巻き込まれ転移者の特殊スキルはエロいだけではないようです。

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おまけ②

おまけ②・初めての娼館

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※健人目線

 勇者を卒業して、数年が経った。
 未だ地球への帰還は叶わないが、こっちの暮らしも悪くない。
 今年、結城と愛香が結婚した事や国に大きな教育機関が出来たりと良い発展が多い。

「ケントさんの良い発展はないんですか?」
「……二人がやっと結婚まで漕ぎ着けたのが僕にとって良い発展だよ」
「それは、おめでたい事に変わりありませんけど、ケントさん自身の発展ですよ」

 仲の良い従業員・モペラと酒屋で飲んでいると、話の流れでプライベートの近況を聞かれた。

「僕はそういうの無いな」
「うーん、ケントさん……真面目過ぎだし、優し過ぎて遠慮がちじゃないですか」
「そ、そんな事ないと思うけど」
「現に、童貞ですし」
「そこはいいじゃないか……」

 オーラルは、日本ほど童貞をマイナスに捉えているお国柄じゃ無いが、個人的にはやはり男としてコンプレックスになりつつある。
 歳を重ねる毎にそれは強くなってきていて、二十歳過ぎてからそろそろ意識し始めている。

「……娼館にでも行ってみます?」
「ええ……ぼったくりとかあるじゃん」
「無いとは言いませんけど大体は、ちゃんとしてますよ。有名どころは特に」

 有名な娼館なんて、僕には一切わからない。
 今は、駆け出しの頃より人も増えて余裕が出てきたが、遊びに行く時間は無かったな。
 あ、いや……違うか。僕はただ単にそういう場所を避けていただけかもしれない。

「……いや、いいよ。僕、上手く話せる気もしないし」
「なら、うってつけの場所がありますよ。ほぼ対話なし、対面なし、挿れて出して終わりの安上がりなところ」
「?」

 僕に都合の良過ぎるセッティングがあると言って、酔いの勢いに任せてモペラにその娼館前まで引っ張られてしまった。

「……モペラ、男娼ってあるけど」
「はい。男の娼館なんで」
「…………」

 僕に男色の気は無いと言おうとしたが、その事にパッと否定の言葉が出なかった。
 看板に描かれた美しい男性にあまり嫌悪は無いし、興味がないわけじゃない。
 ただ、男相手に勃つ気がしないだけだ。

「ココの尻壁、すごい人気なんですよ」
「しり、かべ?」
「とりあえず、入館代金は俺が持つんで行きましょ! 無理だと思ったらバーで飲んで帰るだけでいいんで!」
「強引だな……」

 半ば強引にモペラに連れられ、初の娼館体験となった。
 意外と入館における取り締まりは厳重で、しっかり性病検査と持ち物検査を受けた。無防備に肌を晒す男娼の身を守る為だろう。
 あと、基本何処でもそうだが、屋内での魔法使用が禁止されている。
 初級魔法の誤発であっても男娼や従業員、及び建物に損失が出たと店側が判断した場合、法的措置を取ると明記された入館説明書を貰った。

「(すっごい、ちゃんとしてる)」
「はは、入口の検査で緊張してるんですか?」
「だって……思ったより、厳重だから」
「ココは確かに他に比べて規模が大きいから、ガチガチですね」

 入館後、受付の歓迎の言葉を受けた後は自由。
 案内板を見て、行きたい場所へ行く。

「こっちですよ」
「!」

 モペラが指差した先は、まるでトイレのようなシンプルな入口だった。
 細い通路を進みながらモペラに説明を受ける。

「尻壁は、名の通り壁から尻だけ出てるんで、そこに挿れるだけ。前戯も要らない」
「……男の尻に?」
「はい。そりゃ、女の子に比べたら硬いですけど、男娼のはまた違った良さがあるんですよ」
「その口ぶり……お前常連だな?」
「へへ、まぁ」

 自分の嗜好に他人を善意で巻き込むにしても、素人には少しハードルが高いんじゃないだろうか……そう思った時だった。

『パチュ!』
「あっ」

 通路の先から何かがぶつかる音と共に男の喘ぎ声が響いてきた。
 思わずモペラを見る、僕を見てニヤついている。

『パチュ!』
「ンッ……」

 再び響いた音とくぐもった声に、僕はやっと実感が湧いた。
 列が出来ていた為、猶予が出来たが通路先の開けた場所から聞こえてくる音は僕の下半身に影響を及ぼし続けていた。

『グチュ、ズグン!』
「あ、ぁあ!」
『ドチュンッ!』
「ひぅ……んんっ」

 生々しい他人の情事の音がすぐ側で聞こえる。
 僕以外、そんな事など気にしていないように自分の番をスンとした表情で待っていた。
 こんな非現実的な生活音のような性的な音の中……普通で居られるわけがない。

「良かった。ケントさん、勃ってるじゃないですか」
「ッ!」

 モペラにズボンの膨らみを指摘され、咄嗟に両手で隠す。

「いやいや。それがココではデフォルトなんですから、気にしないでください。あ、コレ、ゴムです。要望がある男娼に合わせて使ってください」
「……ありがとう」

 ゴムを受け取った指先が震えている。
 近付いてくる順番に胸が早鐘を鳴らし、呼吸が浅くなる。

『ズッ、ドチュン!』
「んんぅ……」

 鼻に抜ける甘い喘ぎ声に頭がクラクラする。
 通路の先は、本当に男子便所のようだった。広い空間に仕切りとして衝立があり、それぞれのスペースで男娼を利用している。
 もう、本当に……こんな世界もあるのかと……自分の中の常識が変な方向に広がっていくのを感じた。
 衣服を殆んど乱さず、腰を打ち付ける男達の後ろ姿を見て気付く事があった。
 一箇所だけ、回転スピードが早い。目に見えてわかるほどに、入れ替わりが激しい。

「なぁ、モペラ。なんで、あそこだけ人がコロコロ変わるんだ?」
「そりゃ勿論、男娼の器が良いからですよ。恐らく、この娼館が有名になった一端を担ってる男娼です」

 普通、尻壁区画がこれほど繁盛する事など無いと言われたが、僕にはあまりピンとこなかった。他の店を知らないから。

「あ、ほら。空きましたよ。先行ってください」
「ええ……」

 背を押されて、例の敷居のスペースに行くと……普通に男の下半身が壁から出ていた。中出し歓迎というプレートまでかかっている。
 なんとも滑稽にも見えるが、場所が場所故に笑えない。それに……なにより……

『クチュ……クパ……』
「っ……」

 男の後孔が、卑猥にヒクついていて……僕の股間を更に刺激してくる。
 とりあえず、ココはそういう場所……さっさとヤって終えてしまおうと、もたつきながら前を寛げて膨張した自身を取り出す。
 
「い、痛かったら……蹴るなりしてください」

 壁の向こうに、そう呼びかけて尻たぶに両手を添える。
 じっとりと湿り気を感じる。男娼のものか自分の手汗かわからない。
 既にトロトロの後孔に、先端を充てがう。

『クチュ……』
「んぅ……」

 その感触だけで、心臓が速くなる。落ち着け……落ち着けと自分に言い聞かせてゆっくりと腰を突き出す。

『グプン』
「あっ……」

 思ったよりもすんなりと入った事に驚く前に、僕は咄嗟に歯を食いしばって身体を硬直させた。あられもない声が出てしまいそうな程、気持ちが良過ぎたから。

「(なん、だ……すごぃ……動いてない、のに……中が、絡み付いて、くる……ッ)」
「ん、んっ……」

 壁の向こうで男娼が鼻にかかった声を漏らす。
 焦ったそうにクイっと腰を揺らし、僕のモノを催促する。

「(呼吸の度に、ヒダが……搾るように動いて……ぁ、やばぃ、出る!)」
『ビュル!』
「ぁ……はぁ……」

 挿入し、一切動かぬまま出てしまった……呆気なく。
 精液を味わうかのように畝る中の動きに揉まれて、腰が抜けそうになる。

「(き、気持ち、良過ぎる……本当に人の内臓なのか?)」

 そう疑ってしまう程には、あまりにも強い性交特化の内部に頭がやられてしまった。
 ズルリと引き抜いても、萎えるどころか完全に勃起してしまった自身を再び腰を突き出し、先端だけを入れて先程より奥に挿れる。
 心づもりが出来ていた分、初手の衝撃に備えられた。

『グッポ!』
「ふぅ……」
「んっ……ッ」

 壁の向こうの男娼がまた色っぽい声を上げるもんだから、僕の愚息は更に硬度を増す。
 そして、やっと初めて僕は腰を前後に動かした。
 が、しかし──

『パチュン……パチュン!』
「あ、ぐ……」

 さっきより、すごい……ヒダだけじゃない。柔らかい粒々が、奥で亀頭が擦れてる。吸い付きも、さっきの比じゃない。動きに合わせて、悦んでるみたいにきゅうきゅうと僕のモノを締め上げてくる。

「(ダメだ……コレは、耐えられない!)」
『ビュルル! ビュクン!』
「~~~~ッッ!」

 腰を二回ほど振っただけで、先程よりも多めに出てしまった事に困惑しつつも倒れないように壁に手をついて腰を引く。
 物足りなさそうにくぱくぱと開閉する後孔が目に写り、息を飲む。
 だが、後ろの客の事も考えて一旦切り上げる。前を仕舞って退出通路から再びロビーへ出た。
 時間差で腰が抜けて、壁際の椅子にドカっと座り込む。
 それから数分後、モペラが同じく退出通路から出てきた。

「お、ケントさん! もう終わったんですか?」
「……っ、ああ」
「すごかったでしょ」
「…………すごかった」

 放心状態になりながら、快感を反芻していたところだった。

「初めての経験がアレだと、今後苦労するかもしれませんね。はは」
「はぁ……笑い事じゃないって」

 その後、僕は若さにものを言わせて何度かチェンジしてみたが、全て五回も腰を動かす前に撃沈した。
 モペラは二階のバーで飲みながら僕のループを見下ろしていた。
 結局、初体験は凄まじい早漏体験となった。
 熱覚ましに夜風にあたりながら、千鳥足のモペラを支えて帰路へついた。

「へへぇ、飲み過ぎた」
「ほら。しっかり立って」
「ケントさんもしっかり勃たせて、頑張りましょうね~」
「置いてくぞ」
「や~いけず」

 もう当分は勃たない気がする。それぐらい出した。
 ……僕以外にも相手してるのに、あの尻壁の男娼は平気そうだったな。
 見える部分が下半身だけだから、本当のご機嫌はわからないけど、後ろは一切緩む事なく締め付けてきていた。

「はぁ……」
「んふふ~ケントさん、興味津々のご様子」
「……否定はしないよ」

 モペラがニヤついているのは、僕の反応が面白いからだろう。だが、あれだけ強い快感を体験してしまっては……また足を運んでしまうかもしれない。

「ん? あ、健人?」
「!」

 後ろから聞き覚えのある声に呼ばれて、反射的に振り向いた。
 そこには、僕らの恩人であり勇者後継の純一郎さんがいた。
 少し顔が赤い。一人飲みでもしてたんだろうか。

「お前もこういう場所くる歳か」
「んぁ? ケントさん、この人誰ですか?」
「知り合いの純一郎さん。僕らが店を出せたのはこの人のおかげなんですよ」
「うえ! じゃ、お偉い方!?」
「いや、そういうモンじゃないよ。本当にただの知り合い。今度店の新作買いに行くから。それじゃ、気を付けて」

 純一郎さんは手を振って宵闇に消えていった。
 やはり、大人っぽくて、クールな人だな。

「(そういえば、何故か勇者は男娼だって噂が出回ってるけど、純一郎さんの身元バレを防ぐ為の情報操作なのかな? すごい噂だけど、あの純一郎さんが男娼……うん。ないない)」

 ベッドで男を誘う純一郎さんを想像してしまい、頭を振って追い出す。
 しっくりくるなと思ってしまったのは、行為の熱がまだ残っているからだろう。




※※※


 ──純一郎の自宅にて

「ジュン、お前……また、すごいスキルを」
「え? なにっ……ぇ、え? えっ? ぇえ?」

名:ハラノ ジュンイチロー
LV:69
HP:4180/4180(+126043)
MP:0(+23003)
ATK:3275(+19531)
EDF:3275(+19531)
スキル:搾精超強化Lv4、肉体性感度(極)
    ∟搾精スキル抽出
     ∟魅了LvMax、鑑定LvMax、気配遮断、追跡、状態異常耐性(中)、跳躍Lv2、万物絶対防御(中)
神聖治癒術LvMax
 ∟能力値供与
 ∟再生治癒術Lv4
生成術Lv4
 ∟複製術Lv1

「もういっぱいありすぎ。ごちゃごちゃしてて見難い……新しいのはコレ、だけど、万物絶対防御って……何?」
「前に取った跳躍と違って意味がパッと見でわからないが……相当強いな」
「鑑定……万物絶対防御……物理や魔法などのあらゆる脅威から身を守る為に全ての耐性が付く。防御力は……おおよそ二倍になる」
「……ジュン」
「何? んっ」

 純一郎の首筋にモモが口を寄せて歯を立てる。

『パキッ』
「!?」
「……もう痕は付けられないな」
「嘘!! モモ、歯がっ! ちょ、ちょっと待って、治癒を」
「大丈夫だ。再生出来る。誰とヤったか知らないが、良いスキルを引き当てたものだ」

 純一郎の頬を撫でながら、ホッとしているモモに対して純一郎の顔色がサッと青褪める。

「特別な、防御……スキル……ま、さか」

 今日、初々しい若い客を相手にした感覚があった純一郎は、帰り道に出会った健人の事を思い出し……事態を察した。
 健人を勇者たらしめた強大なスキルを抽出してしまったのだ。

「(あの子と知らず知らずのうちにセックスしてたのか……あ、ぁ、次会う時、平常心で居られるかな? ぅう、それも、あるけど……コレは……)」

 そして、モモの歯形がつかぬ程頑強な身体になってしまった事に純一郎はショックを受けていた。

「…………子ども達に防御力を分け与えても問題無いよね? 怪我しないようにさ」
「成長に合わせて能力値供与をする約束だろう。落ち着け」
「うぐぐ……やだ、モモの痕欲しい……」

 モモに対しては、どこまでも貪欲に自分の欲求を晒す純一郎。溺愛する伴侶に切な気な瞳で見上げられたら、モモはイチコロである。

「…………私とジュンの防御力と攻撃力を拮抗させるという手はある。二倍になっていても当分は大丈夫だろう。大幅な数値変異で慣れに時間がかかるが」
「……そうか。どれぐらいいる?」
「…………6000」
「わかった」
「即決過ぎないか?」

名:モモ
種:ウシガイ
Lv:85
HP :37800
MP :11000
ATK:10500(+6000)
EDF:10500(+6000)
スキル:鑑定LvMax、気配遮断、自己再生、魔力耐性(極)

名:ハラノ ジュンイチロー
LV:69
HP:4180/4180(+126043)
MP:0(+23003)
ATK:3275(+13531)
EDF:3275(+13531)
──スキル省略──

「……子ども達に触れる前にいろいろ試さないとな」
「今夜は俺で試してよ」
「仕事で疲れてないか?」
「うん、平気……モモじゃないと、もう満足出来ない」
「……ふふ、番冥利に尽きる言葉だ」

 各々の生活に少しの変化を伴いながら、変わらぬ愛の営みは今夜も激しく燃え盛った。
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