神の剣~ミスガルド11世紀の戦い~

ジロ シマダ

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5章:デドナンの戦い

仲間の死

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 ベレヌスとドルドナが集団を目視したのはゴヴニュの首へ小斧が振り降ろされる瞬間だった。
「ゴヴニュ!」
 カムロスの脇でドルドナが叫ぶ。その声にオークが止まり、3人を見た。そして不揃いな汚い歯を見せ笑うと今度こそ振り降ろした。しかし、その余裕はオークにとって失敗だった。
 ベレヌスは集団の姿を捕らえた瞬間、カムロスの背から弓矢を奪いオークに矢を放っていた。小斧を手から滑らせ、オークはゴヴニュのすぐ横に倒れた。統率を失い無我夢中にオークがベレヌス達のほうへ攻めてくる。カムロスはドルドナをほり投げ、ベレヌスから弓を奪い返し矢でオークを殺す。
 ドルドナは木の葉のクッションから起き上がるとゴヴニュのもとに走った。倒れているゴヴニュは遠くから見ても手遅れだとわかる。ベレヌスがドルドナを援護し、ゴヴニュのもとにたどり着くころには、オークはすべて地面に伏していた。

「ゴヴニュ!ゴヴニュっしっかりしろ!」
ドルドナは目を閉じているゴヴニュの肩を揺らす。ゴヴニュの目がわずかに開いた。
「ゴヴニュ!」
 覗き込むドルドナが見えて幸せだった。
(こんな自分を追いかけてくれた)
そしてドルドナの後ろで悲しそうな目をしているベレヌス、心配そうな様子のカムロスにさらに幸せを感じると同時に辛かった。ゴヴニュは重い舌を動かした。
「す、まな 」
「もういいんだ。気にするな」
ドルドナはそう言うとゴヴニュを抱きしめる。ゴヴニュはドルドナの暖かい体を抱き返したかった。
しかし、腕はもう動かない。指の一本も動かない。ゴヴニュは視線をベレヌスに動かした。
「べ、レ  ス」
「なんだ?」
ベレヌスは顔が見やすいようにゴヴニュを覗き込んだ。
「声かけ、くれたのに」
ベレヌスは苦しそうに後悔を口にするゴヴニュにほほ笑んだ。
「いいんだ。仲間じゃないか、ゴヴニュ」
 優しい声がどんどん遠くなり、ゴヴニュの視界は霞から黒に変わる。ゴヴニュは戻ってきてくれた3人に最後に会えて幸せだった。こんな罪深い自分をまだ仲間だという仲間に涙が流れた。
「ありがとう」
掠れ消えるような声と共にゴヴニュの目から光が消えた。


ーパキッ
 枝が折れる音がゴヴニュのそばで悲しむ3人の耳に入った。カムロスがすぐにそちらへ矢を構えた。ベレヌスも双剣を構え見えない敵を睨みつけた。
「何をしている」
紅色の外套を羽織った人物が立っていた。フードで顔が見えないが声色は女だ。ベレヌスはこんな場所にいる女など怪しすぎると緊張を高めるが、カムロスは違った。弓矢を下げ、頭を下げた。
「テオーナ様!申し訳ありません」
カムロスの様子にベレヌスはドルドナと顔を見合わせ武器を下げる。テオーナと呼ばれた女性はフードをとり、艶やかな黒髪を軽やかに揺らし、近寄ってきた。
「ここまで闇のオークが来ていたとはな」
不機嫌に呟いている。ベレヌスはカムロスの袖を引き寄せた。
「この女性は誰だ」
「魔法使いだよ」
「魔法使い?」
ベレヌスはカムロスの答えを聞いて改めて、テオーナを見た。ドンナトールは比べられないほど若い。しかし、手には短いが杖が握られていた。
「ちなみに、ドンナトール様より」
カムロスは指を空に向けて指す。言葉と動作が意味することにベレヌスは目を見開く。ドンナトールは200歳越だったとベレヌスは記憶している。それよりも年上というのは驚きより恐怖を感じてしまう。

 テオーナはベレヌスたちの会話を気にせず、オークの死体に火をつけていく。全てのオークに火が付きあたりに酷い匂いが充満した。
「その者は仲間か」
膝をつきドルドナにテオーナは尋ねた。頷くドルドナにテオーナが手をかざし、呪文を唱えたのを止めた。
「待ってくれ! 燃やさないでくれ」
「このままというわけにはいかぬだろう」
テオーナは止めるドルドナに首を傾げた。オークとは違う導きの炎で送るのだが疑問を投げる。
ドルドナは燃やしたくなかった。埋葬してやりたい。
「できれば埋めてやりたい。ドワーフは死ねば土となり肥やしとなるんだ」
ドルドナの言葉にテオーナはそうだったと昔見たドワーフの葬式を思い出す。しかし、ここに埋めることはできない。
 
「エントの森に埋めることはできない」
「そうなのか」
その言葉にドルドナは肩を落とし、ゴヴニュの血の通わない頬を撫でた。
「エントの森を出たところに埋葬しよう」
ベレヌスは提案した。
「いいのか」
ドルドナはゴヴニュのために我がままを聞いてもらってもよいのだろうかとカムロスを伺った。カムロスは仕方ないと頷いた。
「感謝する」
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