裏購買部少年ナナ

夏目薙朔

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エピローグ

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「……え? ナナくん、いま何て?」


 ――あれから一週間が経った。

『CKB48研究生・西園寺美優、炎上の裏に隠された真実! 市が声明文を発表、事務所は動画拡散者に損害賠償を請求か?』

 西園寺先輩の炎上は、花壇を管理していた市が正式に否定したことで、少しずつ誤解が解けて収まっていった。
 事務所の社長さんに協力してもらいながら、西園寺先輩は悪意のある動画を広めた人を特定して、裁判で訴えるみたい。
 フォロワーの数はまだ前よりも少ないままだけど、街に花壇を増やしていくキャンペーンのイメージモデルを、市からお仕事として任されたらしい。

 (とにかく、なんとかなりそうで良かった)

 今後の活躍次第で、西園寺先輩はもっと注目を集められるかもしれない。

「だから……もう弁償はいいって言ったの。それ以上の働きをしてくれたから」

 ぶっきらぼうに告げるナナくんに、私は目をぱちぱちさせる。
 ……っていうことは、つまり……。
「――おめでとう、今日から晴れてキミは自由の身だよ」
「やったあああああああああああああ!」

 これで毎日毎時間……裏購買部に来なくても済むんだ!
 ついに解放された私は、嬉しくて舞い上がる。
 最近は何にもできなかったし、何しようかな!
 
 外遊びも、マンガも、ゲームも……めいいっぱい楽しんじゃおーっと!
 
 私がいろいろ妄想していると、ナナくんがニタニタ笑いながら言った。

「――なーんて言うと思った?」
「……え?」

 悪魔のような笑みを浮かべるナナくんを見て、ツーッと冷や汗が流れる。

「嫌だなぁ、とぼけないでよ。――まさか秀字筆のお代を払ってないこと、忘れてないよね?」
秀字筆の、お代……???
「……あ」

 ―――しまったっ……!

「あああああ~~~~っっっ!!!」

 すっかり忘れていた出来事を思い出して、私は青ざめる。
 弁償のことで頭がいっぱいだったけど、私――ナナくんにまだお代を払ってなかったんだった……っ!

「……というわけで、いまからもらうね。茜音の一番の――し・あ・わ・せ♡」

 にまにましながら距離を縮めてくるナナくんに、私は後ずさる。

「い、いいいいいいいいいいいいまからっ!? まって、心の準備がっ……!」
「えー? そんなの知らな~い」
「ひいっ……!」

 全力で拒んでも、ナナくんはお構いなし。

 (もうダメだ……!)

 私の一番の幸せって、いったい何だろう?
 三時のおやつ? お出かけする日曜日?
 もしかして……パパとママとかじゃないよね!?
 
 怖くなって、私はギュッと目をつぶる。
「――はい、これ」
「……え?」

 しかしナナくんは、私に――あの黒いエプロンを着けるだけだった。
 ナナくんとおそろいの、裏購買部のエプロン。

 わけがわからず困惑していると、ナナくんはニコニコしながら言う。

「確かにもらったよ、キミの一番の幸せ。茜音の――放課後の時間」
「!?」

 『――ほ、ほら! 家に帰ったらパパッと宿題終わらせて、おやつ食べて、マンガ読んでゲーム! 超普通だけど、私はこの時間が一番幸せだからさ!』

 そういえばあたし、冬馬にそんなようなこと話したっけ……!?
 ナナくんは手をポンッと叩いて、にこやかに告げた。

「――ってことで、今後も毎日放課後は、引き続きここで手伝いをしてもらうから。これからは――正式な裏購買部員として、よろしくね!」
「え、えええええええええええっ!?」

 正式な……裏購買部員!?

 しかも……毎日ぃ!?!?!?
「せ、せめて一日――いや、二日くらいは……お休みを……!」
「はぁ? それじゃあお代の意味がないでしょ」
「そ、そんな~~~~っ!」

 私の絶叫もむなしく、ナナくんは相変わらず楽しそうにするだけだ。
「……それに、キミ言ってたよね? 僕の力になりたいって」
「ぐぬぬ……!」

 ええ、言いましたよ。言いましたけども!
 それとこれは、話が別なんだって~~~っ!
 あの西園寺先輩のような出来事が毎日あるなんて考えたら、私の心臓、いくつあってももたないよ……!?

 (何だか私の――平穏な日常まで取られちゃった気がする~~~~っ!?泣)

 くしゃくしゃと頭をかかえる私に向かって、ナナくんはいつもの可愛い笑顔で言った。

「――毎度あり♡」
                                     おわり
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