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第5章 ありふれた日常の変化
58 第5章第21話 ボクにできること
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「(……ホッ……よかった! ……これで、またマナの笑顔が見れる。……そう、あの時から、俺は、俺のできることでマナに笑顔を……)」
*******真夏美の母の葬儀の時*******
「…………マ…………」
熱太郎は、遺影に向かって線香をあげる時、横に座っている彼女に声を掛けることができなかった。
真夏美は、弟の手を握り締めたまま涙を流しながら母の写真を見つめていた。
その時は、泣き声こそ出していなかったが、暗い表情は傍で見ていても居たたまれなかった。
熱太郎は、小学校3年生の男子なりに、力になりたかった。
真夏美の傍には、1つ上の学年の上杉南中子がぴったり寄り添っていた。南中子は、真夏美とその弟を全身で守ろうとしているのは、熱太郎にもわかった。
「……ボクも……あんな風に……でも、ボクがあんなことをしても、マナは喜ばない! ……ボクには、何ができるんだろう?」
葬儀の会場で、熱太郎には真夏美しか見えていなかった。そして、周りの喧騒も、まったく耳に入らなかった。
********************
しばらくして、真夏美が登校するようになった。葬儀の後、気持ちが落ち着くまで、学校は1週間ほど休んでいた。
熱太郎にとって、この1週間は、耐えられないほどに長く感じた。
前日、担任の先生から真夏美の登校についてお知らせがあった。家庭の事情も簡単に説明があり、学級として暖かく迎えて欲しいと、言われた。
「いよっ! みんな、おっはよー!」
その日の朝、真夏美は、何事もなかったかのように、元気に教室へ入ってきた。仲の良い女子は、すぐに周りを取り囲み、彼女の休んでいる時の様子などを面白可笑しく伝えていた。
ただ、彼女のことを尋ねる者は、1人も居なかった。
熱太郎は、その様子を黙って見ていた。
いつもの明るく元気におしゃべりする真夏美には間違いなかったが、授業が始まり周りに友達が居なくなり、彼女が口を閉じた瞬間、熱太郎が知らない寂しそうな表情に変わった。
休み時間になって、また友達とおしゃべりしている時は、明るい表情になるのだが、熱太郎にはそれがどうしても『無理』しているように見えて仕方がなかった。
3時間目の算数がはじまった時、熱太郎は突如手を挙げて先生に言った。
「先生! 算数の教科書を忘れたので、隣の岡崎さんに見せてもらいます!」
「あ、ああ……岡崎? いいか?」
「は、はい……」
ちょうど席が隣同士の2人なので、先生も『仕方無いな~』と、いう顔をした。
「こら! 中村、ちゃんと時間割を調べてこいよー」
その時の担任は、若い男の先生だったが、なんとなく子ども達から『おじさん扱い』されるようなのんびりした人だった。
「マナ、すんません! 教科書見せてくだーーああーーさい!」
ちょっとお道化て見せる熱太郎だったが、真夏美は少し嫌な顔をしたくらいで、さほどのリアクションはなかった。
「あ! ……大変だ!」
「どうしたのよアッツ?」
「マナ~鉛筆が~……」
ウソ泣きの顔を作りながら、熱太郎は芯が折れた自分の鉛筆を見せた。
「もー、何やってんのよ、アッツは……はい、これ、使いな!」
「えへへへ……ありがと、マナ!」
(つづく)
*******真夏美の母の葬儀の時*******
「…………マ…………」
熱太郎は、遺影に向かって線香をあげる時、横に座っている彼女に声を掛けることができなかった。
真夏美は、弟の手を握り締めたまま涙を流しながら母の写真を見つめていた。
その時は、泣き声こそ出していなかったが、暗い表情は傍で見ていても居たたまれなかった。
熱太郎は、小学校3年生の男子なりに、力になりたかった。
真夏美の傍には、1つ上の学年の上杉南中子がぴったり寄り添っていた。南中子は、真夏美とその弟を全身で守ろうとしているのは、熱太郎にもわかった。
「……ボクも……あんな風に……でも、ボクがあんなことをしても、マナは喜ばない! ……ボクには、何ができるんだろう?」
葬儀の会場で、熱太郎には真夏美しか見えていなかった。そして、周りの喧騒も、まったく耳に入らなかった。
********************
しばらくして、真夏美が登校するようになった。葬儀の後、気持ちが落ち着くまで、学校は1週間ほど休んでいた。
熱太郎にとって、この1週間は、耐えられないほどに長く感じた。
前日、担任の先生から真夏美の登校についてお知らせがあった。家庭の事情も簡単に説明があり、学級として暖かく迎えて欲しいと、言われた。
「いよっ! みんな、おっはよー!」
その日の朝、真夏美は、何事もなかったかのように、元気に教室へ入ってきた。仲の良い女子は、すぐに周りを取り囲み、彼女の休んでいる時の様子などを面白可笑しく伝えていた。
ただ、彼女のことを尋ねる者は、1人も居なかった。
熱太郎は、その様子を黙って見ていた。
いつもの明るく元気におしゃべりする真夏美には間違いなかったが、授業が始まり周りに友達が居なくなり、彼女が口を閉じた瞬間、熱太郎が知らない寂しそうな表情に変わった。
休み時間になって、また友達とおしゃべりしている時は、明るい表情になるのだが、熱太郎にはそれがどうしても『無理』しているように見えて仕方がなかった。
3時間目の算数がはじまった時、熱太郎は突如手を挙げて先生に言った。
「先生! 算数の教科書を忘れたので、隣の岡崎さんに見せてもらいます!」
「あ、ああ……岡崎? いいか?」
「は、はい……」
ちょうど席が隣同士の2人なので、先生も『仕方無いな~』と、いう顔をした。
「こら! 中村、ちゃんと時間割を調べてこいよー」
その時の担任は、若い男の先生だったが、なんとなく子ども達から『おじさん扱い』されるようなのんびりした人だった。
「マナ、すんません! 教科書見せてくだーーああーーさい!」
ちょっとお道化て見せる熱太郎だったが、真夏美は少し嫌な顔をしたくらいで、さほどのリアクションはなかった。
「あ! ……大変だ!」
「どうしたのよアッツ?」
「マナ~鉛筆が~……」
ウソ泣きの顔を作りながら、熱太郎は芯が折れた自分の鉛筆を見せた。
「もー、何やってんのよ、アッツは……はい、これ、使いな!」
「えへへへ……ありがと、マナ!」
(つづく)
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