詰みです、皆様。――攻略対象が全員悪役令嬢に夢中なので、ヒロインの私は「働かずにバッドエンド」を選ぼうと思います。

唯崎りいち

文字の大きさ
1 / 1

詰みです、皆様。――攻略対象が全員悪役令嬢に夢中なので、ヒロインの私は「働かずにバッドエンド」を選ぼうと思います。

しおりを挟む
 乙女ゲームの超絶可愛いヒロインに転生したのに、ゲームが始まる前に詰んでいました。

 攻略対象のくせに悪役令嬢に懐柔されてるお前らなんなの?


 キラキラと星が流れる演出と共に現れた攻略対象三人。

 王子! 富豪! 騎士!

 この魔法学園のアイドルだ!

 そして、真ん中に何故か悪役令嬢!
 
 あーあ、やってらんねなぁ。

 この乙女ゲームも、悪役令嬢に侵食されてんのか。

◆◇◆

「君が、この学園に転入してきた庶民か。せいぜい頑張るんだな」

 あー、ハイハイ、強制出会イベントね。

 耳を掻きながら王子の話を受け流す。

 ゲームプレイ中も何回も聞いたから、毎回スキップしてる。

 今更、リアルな王子が目の前にいるからって、悪役令嬢に流れた中古品には興味ないんだよ。

「なんだ! 庶民、その態度は! 私は、この国の王子だぞ!」

 本当に攻略対象か? 王子。

 ざまぁされながらやられてく婚約破棄王子みたいなセリフだ。

 私は王子を放っておいて外に出る。

「王子にあんな態度を取るなんて、面白い女だ」

 富豪、あんたのそのテンプレばっかの台詞は、つまんねえ男だと思ってたんだ。

 無視して歩く。

「おーい! 照れてるんだね、雑種の子猫ちゃん!」

 そこはテンプレでいいだろう!

 いらんオリジナリティを混ぜるな!


 ……キュン!

 私の、視線の先には最萌え騎士様! 

 真面目な貴方には辛辣な態度も取りにくいわ。

 きっと忠誠心の強い貴方のことだから、王子様に付き合って悪役令嬢の側にいたのですよね!

「やっと二人きりになれましたね、令嬢……」

「き、騎士様……!」

 って、お前もか!

 悪役令嬢の『き、騎士様……!』なんて、何百回もやってますって、言い方に何ときめいてんだ!

 揃いも揃って何なんだよ! お前ら!

 お前らが、そう言う態度なら、私にも考えがありますわ。

◆◇◆

 この物語にはバッドエンドがある。

 主人公がバイトをしなかったりシミュレーション部分をサボってステータスが上がっていないと、この世界は終わる。

 強制バッドエンドだ。

 そんなに悪役令嬢ばかりチヤホヤしてると、私、働きませんよ。

◆◇◆

 学園には行きます。

 後は、寝るコマンド一択です。

 Zzz…

「さすが、王子様。成績優秀ですわね」

 たまにスキップ一択の強制イベント……ふわぁ~。

 そんな私を見て青ざめる悪役令嬢が見えた。

 そんなことより、眠い。

「ざまぁ……むにゃむにゃ」

 
 放課後、庶民ヒロインはバイトです。

 が、私は、働きません!

 寮に帰って寝ます。

「待って下さい! 庶民」

 声をかけてきたのは悪役令嬢だ。

 青ざめた顔で慌てている。

 私の狙いに、一日目で気づくなんてバカではないようね。

「なんですか、令嬢様」

 ゲームのヒロインらしく上目使いで無害な様子で答える。

 可愛過ぎる自分に震える。

 攻略対象の前でやって、真っ赤にならせて「そう言う顔は俺の前だけにしろ……」って甘く囁かれたかった!

「さんざん毒付いていたのを見てましたの、可愛こぶっても今更もう遅いですわ」

 まあ、それもそうね。

 でも、

「なに? その口の聞き方」

 私は悪役令嬢にニッコリと微笑みかける。

「も、申し訳ありません」

 力関係を察して、慌てて謝る悪役令嬢。

 だけど、まだまだ足りない。

 縦ロールは謝罪を舐めてる奴の髪型だ。

「頭が高いですよ?」

「はいっ!」

 土下座です。

 悪役令嬢の縦ロールが砂に塗れて形を変える。

 うん、気持ちいい!

「で、なんの用があるんだ?」

「はい、庶民様にはキチンと働いて頂きたいんです!」

「は!? 嫌だね。こっちは悪役令嬢を引き立てる為のヒロインやってんじゃないんだよ。中古王子たちにも興味はないし、バッドエンドで、もういいんだよ」

「そ、その気持ちはよく分かります! ただ、私を助けると思って!」

「一番助けたくない奴じゃん」

「まあ、確かに……」

 私と悪役令嬢の利害が一致。

 それでも、悪役令嬢は食い下がる。

「貴方がゲームをクリアしてくれないと、私はこの乙女ゲームの序盤のループから抜け出せないんです!」

「へぇ、ループしてるんだ、ざまぁ! いいじゃない攻略対象もいるし」

「あんな顔だけの甘い言葉しか吐けない男どもがなんの役に立ちまして!? だいたい、貴方もループしてるって事を忘れないで!」

「へ?」

「ゲーム開始時間まで、能天気なヒロインヅラで過ごしてんのに開始早々転生者の記憶が戻ってバッドエンドを選びやがって! こっちは迷惑してんだよ!」

「な! 嘘だろう!?」

 騒ぎを聞きつけて、周りには人が集まっていた。

 攻略対象も来る。

 ざまぁ婚約破棄の小物王子に、つまんねえ男なのにオリジナリティはある富豪、私の心をもて遊んだ最推し騎士。

「誰でもいいから攻略しなさい! 庶民」

 嫌だ、もうコイツらは攻略対象じゃない! お笑い芸人だ!

「令嬢、お前が私が攻略してもいいってくらい魅力的にアイツらを育てろよ」

「な、何言って……」

 私は本気だ。

 今のコイツには興味がないが、ちゃんと私のヒーローに調教されていたら溺愛されてやってもいい。

 顔は好きだし、何より推し声優の声は大好きなんだ。

「次のループで終わらせろ」

 私は令嬢を冷たく見下して命令する。

「わ、分かりました~!!」

 悪役令嬢は更に深くおでこを地面に擦り付ける。

 私は攻略対象の三人とギャラリーに向き直って言う。

「今回は、詰みです、皆様」

 三バカには、次は私を、溺愛してもらいましょうか。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

「君を愛することはない」と言われたので、私も愛しません。次いきます。 〜婚約破棄はご褒美です!

放浪人
恋愛
【「愛さない」と言ったのはあなたです。私はもっとハイスペックな次(夫)と幸せになりますので、どうぞお構いなく!】 侯爵令嬢リディアは、建国記念舞踏会の最中に、婚約者である王太子レオンハルトから婚約破棄を宣言される。 「君を愛することはない!」という王太子の言葉は、国中に響く『公的拒絶誓約』となってしまった。 しかし、リディアは泣かなかった。 「承知しました。私も愛しません。次いきます」 彼女は即座に撤退し、その場で慰謝料請求と名誉回復の手続きを開始する。その潔さと有能さに目をつけたのは、国の行政を牛耳る『氷の宰相』アシュ・ヴァレンシュタインだった。 「私の政治的盾になれ。条件は『恋愛感情の禁止』と『嘘がつけない契約』だ」 利害の一致した二人は、愛のない契約結婚を結ぶ。 はずだったのだが――『嘘がつけない契約』のせいで、冷徹なはずの宰相の本音が暴走! 「君を失うのは非合理だ(=大好きだ)」「君は私の光だ(=愛してる)」 隠せない溺愛と、最強の夫婦による論理的で容赦のない『ざまぁ』。 一方、リディアを捨てた王太子は「愛さない誓約」の呪いに苦しみ、自滅していく。 これは、悪役令嬢と呼ばれた女が、嘘のない真実の愛を手に入れ、国中を巻き込んで幸せになるまでの物語。

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

悪役令嬢ですが、二度目は無能で通します……なので執事は黙っててください

放浪人
恋愛
社交界で“悪女”と呼ばれ、無実の罪で断罪された公爵令嬢リディア。 処刑の刃が落ちた瞬間、彼女は断罪される半年前の朝に時を遡っていた。 「二度目も殺されるなんて御免だわ。私は、何もできない無能な令嬢になって生き延びる!」 有能さが仇になったと悟ったリディアは、プライドも実績も捨てて「無能」を装い、北の辺境・白夜領へ引きこもる計画を立てる。 これで平和なスローライフが送れる……はずだった。 けれど、幼い頃から仕える専属執事・レージだけは誤魔化せない。 彼はリディアの嘘を最初から見抜いているくせに、涼しい顔で「無能な主人」を完璧に演じさせてくれないのだ。 「黙っててと言いましたよね?」 「ええ。ですから黙って、あなたが快適に過ごせるよう裏ですべて処理しておきました」 過保護すぎる執事に管理され、逃げ道を塞がれながらも、リディアは持ち前の正義感で領地の危機を次々と救ってしまう。 隠したいのに、有能さがダダ漏れ。 そうこうするうちに王都からは聖女と王太子の魔の手が迫り――? 「守られるだけはもう終わり。……レージ、私に力を貸しなさい」 これは、一度死んだ令嬢が「言葉」と「誇り」を取り戻し、過保護な執事の手を振りほどいて、対等なパートナーとして共に幸せを掴み取るまでの物語。

処理中です...