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20:特別な贈り物◇
久しぶりに多くの村人がミサに参加した日。
ミサの終了と同時に、村の男が声を掛けてきた。
「アレシュさんに聞いたぜ……悪魔に十字架を壊されたんだってな」
「あ……はい」
「セルジア神父様には世話になってるからな……だから、皆で金を出して銀を買ったんだ」
「いつもお世話になっていますから」
「日頃の感謝の気持ちです」
「えっ」
村で修理屋をしている村人が代表してセルジアに差し出したのは──
「銀の……十字架」
「息子と一緒に作ったんだ」
「コイスさんと……この間、神像にヒゲ描いてゲンコツされてたのに」
「いつの話してんスか神父様! 俺もう十六っスよ」
「あふふ、ありがとうございます。本当に、皆様ありがとうございます」
とてもとても大事そうに十字架を胸に抱くセルジアに、皆が照れ臭そうに笑いかける。
アレシュは教会の外でその様子を見て、胸元がむずがゆくなっていた。
「(まさかこんな事になるとは……教会で売ってる十字架でもいいだろ別に。手作りしなくたって)」
裏で皆がコソコソ資金を集めて、修理屋親子が試行錯誤して作る工程も見ていたアレシュは、苦労せずとも贈れる物を何故わざわざ手作りしたのか理解出来なかった。
「アレシュ、今から十字架に祝福を行うので部屋に近づかないように」
「はいはい。お前相当浮かれてんな」
「当たり前だ。こんなにも素敵な十字架、他にはない」
「正規品のが良くないか? 銀じゃなくてもお前の力ならそれで充分だし」
「悪魔にはわからないか……この価値が」
嬉しそうに、愛おしそうに十字架を撫でながら、そう言い放つセルジアにアレシュはツンと下唇を突き出してそっぽを向いた。
「贈り物なんてされた事ねえし。わかんねえよ」
「ん? そうなのか」
「まぁ、貰っても困るからいらねえけど」
拗ねている様子のアレシュの背をポンポンと叩いて優しげに微笑む。
「それならば私が何かあげようか」
「っ、いらねえから! マジでいらねぇから! 神父からの贈り物なんて、悪魔には危険物だ!」
「あ、ああ、そうか。すまない」
本来ならば敵対するのが常である神父と悪魔。反発する力と価値観。
脅して得ていたはずの食事も……
「今日は頑張ったから、多めに食わせてくれ」
屈辱を覚えていたはずの仕打ちも……
「仕方ない……明日に響かない程度なら、いいだろう」
報酬と労いのようになっている。
この関係が崩れないのは、村人の安全確保を考えるセルジアの自己犠牲が揺るがないからだ。それを利用して、アレシュが食事を得ている。
「あっ、ぁ……」
「はぁ……セル」
「んん、あれしゅ」
アレシュに揺さぶられ、名を呼び合い、目を合わせて手を繋ぐのも……食事だから。
お互いに、それ以上も以下もないと……思い込んでいた。
『ザァーーーーーー』
「……酷い雨だ」
教会の窓を激しく叩きつける音を聞きながら、礼拝堂にてセルジアは呟いた。昨日からずっと降り続いている雨は止む気配を見せない。
『ガタ、ガタ』
「(風もある。今日外には出ない方がいいな。人間は)」
アレシュは雨の中だが気にせず外回りの仕事に出て行ってしまった。
昼を取りに行こうかとした時、外から物音が聞こえた。
「神父様!」
「ぉっと」
扉が勢いよく開き、駆け込んできた、女性は肩を上下させていて、髪からは水が滴り落ちており濡れ鼠のような姿になっていた。息を整えた後、口を開いた。
「息子がッ……息子が居ないんです!!」
「!?」
荒れた大雨の中、村の子どもが一人行方不明になった。
すぐさま大人達を集めて、周囲の捜索を開始する。
セルジアも捜索に参加して村の外へ出たところ、アレシュと鉢合わせた。
「出てくのか?」
「子どもが行方不明になった」
「……そうか」
「探すの手伝ってくれ」
「ええ~~……まぁ、いいぜ」
めんどくさそうに了承するアレシュだが、セルジアの深刻な表情を見て背筋を正した。
「一番危ないところから探す方がいいだろ」
「……ああ、川の方を見に行こうと」
アレシュの提案にのって、近くの川へ続く道を歩く。水浸しの道では足跡さえすぐに消えてしまう。
「ん? 橋に誰か居るぞ」
「!?」
視界の悪い中、見えてきた川は予想どおり雨で増水していた。
その川にかかっているアーチ状の橋を子どもがゆっくり歩いて渡ろうとしている。
「良かった。見つかった」
セルジアがパシャパシャと橋のほうへ走っていく。アレシュは、増水する川を眺め、ハッとした様子で橋に足を運ぶセルジアの腕をつかんだ。
「セル、止まれ!」
「アレシュ?」
「おい、ジャクソン! 戻って来い!」
「……アレシュ兄ちゃん?」
こちらに気付いたジャクソンと呼ばれた子どもが──
『ドォオオオン』
大雨で増水した川に流された大木により、橋が突き飛ばされるように崩壊した。同時にジャクソンも川へ放り投げられる。
「あああっ!」
「うわぁぁああ!」
濁流の波に飲み込まれ、セルジアとジャクソンの悲鳴はすぐに轟音にかき消されてしまう。
「たく、仕方ねえな」
「アレシュ……ぇ、何を」
アレシュはセルジアが止める間もなく、増水する川へ身を投じた。
『バシャーン』
「アレシュ!!」
そして一瞬で見えなくなった。
だが、すぐに川下の方で息継ぎの音がした。
「ぶはっ!」
「ケホッケホッ」
「アレシュ! ジャクソンくん!」
全力疾走で流される二人に追いつくセルジア。アレシュの腕の中にはジャクソンがぐったりとしていたが意識はあった。
セルジアが伸ばした手を取って、岸に上がるアレシュ。
「ケホッ……ぅ、うああああああん!」
「二人とも怪我は!?」
「コイツのたんこぶぐらいだ。はぁ……大雨になんで外出てんだ」
「ぉ、おじいちゃんが心配で」
ジャクソンは隣村で一人で暮らす祖父を心配して会いに行こうとしていたようだ。
だが、両親にダメだと言われ、一人で出てきてしまった。もう十歳だから大丈夫だと思ったらしい。
「ごめんなさぁいぃ」
「もう無茶すんなよ」
「……君もね」
「は? 俺は無茶なんて」
『ガッ』
ジャクソンとアレシュの背に腕が回る。
突然セルジアに抱きしめられた二人は固まるしかなかった。
セルジアは震える声で呟く。
「怖かった……」
「え」
「無事で……本当に良かった」
安堵の声を聞いて、アレシュは眉を寄せながら困惑する。
悪魔のアレシュからすればただ川に流れただけだ。しかし、目の前で人が濁流に飲まれた姿を見たら人間は手を出す事が出来ないのが殆どだ。
「ありがとう……ありがとう、アレシュ。この子を助けてくれて、本当にありがとう」
「ッ……」
喜びのあまりポロポロと涙を流すセルジアに優しく微笑まれたアレシュは、時が止まったような錯覚を覚えた。
今まで湧き上がるのは食欲と性欲が混ざった感情だった。けれど、今回は……未知の感覚だ。いや、今まで感じていたが、こんなにもはっきり感じた事が無かった。
「(……ああ……ああ、困るんだよ。神父からの贈り物ってのは……悪魔にとっちゃ、危険極まりない)」
アレシュの中で、今までセルジアに貰った感謝の言葉と自分に向けられる微笑みがリフレインされた。
それは呪いのように脳内にこびりついて離れないのだ。まるで……
『ゴロゴロ……ドォーーーーン』
「うわ! 近くに落ちたかも」
雷が落ちた瞬間、アレシュの心臓も跳ね上がったように高鳴り出した。ドクンドクンと激しく脈打ち始める。その鼓動に合わせて身体の芯から熱を帯びていったのを感じ取ったアレシュの顔は……青ざめる。
「アレシュ?」
「っ、何でもねえ。帰るぞ」
「ああ、そうだな」
ジャクソンを連れ帰った後、アレシュは村人達から大いに感謝されたが、セルジアに受けた感謝とはまた違った。
教会に戻って、体を洗って服を洗濯する。
「…………」
「アレシュ? どうしたんだ? ずっと厳しい顔になって」
「……セル」
「ん?」
「腹が減った」
抱いた感情を否定する為に、セルを押し倒して強引に、激しく乱暴に食い荒らした。
だが、セルジアは抵抗しなかった。それどころか、泣きながら喘いで受け入れた。その事に苛立ってさらに酷くする。
食べても食べても、満たされない。納得出来ない。否定出来ない。
セルジアに対する気持ちが強くなる一方だった。
『ドチュドチュドチュドチュ!』
「(ふざけんなよ……欲しい欲しいと思ってた正体が、こんなっ……あり得ない)」
「あれしゅっ、待って、待て、もぉ……イく」
「……セル」
「はげしっ、あああ!」
自分に身を委ねながらも、決して堕ちてはいないセルジアを見る度に胸の内が激しく暴れだす。
そんな自分の心の動きに耐えきれず頭を掻く日々が続いた。
「ああ、クソッ……クソッ」
手酷く扱った日からアレシュは、セルジアを食べなくなった。
自分の気持ちと向き合う事を避けているからだ。
そして、アレシュが求めない限り、セルジアの方から食事に誘う事はやはりない。食事の心配はされるが、毎度突っぱねる。
避けていても、共同生活を送っていれば嫌でも顔を見る。
だから、アレシュは逃げ出したのだ。
教会から、村から……セルジアの元から、姿を消した。
ミサの終了と同時に、村の男が声を掛けてきた。
「アレシュさんに聞いたぜ……悪魔に十字架を壊されたんだってな」
「あ……はい」
「セルジア神父様には世話になってるからな……だから、皆で金を出して銀を買ったんだ」
「いつもお世話になっていますから」
「日頃の感謝の気持ちです」
「えっ」
村で修理屋をしている村人が代表してセルジアに差し出したのは──
「銀の……十字架」
「息子と一緒に作ったんだ」
「コイスさんと……この間、神像にヒゲ描いてゲンコツされてたのに」
「いつの話してんスか神父様! 俺もう十六っスよ」
「あふふ、ありがとうございます。本当に、皆様ありがとうございます」
とてもとても大事そうに十字架を胸に抱くセルジアに、皆が照れ臭そうに笑いかける。
アレシュは教会の外でその様子を見て、胸元がむずがゆくなっていた。
「(まさかこんな事になるとは……教会で売ってる十字架でもいいだろ別に。手作りしなくたって)」
裏で皆がコソコソ資金を集めて、修理屋親子が試行錯誤して作る工程も見ていたアレシュは、苦労せずとも贈れる物を何故わざわざ手作りしたのか理解出来なかった。
「アレシュ、今から十字架に祝福を行うので部屋に近づかないように」
「はいはい。お前相当浮かれてんな」
「当たり前だ。こんなにも素敵な十字架、他にはない」
「正規品のが良くないか? 銀じゃなくてもお前の力ならそれで充分だし」
「悪魔にはわからないか……この価値が」
嬉しそうに、愛おしそうに十字架を撫でながら、そう言い放つセルジアにアレシュはツンと下唇を突き出してそっぽを向いた。
「贈り物なんてされた事ねえし。わかんねえよ」
「ん? そうなのか」
「まぁ、貰っても困るからいらねえけど」
拗ねている様子のアレシュの背をポンポンと叩いて優しげに微笑む。
「それならば私が何かあげようか」
「っ、いらねえから! マジでいらねぇから! 神父からの贈り物なんて、悪魔には危険物だ!」
「あ、ああ、そうか。すまない」
本来ならば敵対するのが常である神父と悪魔。反発する力と価値観。
脅して得ていたはずの食事も……
「今日は頑張ったから、多めに食わせてくれ」
屈辱を覚えていたはずの仕打ちも……
「仕方ない……明日に響かない程度なら、いいだろう」
報酬と労いのようになっている。
この関係が崩れないのは、村人の安全確保を考えるセルジアの自己犠牲が揺るがないからだ。それを利用して、アレシュが食事を得ている。
「あっ、ぁ……」
「はぁ……セル」
「んん、あれしゅ」
アレシュに揺さぶられ、名を呼び合い、目を合わせて手を繋ぐのも……食事だから。
お互いに、それ以上も以下もないと……思い込んでいた。
『ザァーーーーーー』
「……酷い雨だ」
教会の窓を激しく叩きつける音を聞きながら、礼拝堂にてセルジアは呟いた。昨日からずっと降り続いている雨は止む気配を見せない。
『ガタ、ガタ』
「(風もある。今日外には出ない方がいいな。人間は)」
アレシュは雨の中だが気にせず外回りの仕事に出て行ってしまった。
昼を取りに行こうかとした時、外から物音が聞こえた。
「神父様!」
「ぉっと」
扉が勢いよく開き、駆け込んできた、女性は肩を上下させていて、髪からは水が滴り落ちており濡れ鼠のような姿になっていた。息を整えた後、口を開いた。
「息子がッ……息子が居ないんです!!」
「!?」
荒れた大雨の中、村の子どもが一人行方不明になった。
すぐさま大人達を集めて、周囲の捜索を開始する。
セルジアも捜索に参加して村の外へ出たところ、アレシュと鉢合わせた。
「出てくのか?」
「子どもが行方不明になった」
「……そうか」
「探すの手伝ってくれ」
「ええ~~……まぁ、いいぜ」
めんどくさそうに了承するアレシュだが、セルジアの深刻な表情を見て背筋を正した。
「一番危ないところから探す方がいいだろ」
「……ああ、川の方を見に行こうと」
アレシュの提案にのって、近くの川へ続く道を歩く。水浸しの道では足跡さえすぐに消えてしまう。
「ん? 橋に誰か居るぞ」
「!?」
視界の悪い中、見えてきた川は予想どおり雨で増水していた。
その川にかかっているアーチ状の橋を子どもがゆっくり歩いて渡ろうとしている。
「良かった。見つかった」
セルジアがパシャパシャと橋のほうへ走っていく。アレシュは、増水する川を眺め、ハッとした様子で橋に足を運ぶセルジアの腕をつかんだ。
「セル、止まれ!」
「アレシュ?」
「おい、ジャクソン! 戻って来い!」
「……アレシュ兄ちゃん?」
こちらに気付いたジャクソンと呼ばれた子どもが──
『ドォオオオン』
大雨で増水した川に流された大木により、橋が突き飛ばされるように崩壊した。同時にジャクソンも川へ放り投げられる。
「あああっ!」
「うわぁぁああ!」
濁流の波に飲み込まれ、セルジアとジャクソンの悲鳴はすぐに轟音にかき消されてしまう。
「たく、仕方ねえな」
「アレシュ……ぇ、何を」
アレシュはセルジアが止める間もなく、増水する川へ身を投じた。
『バシャーン』
「アレシュ!!」
そして一瞬で見えなくなった。
だが、すぐに川下の方で息継ぎの音がした。
「ぶはっ!」
「ケホッケホッ」
「アレシュ! ジャクソンくん!」
全力疾走で流される二人に追いつくセルジア。アレシュの腕の中にはジャクソンがぐったりとしていたが意識はあった。
セルジアが伸ばした手を取って、岸に上がるアレシュ。
「ケホッ……ぅ、うああああああん!」
「二人とも怪我は!?」
「コイツのたんこぶぐらいだ。はぁ……大雨になんで外出てんだ」
「ぉ、おじいちゃんが心配で」
ジャクソンは隣村で一人で暮らす祖父を心配して会いに行こうとしていたようだ。
だが、両親にダメだと言われ、一人で出てきてしまった。もう十歳だから大丈夫だと思ったらしい。
「ごめんなさぁいぃ」
「もう無茶すんなよ」
「……君もね」
「は? 俺は無茶なんて」
『ガッ』
ジャクソンとアレシュの背に腕が回る。
突然セルジアに抱きしめられた二人は固まるしかなかった。
セルジアは震える声で呟く。
「怖かった……」
「え」
「無事で……本当に良かった」
安堵の声を聞いて、アレシュは眉を寄せながら困惑する。
悪魔のアレシュからすればただ川に流れただけだ。しかし、目の前で人が濁流に飲まれた姿を見たら人間は手を出す事が出来ないのが殆どだ。
「ありがとう……ありがとう、アレシュ。この子を助けてくれて、本当にありがとう」
「ッ……」
喜びのあまりポロポロと涙を流すセルジアに優しく微笑まれたアレシュは、時が止まったような錯覚を覚えた。
今まで湧き上がるのは食欲と性欲が混ざった感情だった。けれど、今回は……未知の感覚だ。いや、今まで感じていたが、こんなにもはっきり感じた事が無かった。
「(……ああ……ああ、困るんだよ。神父からの贈り物ってのは……悪魔にとっちゃ、危険極まりない)」
アレシュの中で、今までセルジアに貰った感謝の言葉と自分に向けられる微笑みがリフレインされた。
それは呪いのように脳内にこびりついて離れないのだ。まるで……
『ゴロゴロ……ドォーーーーン』
「うわ! 近くに落ちたかも」
雷が落ちた瞬間、アレシュの心臓も跳ね上がったように高鳴り出した。ドクンドクンと激しく脈打ち始める。その鼓動に合わせて身体の芯から熱を帯びていったのを感じ取ったアレシュの顔は……青ざめる。
「アレシュ?」
「っ、何でもねえ。帰るぞ」
「ああ、そうだな」
ジャクソンを連れ帰った後、アレシュは村人達から大いに感謝されたが、セルジアに受けた感謝とはまた違った。
教会に戻って、体を洗って服を洗濯する。
「…………」
「アレシュ? どうしたんだ? ずっと厳しい顔になって」
「……セル」
「ん?」
「腹が減った」
抱いた感情を否定する為に、セルを押し倒して強引に、激しく乱暴に食い荒らした。
だが、セルジアは抵抗しなかった。それどころか、泣きながら喘いで受け入れた。その事に苛立ってさらに酷くする。
食べても食べても、満たされない。納得出来ない。否定出来ない。
セルジアに対する気持ちが強くなる一方だった。
『ドチュドチュドチュドチュ!』
「(ふざけんなよ……欲しい欲しいと思ってた正体が、こんなっ……あり得ない)」
「あれしゅっ、待って、待て、もぉ……イく」
「……セル」
「はげしっ、あああ!」
自分に身を委ねながらも、決して堕ちてはいないセルジアを見る度に胸の内が激しく暴れだす。
そんな自分の心の動きに耐えきれず頭を掻く日々が続いた。
「ああ、クソッ……クソッ」
手酷く扱った日からアレシュは、セルジアを食べなくなった。
自分の気持ちと向き合う事を避けているからだ。
そして、アレシュが求めない限り、セルジアの方から食事に誘う事はやはりない。食事の心配はされるが、毎度突っぱねる。
避けていても、共同生活を送っていれば嫌でも顔を見る。
だから、アレシュは逃げ出したのだ。
教会から、村から……セルジアの元から、姿を消した。
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