暑い地球はもう冷ませない! 制服ビキニの高校生が、地球温暖化ウィルスと戦うオンダンV〔ファイブ〕 ~暑さ対策は、水着着用で過ごすのが一番だ~

根 九里尾

文字の大きさ
80 / 112
第6章 紡ぐ繋がりの中で

80 第6章第15話 職人の願い

しおりを挟む
「キャアアアアアアアアアアアーーーーーー!」

「どうした?ピンク!」

 悲鳴を聞いて、一瞬慌てたのは、ブルーだった。

「うーーっふうーーーん! ミーせんぱ~~い~~これ、見て~~!」

 が、しかし、どうやらそれは、喜びの声だったようだ。

「ブ、ブルー! こ、この陳列は……」
「おーイエロー、まぎれもない『全国煎餅ぜんこくせんべえ10せん』だなあ~」
「だからか! ブルー、これを目にしたピンクは、抑えが利かなくなってます!」
「きっとピンクは、この煎餅に魅了されてしまったんだ!」


 『虹ノ森海苔巻煎餅~霰チェーン店1番店』の奥の間に足を踏み入れた3人が目にしたものは、なんとまだ地球が正常な気温を保っていた100年前の『あるべき姿の煎餅達』だった。

 100年前までは、まだ普通に煎餅が焼かれていたのだ。

 中でも老舗の煎餅屋に必ずいた『煎餅職人』は、店の宣伝も兼ね、店の1番目立つところで煎餅焼きの実演販売をしていたのである。
 そして、年に1回開催される『全国煎餅合戦』に出場する煎餅職人は、1000人を超えていた。そして、その中から『味・硬さ・焼きのパフォーマンス』の総合評価で高得点を出した煎餅と煎餅職人は、『全国煎餅10選』として、全国の駅の売店に特等席が用意されるのである。

 ただ、気温の上昇が始まって、煎餅を高温で焼くことができる職人が減ってくると、いつしか『全国煎餅10選』も行われなくなってしまったのである。

 それが、この『虹ノ森海苔巻煎餅~霰チェーン店1番店』には、蘇っていた。眩しいくらいに煎餅が輝いているのである。




「ミ、ミ、ミー先輩、あたし、も、も、もう我慢できない! た、食べてもいいよね?」

 イエローに後ろから羽交い絞めされているピンクが、ものすごい力で彼を引きずってまで、煎餅に手を伸ばそうとしていた。
 しかし、その時、背中を向けて座っていた一人の中年の男が、ゆっくりと振り返りピンクを見つめて、話し出した。


「ああ、思う存分に、食べてくれ! この焼き立てのパリパリ煎餅を」


 男は、作務衣のズボンのみを身に付け、上半身は裸だった。しかし、頭に巻く豆絞りの手ぬぐいは、まさに煎餅焼きの職人といった感じだ。
 ここは、煎餅焼きの工房で、何か所にも炭火が起こされていた。おまけに、この部屋にはミストの噴霧器は無く、異常なほど室内の温度は高かった。


「お前が、この煎餅を焼いたのか?」
「ああそうだ! 好きなだけ、食べるがいい!」
「な、なにを、馬鹿な、あ! ピンク!」

「うへえーーー〔バリ、バリ……バリ〕ウッメーーー!」
「あ、マナ!」
「アッツも食べなよ! 食べていいって、言ってんだもん! ほら、ミー先輩も!」
「あーー、もーマナ~、ホント、食いしん坊なんだから、あ! ぶ、部長!」

「お、おおおー、危なかった。うかつに気を抜けないな!」
「もー、部長まで、ホントに、ウチの部員は、オヤツが好きなんだから! 俺達は、オンダンVなの! ほら、早く、戻って、戻って!」

「す、すまん、イエロー! ところで、職人? どうしてお前は、この暑い中で、平気で煎餅を焼いていられるんだ? 私達は、この冷却コスチュームのお陰で、辛うじて頑張れるんだ! 何も着ていない、お前など、一瞬で熱中症になるはずだろう?」

「ふっ! 確かにな。煎餅焼きは、暑いんだ! だから、今は煎餅を焼く職人なんて、ほとんど居なくなった! 例え居たとしても、工場で隔離された部屋の外から、リモコンを操作して熱が漏れない密閉された空間の外で、煎餅焼きの機械を操作するだけなんだ!…………そんなのは、もう煎餅じゃない!」


 煎餅焼きの職人は、はっきりとした口調で自分の職人魂をぶつけて来た。しかし、その顔面はもちろん剥き出しの上半身には、流れるように汗が噴き出している。


「仕方がないじゃないか! 今は、温暖化で、これ以上暑いことなんてできないんだから!」

 イエローが、職人に向かって、力を込めて訴えた。

「ああ、そうかもな。でも、例え工場で煎餅を作ったとしても、あのミストにやられてフニャフニャになった煎餅だけは、……あのフニャフニャ煎餅だけは、許せないんだ!」

 8畳間ぐらいの窓もない密閉された空間に、いくつもの炭焼きコンロを並べ、煎餅を焼きながら職人は話を続けた。

「確かに暑かったよ! いや熱かったんだ! アレを手に入れるまではな! 突然だった。オレは、暑さを感じなくなったんだ! これで、幾らでも煎餅を焼けるって」

 職人は、薄っすらと笑みを浮かべながら、網の上で焼けてきた煎餅に甘醤油を塗り始めた。


 ジューー………シューー………ジュジュジューー………


 醤油の焼ける音が聞こえた。


 同時に、心地よい香ばしい甘い匂いが、鼻の粘膜にひっついて来た。


「う、ううう、ゴクッ!」


 3人は、溢れてきた唾液を一気に喉に流し込んだ。しかし、その唾液は止まることを忘れたように、また溢れ出したのだ。



(つづく)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...