ。本当にありがとうございます」
「うふっふふ……町長さん、こちらこそ、ありがとうございますね。こんなに町のことを考えてくださって」
「それで、僕に相談って……何かあったんですか?」
「ええ、実は近隣の町長さん達から、教えてくれてってせがまれてるんですよ」
「何をですか?」
「それが、虹ヶ丘はどうしてそんなに病院がたくさんあるのかって……」
その頃、芯ちゃんのおかげもあって、虹ヶ丘には内科や小児科、それに外科や循環器科、整骨に鍼灸院、歯科医院など、いろいろな分野の治療ができる病院等ができていたんだ。
「他の町も病院を開業しようという人はいるらしいんだけど、なかなか難しいことが多くて踏み切れないらしいんだよ」
「分かります。それ、実はこの虹ヶ丘で開業した医者達も困っていることがあるんですよ。だから、僕はそのことを町長さんに相談したくて、今日はお誘いにのったんです」
芯ちゃんは、何か勢いをつけるような雰囲気で紙コップに注がれたビールを一気に飲み干したのよ。
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