みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~

根 九里尾

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第4章 未来へと吹く風〔北野先生の視点〕

17 第3話 歴史の手掛かり

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 図書館は町外れにあった。僕達4人は、歩いて図書館に行ったんだけど、そんなに時間はかからなかったんだ。精々30分ぐらいかな。

 日曜日の午前中で、人通りもそんなに多くなかった。商店街のそれぞれのお店は、ようやく開店したところだ。図書館も、開いたばかりの時間だ。
 
 もともとこの虹ヶ丘地区は、約100年前に開拓が開始された。その後、近くの開拓が進み全部で6つの地区として発展してきた。その後、全体地区をまとめて虹空町にじぞらちょうとなった。町になったのは昭和の時代になってからで、その頃の様子は町政発足の記念誌にも詳しく書かれていた。
 ただ、最初に開拓が進んだこの虹ヶ丘地区にできた、1番古い虹ヶ丘小学校については、去年で100周年を迎え、記念式典も行われたのに、未だ開校の頃の様子には謎が多いとされていた。
 そんなに遠い歴史ではないのに、記録が無いのである。僕もこの学校に勤めるようになって、少しでも学校の歴史を知ろうと思って調べたが、どこにも資料はなかったんだ。

 ただ、『なないろ にっき』と呼ばれる虹ヶ丘小学校の歴史が記されている本のことは、先生達の間でも噂になっていた。でも、誰も実物を見たことがなく、僕が探しても見つからなかったんだ。



「……なあ、図書館へ行っても、無駄じゃあないのかな」
 僕もいろいろ調べたけど、まったく手掛かりすら見つけられなかった。もちろん図書館の司書さんにも聞いたんだ。それでも、手掛かりは無かった。



「北野先生、何言ってんの? 心配しないで。今日は、これもあるし……」
 三成実さんが、さっき母親の渡してくれたカードをもう1度ジーっと見つめた。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さあ、図書館に着いたわよ」
 カードを持った三成実さんが、カウンターを指差して教えてくれた。そこには、若い女性の司書さんがいた。一応、僕は引率者としてカウンターの司書さんに尋ねることにした。

 ここは、この虹空町の図書館本館なんだ。地区ごとに図書館の別館はあるけど、虹ヶ丘図書館が一番大きな作りになっている。1階がすべて開架書棚になっていて、貸出カウンターもある。2階は会議室や専用閲覧室、3階が蔵書室となっている。蔵書の数は開架書棚の10倍もあって、珍しい本もそろっている。もちろん、虹空町で1番本の数も揃っているんだ。



「実は、この子達が、虹ヶ丘の歴史について調べてまして……」
「……歴史の勉強でしたら、……この列の……3番目の……」

 その司書さんは、見た目よりもずっと落ち着いた感じで対応してくれた。

「あ、いえ、……『なないろ にっき』という開拓の頃の様子を記した書物を探してまして……」
「……生憎ですが、そのような本はここには、ございませんが」

 でもまったく、僕の願いは叶えれそうもなかった。
 それでも僕が何とかお願いしようと話し掛けていると、横から三成実さんが割って入ってきた。

「あのー、すみません、阿部あべさんという司書の方いらっしゃいますか?」
「はい、私ですが……」

「お願いします、私、上杉三成実うえすぎ みなみと申します。……父からこれを預かって来たんです」
 三成実さんは、あのカードをそっと出した。


 すると司書の阿部さんは、一瞬動きを止めたんだ。表情が急に硬くなり、カードを受け取ると、周りを確認した。貸出カウンターには、阿部さんしかいなかった。
 彼女は、少しホッとしたような表情を見せたが、すぐに別の司書さんを呼んでカウンターの仕事を頼んでいた。

 そして、静かに「どうぞ、私について来てください」と、2階の専用閲覧室へ僕達を案内したんだ。
 
 司書の阿部さんは、何か諦めたように、でも少しきつい口調で、『ここから出ないように』と、言ってどこかへ行ってしまった。しばらくして彼女は、1冊の古い本を持って来た。


「もう1度言うわ。私が呼びに来るまで、ここから出ないで下さいね」


 そういうと、司書の阿部さんはすぐに出て行ってしまった。僕が呆然と入り口の方を見ていると、突然志津奈しずなが大声を出した。

「北野先生! これ、『なないろ にっき』って書いてある!」

 三成実さんが、手に取って中を開いて見た。

「うわー、ぼろぼろだー。でも、きれいな字で、びっしり書いてある」

 

 ここは図書館の2階の閲覧室。そんなに広くはないけれど、長テーブルが向い合わせで四つ置いてある。パイプ椅子が一人一脚ずつセットされていて、あとは書棚が一つあるだけ。
 窓はない。入り口のドアは、一か所。天井には蛍光灯が4つ。殺風景だけど、なぜか緊張感のある部屋だった。

 三成実さんの手には、『なないろ にっき』がある。

 それを今、まさに、みんなで覗こうとした時、一瞬、光ったような感じがした。『なないろ にっき』全体から、眩しい光がほとばしり、それを浴びた僕は、自分の体が宙に浮いているように感じた。僕は、周りの人達も気になったけど、確かめる余裕なんかなかった。


 一瞬だろうか? いや、一瞬だった? いいや、永遠かもしれない? それは、誰にもわからなかったと思う。僕は、…………。



(つづく)
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