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番外編①

第三話・代替案

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「引っ越し?」
「そう、前言ってた元彼から連絡来てさ。そいつ不動産関係で、半年前からヤバい物担当しちゃって困ってるらしいんだ」

 元彼が半年も連絡が無かったのはどうやら難しい物件を担当してノイローゼになってたらしい。
 幽霊が出るとか噂が立ってる事故物件マンションで、一部屋だけ妙に家賃が安いから、皆警戒して入らないし、借り手が付かず。告知義務がある為、お客様に事故物件の内情を説明すると心無い言葉を言われる事もあったと溢していた。相当参ってたようで、俺に助けて欲しいと言ってきた。

「俺は職場近くなるし全然いいんだけど……竹葉が嫌なら会うのは、外か竹葉の家にしようか?」
「なんで入居する前提なんだ!? なんだよそれ! 厄介毎押し付けられてるじゃん!」
「3LDKで破格の安さだし、防音しっかりしてたし、リホーム済みだったよ?」
「ちゃっかり内見してきたな!」

 精神的瑕疵物件だけど、このご時世貯金できるうちにしておかないと。
 そして、今より広くて防音付きの部屋に住めるなんて最高じゃないか。
 幽霊が出る噂の真偽はわからないけど。

「場所何処だ?」
「えーっと……」

 元彼が送ってきた住所、概要や立地をじっくり見てから、竹葉は俺を見た。

「……一緒に住まない?」
「ゔぁん!?」

 掃除機の断末魔みたいな声出た。
 いや、俺達まだ半年も経ってないのに同棲は早いんじゃないか? 別に嫌とかじゃない。むしろ、嬉しい。けど、流石に急すぎる。
 心の準備が……

「……ぅう」
「通勤にも影響無さそうだし、二人で折半した方がもっと安くなるだろ? ダメかな?」

 俺の反応を見て不安になったのか、上目遣いで見上げてくる竹葉。
 断れるわけがない。
 そうだ……俺達は、恋人同士なのだ。
 断る理由などどこにもない!

「よろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 ああ……! 大人なのにその場の勢いに乗ってしまった!!
 仕事終わりとか休日はほぼ一緒に居るけど、だらしないプライベートの姿を見せる事になる。
 大会に向けたストイックな生活も丸見え……あっ

「竹葉、俺が目の前に居ても調整期間の三ヶ月我慢できる?」
「うぐっ!」

 俺の言葉で、竹葉は苦虫を噛み潰したような顔をする。
 俺は総合格闘技大会に出場する際には三ヶ月間は禁欲的生活をする。竹葉と付き合ってからまだ、大会出場の予定はない。
 金土日の三日は共にいるが、体を重ねている時間は大分長い。
 
「休みの日もSEXは出来ないよ?」
「…………はい!」
「はい、竹葉君」

 ピンと腕を伸ばし、優等生の挙手をする竹葉。
 俺は教師のように発言を促す。
 
「視姦のマスターベーションはありでしょうか?」
「し……」

 明け透けな発言に、思わず絶句する。
 しかし、竹葉は真剣な顔で俺を見つめていた。
 これは、冗談で言っていない。冗談であって欲しいけど。
 竹葉は決して変態的なプレイを求めているわけではない。
 俺とのSEXから自分なりに距離を置こうとしてるんだ。

「(……俺を性的に見ながらオナニーしたいって言ってるんだよな?)」
「………」

 めっちゃ期待の眼差しを向けられる……ああ!

「ダメ! 流石に恥ずかしいし、俺もムラムラする!」
「ええ~~……じゃ、窃視せっしは?」
「覗きか……それは俺が気にしちゃって集中出来ない……普通にヌく時はどうしてるの?」
「盃の写真見ながらヌいてる」
「…………」

 なんか竹葉、すごいな。
 ここまで一貫性のある俺への愛欲はもう、惚れ直すよ。
 そんな竹葉に我慢はあまりさせたくないけど、SEXの代替案を模索するしかない。

「写真ってどういうの?」
「姉ちゃんが送ってくれた杯杯多の写真」

 竹葉が見せてくれた写真は、竹葉から連絡来なくなって不安と欲求不満が積み重なり試合を楽しむ余裕がなくて、相手選手に八つ当たりしてしまった時の写真だ。
 だいぶ凶悪だけど、竹葉のオカズらしい。
 
「ふーん…………竹葉、ちゃんとした俺の写真欲しくない?」
「欲しい」

 自分である杯杯多に嫉妬するのはどうかと思うが、俺だって男だし独占欲はある。
 代替案は決まった。

※※※

「ぅ…ぁ、ああ!」
「はぁ……盃、こっち向いて」

 俺の顔に手を添えて、自分の方を向かせる。

『カシャ』

 竹葉の手の中にある携帯から控えめなシャッター音が鳴った。

「可愛い……」
「んっ……竹葉、竹葉ぁ」

 ハメ撮り写真集を作っている最中だ。
 竹葉が俺の痴態や、表情をカメラに収めては嬉々として眺めている。
 撮るたび動きが止まるので、地味に焦らしプレイになってキツい。

「お願い……動いて……」
「ごめん、ブレるから……」
「動画、動画で撮っていいから……お願い」
「ぇ、あ……いいのか? わかった」

 竹葉は俺の言う通り、録画ボタンを押して撮影を始めた。
 その瞬間、腰を激しく打ち付けられ、視界が揺れた。

「はぁ、ぁぁっ!!」
「気持ち良い?」
「ぁっんぅ……きもちぃ……あっぁあ! たけはぁ……すき、竹葉ぁ……!」
「俺も好きだ……」
「ぅう……あぁ……だめ、イッちゃう……! も、イく……イ、く……!! はぁ……んんんん!」

 達しても尚揺さぶられ、絶頂の余韻に浸る暇もない。
 快感で頭が真っ白になる感覚に襲われながらも、竹葉は嬉しそうに微笑んでいた。
 
「盃、可愛い……すげえ可愛い」
「あっ! ひっ、うう! 待って……イってる! イってるから……!! あっあっ……イく! またイくっ!」

 俺はイっているのに、竹葉は変わらずに奥を突き上げてくる。
 何度も何度も、容赦なく突かれて目の前がチカチカと光が爆ぜる。

「そろそろ、俺もイきそう……盃」

 眉を顰めて目を細める竹葉の切なげな表情にキュンと胸が締め付けられる。
 同時に下腹部が疼いて、離さないとばかりに締め付ける。

「ぅあ……!」

 そして、竹葉が果てた。
 ゴム越しでも分かるほど、熱くて勢いのある射精に身をしならせる。
 中に入っている竹葉の形を感じる。浮き出た血管も、ドクドクと脈打つのも、全部わかる。
 全て出し切る様に緩く数回腰を打ち付けた後、ずるりと引き抜かれた。その動きすら快感になって、小さく声が出てしまう。
 後孔がクパクパと開閉しているところに携帯が向けられているのに気付いて、咄嗟に手で隠した。

「…………」
「恥ずかしい?」

 わかってて聞いてるな……俺は、コクリと首を動かした。

「わかった。可愛い盃の照れ顔に免じてココは撮らないでおくよ」
「……俺、可愛い?」
「お? 自覚出てきた?」
「いや全然……でも」

 竹葉の手を両手で掴んで指にキスを落とす。

「竹葉に可愛がられるのは、好きだよ?」
「~~~ッ! もう一回いいか!?」
「今度はバックがいい」
「よっしゃ!」

 後日、ハメ撮り写真や動画が詰まったフォルダが出来上がっていた。
 愛されている自分を、禁欲中の俺が見たら嫉妬してしまいそうだ。
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