22 / 22
エピローグ
しおりを挟む
「……え? ナナくん、いま何て?」
――あれから一週間が経った。
『CKB48研究生・西園寺美優、炎上の裏に隠された真実! 市が声明文を発表、事務所は動画拡散者に損害賠償を請求か?』
西園寺先輩の炎上は、花壇を管理していた市が正式に否定したことで、少しずつ誤解が解けて収まっていった。
事務所の社長さんに協力してもらいながら、西園寺先輩は悪意のある動画を広めた人を特定して、裁判で訴えるみたい。
フォロワーの数はまだ前よりも少ないままだけど、街に花壇を増やしていくキャンペーンのイメージモデルを、市からお仕事として任されたらしい。
(とにかく、なんとかなりそうで良かった)
今後の活躍次第で、西園寺先輩はもっと注目を集められるかもしれない。
「だから……もう弁償はいいって言ったの。それ以上の働きをしてくれたから」
ぶっきらぼうに告げるナナくんに、私は目をぱちぱちさせる。
……っていうことは、つまり……。
「――おめでとう、今日から晴れてキミは自由の身だよ」
「やったあああああああああああああ!」
これで毎日毎時間……裏購買部に来なくても済むんだ!
ついに解放された私は、嬉しくて舞い上がる。
最近は何にもできなかったし、何しようかな!
外遊びも、マンガも、ゲームも……めいいっぱい楽しんじゃおーっと!
私がいろいろ妄想していると、ナナくんがニタニタ笑いながら言った。
「――なーんて言うと思った?」
「……え?」
悪魔のような笑みを浮かべるナナくんを見て、ツーッと冷や汗が流れる。
「嫌だなぁ、とぼけないでよ。――まさか秀字筆のお代を払ってないこと、忘れてないよね?」
秀字筆の、お代……???
「……あ」
―――しまったっ……!
「あああああ~~~~っっっ!!!」
すっかり忘れていた出来事を思い出して、私は青ざめる。
弁償のことで頭がいっぱいだったけど、私――ナナくんにまだお代を払ってなかったんだった……っ!
「……というわけで、いまからもらうね。茜音の一番の――し・あ・わ・せ♡」
にまにましながら距離を縮めてくるナナくんに、私は後ずさる。
「い、いいいいいいいいいいいいまからっ!? まって、心の準備がっ……!」
「えー? そんなの知らな~い」
「ひいっ……!」
全力で拒んでも、ナナくんはお構いなし。
(もうダメだ……!)
私の一番の幸せって、いったい何だろう?
三時のおやつ? お出かけする日曜日?
もしかして……パパとママとかじゃないよね!?
怖くなって、私はギュッと目をつぶる。
「――はい、これ」
「……え?」
しかしナナくんは、私に――あの黒いエプロンを着けるだけだった。
ナナくんとおそろいの、裏購買部のエプロン。
わけがわからず困惑していると、ナナくんはニコニコしながら言う。
「確かにもらったよ、キミの一番の幸せ。茜音の――放課後の時間」
「!?」
『――ほ、ほら! 家に帰ったらパパッと宿題終わらせて、おやつ食べて、マンガ読んでゲーム! 超普通だけど、私はこの時間が一番幸せだからさ!』
そういえばあたし、冬馬にそんなようなこと話したっけ……!?
ナナくんは手をポンッと叩いて、にこやかに告げた。
「――ってことで、今後も毎日放課後は、引き続きここで手伝いをしてもらうから。これからは――正式な裏購買部員として、よろしくね!」
「え、えええええええええええっ!?」
正式な……裏購買部員!?
しかも……毎日ぃ!?!?!?
「せ、せめて一日――いや、二日くらいは……お休みを……!」
「はぁ? それじゃあお代の意味がないでしょ」
「そ、そんな~~~~っ!」
私の絶叫もむなしく、ナナくんは相変わらず楽しそうにするだけだ。
「……それに、キミ言ってたよね? 僕の力になりたいって」
「ぐぬぬ……!」
ええ、言いましたよ。言いましたけども!
それとこれは、話が別なんだって~~~っ!
あの西園寺先輩のような出来事が毎日あるなんて考えたら、私の心臓、いくつあってももたないよ……!?
(何だか私の――平穏な日常まで取られちゃった気がする~~~~っ!?泣)
くしゃくしゃと頭をかかえる私に向かって、ナナくんはいつもの可愛い笑顔で言った。
「――毎度あり♡」
おわり
――あれから一週間が経った。
『CKB48研究生・西園寺美優、炎上の裏に隠された真実! 市が声明文を発表、事務所は動画拡散者に損害賠償を請求か?』
西園寺先輩の炎上は、花壇を管理していた市が正式に否定したことで、少しずつ誤解が解けて収まっていった。
事務所の社長さんに協力してもらいながら、西園寺先輩は悪意のある動画を広めた人を特定して、裁判で訴えるみたい。
フォロワーの数はまだ前よりも少ないままだけど、街に花壇を増やしていくキャンペーンのイメージモデルを、市からお仕事として任されたらしい。
(とにかく、なんとかなりそうで良かった)
今後の活躍次第で、西園寺先輩はもっと注目を集められるかもしれない。
「だから……もう弁償はいいって言ったの。それ以上の働きをしてくれたから」
ぶっきらぼうに告げるナナくんに、私は目をぱちぱちさせる。
……っていうことは、つまり……。
「――おめでとう、今日から晴れてキミは自由の身だよ」
「やったあああああああああああああ!」
これで毎日毎時間……裏購買部に来なくても済むんだ!
ついに解放された私は、嬉しくて舞い上がる。
最近は何にもできなかったし、何しようかな!
外遊びも、マンガも、ゲームも……めいいっぱい楽しんじゃおーっと!
私がいろいろ妄想していると、ナナくんがニタニタ笑いながら言った。
「――なーんて言うと思った?」
「……え?」
悪魔のような笑みを浮かべるナナくんを見て、ツーッと冷や汗が流れる。
「嫌だなぁ、とぼけないでよ。――まさか秀字筆のお代を払ってないこと、忘れてないよね?」
秀字筆の、お代……???
「……あ」
―――しまったっ……!
「あああああ~~~~っっっ!!!」
すっかり忘れていた出来事を思い出して、私は青ざめる。
弁償のことで頭がいっぱいだったけど、私――ナナくんにまだお代を払ってなかったんだった……っ!
「……というわけで、いまからもらうね。茜音の一番の――し・あ・わ・せ♡」
にまにましながら距離を縮めてくるナナくんに、私は後ずさる。
「い、いいいいいいいいいいいいまからっ!? まって、心の準備がっ……!」
「えー? そんなの知らな~い」
「ひいっ……!」
全力で拒んでも、ナナくんはお構いなし。
(もうダメだ……!)
私の一番の幸せって、いったい何だろう?
三時のおやつ? お出かけする日曜日?
もしかして……パパとママとかじゃないよね!?
怖くなって、私はギュッと目をつぶる。
「――はい、これ」
「……え?」
しかしナナくんは、私に――あの黒いエプロンを着けるだけだった。
ナナくんとおそろいの、裏購買部のエプロン。
わけがわからず困惑していると、ナナくんはニコニコしながら言う。
「確かにもらったよ、キミの一番の幸せ。茜音の――放課後の時間」
「!?」
『――ほ、ほら! 家に帰ったらパパッと宿題終わらせて、おやつ食べて、マンガ読んでゲーム! 超普通だけど、私はこの時間が一番幸せだからさ!』
そういえばあたし、冬馬にそんなようなこと話したっけ……!?
ナナくんは手をポンッと叩いて、にこやかに告げた。
「――ってことで、今後も毎日放課後は、引き続きここで手伝いをしてもらうから。これからは――正式な裏購買部員として、よろしくね!」
「え、えええええええええええっ!?」
正式な……裏購買部員!?
しかも……毎日ぃ!?!?!?
「せ、せめて一日――いや、二日くらいは……お休みを……!」
「はぁ? それじゃあお代の意味がないでしょ」
「そ、そんな~~~~っ!」
私の絶叫もむなしく、ナナくんは相変わらず楽しそうにするだけだ。
「……それに、キミ言ってたよね? 僕の力になりたいって」
「ぐぬぬ……!」
ええ、言いましたよ。言いましたけども!
それとこれは、話が別なんだって~~~っ!
あの西園寺先輩のような出来事が毎日あるなんて考えたら、私の心臓、いくつあってももたないよ……!?
(何だか私の――平穏な日常まで取られちゃった気がする~~~~っ!?泣)
くしゃくしゃと頭をかかえる私に向かって、ナナくんはいつもの可愛い笑顔で言った。
「――毎度あり♡」
おわり
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
この町ってなんなんだ!
朝山みどり
児童書・童話
山本航平は両親が仕事で海外へ行ってしまったので、義父の実家に預けられた。山間の古風な町、時代劇のセットのような家は航平はワクワクさせたが、航平はこの町の違和感の原因を探そうと調べ始める。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
【運命】と言われて困っています
桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。
遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。
男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。
あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。
そんな彼が彩花にささやいた。
「やっと会えたね」
初めましてだと思うんだけど?
戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。
彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。
しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。
どういうこと⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる