鏡の中の他人

北大路京介

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第22話「支配と依存」

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信幸が去ってから、三日間。

連絡はなかった。

亜由美は、ホッとした反面、寂しかった。

でも、これでいいのだと、自分に言い聞かせた。

四日目の夜。

亜由美が店を閉めようとした時、扉が開いた。

信幸だった。

「こんばんは」

「信幸」

「話がしたくて」

「いいわ」

亜由美は、信幸を中に入れた。

二人は、向かい合って座った。

「この三日間、ずっと考えていました」

信幸は、静かに言った。

「あなたの言う通りでした」

「え?」

「僕は、執着していました」

信幸は、自分の手を見つめた。

「あなたを、支配しようとしていた」

「信幸」

「でも、それは愛じゃなかった」

信幸は、亜由美を見た。

その目には、後悔があった。

「本当の愛は、相手を自由にすることだと、気づきました」

亜由美の胸が、熱くなった。

「だから、僕は変わります」

「変わる?」

「はい。もう、毎日会いに来ません」

信幸は、真剣な顔をした。

「あなたのペースに、合わせます」

「本当?」

「本当です」

信幸は、微笑んだ。

「そして、仕事も、ちゃんとします」

「それは、よかった」

「だから」

信幸は、亜由美の手を取った。

「もう一度、チャンスをください」

亜由美は、迷った。

でも、信幸の目は、真剣だった。

「分かった」

「本当ですか」

「でも、約束して。もう、執着しないって」

「約束します」

二人は、抱き合った。

亜由美は、信じたかった。

信幸が、本当に変わってくれると。

でも、その信頼は、すぐに裏切られた。

翌日、亜由美が仕事をしていると、信幸から何通もメールが来た。

「今、何してますか」

「お客さんは、何人ですか」

「男性ですか、女性ですか」

亜由美は、不快になった。

でも、返信した。

「仕事中です。後で連絡します」

それでも、メールは止まらなかった。

「誰と話してるんですか」

「SNSの更新が止まってますが、大丈夫ですか」

「連絡がないと、心配です」

亜由美は、ため息をついた。

変わっていない。

信幸は、まだ執着している。

夜、亜由美は信幸に電話した。

「今日のメール、多すぎない?」

「え?」

「仕事中に、何通も」

「心配だったんです」

信幸の声は、悪びれていなかった。

「あなたが、無事か」

「無事よ。仕事してるだけ」

「でも、連絡がないと」

「信幸、これは監視よ」

亜由美は、きっぱりと言った。

「やめて」

「監視じゃないです」

「じゃあ、何?」

「愛情です」

信幸の声が、少し苛立っていた。

「あなたのことが、心配だから」

「でも、これは普通じゃない」

「普通って、何ですか」

信幸は、反論した。

「愛に、普通なんてあるんですか」

「ある」

亜由美は、答えた。

「相手を信じること。それが、普通の愛」

信幸は、黙った。

そして、静かに言った。

「あなたは、僕の全てを知ってるんですか」

「え?」

「僕が、どれだけあなたを必要としてるか」

信幸の声が、震えていた。

「僕には、あなたしかいないんです」

「それが、問題なの」

亜由美は、ため息をついた。

「私以外の、何かを見つけて」

「見つけられません」

「じゃあ、私たち、もう終わりにしましょう」

その言葉に、信幸は絶句した。

「終わり?」

「はい」

「それは、できません」

「どうして」

「あなたは、僕のものだから」

その言葉に、亜由美は凍りついた。

「僕の、もの?」

「そうです」

信幸は、当然のように言った。

「あなたは、僕を愛してると言った。だから、僕のものです」

「違う」

亜由美は、声を震わせた。

「私は、誰のものでもない」

「でも」

「もう、やめましょう。これ以上は、無理」

亜由美は、電話を切った。

手が、震えていた。

怖かった。

信幸の言葉が、怖かった。

「あなたは、僕のもの」

そんなこと、言う権利は誰にもない。

亜由美は、スマートフォンを握りしめた。

これで、本当に終わりにしよう。

そう、決めた。
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