裏購買部少年ナナ

夏目薙朔

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おこってしまったこと

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「ちょっと、ナナくん! これ、どういうこと!?」

 ――西園寺先輩が来てから、数日後の昼休み。

「……どうしたの、そんなに怒っちゃって」

 ナナくんの不思議そうな顔も無視して、私はある一枚のプリントを突きつけた。

「何で、何で西園寺先輩が炎上してるの……!?」

『CKB48研究生・西園寺美優、花壇に飲み物をぶちまける→そのまま逃亡して炎上www』
 >>『好きだったのに失望した』
 >>『性格ヤバすぎ』
 >>『アイドル人生終わったじゃんw』

 プリントには――SNSに上げられた動画のスクリーンショットと、それに対するコメントが書かれている。

 (西園寺先輩がこんなことするわけないじゃない……!)

 いたずらで掲示板に貼られていたのを見つけた私は、すぐにはがして持ってきたのだ。
「何でって……決まってるじゃん。傾向ペンを使ったからでしょ」
「そうだけどっ! あれを使ったら、人気になれるはずじゃ……!」
「人気? それは違うよ。西園寺美優が望んだのは、なんだから」
「……!」

 ナナくんは当たり前のことのように、私に告げる。

「言ったよね。効果が高い分、リスクも大きいって。西園寺美優はたぶん、『SNSでの注目度』とか書いたんじゃない? だからいま、こうしてわけだし」

 ケロッとした様子で言うナナくんに、私はますます怒りがつのった。

 (どうしてこんなに平気そうにしていられるの?)
 
 私は必死に心を落ち着かせて、ナナくんに質問する。

「……ナナくん。西園寺先輩から、お代には何をもらったの?」
「だから、幸せだよ。西園寺美優が一番幸せに感じていたのは、『ひとりのアイドルとして応援されること』だった。あんまり人気がなかった分、自分のファンのことは大切にしてたみたいだしね」
「それじゃあっ……ナナくんのせいで炎上したようなものじゃない!」

 私がつい大声を上げると、ナナくんはムッとした顔をして言った。

「……仮にそうだとして、いったい何が悪いのさ? 西園寺美優はお代のことをちゃんと理解してたし、自分でそれでいいって言ったんだ」

 そう言い切ると、ナナくんはため息をつく。

「それに第一……茜音には関係ないことじゃん。いったい何をそんなに怒ってるわけ?」

 訳がわからないといった様子のナナくんに対して、私の中で何かが切れた。

「……関係なくないよっ!」

 私は今まで一番大きな声で、ナナくんに怒りをぶつける。

「西園寺先輩は自分のためだけじゃなくて、剣持先輩のためにも努力してた。私はそれを知ってたし、何より……悩んでる私に、色んな話をしてくれた。だから、絶対にチャンスをつかんでほしかったの!」

 ナナくんは私の怒ってる姿に驚いて、目をぱちぱちとさせている。
 私は構わず責め続けた。

「西園寺先輩は、炎上がしたくてここに来たわけじゃない。アイドルとしての自分を、たくさんの人に知ってもらうために来たんだよ! ここは、裏購買部は――どんな望みも叶えてくれるところなんじゃなかったのっ!?」

 涙が出そうになるのを耐えながら、私は声を張り上げた。

「こんな形で望みを叶えたって……そんなの、ただ人を不幸にしてるだけじゃない!」
「……っ!?」

 怒りが爆発した私は、とうとうそのまま勢いを止めることが出来ずに叫ぶ。

「――ナナくんなんて、大っ嫌い!」

 呆然とするナナくんを置いて、私は外へ飛び出した。
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