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23・産後の決戦
しおりを挟む「ジュン、あまり動き回るなと言っているだろ」
「ごめんごめん。勝手に忙しくなっちゃって」
「卵の数は二個、同じ部屋にある。割れたらどうする! あと10日は安静にしろ!」
二個の卵が俺の中でスクスク育っている。
モモが毎日お腹の子の様子を見て俺の世話焼いてくれるが、少し過保護すぎる。
「あと10日で孵るのか?」
「いや、卵が体外に出てくる。孵化は数日後になるだろう」
ウシガイと人間の間の子は、初めはウシガイの幼生と同じく鰓呼吸で、成長と共に肺を使って酸素を取り込むことが出来るようになる両生類に近い生態をしている。
なので赤ちゃんの間は水槽の中で子育てをする必要があるのだ。
鰓呼吸から肺呼吸に変わる期間は個人差があり、早いと1週間、遅いと数ヶ月かかる事もあると言う。
「元気に生まれてくれたらいいよ……」
「……そうだな」
少しだけ大きくなった腹を撫でて、どんな子が生まれるのか、名前はどうするか、二人で考えた。
「ワフ!」
「ああ、カムフラの散歩の時間だ」
「そうか。少し出掛けるが、誰が来ても扉を開けるんじゃないぞ」
「はいはい」
窓から出て行くモモとカムフラを見送って、俺はのんびりと青空を見上げていた。
悪阻は少しあるが、軽い車酔い程度のもので大したことはない。
「……平和だ」
鳥のさえずり、風のそよぐ音が心地よい。
目を閉じて自然を感じる。
こんなに穏やかだとついウトウトしてしまい、気が付けば寝てしまっていた。
「……ジュン、ジュン、起きろ」
「ふぁ?」
「ヘッヘッヘッ!」
「……ああ、おかえり」
ベッドの上でモモとカムフラに挟まれ、覗き込まれていた。
『ベロベロ!』
「んぶぶ! はっは、舐めすぎ」
「カムフラ、狡いぞ」
「ヘッ!」
「コイツ……鼻で笑いやがった」
身籠っている俺にキスもあまりしないモモがカムフラを羨んでムッとしている。
キスをするといろいろ我慢出来なくなるからだと言う。
「……モモもキスして」
「ぃ、や……その、今もギリギリなんだ。キスしたら、止まらない」
そういえば、俺からフェロモンが出てるんだっけ?
モモにも有効なのか。結構我慢させてるんだな。なら、煽ったら可哀想だ。
「ごめん。卵が外に出たら、我慢した分いっぱいしような」
「~~~~っっ……」
モモが天を仰いで震えている。カムフラが前足でポンポンとモモの肩を叩いて憐れみの眼差しを送っていた。
俺はモモとカムフラのリアクションがよくわからず首を傾げた。
そして10日間……俺はトイレまで一緒に付いてこようとするモモのお世話になり、極めて健康的にその日を迎えた。
「ひっひっふー、ひっひっふー」
「何してる」
「出産時に人間がする呼吸。いてて……んん~~便秘薬飲んだ時みたいだ」
「言い方……」
「ごめんごめん。腹の中綺麗にした感覚が残っててつい」
卵の部屋が動いているのを感じる。
中にある卵が部屋から押し出されて、結腸へ丸っこい卵が移動してきた。
「あ"ぁ……うぅ……はぁ……はぁ、ひ、ひっ、ふぅ」
腹の中を圧迫しながら転がって、腹の内側を押してくる。
「あ、あっ! あ、あ、あぁ!」
「いいぞ……頑張れジュン」
排泄とは違った、鈍い痛みと違和感に額に脂汗が浮かんだ。
「い、ぎ! うあ! でる、でるぅ、たまごが、ああ! モモ……!!」
「大丈夫、大丈夫だ。もう見えてる」
モモが俺の手を握りしめて、卵が見えてきたと教えてくれる。
「はぁ、はぁ……ん、ふぅ……はぁ、も、もうすぐ、だ」
息を吐きながら、力を抜いていき、アナルが広がり卵が中から押し出された。
「ふ……く、はぁ……はぁ、はぁ」
「よく頑張った。もう一個だ」
「ん、んんん!」
最後のひと押しでヌポッと音を立ててもう一個を産み落とした。
「はぁ……はぁ……はぁ」
「しっかり耐え切ったな。偉いぞジュン」
「はぁ、はぁ……ありがとう」
モモは労いの言葉をかけてくれたが、俺は放心状態だ。
「卵、大きいぞ。立派な子が産まれるはずだ」
「……おっきぃ、すごい」
拳程の大きさがある卵が二つ。予想以上に大きかった。
「(俺にフィストファックはまだ早いって事か……)」
下品な事を考えている間にモモがテキパキと準備を進めて、適温の水で満たした水槽へ卵を優しく沈める。
「……アクアリウム」
「あく? なんだそれは」
「なんでもない。ふふ、すぐに水槽狭くなっちゃうな。追加で買っておかないと」
「そうだな」
腹から無くなった感覚に寂しさを覚えながら、二人で水槽の中の我が子を見守った。
「ジュン、体調は?」
「悪くはない。けど、ちょっと疲れたな」
「ゆっくり休め」
汗に濡れた体を拭われて、俺はぐったりとベッドで寝そべった。
肉体と精神の緊張が解けて、伸びをしていた。
「フゥン?」
「不思議だな。卵から哺乳類と両生類のハーフが産まれるんだってさ。神秘的な事だぞ。カムフラ」
「ワフン!」
横になった俺を覗き込んでいたカムフラの顎を撫でると、気持ちよさそうに身を捩っていた。可愛い。
「……今後、カムフラには頑張ってもらう事が多くなるからな。美味いもん沢山食って、いっぱい特訓するぞ」
「ガフゥ?」
とりあえず、先に火山の魔王を倒しに行こう。
※※※
「体調はもういいのか?」
「はい。明日の朝に魔王討伐へ出立致します」
魔王討伐前日、ドトーリン王子の執務室へ出立の予定報告を行う。
「道中の付き添いも要らないと?」
「結構です。火山の麓で魔王の回収に人を回していただくだけで十分です」
「……すごい自信だが、まさかまたステータスを増やしたのか?」
「例え王子とは言えども、人の床事情の詮索はおやめください」
ああ。したさ。めちゃくちゃした。そこまでご無沙汰でも無いのに、出産後と言う事で燃え上がってしまい、俺の増強された力でベッドが壊れてしまったぐらいだ。モモが修復してくれたが、魔王討伐が終わったら家具を丈夫な物に一新して引っ越しを考えている。
「フェル火山に生息する魔物は、平地の魔物とは身体の作りがまるで違う。油断は禁物だ」
「はい」
いくら強くなったと言っても人間の尺度だ。気を緩めるのはまだ早い。
しかも、火山口付近まで登らなければならない。防御力があっても、灰や煙を吸引し続けるのは身体に悪影響が出る。
その辺の対策もしっかりしておこう。
……そして、聖女様の対策も。
「ジュンイチロー様、コレは?」
「聖女様への贈り物です」
「花瓶?」
「花瓶に見えますが……このように、柔らかくもハリのある固形があり、穴が開いています。コレで一度自慰を試してください。説明書も付けて置きますので」
「ぇ? ええ? もしかして、最近街で流行ってる男性の……」
流行ってるんだ……流石、ゲンゾウ産のオナホ。
「…………」
「? 如何しましたか?」
花瓶型オナホを手に聖女様は俺をチラチラと恥ずかしそうに伺っている。
……まぁ、いいか。
「……コレで最後ですよ。次からはお断りさせていただきます」
「!! は、はい」
聖女様から相変わらず大量の精を口から注がれた。聖女様の突きで咽喉が完全に開発されてしまい、聖女様に気付かれていないのが幸いだが、口淫の最中に何度もイってしまっている。
それも今日で終わりだ。
「……ぅっぷ、最後だからって、出し過ぎです」
「申し訳ございません。最後だと思うと、つい」
「すぐ、俺の事はお忘れください。それがあれば可能ですから」
「ジュンイチロー様……今まで、本当にありがとうございました」
スッキリした表情の聖女様。
俺との秘め事など記憶からさっさと消してほしい。
しかし、お礼を言われると…………複雑な気分だ。
「あ、あの……最後に……一つお願いしてもよろしいでしょうか?」
「はい?」
まだなんかあるの!? もう勘弁してくれ!
「コレはせめてものお礼です。受け取ってください」
『ホワン』
「!」
掌を合わせられる。
俺の全身を包み込む淡い光。
「な、何したんです?」
「聖女の鎧と言う魔法です。魔王討伐に少しでもお役に立てれば良いのですが……」
「(……魔力のプロテクターか)」
光は落ち着いても、身体を覆う魔力の感覚を薄っすら感じる。
聖女の鎧:魔法障壁を鎧のように纏う事が出来る。あらゆる属性への耐性が上がり、肉体へのダメージを軽減する事が可能。
「ありがとうございます……」
「いえ。どうか、無事に帰還できる事を祈っております」
俺は聖女様に頭を深々と下げた後に、王宮を後にした。
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