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第14話「一線」
しおりを挟む来週の日曜日。
三人は、約束通り水族館へ行った。
晴夏は、大はしゃぎだった。
「ママ、見て! イルカ!」
「本当だ。すごいね」
亜由美も、久しぶりに心から笑った。
信幸も、晴夏の手を引きながら、楽しそうにしていた。
「晴夏ちゃん、あっちにペンギンもいるよ」
「行く!」
三人は、水族館を回った。
まるで、本当の家族のように。
周りから見ても、そう見えたはずだ。
お昼は、水族館のレストランで食べた。
晴夏は、海老フライに夢中だった。
「おいしい!」
「よかったね」
亜由美は、晴夏の頬に付いたケチャップを拭った。
そして、信幸を見た。
信幸も、亜由美を見ていた。
二人は、微笑み合った。
「楽しいですね」
「はい」
「こういう時間、もっと欲しいです」
「私も」
二人は、手を伸ばし、指を絡めた。
テーブルの下で、こっそりと。
晴夏は、気づいていないようだった。
夕方、家に帰ってきた。
晴夏は、疲れてすぐに寝てしまった。
亜由美は、晴夏を寝かしつけた後、リビングに戻った。
信幸が、ソファに座っていた。
「お疲れ様でした」
「いえ。楽しかったです」
信幸は、亜由美に微笑んだ。
「晴夏ちゃん、すごく喜んでましたね」
「はい。ありがとうございます」
亜由美は、信幸の隣に座った。
「信幸さんがいてくれて、よかった」
「僕も、です」
信幸は、亜由美の手を取った。
「今日、本当に幸せでした」
「私も」
二人は、見つめ合った。
そして、信幸が顔を近づけた。
「亜由美」
「はい」
「キスしても、いいですか」
亜由美は、頷いた。
信幸の唇が、亜由美の唇に触れた。
優しく、でも、今までよりも深く。
亜由美は、目を閉じた。
そして、信幸を受け入れた。
キスが終わり、二人は額を合わせた。
「亜由美」
「はい」
「僕、もう我慢できない」
信幸の声は、切実だった。
「あなたのことが、好きすぎて」
「私も、です」
亜由美は、正直に答えた。
「我慢、できない」
二人は、再び唇を重ねた。
今度は、もっと激しく。
亜由美の体が、熱くなっていく。
信幸の手が、亜由美の背中を撫でる。
亜由美も、信幸の首に腕を回した。
「亜由美」
「はい」
「このまま、いいですか」
信幸の目は、真剣だった。
亜由美は、少し迷った。
でも、答えは決まっていた。
「はい」
信幸は、亜由美を抱き上げた。
そして、寝室へ向かった。
「晴夏は」
「ぐっすり寝てます」
亜由美は、晴夏の部屋を確認した。
静かな寝息が聞こえる。
「大丈夫」
信幸は、亜由美をベッドに寝かせた。
そして、上から覆いかぶさった。
「亜由美」
「はい」
「愛してます」
その言葉に、亜由美の胸が熱くなった。
「私も、愛してます」
二人は、唇を重ねた。
そして、その夜、二人は一線を越えた。
翌朝、亜由美は信幸の腕の中で目を覚ました。
窓から、朝日が差し込んでいる。
亜由美は、信幸の寝顔を見つめた。
穏やかな顔。
まるで、子供のような。
亜由美は、信幸の頬に触れた。
温かい。
この人と、一つになった。
その実感が、じわじわと湧いてきた。
幸せだった。
五年ぶりに、女性として愛された。
それが、嬉しかった。
信幸が、目を覚ました。
「おはようございます」
「おはよう」
二人は、微笑み合った。
「昨夜は」
「はい」
亜由美は、照れながら答えた。
「幸せでした」
「僕も、です」
信幸は、亜由美を抱きしめた。
「これから、ずっと一緒にいたい」
「私も」
二人は、しばらく抱き合っていた。
でも、晴夏の声がした。
「ママー!」
「あ」
亜由美は、慌てて起き上がった。
「晴夏が起きた」
「じゃあ、僕は帰ります」
「え?」
「晴夏ちゃんに、見られたくないので」
信幸は、笑いながら服を着た。
「またね」
「はい」
信幸は、亜由美にキスをして、窓から出て行った。
亜由美は、呆然としていた。
窓から?
でも、すぐに晴夏の声に我に返った。
「今、行くね!」
亜由美は、急いで服を着て、晴夏の部屋へ向かった。
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