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第4章 未来へと吹く風〔北野先生の視点〕
22 第4章第8話 負けないこと
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美代乃さんがいない畑作業だった。それでも畑には子供達やお手伝いの人達が集まり楽しい雰囲気での作業ができた。僕達は、午前中の仕事を終え、村長の奥さんが作ってくれたお弁当を畑で食べていた。
すると、遠くの方から何となく陽気な歌声が聞こえてきた。誰かが手を振りながら、こちらに歩いて来るのが見えた。
「あ! みょんちゃんだ。わーい!」
真っ先に見つけたのは、あーちゃんだった。そして、他の子供達も一斉に駆け寄って行った。
「元気になったんだわ」
志津奈が安心してホッとため息をついた。すぐに、振り返って太郎を見る志津奈は、なんとも言えない複雑な顔をしたんだ。
そこには目に涙をいっぱいにためて、今にも泣きそうになっているかわいい男の子がいたんだ。
そんな太郎を志津奈は、笑えなかったんだ。だって、彼女の目にも涙は滲んでいたんだから。
そのうちに、美代乃さんが、傍まで来て、「ごめんなさい、遅くなって」と、元気に微笑んでくれた。
それから、太郎の顔を覗き込んで、心配そうに、
「あら、太郎君どうしたの? そんな顔して……、どっか具合でも悪いの?」
と、今にも美代乃さんの顔が、太郎の顔にくっ付きそうになった。
すると益々太郎は、涙目になったばかりか、顔も赤くなってきたんだ。そこで、僕は、太郎の頭を撫でながら、代わりに説明してあげた。
「ああ……もう、大丈夫ですよ。……なあ太郎。太郎の元気は、今、回復したんで、気にしないでください。あはははは……」
「北野先生……何、笑ってんの。もう、いいよ!!」
と、ちょっと怒って、その場を離れていってしまった。でも、僕には分かるんだ。太郎は、このままここにいると、もっと恥ずかしくなるから、ちょっと頭を冷やしに離れたんだと思う。
「それならいいんだけど……?」
と、美代乃さんは、ちょっと不思議そうにしてたけど、太郎の後姿を見送ってから、また子供達の中に消えて行った。
「美代乃さんは、本当にみんなのことを気にかけているんだなあ。この村の子でもない太郎の事まで、しっかり心配しているなんて……。自分だって、大変なのに……」
彼女の後ろ姿を見ながら、僕は彼女の想いを想像してみた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〔美代乃の視点〕
「ねえ、みょんちゃん。今日は、来ないかと思っちゃった」
「ごめんね、遅くなって」
「でも、元気になってよかったなー」
「ありがとうね。それに、あーちゃんの顔を見たから、もっと元気になったわよ」
「わーい。だーい好き! みょんちゃん」
「今日はね、これ持って来ちゃった」
私は、くるっと振り向いて、背中のギターを指さしたの。
「わー! お休みじゃないのに、嬉しいなー! でも、いいの?」
「今日はね、お客さんもいるから、ぜひ、歌を聞いてもらいたくて、持ってきちゃったの」
私は、大きな木の根元に腰を下ろし、背中のギターを前へ回し、弾き始めたの。青い空の下、思いっきり歌を歌うのが好き。1人でも歌うけど、子供達が聞いてくれると楽しくなちゃう。いつまででも、こうやって歌っていたいと思っちゃうの。
でも、仕事もしなきゃならないので、歌を歌うのは仕事がお休みの時って決めてるのよ。子供達が集まりやすいように、いつもこの木の根元で歌ってるわ。
私は、この木を《虹の木》って呼んでるの。きっと、楽しい思い出のシンボルになる木だと思ってるの。
ああ、近くにいた子供達だけじゃなく、自然にまわりに居た人達も集まってきた。みんな私の歌に耳を傾けて聞き入ってくれてる。……いつまで、歌えるのかな……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〔北野先生の視点〕
やっぱり、あの木は……間違いない。
美代乃さんと子供達は、楽しそうに歌を歌っていた。美代乃さんは、午後の作業はしなかった。それでも、静かに木陰でみんなの作業を見ていたんだ。
午後の作業も一段落した頃、僕は彼女の傍へ行って話かけてみたんだ。
「やあ、美代乃さん。体の具合はどうですか?」
「ええ……少し疲れました」
思ったより、素直な返事が返ってきて、僕はびっくりした。
「無理をするからですよ。あんなにたくさん歌って。でも、とても気持ちのいい歌声でしたね。何か心がすっきりするような……」
「ありがとうございます。今日は、……本当は皆さんに……旅のみなさんに歌を聞いてほしくて……」
「ありがとうございます。僕は……どの歌も知っています。ただ、歌というより、あなたの歌声が本当によかった。……でも、本当は、歌を聞かせることだけが、あなたの願いではないと思うのですが……」
僕は、美代乃さんの今の気持ちがどうしても理解できなかったので、思い切って聞いてみたんだ。
「……やっぱり、お見通しなんですね北野先生は……。あなたなら、きっとわかってくださると思ってました」
彼女は、居住まいを正して真剣な表情で続けた。
「明日は、ちょうど日曜日です。見せたいものがあるんです。私と一緒に来てくださるかしら?」
「仲間も一緒でいいですか?」
「もちろん、お願いします」
美代乃さんの目と声には、何か決意のようなものを感じたんだ。
(つづく)
すると、遠くの方から何となく陽気な歌声が聞こえてきた。誰かが手を振りながら、こちらに歩いて来るのが見えた。
「あ! みょんちゃんだ。わーい!」
真っ先に見つけたのは、あーちゃんだった。そして、他の子供達も一斉に駆け寄って行った。
「元気になったんだわ」
志津奈が安心してホッとため息をついた。すぐに、振り返って太郎を見る志津奈は、なんとも言えない複雑な顔をしたんだ。
そこには目に涙をいっぱいにためて、今にも泣きそうになっているかわいい男の子がいたんだ。
そんな太郎を志津奈は、笑えなかったんだ。だって、彼女の目にも涙は滲んでいたんだから。
そのうちに、美代乃さんが、傍まで来て、「ごめんなさい、遅くなって」と、元気に微笑んでくれた。
それから、太郎の顔を覗き込んで、心配そうに、
「あら、太郎君どうしたの? そんな顔して……、どっか具合でも悪いの?」
と、今にも美代乃さんの顔が、太郎の顔にくっ付きそうになった。
すると益々太郎は、涙目になったばかりか、顔も赤くなってきたんだ。そこで、僕は、太郎の頭を撫でながら、代わりに説明してあげた。
「ああ……もう、大丈夫ですよ。……なあ太郎。太郎の元気は、今、回復したんで、気にしないでください。あはははは……」
「北野先生……何、笑ってんの。もう、いいよ!!」
と、ちょっと怒って、その場を離れていってしまった。でも、僕には分かるんだ。太郎は、このままここにいると、もっと恥ずかしくなるから、ちょっと頭を冷やしに離れたんだと思う。
「それならいいんだけど……?」
と、美代乃さんは、ちょっと不思議そうにしてたけど、太郎の後姿を見送ってから、また子供達の中に消えて行った。
「美代乃さんは、本当にみんなのことを気にかけているんだなあ。この村の子でもない太郎の事まで、しっかり心配しているなんて……。自分だって、大変なのに……」
彼女の後ろ姿を見ながら、僕は彼女の想いを想像してみた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〔美代乃の視点〕
「ねえ、みょんちゃん。今日は、来ないかと思っちゃった」
「ごめんね、遅くなって」
「でも、元気になってよかったなー」
「ありがとうね。それに、あーちゃんの顔を見たから、もっと元気になったわよ」
「わーい。だーい好き! みょんちゃん」
「今日はね、これ持って来ちゃった」
私は、くるっと振り向いて、背中のギターを指さしたの。
「わー! お休みじゃないのに、嬉しいなー! でも、いいの?」
「今日はね、お客さんもいるから、ぜひ、歌を聞いてもらいたくて、持ってきちゃったの」
私は、大きな木の根元に腰を下ろし、背中のギターを前へ回し、弾き始めたの。青い空の下、思いっきり歌を歌うのが好き。1人でも歌うけど、子供達が聞いてくれると楽しくなちゃう。いつまででも、こうやって歌っていたいと思っちゃうの。
でも、仕事もしなきゃならないので、歌を歌うのは仕事がお休みの時って決めてるのよ。子供達が集まりやすいように、いつもこの木の根元で歌ってるわ。
私は、この木を《虹の木》って呼んでるの。きっと、楽しい思い出のシンボルになる木だと思ってるの。
ああ、近くにいた子供達だけじゃなく、自然にまわりに居た人達も集まってきた。みんな私の歌に耳を傾けて聞き入ってくれてる。……いつまで、歌えるのかな……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〔北野先生の視点〕
やっぱり、あの木は……間違いない。
美代乃さんと子供達は、楽しそうに歌を歌っていた。美代乃さんは、午後の作業はしなかった。それでも、静かに木陰でみんなの作業を見ていたんだ。
午後の作業も一段落した頃、僕は彼女の傍へ行って話かけてみたんだ。
「やあ、美代乃さん。体の具合はどうですか?」
「ええ……少し疲れました」
思ったより、素直な返事が返ってきて、僕はびっくりした。
「無理をするからですよ。あんなにたくさん歌って。でも、とても気持ちのいい歌声でしたね。何か心がすっきりするような……」
「ありがとうございます。今日は、……本当は皆さんに……旅のみなさんに歌を聞いてほしくて……」
「ありがとうございます。僕は……どの歌も知っています。ただ、歌というより、あなたの歌声が本当によかった。……でも、本当は、歌を聞かせることだけが、あなたの願いではないと思うのですが……」
僕は、美代乃さんの今の気持ちがどうしても理解できなかったので、思い切って聞いてみたんだ。
「……やっぱり、お見通しなんですね北野先生は……。あなたなら、きっとわかってくださると思ってました」
彼女は、居住まいを正して真剣な表情で続けた。
「明日は、ちょうど日曜日です。見せたいものがあるんです。私と一緒に来てくださるかしら?」
「仲間も一緒でいいですか?」
「もちろん、お願いします」
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(つづく)
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